義弟(27)R18

 

~ユノ33歳~

 

 

「あ...義兄...さんっ...」

 

塞がれた唇の下で、チャンミンは苦し気に俺の名前を呼ぶ。

チャンミンの熱い息がふうふうと、合わせた唇の隙間から漏れた。

俺の両頬をもっともっとと引き寄せられて、チャンミンの背後にあるソファへ彼を押していく。

後ずさりするチャンミンの足がもつれ、体勢を崩しそうになるのを抱きとめる。

チャンミンは背中から、俺は彼の上に重なりどさりとソファにダイブした。

チャンミンの指が頬に食い込むほどで、俺を求める欲情の強さに、俺のそれも火力を増すのだ。

チャンミンの背中をまさぐりながら、より深く口づけようとうなじを引き寄せる力も増していく。

勢いの激しさに、歯同士ががちりと当り、どちらのものかわからない血の味。

互いのあごまで食らいつこんばかりの、口という穴を征服するキス。

 

「...んっ...ふっ...ふ...」

 

チャンミンの口は俺のもので密閉されているから、彼の鼻息が不規則に吹きかけられる。

もっともっと、違う角度で繋がりたくて、一旦唇を離した。

 

「好きです...」

 

チャンミンのつぶやきに、俺は頷く。

俺も好きだ...だが、口に出したらいけない気がするんだ。

好きのひと言で片付けられるような感情じゃないんだ。

それから、狡くて申し訳ないが、責任がとれない。

チャンミンとは、今この時、今この場所で、どろどろに塗れ合いたいんだ。

好きだから抱きあいたいのか、抱きあいたい気持ちが先にきているのか、保留にしているんだ。

真正面に鼻頭を合わせ、唇は触れ合わせず、舌先だけを繋ぐ。

焦らしたのち、チャンミンの舌を咥え、前後にしごく。

 

「...んんっ...んっ」

 

俺の口内にチャンミンの舌を引きずり込んで、きつく吸うと彼の喉が鳴る。

胸が苦しい。

この後の本命の行為に期待を馳せた。

 

上の...唇と舌...粘膜同士の接触といたぶりで、焦れ合うのだ。

俺の腹に、弾力ある固いものが押し当てられている。

チャンミンは衣服をまとわない姿で、すべてを俺にさらけだしていたから。

切っ先に雫がぷくりと浮いていた。

この子は、男だ。

立てた両膝が俺の腰を挟んでいる。

股間が引き締まる緊張は高まり、チャンミンの背に回した手を彼の正面に移した。

女の曲線をたどるように、チャンミンの敏感なものをたどる。

太く浮いた血管と折りたたまれた柔らかい皮、窪みとでっぱりを、指の腹でたどる。

 

「...や...あ...義兄さん...」

 

俺の身体の下で、チャンミンの腰がびくびくと震えた。

うなじを押さえていた手を放し、チャンミンの細いウエストに回した。

 

「ああっ...あっ...」

 

俺はこの子をどうしたい?

睾丸をすくいあげるように包み、片膝でチャンミンの腿を割る。

ブラインドから差し込む午後の光で、チャンミンの産毛が光る。

この後、どうなっても知らないぞ。

きっとチャンミンは、俺にのめり込む。

俺を見つめる目の色が変わるだろう。

俺を求める想いに真剣みが増すだろう。

Bとの結婚生活と並行しながら、チャンミンと会うのか?

 

会うだろう。

 

Bの目、世間の目から隠れて、チャンミンと会い続けるだろう。

俺が結婚していることと、男のチャンミンと関係を結ぶことは別の話だ。

可能な気がした。

いずれにせよ、もう引き返せない。

 

 

チャンミンのペニスを握る俺の手を、チャンミンは押しやった。

そして、俺の喉から舌を引き抜いて、チャンミンは俺の身体の下から抜け出した。

 

「?」

 

今回はチャンミンのその気が萎んだのかと、思った。

 

「!」

 

チャンミンはソファから降り、身を起こした俺の足元に脚を折って座り込んだ。

 

「...チャンミン...」

 

俺のデニムパンツのボタンを外し、ファスナーを下ろした。

チャンミンが何をしようとしているのか察して、下着をずらす。

斜めに勃起した俺のペニスを、チャンミンは咥え込んだ。

躊躇のかけらもなかった。

 

嘘だろ...。

 

大胆な行動に驚いた。

俺の両腿の間で、チャンミンの頭が揺れている。

陰毛に美しい顔を埋めている。

伏せたまつ毛が長く、頬に繊細な影を落としていた。

美味そうに俺のものを味わっている。

静寂のアトリエ。

強烈な快感が、股間から腹へと走った。

 

「...う...ん...」

 

低いうめき声が喉を震わせる。

たまらなくなって、前後に揺れるチャンミンの頭を撫ぜた。

丸い後頭部、伸びすぎた身長のせいで、小さく感じる頭を撫ぜた。

見上げたチャンミンと目が合う。

黒目と白目の境がくっきりとした、あの三白眼だ。

口いっぱいに俺のペニスを頬張っているから、口元をゆがませている。

それでも、美しい顔だった。

そして、悲しいくらいに幼い目元をしていた。

「どう?」と、褒めてもらいたがっている眼だった。

罪の意識がかすめる。

 

「いいよ...気持ちいいよ」

 

チャンミンの両眉が下がり、潤んだ瞳は泣き出しそうに見えた。

愛おしい想いが溢れ、チャンミンの前髪を何度も何度もかきあげてやった。

額を露わにすると、途端に男らしい印象が強まった。

そっか...今、俺は男にフェラチオされている。

それも、義理とはいえ、弟に。

チャンミンの舌による愛撫はぎこちなかった。

きつく吸われ過ぎて、痛みを覚えた瞬間もあった。

それでも、俺を気持ちよくさせようと必死な姿に、胸を打たれた。

罪悪感で萎えるどころか、俺のペニスを頬張り味わうチャンミンの姿に、猛烈に興奮した。

チャンミンの頭を股間に押しつけ、俺の腰はオートマティックに揺れてしまうのだ。

そして、チャンミンの喉奥で絶頂を迎え、彼から引き抜き、たまらずうなじを引き寄せた。

精の香りに包まれた口づけを交わす。

自身のものを味わうのは初めてだったが、チャンミンの舌と混ぜ合いながら、舐め尽くした。

膝に引っかかっていたデニムパンツと下着を、蹴と飛ばし脱ぐ。

ボタンを外すのももどかしく、シャツを脱ぎ捨てた。

これで肌と肌を直に合わせられる。

壁に立てかけられた数十枚のキャンバス。

完成したものも、制作途中のものも。

オイルの匂い、絵の具が飛び散ったフローリングの床。

大型のイーゼル、洗筆バケツ。

真珠のネックレスで胸を飾ったチャンミンの絵。

そして、丁寧に畳まれ置かれた、チャンミンの制服。

 

(つづく)