(6)キスから始まった

 

チャンミンのパーカーの下にもぐり込んだ。

すぐには口づけず、指をひろげて置いた手をへその辺りから胸へと這わしていった。

女の子のように、皮下脂肪に指がやわらかく沈むことなく、手の平で感じる凸凹は固い。

チャンミンの腹は荒い呼吸で、不規則に波打っている。

チャンミンの両手は俺の髪をかき乱している。

女の子のようにシャンプーの香り混じりの甘いものじゃなく、当然だけど男くさい肌だ。

這わしてきた指先がそこに引っかかり、小さな突起を爪先でつつく。

 

「んんっ...!」

 

びくんとチャンミンは全身を痙攣させた。

指の腹で転がすうちに、ころころに固い粒になっていく。

男でも乳首をいじられると気持ちいいんだな、と小さく感動。

パーカーの生地に閉じ込められて暑いし、チャンミンの反応する表情も見えないしで、俺は頭をいったん抜いた。

 

「ふぅ...暑い」

 

着ていたトレーナーを脱いだ。

 

「...ん?」

 

ボトムスも脱いだ方がいいんだろうかと、ボタンとファスナーを見下ろし迷っていたところ...。

チャンミン「ほぉ...」と俺の身体を食い入るように見ている。

真剣に見つめられると、同性であっても恥ずかしいんだなぁ。

顎をしゃくって急かすと、チャンミンもあたふたとパーカーを脱ぎ出した。

チャンミンの顔はもっと赤くなっていて、額が汗で光っていた。

 

(下は...?)

 

(どうする?)

 

俺たちは今夜、どこまでやる気なんだろう?

俺たちは顔を見合わせ、視線で逡巡している。

迷っている時間が勿体ないとばかりに、俺たちは同時にタックルし合った。

もっともっと深いキスを交わす。

 

 

Aの胸を愛撫するように、チャンミンの平らな胸をいじる。

執拗に胸先だけ責める俺に、チャンミンはきっと、俺はおっぱい好きだと暴露したAの言葉は本当だった、と思っているだろう。

ふわふわの胸じゃなくても、乳首が付いていさえすれば、愛撫しがいのあるポイントになるんだなぁ。

 

「や...ユノ...そこは」

 

「...イヤなの?」

 

「イヤじゃないけど...なんか、恥ずかしい...」

 

「すごい固くなってるよ」と耳元で囁き、その小さな粒をきつめに吸う。

 

「...ユノ、待って...そこばっかは...」

 

「分かってる...」

 

チャンミンの胸先ばかりいじっていないで、俺にはもっと、触れるべき箇所がある。

 

「チャンミン...俺のを触って?」

 

上半身裸の俺たちは、向かい合わせに横たわっていた。

見てはいけないような気がして、互いの例の箇所には視線をやらないよう意識していた。

俺たちは目を合わせたままだ。

チャンミンはかすかに頷くと、俺の背中に回していた片手を下ろした。

 

「...くっ」

 

チャンミンの指がそこを探り当てた時、みっともないほど腰が揺れてしまった。

 

「ユノ...おっきい」

 

分厚いデニム生地越しなのに、撫でられただけなのに、俺のあそこは異常に敏感になっている。

狭苦しい場所にぎゅうぎゅうに閉じ込められていて、完全に大きくなれず、窮屈で苦しい。

男に触られて、俺は興奮している!

たまらなくなって俺の手も、チャンミンのそこに及ぶ。

包み込んで下から上へと擦り上げた。

すごいな...自分以外の勃っているものを触るのは初めてだ。

興奮して感じていることが、実体を持ってありありと分かる。

先端を引っかき、柔らかいそこの縁を親指で辿ると、

 

「...あっは...」

 

チャンミンの両眉が切なげにひそめられた。

チャンミンのボトムスのウエストを緩め、性急に手を突っ込んだ。

 

「...チャンミン、びしょびしょだぞ?」

 

「そんなっ...言わないでっ...」

 

いつまでも目を背けているわけにはいかないと、引っ張り出した熱々のそれを見下ろした。

俺は今、ナマで他人のブツをつかんでいる!

まじまじと観察する目の俺に、大いに恥じ入った風のチャンミンは茹でダコみたいになっている。

萎えるどころか、意味のわからない興奮と感動で満たされていた。

俺のボトムスから、俺のものを引きずり出すチャンミンの手の動き。

そしてチャンミンの手の中におさまった俺のブツ。

しばしの間、俺たちは互いのブツを見下ろしていた。

...こいつらを、どうすればいい?

勢いでむき出しにしたのはいいけれど...。

顔を上げ、さらにしばしの間、俺たちは見つめ合う。

そして、唇を重ねて、べたべたのねちょねちょなキスに没頭した。

ひとしきりキスを交わし合ったのち、再び見つめ合う。

次は、互いにしごきあいながら、交互の舌を吸い合った。

 

「はあはあはあはあ...」

 

その後は、抱きしめ合って、互いのブツ同士をこすりつけ合った。

俺とチャンミンの下腹にサンドされたブツが、頭を並べている光景が...初めての光景で、頭が沸騰しそうだった。

...凄い、凄いんだけど!

チャンミンのブツに手を伸ばそうとしたら、「待って」と彼に制された。

チャンミンは俺から身体を離し、部屋の片隅に置いたバッグの中身を漁っている。

バッグの傍らにしゃがむ広い背中と、脱ぎかけたボトムスから覗く半ケツを見守った。

 

「これ」

 

チャンミンは勢いよくベッドに飛び乗った。

チャンミンが手にしたもの...しかも、6個繋がったままのもの...に、俺はぎょっとする。

 

「『これ』って...え?

どうするつもり?」

 

「付けないと...」

 

チャンミンは開封したラテックス製のそれを、自身のブツに装着している。

 

「待て...なんのために付けるんだよ?」

 

と言った後に、「しごきあうにしても病気が気になるのかな。それとも、シーツを汚してしまうのを防ぎたいのかな」と考えていると...。

 

「そっか!」

 

チャンミンは大きな声を出し、我に返ったようだった。

 

「ユノは女の子じゃなかったんだ!」なんて言うんだ。

 

どうやら、テンパっていたらしい。

そこで俺は初めて気づいた。

2本並んだブツの行き先について...。

透明の薄膜にラップされたチャンミンのブツ...俺のには負けるが、そこそこのサイズ...を見、同様に斜め上を向いたままの自身のブツを見た。

チャンミンと絡み合っている間、「この先、どうすればいいんだ?」と困惑していたのも、実のところ、「こうなっちゃうしかないのか?」と答えが出てしまうのが怖かったのだ。

俺の知識なんて、適当に聞きかじったものに過ぎず、『アソコに挿れるしかないのか!』としか結論付けられないのだ。

互いのブツをしごきあったり舐め合うのも十分、えっちの範疇に入るのに、どうしても『挿入』にこだわってしまうのだ。

これで何度目になるのか、俺たちは見つめ合い、戸惑い..つまり、怖気付いてしまい... 結局キスし合うしかなかったのだ。

 

(つづく)