宴会場は中だるみの様子で、お見合いパーティ形式の席割りも見事に乱れ、皆思い思いの席で飲み食いしている。
泣き上戸の上司を慰める者や、説教する上司と喧嘩腰にやり合っている者、派遣されたホストと円座になってゲーム中の者、ひとり手酌の者、酒の場でコミック本を読んでいる者...。
人数を数えてみると、全員揃っている。
チャンミンの顔を見るなり、「実行委員!余興は?」の催促の声がかかった。
疲れのせいか、喧騒と俺の意識が乖離していて、時折あがる笑い声も現実感が乏しく聞こえる。
SAの男子トイレでのキスが、遠い過去に思われた。
ああ、早く静かなところでのんびりしたい。
心の声がチャンミンに伝わったのだろうか。
チャンミンは手を叩いて皆の注目を集めると、「くじ引きのお時間が参りました!」声を張り上げた。
宴会はとっととお開きにして、ここから解放されたい。
旅のしおりによると、本来ならマジックショーとミニゲーム(座布団ツムツム、河童のお皿で玉運びレース)を間に挟むのだが、足取りおぼつかない者率の高さと、時間もおしてきていることから省略することにしたようだ。
会場の隅に置かれたテーブルには、目録引換券が並ぶだけで、持ちかさばる景品の姿はない。
荷物を増やしたらいけないという、チャンミン幹事の図らいだろう。
・
くじ引き...これがチャンミンが実行委員の権力を乱用した3例目だ。
ガラガラの玉を忘れてきたせいで、余興のハイライトだったビンゴゲームがくじ引きになってしまったのだ。
ハンドメイド感たっぷりのくじ引き棒は割りばし製。
マジックペンで線が引いてあり、5本なら5等賞、1本なら1等賞。
無地なら残念賞で、一応空くじナシだ。
(背中を丸めてコツコツと、1本1本割りばしにペンで印を付けるチャンミンの後ろ姿を想像して、萌えてしまう俺は重症か?)
「引く順番は、僕の隣の人からです。
はい、トップバッターはユンホさん」
と、俺の目前にずいっと、割りばしの束が差し出された。
「俺?
一番でいいの?」
適当に選んだ一本を摘まんで引こうとしたら...。
「ああっ!」
チャンミンの大声に、俺はとび上がった。
「...なんだよ?」
「いえいえ、思い出したことがあっただけです。
さささ、お気になさらず、ちゃちゃっと引いてください」
首を傾げながら、適当に選んだ1本を引き出そうとした...。
したが...抜けない。
チャンミンが力いっぱい握りしめているせいで、抜けそうにないのだ。
「チャンミン!」
「......」
「力を緩めろよ!
おいっ...。
?
......ん?」
1本だけ飛び出ている。
早く引けと、チャンミンは顎をしゃくっている。
「これ?」と、視線で問いかける。
チャンミンはこくりと頷いた。
「ズルだろ?」
チャンミンはこくりと頷いた。
(チャンミンよ...職権乱用過ぎないか?)
俺たちはたっぷり10秒間、見つめ合った。
チャンミンの気迫ある眼差しに負けて、俺は共犯の片棒を担がされた。
引いたものには4本の線があったから4等賞。
景品テーブルに目をやると、4等賞は目録引換券になっていた。
果たして景品はなんだろうか。
(つづく)
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