(2回戦、出来なかった。
ペース配分がうまく出来なかった。
イクのが早過ぎた...と思う。
チャンミンをイカせられなかった。
俺ばっかりイッてしまった。
チャンミンを、気持ちよくさせたい。
もっと研究しないと!
(注:ユノのメイクラブ参考書は、AVが全てである)
ふふふ。
チャンミンの裸。
ふふふふ。
暗くてよく見えなかったから、次は明るいところでヤろうっと。
はぁ...それにしても、気持ちよかったなぁ...。
自分でやるのとは、次元の違う気持ちよさだったなぁ...。
ヤバイねぇ、アレは。
大好きな人とヤるのって、最高だ。
愛する人と一体になるって、幸せだ。
チャンミン...好きですー)
「ふふふ」
胸に抱きしめた掛布団に顔を埋めて、ニヤニヤ笑いを押し殺す。
(おっと!
俺のユノユノが、また元気になってきた。
ポジションをこう...直して...と、よし!)
ユノは階段辺りが無人であることを確認した後、きしむ階段にヒヤヒヤしながら階下へ降りて行った。
階段口で誰かと出くわすわけにはいかない。
無事に一階に下りると、近づく人の気配を察して慌てて手近な広間に隠れた。
(危なかった...)
広間を抜けて縁側の窓から外へ出ると、玄関に回る。
そして、さも外から帰ってきた風を装って、カラカラと玄関の引き戸を開けた。
「おじちゃん、いたー!」
「!」
まさに出かけようとしていたケンタたちと鉢合わせになった。
「チャンミン兄ちゃ~ん、おじちゃんいたよー」
「ユノったら!
どこに行ってたの?」
ケンタたちに呼ばれて、チャンミンは困りきった表情を作った。
「お散歩に行ってたんだ」
「散歩!?」
(もっと上手な登場の仕方をしてくれよ!)
ラップをかけた大皿を持ったヒトミもやってきた。
「公民館にこれを持っていくからね。
山菜の天ぷら。
ユノ君行くわよ、車に乗って」
「はい!」
「おじちゃん、裸足だよ」
「!」
「お兄さんはね、足の裏を鍛えているんだってさ。
だから裸足なんだ」
チャンミンは、苦し紛れにフォローする。
「時間がないから...車に乗った乗った!」
「うん」
時間がないためユノは、Tシャツとハーフパンツという寝間着姿のままで出かけることとなった。
はねた後ろ髪や、ハーフパンツから突き出した細い脚といった、大きく育ち過ぎた子供感いっぱいのユノからは、先ほどまでの艶っぽい雰囲気は一切感じられない。
(あんな彼と、僕は裸で抱き合ってたのか)
両手で口を覆って、心の中で「ひゃー」っと叫び声をあげる。
(そうだ!
僕たちったら、とうとう『いたしちゃった』んだ!
こんなに緊張したエッチはなかったかも。
ユノったら、必死で可愛いんだもの。
でもなぁ...あそこまで『獣』になるとは...ちょっと怖かったな)
などなど思いながら、ユノの後ろ姿を追っていると...。
(ユノったら、Tシャツが前後ろ反対...)
あちゃーと額に手を当て、深いため息をついたのだった。
外は夜明け前で暗く、公民館から煌々と窓から灯りがこぼれていた。
ユノたちが到着した時には、ほぼ全員の着替えは終了し、長い一日に備えて皆早い朝食をとっていた。
神官装束、龍と鳳凰を染めぬいた着物の闘鶏楽(円盤状の鐘を叩く)、警護の裃姿。
ひょっとこ役はあぐらをかき、鬼役からコップ酒を飲まされている。
(ひょっとこ役は、泥酔した状態で御旅行列するため、出発前に飲酒をする習わしなのです)
巫女装束の女の子たちは、赤い口紅が落ちないよう、お菓子を小さな口でかじっている。
「おせぇぞ!」
深緑の股引きと藍色腹掛けに着替えた獅子役のテツは、ぬっと現れたユノたちを怒鳴りつける。
「とっとと着がえろ!」
「すみません!」
「乳繰り合ってたんじゃねんだろうな?」
「はあ、そんなところです...」
「ユノ!?」
しれっと認めるユノにチャンミンは当然、焦る。
「馬鹿たれ!」
頭をかきかき照れるユノの頭を、テツははたく。
「正直に認める奴があるかってんだ!
