(15)秘密の花園

 

 

2本の指が付け根まで挿ったところで、ユノはチャンミンの耳元で尋ねる。

 

「どう?」

 

「...っん...苦し...」

 

チャンミンはぎゅっと目をつむり、歯を食いしばっている。

 

ユノの首に回した腕にも、ユノの腰にからめた両脚にも力がこもっている。

 

チャンミンにしてみたら、肛門が裂けてしまうのではないかという恐怖と、腰の奥から広がる違和感...。

 

(これのどこが気持ちがいいんだろう。

女の子の膣内(なか)に挿れたことも、イッたこともないけれど...。

そもそもの話、僕の身体は『挿れる側』なんだ。

異物を受け入れるようには出来ていないんだ。

こんなこと...こんなこと...不自然だよ)

 

「痛いか?」

 

耳朶にかかるユノの熱い吐息。

 

いつもならぞくぞくと興奮を煽るものが、今はそれどころじゃないのだ。

 

激しく首を横に振って、そうっとまぶたを開く。

 

「痛くないけど...お尻が...いっぱいなの」

 

鼻先が触れ合わんばかりの距離に、逆光になったユノの顔があって、黒目がちの目が濡れたように光っている。

 

「いっぱい...ユノでいっぱい」

 

「!」

 

ユノの脳裏に、かつての彼女が『私の膣内(なか)が、ユノのでいっぱい』とかなんとか、漏らした言葉が浮かんでしまい、ユノはその記憶を飛ばす。

 

「2本の指なんて、初めてだよな?」

 

こくこくとチャンミンは頷く。

 

「怖いのか?」

 

こくこくとチャンミンは頷く。

 

「痛いことはしないから、安心しろ。

優しくするから」

 

(何を言ってんだ、俺?)

 

バージンだったかつての彼女に吐いた台詞にそっくりじゃないか、と思ってしまったから。

 

(あの時は、まず指で慣らして十分に濡らしてからやったんだっけ?)

 

指の付け根を絞めつける圧が強い。

 

(すげ...。

締まりがいいんだな...)

 

全身が硬直状態のチャンミンの緊張を解こうと、空いてる方の手をチャンミンの胸に置く。

 

すーっと首から下へと撫でおろす。

 

脇腹を通って胸へと戻る。

 

途中、手の平をくすぐる柔らかな突起を爪先で、ひっかくように刺激したら、

 

「あん」

 

(出た!

チャンミンの女っぽい声)

 

指の腹でチャンミンの乳首を円を描くように、転がす。

 

ユノの愛撫で、たちまち固く尖ってきた。

 

「あ...あん...あっ...」

 

ユノの肩下でチャンミンは喘ぐ。

 

(声が出ちゃう...あ...ムズムズして、痒いんじゃなくて...ちりちりして...股間に力がこもる...)

 

摘まんだ乳首を2本の指をこすり合わせるようにいじる。

 

「っあ...ん...駄目...駄目」

 

同時に、チャンミンの中に挿入したままの指をうごめかせる。

 

「ああ...あんっ」

 

(そうなんだよなぁ、チャンミンは乳首攻めが好きなんだ。

...女みたいだ...って思ったらダメか)

 

「や...駄目...そこ」

 

(なんだろ。

お尻の中が...うずうずして...。

何かが出ちゃいそうで...)

 

「駄目じゃないだろ?

イイんだろ?」

 

「だって...あんっ...両方は...駄目ぇ」

 

(お尻の中がおかしな感じになってるのに、おっぱいもいじられたら、僕はおかしくなってしまう)

 

「あ...あん」

 

(声が色っぽいんだけど。

待て。

チャンミンは男だ。

女みたいだと、思ったりしたら駄目だ)

 

「もっと動かして...いいか?」

 

「ダメ―!!!」

 

チャンミンの制止を無視して、乳首の愛撫はそのままに、埋めた2本の指を抜きさしする。

 

(チャンミンの直腸...じゃなくて内壁に押し当てたまま、ゆっくりと穴に向けて引く。

んでもって、指を拡げるーの...)

 

「あーーーー!」

 

ユノの耳元でチャンミンは叫んでしまい、ユノは一瞬顔をゆがめたが、「ここで『うるさい』 なんて言ったら、チャンミンが可哀想だ」と口をつぐむ。

 

(今のチャンミンは、未知なる世界に突入しようとしてるんだ。

ひるませたら駄目だ。

チャンミン、俺に任せろ。

気持ちよくさせてやるからな)

 

「ユノっ...駄目...拡げるの駄目っ...」

 

チャンミンの腰がプルプルと小刻みに震えている。

 

「チャンミン、いい子だから我慢してろ。

太さに慣れないと。

初めてだろ?」

 

ユノは乳首の愛撫を止め、その手でチャンミンの尻を撫ぜてやる。

 

「気持ちよくないよ!

全然。

あっ!

ユノ!

指をぐいーっとするの駄目ぇ!」

 

ユノは円を描くようにチャンミンの中をかき回した末、その指をぐいっと折り曲げた。

 

「あうっ!」

 

チャンミンの身体が跳ねる。

 

「痛かったか?」

 

「違っ...びっくりしただけ」

 

ユノは、チャンミンの唇の端からたらりと垂れた唾液を、ぺろりと舐めとってやった。

 

ユノとちらっと目を合わせると、チャンミンはかすかに笑みを浮かべ、そのうっとりとした表情にユノの胸は熱くなる。

 

(か...可愛い)

 

乱れた前髪で直線的な眉が隠れ、涙が潤んだ目元が幼い印象を強めた。

 

目尻も鼻先も赤くして、噛みしめていたせいで唇も赤く、唾液で光っている。

 

「チャンミン、腰を上げて」

 

チャンミンの腰が、さっきの拍子で下がってしまい、無理な姿勢になって指が抜けそうだった。

 

「何かが...出そう...」

 

ぽつりとチャンミンはつぶやいた。

 

「えっ!?」

 

「出そう...」

 

「ウンコか!?

ウンコしたいのか?」

 

「ばかぁ!!

違うよ!!」

 

(お尻の奥が...僕のタマの後ろがぞわぞわして...変な感じ。

何かが出そうな...変な感じ。

そうか!

...これが、気持ちいいってことなのかな)

 

「それならよかった」

 

ユノがホッと息をつくのを見たチャンミンは、

 

「何だよ。

僕のお尻は汚いってこと!?」

 

と、眉根を寄せてユノを睨みつけた。

 

「違うって。

もしウンコがしたいのなら、俺の指で栓をしてるわけにはいかないだろ?

出したいだろ?」

 

「...そんなんじゃない」

 

「エッチの途中だったんだぞ?

エッチが中断するんだぞ?

チャンミンがトイレに行ってる間、寂しいじゃないか」

 

「ユノ...」

 

「一旦、指抜くぞ?」

 

「...駄目。

ユノ...好き」

 

チャンミンはユノの頬を両手で包むと、そっと唇を押し当てた。

 

「!」

 

(頼むよチャンミン。

そういう可愛いことをするなって)

 

「いいよ、続けて。

ウンチがしたいわけじゃないんだ。

大丈夫、変な感じがしただけ」

 

「オッケー」

 

指を抜きさししているうちに、チャンミンの中の構造が分かりかけてきたユノだった。

 

「指をもう一回、挿れるぞ?」

 

「うん」

 

組み敷かれたチャンミンは、この時にはうっすらとまぶたを開け、その瞳は潤んでいる。

 

(熱い。

チャンミンの中が熱い。

すげ...。

やっぱり、男相手でもセックスが出来るんだ)

 

あるポイントを通過する際、チャンミンの肛門の締まりがよくなることにも気づいた。

 

(きつっ!

