~チャンミン16歳~
僕は言葉を失う。
裸を見る前に、目にしてしまった義兄さんのもの。
怯むどころか、湧き上がる欲望で鼓動は高まった。
砂漠の放浪者、乾ききった喉、目の前に差し出された果汁滴るフルーツ。
舌なめずりした後、大口開けてぱくりと頬張った。
義兄さんが僕を欲しがっている証なんだもの。
斜め上を向いたもの...自分以外のものを目にする機会は(映像ではあるけれど)ほとんどない。
X氏のものは、手ほどきをしてもらうための謝礼だ。
身体の大きさに比例したサイズだとか、色だとか、匂いだとか...いや、もう忘れよう。
今は目前にさらされた、義兄さんの敏感なものを、もっともっと敏感にさせてやるんだ。
義兄さんは僕の突然の行動に、驚いただろうな。
ガキのくせに大胆だな、って。
こんなことを出来てしまうくらい、僕は貴方のことが好きなんですよ。
僕の気持ち、伝わってますか?
僕より美しい義兄さん。
自分がどれだけ綺麗な顔をしているのか気付いていない風の振る舞いと、からりと明るい表情にムカついて、嫌いで、でも無視できなくて。
近づきたくて、でも馬鹿にされたくなくて...。
僕の中に義兄さんを取り込んでしまいたい。
女性的と評してもいいたおやかな優しい顔をしているのに、下着の中身は男の象徴がグロテスクに主張していて。
どうしよう...ぞくぞくする。
僕の前は痛いくらいになっているし...それから、腰の後ろがずくんと疼いている。
この感覚を教えてくれたのはX氏だ...いや、今は彼のことは忘れよう。
僕の愛撫に義兄さんもたまらなくなったみたいで、彼の腰が小刻みに揺れていて、幸福で満たされる。
この後、僕の中を満たして荒らしてくれるものを、僕は愛撫するんだ。
義兄さんの腰がくくっと痙攣し、僕の口内が義兄さんの熱いもので溢れそう。
早く、早く...!
・
目の前に露わになった義兄さんは綺麗だった。
ブラインドから漏れる日光が逆光になって、義兄さんの身体のラインを浮かび上がらせているんだ。
盛り上がった肩の丸みや、広い胸からぎゅっと引き絞られた腰。
MともX氏とも違う。
ああ、男の人なんだなぁ、と思った。
僕は両腕をいっぱいに広げ、伸ばして、義兄さんの背中を抱く。
義兄さんの熱い肌と僕の肌とが密着し、嬉しくなった僕は義兄さんの腰に脚を絡めた。
「好きです...」
何度も「好き」をつぶやくのは、義兄さんに沁みわたって欲しいから。
義兄さんは「わかってる」と掠れた声を僕の耳元で囁いて、大きな手で僕の脇腹を撫で上げ、撫でおろす。
「はあぁ...」
たったそれだけで、ゾクゾクと感じてしまう僕に、義兄さんは艶やかな笑みを見せてくれる。
真っ白な歯が清潔そうで、この歯に齧られたいと望む僕はおかしいだろうか。
「...あっ...」
脇腹に置かれた義兄さんの手が、僕の腰、お尻の割れ目に移動した。
「怖くない?」
僕は首を左右に振った。
怖いことなんてあるものか。
ところが、初めてじゃないのに緊張してしまい、息を止めてしまった。
大丈夫かな。
男の僕に、直前になって引いてしまわれたらどうしよう。
だから、腰をくねらせしなを作り、両膝で義兄さんの腰をきつく挟んだ。
「あ...!」
お尻の谷に埋もれた義兄さんの指は、僕の敏感なところを通り過ぎた。
そして、前から睾丸をすくい上げたかと思うと、その後ろを指の腹でこすられた。
「ああっ...!」
びくりと腰がはねてしまう。
下をのぞきこむと、僕らの下腹にはさまれ天をむく二つの亀頭。
どうしよう...僕と義兄さんはいけないことをしている。
