(2)旦那さん手帖

 

<10月某日>

 

2時間の残業。

チャンミンに電話をかける間もないほど、忙しい。

先に飯を食うこともなく、旦那の帰りを台所のテーブルでじーっと待つような奥さんだったら重い。

チャンミンはそういうタイプの奥さんではない。

それでも、チャンミンなりに段取りはあるだろうから、可能な限り、帰宅時間を前もって知らせるようにしている。

新婚ホヤホヤの頃、サプライズのつもりで、半休をとって帰宅した日があった。

少しでも離れがたい、熱々な頃でもあったから、いつもより早い帰宅に、めちゃくちゃ驚いてくれるんじゃないかな、とワクワクしていた。

帰宅した私は、音をたてないように忍び足でチャンミンを探した。

ところが、台所にも居間にも、風呂場にもチャンミンの姿はなく、スニーカーがあるから留守ではない。

苦し気な声が聞こえた。

出処は寝室だったため、腹でも壊して寝込んでいるのかと最初は思った。

その声は、痛みに苦しむものとは異なるタイプのものだった。

これはもしかして...?

その頃、芸能ニュースを騒がせていた、不倫現場(合体中)に突入してしまった夫(または妻)の姿が頭をよぎった。

5センチ程の隙間から寝室を覗くと...。

片手は胸先を、もう片方でお尻をいじる...つまり、オナ中の奥さんを目撃してしまったのだ。

私はそっと、その場を立ち去った。

一旦外へ出て、チャイムを連打し、「ただいま~!」と騒がしく帰宅した。

頬を紅潮させたチャンミンが、

「あれ?早退?」と私を出迎えた。

あの件について、何事もなかったかのようにスルーしてしまっていて、悪かった。

見られたのか見られていないのか、モヤモヤしていただろうから、今、この場を借りて告白する。

あの瞬間、チャンミンと目が合ったよな。

YES。

見ました。

エロかった。

あの夜、激しく求めてしまったのは、そのせいだよ。

 

 

この週末、リンゴ狩りツアーに参加した。

制限時間でそういくつも食べられるものじゃない。

(持ち帰り用に1箱買って帰る)

腹が膨れてしまい、名物のなんとか料理を残してしまった。

持ち帰りたいチャンミンと、食中毒をおこしたくない店側としばし押し問答。

折れたチャンミン、私の残りを全部食べてしまう。

次の立ち寄りスポットで、ソフトクリームサービス、チャンミン食べられず。

(腹が膨れてしまったのだ)

代わりに私が2個食べる。

頭上に腕を上げっぱなしだったせいで肩が痛い。

アップルパイが焼けるいい匂いがしてくる。

※ユノは日記帳の中では自身のことを『私』と称する。

 

 

【奥さま追記】

やっぱり見られていたのか。