こんなに締め付けられたら、俺のちんちんがもげるかもしれない...)

 

「やっ...ユノ...それ、駄目...」

 

軽く開いた口から、熱い吐息と共に艶めかしい声を漏らすチャンミン。

 

「何これ...やだ...変な感じ...」

 

これ以上は挿らない程、奥底へ差し込んで、指先で、曲げた関節でぬらめく粘膜を刺激する。

 

抜き刺しするスピードも速め、こすりあげる刺激も強めた。

 

(ここをもっといじってやると...いいハズ)

 

「ひゃうん!」

 

チャンミンの腰が痙攣する。

 

(当たりだ。

もうちょっとグリグリして...)

 

「あ、ああーーっ」

 

チャンミンの顎が上がり、ユノの指の動きに合わせて、だらしなく開いた口から嬌声が漏れる。

 

「ひゃっ...あっ...」

 

「ん?」

 

見下ろすと、下腹に触れる濡れたモノ...。

 

(ダメダメと言いつつ、ちゃんと勃ってるじゃないか)

 

「やだ...そこぉ...

おかしくなるぅ...ひゃっ」

 

「チャンミン...。

それって感じてるんだって」

 

「そう...なの?」

 

「そうさ」と囁いて、ユノはチャンミンの耳たぶを咥えた。

 

(まずい...。

チャンミンの構造を探求するあまり、真面目な気持ちになってしまった。

エロい気分が消えてしまったぞ)

 

自身のモノを見下ろして、心中でたらりと冷や汗が流れた。

 

(膨張率10%未満?

探り探りの牛の直腸検査みたいだったからなぁ。

よし!

今日はここまでにしておこう)

 

指を抜き去る際も、チャンミンの腰が跳ねる。

 

「あぅっ!」

 

(そう、そこそこ。

抜く時が...たまらないんだ)

 

ユノは腰にからみついたチャンミンの膝に手をかけ、マットレスに落とす。

 

「え!?」

 

「今日のところはこの辺にしとこう」

 

ユノは濡れた指をティッシュペーパーで拭きながら宣言した。

 

「え...?」

 

仰向けになったままのチャンミンは、ユノの言葉に跳ね起きた。

 

「なんで!?」

 

「まだ足りない?」

 

ユノは余裕ある表情を作って、冗談めかして言う。

 

(俺のモノが萎えてしまったから、とは言えない...)

 

「......」

 

口をへの字にゆがめたチャンミンに、くすりとしたユノは腕を伸ばして、くしゃくしゃと頭を撫ぜる。

 

「お前のケツの穴が心配なだけ。

慌てずにいこうぜ」

 

「う...ん」

 

「よかったか?」

 

「うん...」

 

「ユノ...ありがと」

 

「何が?」

 

「優しくしてくれて」

 

「!」

 

(かーーーー!

チャンミン...頼むから可愛いことを言ってくれるなって。

初体験を済ませた女の子の台詞みたいなことを、言うなって!)

 

「どしたの?」

 

「何でもないよ。

チャンミン、よく頑張ったな」

 

「まーね。

一応、僕も練習してきたからね」

 

チャンミンは鼻にしわを寄せて笑い、それが心からの笑顔だ知っているユノは、優しい眼差しでチャンミンを見つめるのだった。

 

「よかったねー。

1歩どころか、100歩くらい前進したよね」

 

「ああ」

 

「これで『本番』も大丈夫だね。

心配し過ぎてただけみたい。

実はたいしたことなかったね」

 

チャンミンは得意そうにそう言うと、ベッド下に散らばった服を拾い集め始めた。

 

 


 

 

 

ぷっ。

 

 

(『ぷっ』...?)

 

 

「......」

 

 

続けて、

 

 

ぷぷっ。

 

 

 

「......」

 

 

ちらっと横を向くと、ベッドの下へ腕を伸ばす姿勢のまま一時停止したチャンミン。

 

 

(わーーーー!!

 

おならがでちゃった!

 

おならをしちゃった!

 

空気が入っちゃったんだ。

 

ユノの指で刺激されて、僕の腸がびっくりしてるんだ。

 

どうしよう...!

 

聞かれたよね。

 

あんなに大きな音だったから。

 

恥ずかしい!)

 

ぼっと汗が噴き出てくるのがはっきりと分かる程、全身がカッと熱くなる。

 

 

一方、ユノといえば、

 

(今の...おなら...か!?

チャンミン...おならしちゃったか!

 

出るだろうな、指を出し挿れしたんだから。

ぐりぐりケツの中を、刺激したんだから。

 

おならが出ちゃったか!

面白い。

非常に面白い。

普段だったら、腹を抱えて大爆笑ものだ。

 

だが、今は絶対に笑ったらいけない。

笑いを堪えろ!

 

アナルバージンを捧げたばかりなんだ(未だ、ブツを突っ込んだわけじゃないけど)。

ナイーブなチャンミンを傷つけるわけにはいかない!)

 

「チャ、チャンミン」

 

「な、何?」

 

「来週、牧場実習だろ?」

 

「そうだね。

荷造りはどんな感じ?」

 

ユノとチャンミンが在籍する科では、夏休みの後半を利用しての牧場実習がある。

 

現場での実習を通して畜産家の仕事を体験する、遊び要素ほぼゼロの過酷なプログラムなのだ。

 

「俺はバッチリだ。

そうだ!

つなぎの洗い替えは買ったか?」

 

「うん。

長靴も新しいのを買わなくちゃね」

 

「だよなー。

汚い長靴をスーツケースに入れて行きたくないよな」

 

「うん」

 

「......」

 

「......」

 

(気まずい...。

やっぱり笑ってやればよかったかな)

 

表情を見られないよう、ユノは慌ててTシャツに腕を通す。

 

「ユノったら、パンツを先に履きなよ」

 

チャンミンが放り投げたボクサーパンツをキャッチして、「そうだな」ともごもごとつぶやいた。

 

(この気まずさを解くには...どうすればいい?

今さら『おならしただろ』なんて指摘して笑う訳にもいかない。

...そうだ!)

 

ユノの頭にいい考えがひらめいて、口元がにやりと緩んでしまう。

 

チャンミンがその笑みを見逃すはずはなかった。

 

(ユノがよからぬ企みが浮かんだ時の顔だ!

僕に変なこと...エッチなことをさせるつもりだ!)

 

「なあ、チャンミン」

 

「な、なんだよ?」

 

ユノは下着を履きかけたチャンミンの腕を制した。

 

「長靴、まだ買ってないよな?」

 

「週末にバイト代がはいるから、その時に生協で買うつもりでいるよ」

 

「売り切れてるかもよ」

 

「えっ!?」

 

「だって、学科の奴らみんな、同じこと考えてるって。

長靴を買おうって。

ほら、白衣の時もそうだったじゃん。

売り切れちゃってさ」

 

「確かに...。

どうしよう...」

 

「そんなこともあろうかと思って...」

 

ユノはクローゼットの扉を開けて、中から箱を取り出す。

 

ごたごたと物を押し込んだ棚から、コートや漫画本やらが落下してユノの肩に当たる。

 

「チャンミンの分も買ってきたんだ」

 

じゃーんとばかり、箱の中身を披露する。

 

「ユノ!」

 

ユノの優しさに感動したチャンミンは、両手を合わせた。

 

「でさ、サイズが合うかどうか心配でさ。

ちょっと履いてみて」

 

そう言ってユノは、チャンミンの手を引いて立ち上がらせた。

 

フローリングの床に置かれた新品の長靴に、チャンミンは足を入れる。

 

「あ...。

ぴったり」

 

「!!!!」

 

ユノは長靴を履いたチャンミンの姿に、卒倒しそうだった。

 

 

(やべー!