祭り前日に何やってんだ、全く」
(ユノの馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!)
ユノたちを待ち構えていた4人の女性たちの助けを借りて、2人の衣装替えが始まった。
「お兄さん、背が高いね。
チャンミン君と同じくらい?」
「はい、そうなんです」
「何センチあるの?
この肌襦袢を着てね」
「はい。
えーっと、183か4あります」
「へぇぇ。
うちの息子に分けてやりたいねぇ」
ユノは着ていたTシャツを脱いだ。
次いで隣のチャンミンも、トレーナーを脱ぐ。
「バレー選手か何かなの?」
「いえ、違います」とユノは答えた。
小袖を羽織らせようとした女性の視線が、チャンミンの腹から胸へと移動したのち固定した。
「?」
「!!」
(チャンミン!?)
「ん?」
チャンミンはフリーズしている5人に気付き、彼らの視線が自分に向けられていることに、首を傾げたのだった。
(え!?
僕?
僕がどうした?)
自身の胸を見下ろしてぎょっとする。
「!!!!!!」
(ユノーーー!
いつの間に!)
チャンミンの胸には、赤い花びらがいくつも散っていたのだ。
焦ったチャンミンは、両腕をまわして隠そうとしたが、背後にいた女性に腕をぴしゃりと叩かれた。
「手が邪魔だよ。
細い腰だねぇ。
このタオルを押さえてて」
「は、はい...」
着付けの女性が、何でもなかったかのように話を続けるから、余計に恥ずかしい。
(最近の子ったら、スゴイのね。
うちの旦那も若いうちは、激しかったわ。※おばさまの心の声)
(ユノの馬鹿!)
チャンミンの顔も首も耳も真っ赤だ。
隣のユノも、さすがに恥ずかしくて俯いてしまう。
(俺たちが何をしていたかバレバレだ。
恥ずかしー!)
(ユノの馬鹿馬鹿馬鹿!
こんなに大量のキスマーク!
全然気づかなかったよ!
愛の証を刻みたいのは分かるけど、
僕のことが大好きだってことは分かるけど、
僕があまりに美味しそうだったのは分かるけど、
どうりで、あちこち吸われてるなぁ、って思ったよ)
(キスマークって...えっちだなぁ。
チャンミンも悪いんだぞ。
可愛い声を出すんだから。
止められなくても仕方がない。
だから、俺は悪くないのだ!)
チャンミンの腰回りはバスタオルをあてがわれ、さらしで固定された。
「差袴を履いて」
「はい」
ピンクな妄想で頭がいっぱいのユノをよそに、女性たちの熟練の腕により着々と仕上がっていく。
(今夜はもっときわどいところに付けてあげようっと。
やっぱり...あの辺りだよなぁ。
付け根のとこ...えっち。
おっとっと、気を付けないと!
また俺のユノユノが目覚めてしまう...)
「はい、出来たよ」
最後に狩衣の上下を袴に差し込んで、ユノの浄衣姿が完成した。
槍持ちのチャンミンは、裃姿だった。
(うっ...チャンミン、カッコいい)
「雪駄で鼻緒ずれするから、あっちで絆創膏を貼っておいで」
「ほぉぉ」と息をのむ声が聞こえ周囲を見渡すと、部屋のあちこちの者たちがユノとチャンミンに注目している。
(どこか...変?)
チャンミンが連れてきたよそ者ということで、ひそかに町民たちの注目を浴びていたユノだった。
ユノは細身の高身長、加えて端正な顔立ちをしている。
チャンミンも同様だ。
古典絵巻から抜け出たような美青年に仕上がって、遠巻きに観察していた面々は驚いたのも無理はなかった。
(そんなに変?)
居心地の悪くなったユノは、折り畳みテーブルの上に並んだ稲荷寿司を紙皿に5個ばかり載せて、テツの横に座った。
チャンミンは居たたまれなくなって、真っ赤な顔をして部屋を飛び出していってしまった。
(つづく)
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