(11)僕の失恋日記

 

ー15年前の4月某日ー

 

腹筋:50回

腕立て伏せ:50回

スクワット:30回

(※ユノに裸を見せたことで途端に、自分のたるんだ身体が気になったのだろう)

 

コインランドリーに行く。

冬物の毛布を洗う。

大学生協へ、教科書の注文。

 

 

今日はユノが恋人と会う日だ。

その結果をわざわざ僕に報告はしないだろう。

ユノは多分、そういう奴だ。

僕から電話をかける。

「どうだった?」と訊いたら、「終わったよ」と返答。

電話を切ろうとするユノに、「これから会えないか?」と尋ねた。

「今日はそんな気分じゃないや。

ありがとう、ごめんな」

そりゃそうだよなぁと思ったけれど、少しだけ傷ついていた。

ユノに断られ、ユノの失恋モードに僕は参加させてもらえないのかと、残念に思った。

傷ついているのはユノなのに、そう思う自分が嫌になった。

ユノの様子を見に、出かけることに決めた。

地元で買った手土産(名物の漬物)を持っていく。

玄関ドアを閉めかけた時、電話が鳴る。

予感がした通り、ユノからだった。

「やっぱり、会いたい」だって。

「独りでいると、いらないことばかり考えてしまうから」、だって。

先日のファミレスで待ち合わせ。

 

 

僕がCCの結婚を知って、特にどん底に落ちていた10日間を思い出してみた。

その頃のページを繰ってみたけれど、大した記述はなかった。

話しかけられても反応のない僕に構わず、毎日僕の部屋に顔を出してくれた。

チャイムを鳴らしても応答しない日は、玄関ドアのノブに食べ物の入った買い物袋がひっかけていった。

見苦しい身なりを見かねて、床屋へ連れて行かれた時もあったなぁ。

苦しい感情の扱いに困っていて、ユノの親切に気を配る余裕はなかったようだ。

ちゃんとお礼は言ったんだっけ?

今度は僕がお返しする番だ。

 

 

ユノ、ぎこちない笑顔。

泣いていなかった。

(もし僕だったら、恋人と別れた直後は泣いているだろう。

僕は誰かと付き合ったことがないから、そう想像してみただけ)

「話の前に、まずは腹ごしらえだ」

ユノはメニュー表を広げて、「何にしようかなぁ?」とつぶやきながら、注文するものを選んでいた。

僕「僕がおごるから何でも選んで」

ユノ「なんで?」

僕「え~っと、ユノは傷心中だから。

陣中見舞いだよ」

ユノ「お見舞いだろ?」

僕「そうそう。

美味しいもの食べて、身体だけは健康でいようよ」

ユノ「チャンミンはぼろっぼろだったからなぁ。

あの時は酷かった」

僕「ユノに助けてもらったね。

今さらで遅いんだけど、今までありがとう。

ユノのおかげでここまで来られた」

どさくさに紛れて、話の流れを利用して、ユノにお礼を言った。

ユノ「そうだそうだ。

俺のおかげだ。

俺はチャンミンの命の恩人だ。

今日からはチャンミンが俺の面倒をみるんだぞ」

と、いばった風に言ったかと思うと、テーブルに顔を伏せてしまった。

僕は手を伸ばして、ユノの頭を撫ぜた。

ウエイトレスさんが料理を運んでくるまで、ユノは大人しくじっとしていた。

 

 

【注文したもの】

・僕

煮込みハンバーグセット

ビール

・ユノ

エビのトマトクリームパスタ

レモンサワー

・シェア

ベーコンとほうれん草

フライドポテト

ツナとコーンピザMサイズ

キャラメルハニーホットケーキ

時間をかけて、お腹いっぱいになるまで食べた。

 

 

食事の後、その場で解散するのも寂しくて、ユノの部屋まで彼を送っていった。

ここで数秒、僕らの間で迷いの空気が漂った。

僕はこのまま帰るべきか。

 

 

結局、ユノの部屋に寄った。

僕もユノも、何やってんだろう?

だって、やらずにはいられないんだ。

 

 

帰宅してからこれを書いている。

ユノの部屋に泊まるのは遠慮した。

気持を整理したかった。

会話の内容を忘れないように、真っ先にノートを開いた。

PCは購入した日に、セットアップで電源を入れたっきりだ。

小説家になろうと意気込んでいたくせに、肝心なストーリーが下りてこない。

僕はユノのことをどう思っているんだろう。

いい加減、真正面から考えてみないと。

ユノの気持ちを探る前に、僕がはっきりしないと。

そうしないことには、他所様の恋愛ストーリーなんて思いつきっこない。

 

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