 

エロい!

 

滅茶苦茶エロい!

 

まっぱに長靴は...エロ過ぎる!)

 

 

「ユノ、ありがと」

 

足元を見下ろしていたチャンミンは、弾ける笑顔でユノを見ると...。

 

「ん?」

 

片手で口を覆って、笑いを堪えているユノが...。

 

「わっ!!」

 

チャンミンは、全裸で長靴を履いている自分に気付く。

 

慌てて両手で股間を隠す仕草も、ユノにしてみたら欲情を煽る要素になってしまうのだ。

 

チャンミンは、ぎらぎらと妖しい光をたたえたユノの目から視線を外せずにいた。

 

ごくりとのどが鳴った。

 

(つづく)

 

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(14)秘密の花園

 

 

ユノはチャンミンの尻から目が離せない。

 

噴き出すのを必死で堪える。

 

(ぷぷーっ!

チャンミン!

可愛いことしてくれるなって!

...しかし...指摘しづらいな)

 

ユノは、「シャワーを浴びた方が早いかな」と内腿に垂れたローションを拭くチャンミンを眺めていた。

 

(赤面するチャンミンを見てみたい。

さぞかし、可愛い反応を見せてくれるだろう。

『ユノ!ひどいよ!』と、滅茶苦茶怒るだろうけどな)

 

「タマがぬるぬるする!」

 

袋を持ち上げて股間を覗き込んでいたチャンミンは、無言でいるユノに気付いて、

 

「...ん?

ユノ、どうしたの?」

 

緩む顔を必死で真顔に保とうとしていたユノだった。

 

(チャンミンをこのまま放置しているのは、可哀想だ)

 

「チャンミン...すまん。

もう一回、ワンコちゃんになってくれ」

 

「えー!

今日はこれくらいでいいよ。

指も挿ったことだし、一歩前進したよね」

 

「いや、そうじゃない」

 

そう言って、ユノはチャンミンの背を押して四つん這いにさせる。

 

「ヤダなぁ。

気持ちよくもなんともないんだから。

1本だけにしてよね」

 

拒否しながらも、結局はユノの言いなりになるチャンミンに、愛おしい想いが溢れそうになるが、今は可笑しくて仕方ないのだ。

 

「チャンミン。

ケツの穴は大丈夫か?」

 

「う...ん。

まだ違和感はあるけど。

何かが入ったままな感じがするんだ」

 

「ケツを触ってみ」

 

ユノはチャンミンの手首をつかんで、尻の方へ導いてやる。

 

「!!!!」

「ぷぷーっ!」

 

噴き出すのを堪えるのも限界だった。

 

「何これ!

何かがはみ出してる!」

 

チャンミンは跳ね起きた。

 

恐る恐る尻をまさぐるとやはり...柔らかい何かが指先に触れる。

 

「嘘...!?

やだぁ!!

お尻から何かが出ちゃった?」

 

唇を噛みしめて、助けを乞うようにユノを見る目は潤んでいる。

 

(脱腸!?)

 

その思いつきに、チャンミンはささーっと青ざめた。

 

ユノは深刻そうに顔をこわばらせるチャンミンの肩を抱いて、耳元で囁いた。

 

「ごめんな、チャンミン。

これ...コンドームだよ」

 

「えええーーー!!」

 

「チャンミンが蹴りを入れただろ?

その時に、指が抜けちゃってさ」

 

「酷い!

酷いよぉ!」

 

チャンミンはユノを突き飛ばした。

 

そして、手探りでコンドームを引っ張るが、伸びるばかりで簡単には抜けてくれない。

 

「っうん...」

 

引っ張るたび、ぞくぞくと慣れない感覚が肛門から走って、力をこめられない。

 

「やっ...抜けない...。

ユノぉ、これ、ヤダ...取ってよ!」

 

後ろを振り向くチャンミンの目から、ぽろぽろと涙が溢れてきた。

 

「お願い...」

 

「俺にケツを任せてくれるか?」

 

チャンミンは勢いよく頷く。

 

仕方がないな、と大きく息を吐くと、ユノはチャンミンを再び四つん這いにさせた。

 

「どれどれ」

 

ユノは突き出されたチャンミンの尻の前に、あぐらをかく。

 

「リラックスして、ケツの力を抜けよ?」

 

「うん...」

 

チャンミンはずずっと鼻をすすり、こくこくと頷いた。

 

(お尻の穴の力を抜くって、どうやればいいんだろ)

 

緊張を解くように、ゆっくりと深呼吸をした。

 

「ひーふー、ひーふー」

 

(そういえば...冬に牛の出産実習があるんだっけ。

チャンミンのケツからぶら下がるゴム...羊膜に見えてしまうぜ。

...ってことを言ったら...。

止めとこう、どれだけチャンミンが怒るか予想がつかない)

 

チャンミンはがっくりと項垂れて、両手はシーツを固く握りしめている。

 

チャンミンの肛門からぶら下がる件のモノを摘まむ。

 

「んっ...」

 

そして、ツンツンと軽く引っ張ってみる。

 

「あぅっ...あぅっ...!」

 

ユノが与える刺激に、どうしても声が漏れてしまう。

 

背筋がぞくぞくとするのだ。

 

(挿れるより...出す方が...なんだか、たまらない...)

 

「あん...」

 

引っ張る度漏らすチャンミンの声が、ユノの耳には甘い響きに聞こえる。

 

「んっ...」

 

ユノは、チャンミンをあっさりと解放するつもりなんてなかった。

 

「おかしいなぁ...抜けないぞ。

どうするチャンミン。

こりゃあ、病院行きだぞ」

 

「えええぇぇぇぇ!?」

 

チャンミンをからかいたい気持ちが抑えられないユノだった。

 

「そんなぁ...恥ずかしすぎる!

ホントに抜けないの?」

 

チャンミンの脳裏に、処置室の固いベッドの上で横になって、尻をさらす姿が浮かんだ。

 

(...最悪だ...!)

 

「俺に任せろって。

力いっぱい引っ張ってもいいか?」

 

「うん」

 

チャンミンはぎゅっと目をつむった。

 

「行くぞ?」

 

(この辺で勘弁してやらないと、可哀想だ)

 

ユノはしっかりとコンドームの端をつかむが、ローションのぬるつきで手が滑りそうだ。

 

「よいしょっと」

 

人差し指にその端を巻き付けて、先ほどより強い力で引っ張る。

 

「んんーっ」

 

ゴムに引きずられてチャンミンのピンク色の縁がのぞいて、ユノの喉はごくりと鳴る。

 

(男のケツの穴に興奮するなんて...俺もここまで来たか...)

