(21)僕の失恋日記

 

ー15年前の5月某日ー

 

<送別会の夜のこと>

 

ユノ

「チャンミンを放っておけなかった。

そんな俺を側で見ていた彼はどう思ったか。

分かりやすい俺の変化に『あれ?』って変に思うだろ?

たちが悪いことに、俺は全然気付いていないんだ。

チャンミンの世話に奔走してしまう動機が恋だってことに。

彼から『ユノの態度が変だ。好きな奴が出来たのか?』と訊かれても、ハテナ?だ。

『俺を疑ってるのか?』なんて、逆に彼を責めたりしてさ。

一緒にいたくなくなって当然だ」

ユノは僕をハグしたまま、話し続ける。

 

ユノ

「...昨日呼び出されて、『よりを戻したい』って言われて、すぐに断った。

『好きな奴がいるから無理だ、ゴメン』って」

 

ドキッとした。

 

ユノ

「そうしたらこう言われた。

『やっぱり...そいつだったんだ。

俺と付き合ってるのに、そいつとずっと会ってたんだろう?

俺は知っていたよ。

別れ話の時、俺は追求せずにいたんだ...ユノはそいつが好きだったんだろ?』って。

...そう言われた」

 

「『そいつ』って...」

 

ユノ

「チャンミンのことだよ」

 

 

ユノ

「さらに彼から、こう言われた。

『ユノは酷い男だ。

とっくの前によその男に気持ちがいってしまっているのに、自分じゃ気付いていない。

その上、悪いところは全部直すから、別れたくない、なんて言い出すんだから。

どこまで無神経なんだよ』

...って言われた。

彼から見れば、俺は浮気をしてたってことだ。

恐ろしいことに、俺にその自覚ナシだったんだ。

チャンミンにぺらぺら偉そうなこと言っておいて、俺自身の恋愛はこんな有様なの。

俺はずっと、被害者意識でいたんだ。

心変わりしたのは彼じゃなくて、俺の方だったんだ。

彼を傷つけていたのは、俺の方だったんだ。

俺さ、すげぇ落ち込んでしまって...」

 

「ユノ...」

 

ユノ

「鈍感にもほどがあるよなぁ。

誤解するなよ?

チャンミンのせいじゃないからな。

俺が馬鹿だっただけの話だ。

俺が元気がない理由の話は、これでお終いだ」

僕らはずーっとハグしたままだった。

 

ユノ

「CC、新曲を出したらしいね」

 

「詳しいね」

 

ユノ

「もちろん、注文しただろ?」

 

「ううん、していない。

買うのは止したんだ」

 

ユノ

「どうして?」

 

「欲しがる理由がなくなったから」

 

 

集中して書き続けていたせいで指が痛い。

首をぐるりと回転させ、大きく伸びをした。

ユノは目を覚まさない。

ひと晩で視界がぐんと、広がった気がする。

たったひと晩で、随分遠くまでワープしたみたいな感じなんだ。

でも、CCによって負った傷の痛みは消えていない。

僕は分かりやすく打ちひしがれ、いつまでもいつまでも、いつまでもいつまでもCCを引きずっていたんだ。

そうそう簡単に消えるものじゃない。

しつこく残っているけれど、それどころじゃなくなってしまっただけのこと。

だからユノの登場は、CCの延長線上にあるものじゃない。

目が覚めた、と言った方が...

うまく書きあらわすことができなくて、ジレッタイ!!

 


 

(※ユノとのことをうまく言い表せなくて、苦労している様子が、何度も書き直した文章から伝わってくる。

当時の僕はとても素直で、うつむきもせず真っ直ぐ前を向いて、襲い掛かる負の感情をまともに味わいながら、前進していた。

心を庇うために中途半端な嘘までついたりして、それでも逃げていなかった。

早く楽になりたくて一生懸命、手足を動かしていた。

ポンポンと後ろから肩を叩かれた。

僕はわざわざなのか、敢えてなのか、振り向くことなく、肩を叩いた人物と会話を交わす。

その人物はもちろん、ユノだ。

僕の背中はムズムズしてくる。

振り向きたいのを我慢してた。

いよいよ耐えきれずに振り向いた時、凄いことが起こった。

その時がいつだったのか、20歳の僕は分かっているのかな?

正解は、初めて寝た日だよ)