(17)Hug

 

 

「好き...」

 

(チャンミン、可愛い!)

 

「気持ちいい?」

 

チャンミンは頷く。

 

(気持ちいいかどうかは、さておき、一生懸命なユノは、確かに可愛い!

甘えん坊の可愛いあの子が、『男』に豹変してるところにやられちゃう...かも)

 

「僕も...好き」

 

(おー!

そんな可愛いこと言わないで。

感動しちゃうだろ)

 

ユノは全身汗だくで、額から首から汗がポタポタとチャンミンの上に落ちる。

 

(わ...。

汗かき過ぎだろ!?)

 

(ん?

ん?

んー!?

ヤバイ。

ダムが決壊しそう...かも...!

 

3億匹のユノが噴出しそう...です...!)

 

「チャ、チャンミン!」

 

「?」

 

(わー!

俺のを締め付けないで!

 

駄目!

 

そんなに刺激しないで!

 

ヤバい!

 

あうっ!

 

ヤバい!

 

大変だ!

 

お、俺のが...噴出しそうです...!)

 

「イキ...そう...」

 

「えっ!?

もう!?」

 

「!!!」

 

(しまったー!

言っちゃいけない一言だった!!

1分もたっていないんじゃない!?

早○でも、初めてだから仕方ないよね。

あんなに激しく動いてたんだもの)

 

「ごめ...ん。

我慢でき...ない...」

 

(だってチャンミン、気持ちいいんだもの。

チャンミンが好きすぎて、もうイキそうなんだ。

早くてごめん!

昨日のうちに、一発出しておけばよかった!)

 

「チャンミン!」

 

ユノは顔をゆがめてチャンミンに囁く。

 

「1回...出して、いい?

2回戦で...頑張る...」

 

「いいよ。

出していいよ」

 

(仕方ないよね。

初めてだから、コントロールきかないんだよね)

 

(チャンミン...気持ちがいい)

 

ユノのピストン運動が激しくなる。

 

「好きっ

好きっ

好きぃっ...はうっっ!!!!」

 

「はあ~~~~」

 

ユノは、グタッと仰向けのチャンミンの上に崩れ落ちた。

 

「はあはあはあはあはあはあ...」

 

チャンミンの肩に頬をつけ、荒々しく呼吸するユノの頭を、チャンミンは抱きしめる。

 

どくどくという首筋の血管も、燃えるように火照った肌も、汗の匂いも、チャンミンをくらくらさせた。

 

(この子ったら、

幼い言動と、甘えん坊な性格で、れっきとした大人の男だってことを、ついつい忘れちゃうんだけど。

今夜は、ちゃんと『男』を感じたよ。

いろいろと残念なところはあったけど、あんなに何度も「好き」って言うんだから。

感動しちゃうだろ)

 

「早くて...ごめん。

チャンミン...はあはあ。

うまく出来なくて...はあはあ。

...ごめん」

 

「ううん」

 

チャンミンは汗に濡れたユノの前髪をかき上げてやった。

 

「すごく、よかったよ」

 

「ホント!?」

 

ユノはパッと、チャンミンの肩から顔を上げた。

 

ユノの目がキラキラ輝いているのは、暗闇の中でもチャンミンにはわかった。

 

チャンミンは、ユノの頭をギュッと抱きしめる。

 

(可愛い、ユノが可愛い)

 

息が整うと、ユノはチャンミンの上からむくりと起き上がった。

 

ユノはチャンミンの中からそろりと引き抜いて、外したものを目線にかかげる。

 

(よく見えない)

 

外灯がとどく窓まで移動して、まじまじとそれを見る。

 

「ユノ!!」

 

(この子ったら、何やってるんだ!!)

 

「意外にちょっとしか、出ないものなんだね...」

 

「!!」

 

(ちょっとどころじゃないよ!

なんて量なんだ!)

 

「2日ぶりだったから、少ないなぁ」

 

(はあ!?

ふ、2日ぶりで「その量」!?

(生産能力凄まじい...

多過ぎだよ!)

 

ユノはふふんと笑うと、チャンミンにタックルして押し倒した。

 

「ユノ!?」

 

「チャンミン!

お待たせ」

 

「へ?」

 

ユノはチャンミンの額にキスした。

 

「やだなぁ、2回戦」

 

「もう!?」

 

「うん!

準備OK!」

 

「チャンミン、未だイッてないだろ?