 

「んー!」

 

ユノの中に再び、チャンミンをいじめたい欲が湧いてきた。

 

「あとちょっと...」と言いながら、十分伸びきった辺りで手を離してしまったのだ。

 

「あぅっ!!!」

 

張力をたくわえたコンドームは、チャンミンの尻をパチーンと叩く。

 

チャンミンはびっくり仰天、頭からマットレスに突っ伏した。

 

「抜けた?」

 

「......」

 

尻に手を回すと、例のものは未だぶら下がっている。

 

「ユノぉ、まだあるし...」

 

チャンミンはむくっと、両手で抱きしめた枕から顔を上げた。

 

くっくっくっという声に、ばっと振り向くと...。

 

「あー!!!」

 

ユノが腹を抱えて転がっている。

 

「チャンミン...すまん...」

 

チャンミンはからかわれていたことに気付いた。

 

「酷い!

酷いよ!

ふざけてないで...僕は真剣なんだよ?」

 

「アーッハッハハハ!!!」

 

(チャンミンが...チャンミンが可愛すぎて...苦しい)

 

片手を振り上げてユノを叩こうとするフリをするが、所詮フリで、ユノの両肩を持って揺さぶった。

 

「酷いよ!

うっうっうっ」

 

眉を下げたチャンミンの顔がゆがみ、丸い両目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちてくる。

 

「...チャンミン...」

 

「ユノなんて...っ...嫌いだ!」

 

枕に顔を埋めて嗚咽を漏らす姿に、「やり過ぎたな」とユノは反省する。

 

「...覚悟を決めてきたのにっ...。

それなのに...っく...。

僕を馬鹿にするなんてっ...っ...っ...」

 

「ごめんな?

チャンミン、ごめん」

 

謝りながらチャンミンの背中をさするが、「あっちいけ!」とその手を払いのけられてしまった。

 

(全裸で身体を丸めて泣く男...。

尻の方に視線をやると...やめておこう...。

笑えてしまうから)

 

ユノはため息をつき、ポリポリと首筋をかき、天井を仰いだ。

 

(俺が悪い。

ちとふざけ過ぎたからな)

 

「こっちに来い...チャンミン」

 

ユノはチャンミンの両肩に手をかけると、力任せに自身の方へ引き寄せた。

 

「あ!」

 

互いの筋骨たくましい肩同士がぶつかった。

 

「ごめんな...」

 

涙と鼻水でぐしゃぐしゃのチャンミンの頭を、ガシガシと撫ぜてやる。

 

「お前が可愛すぎたんだ」

 

「......」

 

チャンミンは次々と溢れる涙を止めようと、ユノの肩に目頭を押しつけた。

 

「ごめんな、ふざけて。

...駄目だなぁ、俺」

 

「うっ...っ...うっ...」

 

「なんでも面白がっちゃってさ。

ごめんな、チャンミン」

 

「......」

 

「好きな子には意地悪しちゃうんだよなぁ。

好きな気持ちの裏返しなんだ。

チャンミン、ごめんな?」

 

だらんと身体の脇に落としていたチャンミンの両腕が、ユノの背中に回される。

 

「...許す」

 

「ん?」

 

「許す」

 

ぼそっとした言い方が不貞腐れた風で、ユノはふっと口元を緩めた。

 

「機嫌は直ったか?」

 

こくんとチャンミンは頷く。

 

「チャンミン、好きだよ」

 

ユノはチャンミンの頭に腕を巻き付けて、抱きかかえた。

 

「ユノ...苦しい...」

 

そして、チャンミンの尻に手を伸ばして件のものをつかむと、素早く引っ張った。

 

「ひゃうん!!」

 

突然のことで驚いたのと、未知の感覚にチャンミンの身体は大きく跳ねたが、ユノに力強く頭をタックルされていたため、ユノの胸にしがみつくしかなかった。

 

「ほれ。

取れたぞ」

 

そう言って、チャンミンの鼻先で抜けたばかりのコンドームを揺らした。

 

「びっくりした...。

なんだよ...簡単に取れたじゃないか!」

 

チャンミンの羞恥を煽るように、しつこくコンドームを揺らすユノの手を押しのけた。

 

「ちょっと、ユノ!

恥ずかしいから、それ、捨ててよ!」

 

「はははっ」と笑って、ユノはそれをゴミ箱の方へ放り投げ、「おっと、外したか...まいっか」とつぶやくと、チャンミンの方を向き直った。

 

「チャンミン...」

 

左手でチャンミンの頬を包み、右手で前髪をかきあげた。

 

チャンミンはユノにされるがまま、顔を預けて、ユノの涼し気な眼差しに見惚れていた。

 

その表情は先ほどのふざけた空気はかき消え、熱っぽく色っぽい光をたたえた瞳に、チャンミンの顔が映っている。

 

ほんの数ミリ伏し目にした瞬間、斜めに傾けられたユノの唇がチャンミンのそれを塞ぐ。

 

最初は唇の柔らかさを確かめるためのキス。

 

触れて、押しつけて、離して...また触れて。

 

「嫌い、って言って...ごめん」

 

チャンミンはキスの隙間でつぶやく。

 

「いいって」

 

ユノは「ごめん」と紡ぐチャンミンの唇を、押しかぶせるように塞ぐ。

 

チャンミンもユノの下唇にしゃぶりつく。

 

そして、きつめに吸い付く。

 

「...っふ」

 

チャンミンの歯茎をユノの舌がなぞり、顎の力が抜けた隙にぬるりと熱いものが侵入する。

 

唇を離すと二人の間に透明な糸がひき、チャンミンはすかさずそれを舐めとる。

 

上顎をこすりあげられて、チャンミンの喉からかすれた呻きが漏れた。

 

「...んっ...ふっ...ん」

 

半開きになって潤んだチャンミンの目に、彼の長いまつ毛が繊細な影を落とす。

 

ユノの背中に回していた手が、彼の両頬に移された。

 

エアコンの効いた部屋は、寒いくらいだったが、チャンミンの手は熱く、ユノの頬も火照っている。

 

「っん...っん...」

 

首に巻き付けたユノの腕に力がこもり、チャンミンの身体の力が抜ける。

 

二人の身体は、ベッドに倒れこむまでの一連の流れを覚えている。

 

チャンミンを組み敷いたユノは、チャンミンの両膝を割った。

 

ユノの行為に驚いたチャンミンは、半身を起こそうとするがユノに腰骨を押さえ込まれてしまう。

 

「...っなに?

ユノっ...何す...?」

 

抗議の声を上げるチャンミンの口を、塞いでしまう。

 

チャンミンの膝の裏に腕を通すと、高く持ち上げた。

 

「ユノ!

ヤダっ...ヤダ...」

 

「いいから。

俺の腰を抱えて」

 

「えっ...?

えっ?」

 

「サルの赤ちゃんみたいに。

俺にしがみついて」

 

チャンミンは言われるがまま、ユノの腰に両脚を絡めた。

 

「何これ?

