(1)僕らが一緒にいる理由

 

結婚生活も10年以上経過。

アラサー。

友人がそれほど多くない僕でも、結婚祝いや出産祝い、新築祝いなどご祝儀を包む機会が重なるようになった。

その度、複雑な思いを抱えながら、ピンと張ったお札を封筒に入れている。

 

 

昨年、夫が転職したのを機に、現在住んでいる築50年平屋建てに引っ越してきた

小さな中庭がついていて、いつの代からあったのか定かではない洗濯物干し台が残されていた。

さびついたそれが気になって、夫と一緒にペンキ塗りをしたのを契機に、家づくりにハマってしまった。

少しずつ手をいれてゆこう。

だって、僕らはこれまでもこれからも2人一緒なのだ。

淡々とした日々の連続の中で、共通の関心事のひとつやふたつ無いとなぜか不安と不満を生み出すのだ。

絆を確かなものにするために、例えば共に育ててゆくものがあるといい。

そして、互いに感謝が出来なくなった時など、関係性にピリッと刺激を与えてくれるような出来事があるといい。

それが何なのかは人それぞれで、いいコトも悪いコトもある。

僕らの場合は...何だったと思う?

過去に、僕らは夫夫の危機を経験した。

 

 

なんとなく様子がおかしい。

うっすらとした疑念が湧いたのは12月に入った頃だったか。

夫が何かと用事を思いついては、夕飯後にふらりと出掛けるようになった。

僕にひとこと声をかける時もあれば、僕の入浴中に家を空けている時もあった。

疑心暗鬼にかられると、神経が研ぎ澄まされ、わずかな差異に気付くようになる。

全てが怪しく思えてしまうため、全くの気のせいであっても、「疑わしい言動」になってしまうのだ。

何が「疑わしい言動」を産んでいるのか?

...僕は夫の浮気を疑っている。

ほぼ毎日コソコソと出掛けてゆくのだ。

30分から1時間で帰宅する日もあれば、就寝時間ぎりぎりになる日もあった。

喫茶店で仕事をしていたとか、銭湯に行って来たとか、スロットをやってみたとか、バッティングセンターとか、よくもこんなに沢山思いつくなと感心するほど、様々な言い訳をしてくる。

最初の頃は問いただしていたけれど、その都度言い訳する夫を見たくなくて、数回目には訊ねるのを放棄した。

「おかえり~。

外は寒かったでしょ?

あったかいもの飲んだら?」

なんて、気に留めていないフリをしていた。

僕が訊ねてこない事が居心地悪かったのだろう、夫自らぺらぺらと「外出の理由」を述べるのだ。

...大袈裟になっているのは分かってる。

でも、その「理由」のどれもが僕を納得させるものになっていない。

つまり、夫は嘘をついている。

例え、「理由」を補完する小道具を持参していたとしていても、疑いの念は晴れないのだ。

 

 

冬はイベントの多い月だ。

不穏な空気を漂わせたまま過ごすのは嫌だ。

(不穏な空気を感じ取っているのは僕だけで、夫の方はそのつもりはないと思うけれども)

早く白黒はっきりさせたいと思った。

僕の職業は小説家で、20歳の頃からコツコツと書き始めていたけれど、鳴かず飛ばずだった。

ところが長年の願いが叶い、ようやく書籍化された頃だった。

(アンソロジーものだったけれど)

まとまった原稿料が入金されたので、最高のプレゼントを夫に贈りたかったのだ。

名目は何でもよかった。

例えば、『いつもお疲れ様プレゼント』でもいい。

『僕と一緒にいてくれてありがとうプレゼント』でもいい。

こそこそと外出する夫に浮気の匂いを嗅いでいた僕は、夫に腹をたてるよりも、贈り物を使って彼を繋ぎとめようとしたかったのかもしれない。

昼間ずっと家に籠り、狭い人間関係の中で暮らしている男に魅力を感じなくなったのでは?

だから、僕が今すべきことは、夫が浮気をしているのかどうか確かめること。

もし、浮気をしていたと分かった時、僕はどうなってしまうのかについては、その時になってみないと分からない。

会っているところに乱入して、夫や浮気相手を攻めまくるのか、大泣きするのか...どうなってしまうのか、分からない。

確かなのは...別れられないだろうな。

夫のことだから罪悪感を感じて、「別れよう」と言い出すかもしれないけれど、僕は断固として受け入れないつもりだ。

「浮気」を疑っていながら、夫のことだから「浮気はしていないだろう」という妙な自信があったりもする。

だって、言い訳が下手過ぎるんだもの。

夫には「浮気」以外の理由があって、こそこそ外出をしている可能性がある。

そう思っている証拠に、夫へ素敵な贈り物をしたい気持ちが存在している。

ホント、僕の気持ちは複雑だ。

 

(つづく)

 

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