義弟(14-2)Mild Version

 

~チャンミン16歳~

 

 

「行きましょうか?」

 

席を立つMを追った。

 

腰までの長さのコートから、Mの形のよい生足が伸びている。

 

Mを裸にする光景を想像した。

 

上手くできるかは自信がないけど、きっとMがリードしてくれるはずだ。

 

Mはテキパキと手慣れた風に部屋を選ぶと、僕と腕を組んでエレベーターに乗り込んだ。

 

僕の肩あたりにMの頭のてっぺんが来ている。

 

この2、3か月で背が伸びて、あともう少しで義兄さんに追いつきそうで、嬉しかった。

 

「年下で、それも高校生となんて、初めてかも。

あ、チャンミンはまだ中学生か!」

 

「...もう卒業したよ。

ところで、Mちゃんは、初めてはいつだったの?」

 

「うーんと、17歳くらい」

 

エレベーターのパネルの階数ランプをぼーっと眺めていた。

 

「相手は?」

 

「バイト先の先輩...27歳だったけな、フリーター」

 

「ふぅん。

別れたって言ってたけど、Mちゃんは彼氏がいたのに義兄さんのことが好きだったんだ?」

 

「私はね、同時進行派なの。

あ、この階だよ」

 

僕らは腕を組んだまま、エレベーターを降りた。

 

タバコのすえた匂いがしみついているが、想像していたより清潔そうでシンプルな内装だった。

 

「同時進行って、二股とか三股ってこと?」

 

「一般的な目でみたらそうなるけど、私にしてみたら、そうじゃないんだなぁ」

 

「どういう意味?」

 

「私ね、一人だけ、は怖いの。

全身全霊こめて、その人を好きになるでしょ。

もし、フラれるか何かしたら、全部を失くしてしまうでしょ?」

 

「それって...ズルくない?」

 

「やっぱり、そうよねぇ。

これは表向きの理由。

ホントの理由は、他にあるの」

 

全てが物珍しくて、僕はキョロキョロしていた。

 

ベッドヘッドのティッシュケースの隣に置かれたものに、ぎょっとしてしまう。

 

実物を見るのは初めてだった。

 

「ホントの理由って?」

 

Mの方を振り返って、僕はもっとぎょっとしてしまった。

 

ブラジャーだけになったMが、スカートのホックを外していた。

 

「私って欲張りだから、いろんな人と繋がりたいの。

彼氏がいたのに、ユノさんが好きなのもそう」

 

Mの足元に、パサリとスカートが落ちる。

 

「ユノさんは結婚しているから、慎重にいかないと。

でも、『妻がいる画家』って、ドキドキする」

 

Mはベッドカバーをはがすと、シーツの間に下着姿を滑り込ませた。

 

「年下の男子と一度ヤッてみたかったんだよね」

 

思いきりのよい行動にあっけにとられていたら、Mは僕の手をひいた。

 

「チャンミンも早く脱いで。

それとも、私が脱がせてあげようか?」

 

シーツから抜け出たMは、僕の背後に回ってのしかかるように僕に腕を回した。

 

Mの胸のふくらみを背中で受けとめて、その柔らかさを感じて腹底がぞわりとした。

 

Mに見つめられる中、僕はパーカーとパンツを脱いだ。

 

義兄さんの前では堂々と全裸をさらせるのに、Mの前だと猛烈に恥ずかしかった、何故か。

 

あばらの浮いた胸や、細すぎる脚...といった自分の身体が不格好に思われて仕方がなかったんだ、何故か。

 

もつれ震える指でMのブラジャーのホックを外し、下着は各々で脱いだ。

 

ここまで来てようやく、僕らは唇を合わせた。

 

温かい肌同士がさらさらとこすれ合うのが、気持ちがいい。

 

そっか...だからみんな、裸で抱きあうのか、と。

 

 

1回目は挿入した直後に達してしまい、2回目はがむしゃらに動き過ぎた。

 

僕が腰を打ち付けるごとに、顔をゆがませ、ふにゃふにゃとした甲高い声を上げるM。

 

身をよじるMの姿が、僕自身に見えてきた。

 

僕のものは気持ちがいいし、喘ぐMが僕に見えてくるし、腰を振る僕自身が義兄さんみたいで。

 

こんなに気持ちいいことを、義兄さんは女の人としていたのか。

 

義兄さんに抱かれる女の人が羨ましい。

 

義兄さんの手や口やそれで、気持ちよくしてもらえる女の人が羨ましい。

 

「チャンミンはユノさんとヤること、考えてたりする?」

 

隠しても仕方がない、「うん」と認めた。

 

「チャンミンは男の子だからねぇ。

難しいね」

 

「うん」

 

「私とどれだけヤッたって、義兄さんには近づけないわよ」

 

 

Mの質問の答えを、僕は持っていなかった。

 

義兄さんしか知らない身体なんて、フェアじゃないと思っていた。

 

まっさらな自分を差し出すのが癪だった。

 

義兄さんを見返したかったし、実際の行為を通して見つけたいものがあったんだ。

 

Mの裸やよがる仕草と声に興奮したことと、女の子の中は確かに、気持ちがいいと知った。

 

ハマってしまうのも、仕方がないな。

 

この日、枯れるまで精を吐き出してみたけれど、それだけなんだ。

 

何かが足りない。

 

根本的に足りていないものとは、明白だ。

 

こういうことをするのなら、僕は義兄さんとしたい。

 

Mには申し訳ないけれど、Mとの行為はスポーツみたいだった。

 

でも。

 

貫かれるMが羨ましかった。

 

義兄さんに同じことをされたかった。

 

僕も女の子のようになりたい。

 

 

(つづく)

 

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