恥ずかしい...!」

 

「もっとケツを上げて」

 

「これ以上は...腰が痛い...」

 

「きついか?」

 

ぎくしゃくとしたチャンミンの動きを見て、

 

(女の子と男の身体って、造りが違うんだな。

女の子って、関節が柔らかいのかな)

 

と、ユノは思う。

 

「もしかしてっ...今から、『本番』?」

 

「いいや」

 

ふっと笑ったユノは、枕もとのボトルのキャップをくわえると、素早く開封して中身を手の平にこぼす。

 

互いの股間がこすれ合っている辺りに指を滑らす。

 

「...ひゃっ...」

 

そして、チャンミンの中心線に沿って指を這わせる。

 

目で確認はできず手探りだが「この辺り」と見当をつけた箇所に、指先を突き立てた。

 

「んぐっ...」

 

指の腹でクニクニと小刻みに揺らしながら、ユノはチャンミンの耳元で「好きだよ」と囁く。

 

熱い吐息がかかり、チャンミンの首筋に鳥肌がたつ。

 

「チャンミン...俺にキスして?」

 

「っん...」

 

真上に迫るユノの唇に、チャンミンは吸い付く。

 

ユノの指先の下の緊張が解けてきた。

 

唇を離して、チャンミンの耳たぶを咥えた。

 

舌で耳の凹凸をたどると、チャンミンの甘い喘ぎがこぼれる。

 

ユノの人差し指がつるりと飲み込まれていく。

 

「んんっ...」

 

軽く引いて、もっと深くへ指を沈めていく。

 

温かく、ねっとりと柔らかいもので、ユノの指はみっちりと包み込まれた。

 

この感触だけで、ユノの下腹部に血流が集まって、重ったるくうずくのだった。

 

小さく弧を描いてみると、ユノの腹の下でチャンミンの腰が小刻みに震えた。

 

「ひゃ...」

 

付け根まで入ったのを確かめると、ゆっくりと指を引き抜く。

 

チャンミンの腹底に、ゾクゾクとした震えが走る。

 

「ダメ...抜くの...ダメ...」

 

ユノは口を半開きにしたチャンミンの額に、唇を押し当てた。

 

そして、揃えた中指と薬指をチャンミンの繊細なチャンミンの入り口に当てる。

 

じれったくなるほどゆっくり押し広げながら、その2本をチャンミンの中に沈めていった。

 

「痛いか?」

 

「う...ううん...。

苦しい...やっ...

変な感じ...」

 

「やめようか?」

 

「やっ...」

 

「どっちだよ?」

 

「やめないで...」

 

こういう瞬間に、ユノの心はチャンミンにさらわれるのだった。

 

 

(つづく)

 

 

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(13)秘密の花園

 

~ユノ~

 

 

木曜日。

 

いよいよ俺たちは、禁断の扉を開ける。

 

とっくの前に扉は開けてるんだけど、今度こそは本命の、本番の、最後のダンジョンへの扉だ。

 

手洗いから戻ったチャンミンは、ベッドに腰掛ける俺の足元に膝を折って座る。

 

「さて...」

 

太ももに置いたチャンミンのこぶしが震えている。

 

今日の実習の間中、チャンミンの様子がおかしかった。

 

実験の一番手を名乗り出たり、普段口もきかないメンバーと軽口をたたいたり(その子は驚いてた)。

 

トイレに立った俺の後をついて来たかと思うと、いきなり後ろからタックルしてきて、吸引力たっぷりなキスを俺の頬にしてきた。

 

「どうした?

今日のお前...おかしいぞ?」

 

誰かに見られやしないかと、チャンミンの顔を押しやりながら尋ねたら、「ユノこそ、変だよ」と口を尖らせた。

 

「僕と目を合わさないし、黙ってるし、そっけないし...」

 

「ごめんな」

 

俺には分かっている。

 

2人とも緊張しているんだ。

 

チャンミンの方はカラ元気で、俺の方はだんまり君になって。

 

今夜、いよいよ『その時』を迎えるあって、緊張しているのだ。

 

男相手は...初めてだから。

 

チャンミンの方だって同様だ。

 

なぜなら、俺たちは前振りが長すぎたせいで、不安ばかり育ててしまった。

 

こんなことならあの日、ロッカールームで勢いでやってしまえばよかった。

 

「僕の方は準備オッケーだよ」

 

「?」

 

着衣のままのチャンミンに、問う視線を送ると、

 

「えーっと、お尻の中はきれいにしてきました」

 

「それで、トイレが長かったわけか!」

 

てっきり緊張のあまり腹を壊しているのかと思った。

 

「まーね。

それに、昨日から何も食べていないんだ」

 

「なんで!?」

 

大きな声を出したら、チャンミンはやれやれ、といった感じに肩をすくめた。

 

「お腹の中を空っぽにするためじゃないか」

 

「そこまでしなくたって...」

 

やることが極端なんだよ。

 

「最初が肝心だよ。

汚い自分なんか見せたくないし」

 

「大好きなチャンミンのことを汚いって思う訳ないだろう?」

 

「ううん!

僕が嫌なんだよ。

好きな人には、少しでもきれいでありたい、と思うものじゃないかな?」

 

まるで乙女みたいな台詞を吐くんだな...、それから、チャンミンは、いつものことだがちょっとズレてる。

 

なかなか次のステップへ進めないのも、チャンミンが怖がりなせいにしていたけど、半分はそうじゃない。

 

これまで何度も、チャンミンを冷やかしたり、煽ったり、脅したりしていたのも、俺自身の躊躇がさせたものだったんだ。

 

もう後戻りできなくなる。

 

それが怖い。

 

俺をじぃっと見上げる幼い目元と、がっちりとした顎、アンバランスさ。

 

こんなに美しい生き物を手に入れてしまったら、これまで以上に夢中になってしまうこと必須だ。

 

牛の腰角越しで目が合った時、本能に近い部分で察知したこと...こいつとは相性がよさそうだ。

 

のめり込みそうで、怖かった。

 

「...ユノ、キスして」

 

無言の俺の頬が、チャンミンの手の平で包まれた。

 

細くて骨っぽい、ちょっとヒンヤリとした指が、熱い俺の頬に心地よかった。

 

俺たちは恋人同士なんだ。

 

チャンミンから幼さを感じてしまう理由が分かった。

 

俺をじぃっと真っ直ぐ見つめるその目が、丸くて黒目と白目の境がくっきりとしていて、純真そのものだから。

 

マスクで精悍な顔下を隠すと、目の印象が強まって...チャンミンにこれを言うと、不貞腐れるけど...女子っぽい。

 

構内を歩くどの女子たちより、可愛い(これも、チャンミンに言うと、俺の脚を踏む)。

 

チャンミンのおねだりに応える。

 

次第にキスは熱を帯びたものになってゆき、互いの服をむしり取るように脱がせ合う。

 

俺のシングルベッドにダイブする。

 

最後の1枚を脱がせると、横たわったチャンミンは俺に向かって両手を広げた。

 

とろんとした目で、「ユノ...」って声を出さずに唇だけで呼ぶ。

 

チャンミンにかじりつかれたまま、向かい合わせに横たわる。

 

これから文字通り、お前にのめり込むよ。

 

 


 

 

「お!」

 

チャンミンの頭が目の前から消えて、直後、強烈な快感が下半身を走った。

 

俺のペニスを頬張ったチャンミンが、「どう?」と言った風に上目遣いになっている。

 

根元を握った状態で、頭をゆっくりと上下させた。

 

「んっ...」

 

頼むから、今日は噛みつくなよ、と内心ヒヤヒヤしながら、俺はチャンミンの頭を撫ぜる。

 

ただ上下させるだけじゃなく、舌をグラインドさせて俺のペニスを舐め上げた。

 

亀頭に吸い付きながら、自身の唾液で十分に濡れた手で竿を強めにしごく。

 

「く...」

 

いつの間にこんな技を覚えたんだ?