次は俺がイかせてあげるからな」

 

「待って!」

 

「待てない」

 

「僕を少しだけ、休ませて」

 

「えー」

 

ユノは頬を膨らませる。

 

「ちょっとだけ、ね?」

 

「仕方ないなぁ。

ぎゅー」

 

「痛い痛い!」

 

「チャンミン、大好き」

 

「僕もユノが、大好き」

 

「お尻...大丈夫?」

 

「んー...大丈夫だよ」

 

(ユノが激しすぎて、あそこがちょっとひりひりする...とは言いにくい)

 

 

「...そろそろ...いい?」

 

「まーだ」

 

 

「まだ、駄目?」

 

「まだ」

 

 

「もういいだろ?」

 

「うーん...(仕方ないなぁ)いいよ」

 

若いって...素晴らしい。

 

 


 

 

(チャンミン...)

 

(ユノ...)

 

カーテンの隙間から差し込む外灯の弱い光に、2人の男のシルエットが浮かぶ。

 

横たわった男の上に、もうひとりの男がのしかかる...。

 

「お母さーん!」

「おじちゃんがいないよ!」

 

「!!!!」

「!!!!」

 

「トイレじゃないの?」

「トイレにもいないんだ!」

「どうしよう...。

お義父さんたちはもう、公民館へ行っちゃったのよ」

 

「おじちゃーん!」

「おじちゃーん!

お祭りだよー!」

 

「!」

「!」

 

階下から聞こえるのは、甥っ子ケンタとソウタ、兄嫁ヒトミの声。

 

スマホを確認すると...3時半!

 

はじかれるように2人は離れた。

 

「大変!」

「祭り!」

 

ここに来た本来の目的を、すっかり見失っていた2人だった。

 

御旅(おたび)行列の出発は午前6時。

 

公民館では衣装の着付けが、既に始まっているはずだ。

 

子供部屋で寝ているはずのユノの布団が空で、家の者が捜していた。

 

「大変だ!」

 

電気のスイッチを入れると、あまりのまぶしさに目がくらむ。

 

「!!」

「!!」

 

それから全裸なのに気付いて、しゃがみこんだ。

 

露わになった室内のすべてが生々しい光景だ。

 

脱ぎ散らかされたパジャマ、Tシャツ、部屋の隅に放り投げられた下着。

 

床にひきずり下ろされた掛布団。

 

封の開いた蛍光グリーンの小袋がいくつかと、使用済みのくたっとしたものも。

 

(ううっ...エロい光景だ)

 

「チャンミ~ン!」

 

母セイコが階段下からチャンミンを呼んでいる。

 

「何―?」

 

ふすまから顔だけを出して、チャンミンは応じる。

 

「ユノ君、いないんだけどー?」

 

「えー?

こっちにはいないよー!」

 

「!?」

 

「チャンミン!」

 

(どうしてそこで嘘つくんだ!

事態が面倒になっちゃうって分からないのか)

 

ぶすっと膨れるユノ。

 

「早く、服を着て!」

 

「無理!」

 

ユノは、ブンブンと首を振っている。

 

「どうして!?」

 

チャンミンはユノが指さすところを見ると、

 

「!!」

 

「(元気な状態じゃ)外せない!」

 

(こんな状況なのに、どうして元気いっぱいなんだよ)

 

「ほら、端をくるくるってして...」

 

「いででっ!」

 

「ごめんね。

あと少し...取れた!」

 

「最後までヤろうよ。

途中でお終いは、生き地獄だ。

身体に悪い。

俺に5分頂戴!」

 

「馬鹿!

出来るわけないしょうが!

早く!

早く、服を着て!」

 

「ちぇっ、ちぇっ、ちぇっ!」

 

仏頂面のユノは、脱ぎ散らかしたTシャツを拾うと渋々袖を通す。

 

頬を膨らませた顔が、ドングリを頬袋いっぱいに詰め込んだリスのようで、可愛らしいと思うチャンミン。

 

(いつものユノに戻った)

 

「続きは『今夜』に、ね?」

 

「おー!」

 

ユノはまたたく間に機嫌を直す。

 

「俺はチャンミンの部屋にいないってことになってるんだろ?

『ユノ君は僕の部屋にいまーす』って、認めればよかったのに...」

 

「そんなこと言えるわけないじゃないか!

何やってたか、バレバレじゃないか!」

 

「『何』をやってたんでしょうねぇ、俺たちは?

ふふふ」

 

「ユノの馬鹿!」

 

真っ赤になったチャンミンは、パジャマのボタンを一番上まできっちり留める。

 

「僕が皆を引き付けておくから、見つからないように、ね?

さっさと下に降りて来るんだよ」

 

「はいはい、分かりました。

...あれ?

俺のパンツはどこかな...?

『チャンミン先生が脱がした』俺のパンツは、どこかな?」

 

「ここ!」

 

チャンミンは、床に敷いた掛布団の下から、ユノのボクサーパンツを見つけると、彼に投げて寄こした。

 

「ユノ~!

どこにいる~?」

 

と大声で階下に声をかけながら、部屋を出て行ってしまった。

 

後に残されたユノは、ふうっと大きくため息をついた。

 

 

(つづく)