同性同士で、義理とはいえ兄と、夕方前の昼間に、寝室じゃない場所で、こんなはしたないことをしている。
一寸の間、天井から見下ろす視線に立ってみて、想像した僕はもっともっと、興奮した。
「...義兄さん...早く」
僕の睾丸と穴の間を行ったり来たりするだけの義兄さんの指。
僕はその手をつかむと、そこまで誘導した。
「...チャンミン...?」
僕の真上に迫る義兄さんは、少しだけ困った表情をしていた。
そりゃそうだろう。
僕は頬の内側にたっぷりと含ませた唾液を、手の平に落として、それを穴の周辺になすりつけた。
その間、義兄さんは僕の行為を無言で見守っていた。
義兄さんの指が再び、僕の入り口をまさぐり始め、その先がつつっと埋められていく。
「...んんっ...ん...」
ゆっくり大きく息を吐く度、義兄さんの指が奥へと侵入していく。
「平気なのか?」
掠れた義兄さんの問いに、僕は「はい」と答えた。
義兄さんの遠慮がちな指使いに、僕を傷つけまいとする愛情を感じた。
「あ...ああ...あっ...」
刺激が足らなくて焦れったいけれど、「もっと激しく」ってねだったりしたら、駄目なんだ。
義兄さんを驚かせてしまう。
僕がX氏に近づいた訳。
いざ抱きあう時に、ひるんだり痛がったり、そんな姿を見せたら、義兄さんは直前で止めてしまうだろう。
それから、うまく挿入できなくて、義兄さんに恥をかかすわけにはいかない。
僕の身体は男のもので、女の子のようにはいかないのだ。
両膝裏をひき寄せて、僕の入り口をもっと露わにして義兄さんをアシストした。
僕の中でうごめく指が2本になった。
僕はこの時を待ち望んでいた。
綺麗な義兄さんを独り占めにしたかった。
僕は男だけど、義兄さんとひとつになりたい。
早く僕の中に、これを埋めて欲しい。
僕の手の中で固くなった義兄さんのペニス...早くこれを埋めて下さい。
・
ぽとり...ぽとり...。
押し広げられた僕の入り口に、義兄さんの唾液が落とされる。
尻を高く突き出した姿勢。
恥ずかしい場所を全部、義兄さんにさらけ出している自分の姿に、快感を覚えた。
たまらず自身のペニスに、手が伸びてしまう。
X氏に慣らされた身体を、僕の大好きな人に捧げる時がきた。
「んっ...んん...」
焼け付く痛みはすぐ消えて、みっちりと内臓が押し上げられる感覚が。
深呼吸を繰り返して入り口を緩めるごとに、僕の腰奥が義兄さんを迎い入れる。
「んんっ...」
これは義兄さんのうめき声。
「ああ...」
この低くて太い吐息も義兄さんのもの。
伸びをした猫みたいになった僕は、腰と腰を結合させた義兄さんを振り返る。
義兄さんの猫みたいな目は、ギラっとした光をたたえていた。
興奮のせいか、義兄さんの呼吸は浅く早く、下腹が波打っていた。
「あ...っ...あっ...」
こんなに高く、甘ったるい声...自分でも初めて聞いた。
「ああぁ...あー、っあぁ...あ」
深く突き刺されたまま、ぐいぐいと奥底を揺らされて、喘ぎっぱなしだ。
義兄さんと繋がった身体の奥の奥で、彼のものを僕の熱で溶かしてしまいそう。
「いい...いいよっ...チャンミン...」
もっと僕の名前を呼んで。
「好きっ...義兄さんっ...好き」
義兄さんに打ち込まれるごとに、僕は愛の言葉を吐く。
胸を押しつけたソファの革が、僕らの熱を吸って柔らかく肌になじんだ。
僕の腰をつかむ義兄さんの指が、肌に食い込んでいる。
義兄さん、僕のこと...好きですか?
(つづく)