 

お得意の図書館の本か?

 

まさかな...大学図書館にアダルト本は置いていないはずだ。

 

案外、『男色の歴史』に載っていたりして...。

 

ただ、咥えたまま呼吸するコツはつかめていないらしく、苦しくなるとちゅぽんとペニスを抜いて息継ぎをしている。

 

真っ赤な顔して、濡れた唇を開けて、喘ぐように息を吸う表情がエロくて、俺の興奮度合いも高まる。

 

「ふ...うっ...」

 

伏せたまつ毛が、チャンミンの頬に影を作っている。

 

チャンミンの頭の動きが激しくなってきた。

 

「くっ...!」

 

自然とチャンミンの頭を股間に押し付けてしまう。

 

「う...ぐ...」

 

チャンミンの呻き声に気付いて、その手を緩めてやる。

 

伏せていた目を上げ、それはにっこりと笑った形になり、彼の瞳の中に官能的にきらめく光を見つける。

 

エロい。

 

エロいよ、チャンミン。

 

日頃、甘ったれた話し言葉を紡ぐ唇が、俺のモノを味わっているんだ。

 

喉奥で亀頭を締め付けたり、かと思うと尖らせた舌先で尿道口を叩いたり。

 

その間も、竿を上下にしごく手はそのままだ。

 

先ほど緩めた手に再び力がこもり、チャンミンを窒息させんばかりに、彼の頭を股間に押し付けてしまう。

 

俺のものでチャンミンを貫く錯覚に陥った。

 

そして俺は、チャンミンの喉奥で達する。

 

ぶるっと背中が震えた。

 

俺の腰の痙攣が収まるまで、チャンミンは咥え込んだままでいた。

 

チャンミンは、口に含んだ精液をまるで1滴足らずこぼさないように、俺のペニスから慎重に口を離した。

 

俺はベッド下にスタンバイさせていたティッシュペーパーを、数枚抜いてチャンミンに手渡そうとした。

 

「チャンミン。

ここに出せ」

 

精液ってのは、美味いものじゃないから(生まれはじめて口にしたのは、当然チャンミンのものだ)。

 

「ごっくん」

 

「おいっ!」

 

チャンミンは片手で口を覆っている。

 

「飲むなよー」

 

「どんなものか、一度飲んでみたかったんだよね。

ユノが僕の口の中で、イクのって初めてでしょ。

ふむふむ...。

ぬるっとしてて...苦いんじゃないな...これは...えぐみかな」

 

そう言いながら、目を閉じて口に残ったものを味わっているではないか。

 

「そういうこと言うなよー」

 

「ふふふ。

ユノの遺伝子の味がする」

 

「チャンミン!」

 

半身を起こした俺は、立てた片膝に額をつけて、ため息をついた。

 

せっかくのいいムードを、チャンミンは切り替えの早さで素面に引き戻してしまうのだ。

 

俺とのいちゃつきをどん欲な探求心で貪ったのち、心のメモ帳に感想文でも書いていそうだ。

 

女子とヤってた時も、こんな風だったのか?

 

こんなんじゃドン引きされるぞ。

 

「よく見えないから、明るいところでアソコを見せて」とかお願いしてそうだ。

 

「はぁ...」

 

「ユノを悦ばせたので、次は僕の番」

 

俺の手を自らの尻へ導いた。

 

「いいのか?」

 

今まで、あれほど怖がっていたのに、どうしたチャンミン?

 

四つん這いになったチャンミンは、俺を振り返って大きく頷いた。

 

「いい加減、覚悟を決めたんだ。

だから準備してきた」

 

「準備...」

 

「指を...自分の指を挿れてみたんだ。

まだ3日くらいしか練習してないけど」

 

「......」

 

チャンミンのことが愛おしくなってきた。

 

そういう可愛い努力をするなよ。

 

俺に暴露するなよ。

 

「道具も買ってみたんだけど、アレはちょっと怖いね。

もし取り出せなくなったら、どうしようって」

 

俺の方も、そっち方面にやたら詳しい友人がいて、「どんな風なわけ?」って感想談を聞くふりをして、事細かに質問したりして、一通りの流れを教えてもらった。

 

俺はチャンミンの背後に回って、彼の尻と対峙した。

 

枕元に置いておいたコンドームを開封し、それに人差し指を差し込んだ。

 

チャンミンの大事な入り口を、俺の爪でケガさせないようにな。

 

コンドームを指サックのようにはめた俺に、チャンミンは少し寂しそうな顔をした。

 

「違うって、チャンミンのが汚いっていう意味じゃないって。

最初が肝心。

教科書通りにいこう」

 

「......」

 

「ホントだって」

 

俺はそう言って、チャンミンの尻の穴をペロリと舐めてやった。

 

「はぅん!」

 

魚が跳ねるみたいに、チャンミンは腰を引いた。

 

「いい反応だ。

いい子だぞ、チャンミン」

 

「むっ」

 

「さてさて」

 

胡坐をかいた俺は、コンドームの上からたっぷりとローションを垂らした。

 

「チャンミンに怪我させられないからなー。

痔になったら困るだろ?

ウンコの時、苦労するぞー」

 

「......」

 

怒らせたかな、とチャンミンの顔をちらりと見たら、その表情は真剣そのものだった。

 

緊張してるのか。

 

ますます可愛いと思う。

 

「行くぞ」

 

チャンミンはコクコクと頷いた。

 

チャンミンの尻に手を置いたら、それは固くこわばっていてふるふると震えている。

 

「もっと力を抜けって」

 

優しくマッサージするように、尻を撫ぜてやる。

 

「挿れるぞ?」

 

「...うん。

怖いから、一気にやっちゃって」

 

「OK」

 

チャンミンの穢れを知らない入り口に、指先を当てる。

 

チャンミンの尻がビクッと跳ねたから、俺はもう片方の手で尻を撫ぜる。

 

頭の中の説明書を辿る。

 

肛門の周辺をマッサージする...よし。

 

「んっ」

 

指の腹で押したり、こすってやる。

 

柔らかくなれー、と唱えながら。

 

「んっ...」

 

チャンミンのうめき声が甘いそれだったから、俺は安心する。

 

次は...ゆっくりと挿入する...。

 

「んん...!」

 

よし...第一関節まで入った!

 

チャンミンはふうふうと、息を吸ったり吐いたりしている。

 

チャンミンをつかんだ手の平が、汗で濡れている。

 

俺の方も緊張しているようだ。

 

「んんっ...ふう」

 

第二関節まで...入った!

 

「んぐぐ...」

 

「痛いか?」

 

チャンミンはぶんぶんと首を横に振っている。

 

「今、どれくらい?

全部、入った?」

 

「まだ半分」

 

「ええぇ!

まだそれくらいなの?」

 

人差し指じゃやりにくいことに気付いて、仕切り直しだと指を抜いた。

 

「ひゃうん!!」

 

素早く指を抜いたのが、チャンミンには刺激が強かったようだ。

 

「ユノ!

びっくりするから、急な行動は慎んでよ!」

 

「悪い」

 

中指にチェンジして、もう一度チャンミンの尻にじわじわと埋めていく。

 

「んっ...」

 

俺の指を包み込んだチャンミンの肛門と腸...腸って内蔵だったよな。腸っていう言い方は、直実的でムードがないから言い換えよう...は、当然だけど温かくて、きゅうっと締め付けてくる。

 

すご...感動する俺。

 

ずぶずぶと、指の付け根まで...入った!

