(28)オトコの娘LOVEストーリー

 

~チャンミン~

 

ユノさんは数分以上、床にへたり込んだままだった。

よろつきながら立ち上がると、洗面所の方へ消えていった。

しばらくして、Tシャツの前と髪を濡らした姿で現れ、ふらふらと寝室へ消えていった。

 

「......」

 

僕はドアの隙間から、その一連をずーっと見守っていた。

女の子だと思っていた子が、男の証をくっ付けていた。

大大ショックだろう。

 

 

自分だったら、どう感じるだろうか想像してみた。

例えば。

女の子のつもりで仲良くしていた子が、実は男だった。

 

...う~ん。

 

びっくりはするけど、それまでより付き合いやすいと思ってしまうかな。

メイクや洋服を着こなすコツなんかを、参考にしちゃうかも。

その子に恋愛感情はないし、友達に過ぎないから、僕は僕、彼は彼、と切り離して付き合い続けられると思う。

お恥ずかしいことに僕はきちんとした恋愛をしたことがない。

あくまでも「僕だったらどう思うか?」の想像の範疇の話だ。

でも、僕が男だと分かって、かえって扱いやすくなるんじゃないかな?

女の子だからと気を遣わずに済むし、...なんて楽観的に考えちゃだめなのかな?

 

 

ユノさんの場合は事情が違うと思う。

今後、「僕への扱いをどうするか?」なんて大したことない。

僕が男だと見抜けなかった情けなさと、実は男なんだと訂正しなかった僕への怒り、からかわれ続けていた滑稽な自分に、腹を立てているだろう。

そのうち、僕の兄も共犯だと気づき、『妹』だと紹介した兄に、怒りの電話をかけると思う。

彼らの友情も終わってしまうかもしれない。

それだけは避けたい。

 

 

今すぐ謝らなくっちゃ。

悪気があって黙っていたわけじゃないことだけは、伝えなくっちゃ。

それから、この家を出て行かなくっちゃ。

 

 

コンコン。

ドアを控えめな力加減でノックした。

 

「ユノ、さん?」

 

返事がない。

もう一度、ノック。

 

「ユノさん」

 

返事がない。

ドアに耳を当て、中の気配をうかがう。

物音が全くしないことが、ユノさんの怒りみたいなものを表していると思った。

 

「あの...僕...」

僕はごくん、と喉を鳴らした。

「...ごめんなさい」

「......」

 

ドアノブに手をかけた。

 

「ユノさん、ドア開けてもいいですか?

入りますよ~」

一声かけてからドアを開け、素早く寝室の中へ滑り込んだ。

 

 

室内は真っ暗だった。

開けたままのドアから漏れるリビングの灯りで、ユノさんがベッドでうつ伏せになっているのが分かった。

 

「......」

 

僕が近寄っても、ぴくりともしない。

寝入っているのではなく、僕の気配に耳をそばだてているみたいだ。

多分...僕の弁解を聞きたいんだと思う。

だからこそ、僕はユノさんを放っておかないで、渦中の彼に突入していったのだ。

僕はベッド脇の床に正座をした。

 

「ユノさん」

「......」

 

「ユノさん!」

 

つんつん、と彼の肩をつついた。

 

「ねぇねぇ、ユノさん」

「......」

 

意固地になって知らんぷりを決め込むらしい。

くくく...と肩が揺れた。

 

(つづく)