(28)会社員-愛欲の旅-

 

 

宴会場は中だるみの様子で、お見合いパーティ形式の席割りも見事に乱れ、皆思い思いの席で飲み食いしている。

 

泣き上戸の上司を慰める者や、説教する上司と喧嘩腰にやり合っている者、派遣されたホストと円座になってゲーム中の者、ひとり手酌の者、酒の場でコミック本を読んでいる者...。

 

人数を数えてみると、全員揃っている。

 

チャンミンの顔を見るなり、「実行委員!余興は?」の催促の声がかかった。

 

疲れのせいか、喧騒と俺の意識が乖離していて、時折あがる笑い声も現実感が乏しく聞こえる。

 

SAの男子トイレでのキスが、遠い過去に思われた。

 

ああ、早く静かなところでのんびりしたい。

 

心の声がチャンミンに伝わったのだろうか。

 

チャンミンは手を叩いて皆の注目を集めると、「くじ引きのお時間が参りました!」声を張り上げた。

 

宴会はとっととお開きにして、ここから解放されたい。

 

旅のしおりによると、本来ならマジックショーとミニゲーム(座布団ツムツム、河童のお皿で玉運びレース)を間に挟むのだが、足取りおぼつかない者率の高さと、時間もおしてきていることから省略することにしたようだ。

 

会場の隅に置かれたテーブルには、目録引換券が並ぶだけで、持ちかさばる景品の姿はない。

 

荷物を増やしたらいけないという、チャンミン幹事の図らいだろう。

 

 

くじ引き...これがチャンミンが実行委員の権力を乱用した3例目だ。

 

ガラガラの玉を忘れてきたせいで、余興のハイライトだったビンゴゲームがくじ引きになってしまったのだ。

 

ハンドメイド感たっぷりのくじ引き棒は割りばし製。

 

マジックペンで線が引いてあり、5本なら5等賞、1本なら1等賞。

 

無地なら残念賞で、一応空くじナシだ。

 

(背中を丸めてコツコツと、1本1本割りばしにペンで印を付けるチャンミンの後ろ姿を想像して、萌えてしまう俺は重症か?)

 

「引く順番は、僕の隣の人からです。

はい、トップバッターはユンホさん」

 

と、俺の目前にずいっと、割りばしの束が差し出された。

 

「俺?

一番でいいの?」

 

適当に選んだ一本を摘まんで引こうとしたら...。

 

「ああっ!」

 

チャンミンの大声に、俺はとび上がった。

 

「...なんだよ?」

 

「いえいえ、思い出したことがあっただけです。

さささ、お気になさらず、ちゃちゃっと引いてください」

 

首を傾げながら、適当に選んだ1本を引き出そうとした...。

 

したが...抜けない。

 

チャンミンが力いっぱい握りしめているせいで、抜けそうにないのだ。

 

「チャンミン!」

 

「......」

 

「力を緩めろよ!

おいっ...。

......ん?」

 

1本だけ飛び出ている。

 

早く引けと、チャンミンは顎をしゃくっている。

 

「これ?」と、視線で問いかける。

 

チャンミンはこくりと頷いた。

 

「ズルだろ?」

 

チャンミンはこくりと頷いた。

 

(チャンミンよ...職権乱用過ぎないか?)

 

俺たちはたっぷり10秒間、見つめ合った。

 

チャンミンの気迫ある眼差しに負けて、俺は共犯の片棒を担がされた。

 

引いたものには4本の線があったから4等賞。

 

景品テーブルに目をやると、4等賞は目録引換券になっていた。

 

果たして景品はなんだろうか。

 

 

(つづく)

 

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