 

「どうだ?」

 

「う...ん。

変な感じ。

すっごい違和感...」

 

「まだ指を挿れただけだぞ?」

 

「なんか...変な感じ...。

ん...。

やだ...無理...」

 

「もうちょっと我慢してろよ。

練習してきたって、言ったよな。

何本くらい入った?」

 

ベッドから片手を放して、俺に見せたのは人差し指1本。

 

「指挿れて、動かしてみたか?」

 

「まさか...。

挿れるだけで...ふぅ...精いっぱいで...。

ユノ...もう指を抜いて...ヤダ...もうヤダ」

 

「痛いか?」

 

「痛く...ないけど。

無理...ギブアップ...抜いて」

 

「そう言うなって。

ちょっとだけ、動かしてみるぞ?」

 

「無理無理無理無理!」

 

指の腹で柔らかい壁をこすると、指の付け根の締め付けがきつくなった。

 

「やめっ!

ユノっ!」

 

涙声になってる。

 

これ以上は可哀想だ。

 

今日はこれくらいで勘弁してやるか、と思ったけど、最後にもう少しだけ...。

 

中指をかぎ型に曲げて、ぐりぐりとこすると...。

 

「やー!!!」

 

「ぐはっ!!」

 

チャンミンが蹴りだしたかかとが、俺のみぞおちにヒットした。

 

「いってぇぇ!」

 

俺はもんどりうって、ベッドの下に背中から落ちてしまった。

 

「ああぁ...。

ユノ!

ユノ、ごめん!!」

 

床に転がった俺は、ベッドの上から差し出されたチャンミンの手を、パチンと払いのけた。

 

「暴力反対!」

 

蹴られても仕方がないか、と俺は腹をさすってベッドの上に戻った。

 

「ごめんね。

ビックリしちゃって」

 

「どうだった?」

 

「んー。

神経を直で触られたみたいな感じ。

ほら...」

 

チャンミンは俺の手を取って、自身の胸に当てる。

 

「ドッキドキだよ。

今も、お尻が変な感じ」

 

俺の手の平の下で、チャンミンの心臓がドクドクと拍動していた。

 

尻から垂れたローションを拭き取ろうと、チャンミンはベッド下のティッシュペーパーに手を伸ばした。

 

「ん?」

 

チャンミン...。

 

俺は発見してしまった。

 

これを指摘したら、100%チャンミンは大赤面する。

 

恥ずかしさのあまり、俺と1週間口を聞いてくれないかもしれない。

 

さて、どうしようか。

 

 

 

(つづく)

 

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(12)秘密の花園

 

3杯目のビールジョッキを空にした時、

 

「こら!」

 

いい加減に焦れた私は、冷麺をすするチャンミンの片耳をひっぱった。

 

「いったいなぁ」

 

身をひいて私の手から逃れたチャンミンは、頬を膨らませて耳朶をこすった。

 

「私に話があるんだろ?

とっととおしゃべり、チャンミン。

私も暇じゃないんだって」

 

「ごめん...。

彼氏と約束があったんだよね」

 

「その通り。

今夜はお泊りなんだよ」

 

「うわぁぁぁ。

ってことは?」

 

「彼氏がお泊りといったら、『それ』でしょう?

徹夜でジグソーパズルするってか?

わぁ、1,000ピースもあるの?俺たちの愛を1ピースずつ埋めていこうぜ。私はこっちから攻めていくね、あなたはそっちから攻めていってね。あん、攻めるのはそこじゃないの…って、おい!」

 

「そうだよね...。

ねえ、タマちゃんはどんなえっちをするの?」

 

「...聞きたい?」

 

「うん、聞きたい」

 

チャンミンは目をキラキラとさせて身を乗り出した。

 

「どんな体位でやるの?」

 

体位!?

 

坊やだったチャンミンからは予想もつかないワードが投下された。

 

「道具を使ってるチャンミンには負けますよ~」

 

「なっ!

道具なんて使わないよ...」

 

乗り出した身を引っ込めて、チャンミンの顔がボッと赤くなる。

 

「大事に守ってきた童貞を捧げた彼女と、エッチ三昧なんだろ?

あんたの性癖が大爆発しちゃったんだよね。

縛ったりするんでしょ、彼女を?

こわ~」

 

腕をさすって見せると、

 

「そんなんじゃないって!」

 

「まあまあ、話が反れてるよ。

私に話があるんだろ?

やり過ぎて勃たなくなったとか?」

 

「タマちゃん!!」

 

「なわけないか、ははは。

学校でもたまに勃ってるときあるからなぁ...。

あんたって、いっつもぴたっとしたズボン履いてるじゃない。

丸分かりなんだよねぇ...」

 

「ええええ!!」

 

チャンミンは、勢いよく股間を確認する。

 

「冗談だって」

 

「むぅっ」

 

「で?」

 

「......」

 

「私に話したいことって、『そっち方面』なんだろ?」

 

「う...ん...それに近いような、近くないような...」

 

「『そっち方面』なんだね。

で、あんたの彼女ってどんな子?」

 

「...綺麗な子...だよ」

 

「へぇぇ。

スタイルは?」

 

「すごくいいよ」

 

「同じ学校?」

 

「同じ学科」

 

「転科して出会っちゃったんだ」

 

「うん

で、そのことなんだけど、話の本題はこれからでありまして...」

 

「?」

 

「牧場実習があるよね」

 

「あるね。

あんたたちの科は10日で済んでいいよねぇ。

私はみっちり1か月あるんだよ」

 

「うん。

そのことなんだけど。

タマちゃんが行くとこって、僕と一緒だったよね?」

 

「うん。

あそこは種牛センターに近いからね」

 

「実は...その...『恋人』も同じとこなんだ」

 

「へぇ、そうなんだ。

よかったじゃないの。

ヤリたい盛りのチャンミンのことだから、頼むから私たちの部屋に夜這いにくるんじゃないよ。

彼女と間違えて私を襲ったりしてさ。

おえぇぇぇ!」

 

「タマちゃん!!」

 

「はははは! 」

 

「...タマちゃん」

 

「ん?」

 

「タマちゃんは僕の友達だよね」

 

「そうだよ」

 

「僕がこれから見せるもの見ても、絶対にひかないでね」

 

「見せるって、何を?」

 

「僕の『恋人』の写真」

 

「彼女とエッチしてる写真なんて、見たくないからな」

 

「ふざけないでよ!」

 

「ごめんごめん。

はよ見せなさい」

 

手をひらひらさせたら、突き出した旧式のスマホをチャンミンの長い指がスクロールさせた。

 

「この人なんだ」

 

「......」

 

チャンミンの部屋で撮られたと思われる。

 

色白で、スリムで黒髪のショートヘアで、小作りな整った顔。

 

上半身裸で、ベッドでうつ伏せになって顔だけこちらを向けている。

 

「ぶはっ!!」

 

ビールが気管に入ってしまって激しくむせる私の背中を、チャンミンがさすってくれる。

 

「ゲホッゲホッ!」

 

「ひいた...よね。

おかしい...よね?」

 

「ゲホッゲホッ!」

 

「もう僕とは友達でいられなくなった?」

 

「アホか!?」

 

「だって、びっくりしてるから」

 

「そりゃ、びっくりするに決まってるじゃないの」

 

私はおしぼりで口を拭って、胸を叩いて息を整える。

 

「よく見せなさい。

ほほぉぉ。

ずいぶんと...いい男だねぇ」

 

「他にもあるんだ。

ほら」

 

チャンミンの指がスクロールさせて、別の写真を見せる。

 

「ユノ、っていうんだ」

 

これは相手の部屋で撮ったものらしい、しかも盗み撮りか...?歯を磨いている最中か。

 

こちらに背を向けていて細いのに背筋が作る溝もくっきりとしていて、長い脚にと繋がっている。

 

別な写真は...これも盗み撮りか...寝顔らしい...女の私が嫉妬するくらいきめの細かい肌と長いまつ毛と、赤みを帯びた唇...。

 

「あんたが惚れるのも分かるよ。

こんなに美形じゃ、女も男も放っておかないね。

他の写真はないの?

