(13)恋人たちのゆーふぉりあ

 

 

~チャンミン~

 

 

ユノは一体、どんな作戦を思いついたのやら。

 

ユノの人柄はなんとなく分かってきたとはいえ、1か月も経っていないから、まだまだ知らないことだらけだ。

 

イヤな予感と期待が半々で、怖い気持ちとワクワク待ち遠しい気持ちも半々。

 

ま、いっか...ユノに任せよう。

 

「どんと構えて俺に任せなさい」といった風に、自信たっぷりに胸を叩いていた。

 

そして、僕の唇に「ぶちゅっ」と大きな音を立ててキスをして、ユノは帰宅していった。

 

せっかく会えたのだから、挿入なしのイチャイチャくらいはしたいなぁ、って思っていたから残念だった。

 

あ...イチャイチャ無しでよかったのかも。

 

イチャイチャとしごき合いをしているうちに、えっちな気持ちが加速して、パンツを脱ぎたくなる。

 

僕のお尻がさらけ出された時...はっと我に返って、先日のように「どうする?」状態になるのがオチだ。

 

それは避けたい。

 

それ以前の問題も抱えている。

 

汚い話だが、僕のお尻の用意ができていない。

 

僕のお尻問題は明日の夜に考えよう...よし!

 

蛍光灯の紐を引っ張って照明を消し、直線距離にして1km離れた場所にいるユノに、「おやすみ」とつぶやいた。

 

僕は5分も経たないうちに眠りに落ちた。

 

ユノは僕の不安を取り除いてくれる天才だ。

 

僕の様子を見に来てくれてありがとう、ユノ。

 

 


 

 

~ユノ~

 

 

チャンミンには「いい考えがあるから、俺に任せろ」と大きなことを口にしてしまった。

 

確かにアイデアはある...それも大胆なやつが。

 

必ずうまくいくという保証は、ない。

 

けれども、チャンミンにはびくびくとしたキャンパスライフを送って欲しくないし、それは俺も同様だ。

 

教科書を読み上げるだけの退屈な講義など、耳を素通りしている。

 

デスクの上の教科書とノートをバッグに仕舞い、チャイムが鳴るや否や教室を飛び出した。

 

 

 

 

校門前は広場になっている。

 

正面には講堂があり、合格発表の掲示板が設置されたり、学園祭の際には模擬店のテントが並び、卒業式には角帽をかぶった卒業生が溢れる。

 

昼食時間とあって、大勢の学生たちが広場を縦横無尽に行き交っている。

 

約束通り、チャンミンは講堂前の階段に腰掛けて待っていた。

 

そこは広場を見渡せる位置にある。

 

公衆の場で遠目に眺めるチャンミンは、つくづくいい男だなぁと見惚れてしまうのだ。

 

背中を丸め、両膝を抱えるようにしている(内股気味)のは、知った顔から気付かれないようにしているんだな。

 

身を縮めたって、デカいなりは隠せないのにさ。

 

手にしたスマホを操作している。

 

通知音にスマホを見ると、『まだ?』とのメッセージ。

 

『もうすぐ着くよ』と返信。

 

待ってろ、チャンミン。

 

お前の自意識過剰な怯えをぶっ壊してやるから。

 

...これは、俺の為でもあるんだ。

 

 

 

 

近づく俺に気付いて、無表情だったチャンミンの表情が笑顔へと変わる。

 

花のつぼみが満開になる瞬間を、早回しで見ているかのように。

 

俺の元へと階段を下りかけたチャンミンを、手ぶりで制した。

 

1段飛ばしで駆け上がり、チャンミンの二の腕をつかんだ。

 

それを振り払おうとしたチャンミンの腕ごと、背中に手を回した。

 

チャンミンのうなじにもう片方の手を回し、ぐっと引き寄せた。

 

「ユっ...!」

 

驚きのあまり口を開けたチャンミンの歯と俺の歯がガチンと当った。

 

チャンミンの抵抗を渾身の力で、彼の唇を、顎まで食らいつくようなキスで許さなかった。

 

奥に引っ込んだチャンミンの舌を引きずりださんばかりに、彼の口内を舐め尽くす。

 

ガチガチだったチャンミンの顎の力が緩んできた。

 

俺は講堂を、チャンミンは広場を向いている。

 

この位置関係じゃチャンミンが可哀想なので、90度身体を回転させた。

 

目を見開いているチャンミン、「目を閉じてろ」と囁いた。

 

チャンミンの両腕が、俺の背中と腰に巻き付いた。

 

そして、俺以上の力で抱き寄せた。

 

腰同士はめり込み気味に密着している。

 

俺の作戦が読めたらしい。

 

そして、受け入れたんだ。

 

ここは中学や高校じゃない。

 

なんでも有りの自由な大学キャンパスだ。

 

教師に告げ口する奴なんていない。

 

右を味わい尽くしたら左へと頬を傾け、唇を重ねなおす。

 

チャンミンはカッコいい部類に入るルックスで、俺だってミスターなんじゃらにはなれないけれど、悪い方ではない。

 

このキスシーンは、まあまあ絵になるものではないだろうか。

 

一体となった俺たちは、周囲の視線を浴びている。

 

彼らがどんな表情を浮かべているのか、何を考えているのか、何を囁き合っているのか...構うものか。

 

大勢の視線にさらされているという意識は、なかなか刺激的なものだ。

 

俺以上にチャンミンが興奮してきているようだった。

 

下腹は、チャンミンの昂ぶりを感じとっている。

 

そろそろキスを止めにしないと、チャンミンのものがおさまるまで密着した腰同士を離せない。

 

さすがに、元気いっぱいになった下半身まで、公衆の面前に披露するわけにはいかないからな。

 

ふっと唇を離した時、俺たちは至近距離で微笑み合った。

 

「ユノの...馬鹿」

 

「ふん。

よかったくせに」

 

広場の方へと向き直ると、何十人もの学生たちひとりひとりと目が合った。

 

彼らの反応は...想像通り。

 

見てはいけないものを目撃してしまった...この出来事を誰かに話さなくっちゃ。

 

嘘でしょ...すごい...信じられない!

 

スマホを向けている者もいる。

 

ミスターなんじゃら並みに、有名人になれたかもね。

 

今まで以上に好奇の視線を浴びるだろうけど、身近な少数の者たちにコソコソ噂されるような中途半端さが、じわりとチャンミンを傷つけるのだ。

 

荒療治にもほどがある。

 

...そうだろうね。

 

俺の作戦は無謀で見当違いで、馬鹿げたことだろうけど、一種のカンフル剤となって、チャンミンの不快感を吹っ飛ばしたんじゃないかな。

 

あとでじっくり、チャンミンに感想を聞いてみよう。

 

グーで殴られたりして。

 

 

(つづく)

 

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