...っ、こら!」

 

チャンミンは、私の手からスマホを取り上げると、頬を膨らませる。

 

「駄目だよ、ユノのこと好きになっちゃ」

 

「好きになるか、アホ!」

 

「ユノはとってもカッコいいんだから」

 

「カッコいいってことは、十分わかったよ。

つまり、チャンミンがカミングアウトしたかったのは、恋人が『彼女』じゃなくて、『彼』だってことなんだね」

 

チャンミンはこくりと頷く。

 

「教えてくれてありがとうな」

 

「へ?」

 

拍子抜けした様子のチャンミン。

 

「タマちゃんはひかないの?」

 

「ひくって、何に?

相手が男ってことに?」

 

「...うん」

 

「別に」

 

「ホントに?」

 

「お似合いだと思うよ。

ほら、チャンミンって顔もわりと整ってるし、

ユノって子も、あんた以上に綺麗な子だし。

美男美女...じゃなくて美男美男、だ。

それに私、...この子のこと、知ってるよ」

 

「嘘っ!?」

 

「女子たちの間では有名だよ。

かっこいいって。

去年の文化祭だったけなぁ、ダンスだか何かを披露したんだって。

私は見ていないけど。

チャンミン!

不機嫌なツラをするんじゃないよ」

 

女子たちに人気、と聞いて不安になったらしい。

 

「チャンミンは、その女子たちよりも可愛い顔してるから、安心しなよ」

 

「可愛い、って言うな!」

 

チャンミンは磨けばもっといい男になれるのに、いつもトレーナー+デニムパンツ、Tシャツ+黒パンツといった味も素っ気もない恰好をしていて、切りっぱなしの髪で、流行に敏感な女子からは野暮ったく見られるかもしれない。

 

どこのサークルにも所属せず、猫背気味にバックパックを背負って、大きなストライドで構内を無表情に歩いている。

 

チャンミンとは1年生の時からの仲だ。

 

生協前のポットの湯を、袋麺に直接注いでいるチャンミンの前を私は通りかかった。

 

「あっちぃぃぃ!!」

 

悲鳴に振り返ったら、床にお湯と麺をぶちまけてしまったチャンミンが居た。

 

他の学生たちは、チャンミンの失態をクスクス笑いしているくせに、見てみぬふりをしてたんだ。

 

見かねた私は、床の片づけを手伝ってやり、昼食を台無しにしてしまったチャンミンにチャーハン定食をおごってやった(苦学生のチャンミンは、常に金欠なのだ)。

 

甘ったれた言葉づかいと、素直な性格がいまどきここまでピュアな子はいないと感動した。

 

どじっこチャンミンをほっとけなくて、あれこれと世話を焼いてやったら懐かれた。

 

女っ気のなかった坊やにようやく出来た恋人が男だったとは...。

 

心底驚いたけど、嫌悪感はこれっぽっちも湧かなかった。

 

納得。

 

じっくりとチャンミンを観察すると、びっくりするくらい綺麗な顔をしているのに、垢抜けない格好がそれを隠している。

 

そこらへんにいる「普通の」女子にはチャンミンの魅力は気付けないだろうし、手に余るだろう。

 

甘ちゃんで純朴で、磨けば光る宝石の原石みたいなチャンミンは、ユノとかいう強い存在感をたたえた美人じゃなくちゃ駄目だ。

 

チャンミンが見せてくれた写真からでさえ、そう伝わったんだ。

 

間近に接しているチャンミンは、彼に強く惹きつけられているだろう。

 

彼なら、危なっかしいチャンミンを見守り...それから、チャンミンの美点を引き出してくれるだろう。

 

よかったよかった。

 

タマちゃんは安心だよ。

 

「タマちゃん。

カミングアウトついでに、教えて欲しいことがあるんだけど?」

 

「なんでも聞きなさい」

 

「痛い...かな?」

 

「痛いって...あ!」

 

チャンミンが、こくりと頷いた。

 

「チャンミンが『そっち側』なんだ?

やっぱりね」

 

「やっぱり、ってどういう意味だよ!」

 

「チャンミンって...そういう感じ」

 

「ユノにも同じこと言われた...」

 

「未だヤッてなかったの?」

 

こくりと頷く。

 

「難しく考えすぎなんだって。

穴の位置が違うだけだよ」

 

「位置が問題なわけじゃなくて...。

心構えというか...。

つかぬことをお聞きしますが、タマちゃんは経験あるの?」

 

「うん」

 

「教えて!」

 

「やだよ。

あんた耳年増になってない?

大したことないよ。

大好きな彼なんでしょ?

とっととお尻の初めてを奪ってもらいなさい」

 

「初めて...か」

 

以前、相談ごとがあるって呼び出されたファストフード店の時のことを思い出した。

 

あの時は、てっきりバージンの彼女が痛がりはしないか、と心配してるんだと思い込んでいたが...やっと話が繋がった。

 

「うっそぉ!

そっか!

あんたは未だチェリーってことか!」

 

「しぃぃぃ!」

 

「チャンミン...あんたって子は...ピュアっピュアなんだねぇ」

 

チャンミンの頭を撫ぜてやったら、不服そうに頬を膨らませていた。

 

「せいぜい、ユノに可愛がってもらいなさい」

 

「むぅっ」

 

 


 

~チャンミン~

 

 

僕はかれこれ30分以上、手の中のものを凝視している。

 

風呂上がりで、首からタオルを引っかけただけの恰好で、ベッドの上で胡坐をかいて。

 

箱にプリントされた説明書きは、もう何十回と読んだ。

 

とっくに頭に入っている。

 

そもそも、「出す」ための場所に、「挿れる」行為が身体に悪そうだ。

 

「よし!」

 

僕は膝立ちすると、右人差し指にたっぷりと潤滑ゼリーをまとわせる。

 

これはお尻専用のもので乾きにくく、とろっとしている(ユノが買ったモノ)。

 

いざ。

 

この辺りかな...?

 

ユノと何度も素股を経験している僕だから、お尻の穴あたりの刺激は慣れてきた。

 

しかし、それは撫ぜるようなものだから、突き刺すのは当然初めてなわけで。

 

「あれ?」

 

僕のお尻の穴は強情で、人差し指を拒否している。

 

落ち着けー、リラックスだ。

 

「ふぅ...」

 

深呼吸をして、両肩をぐるぐる回して緊張をほぐすと、とろとろ状態の指を後ろにまわす。

 

指で周囲をぐにぐにと押してみる。

 

立膝の姿勢はやりにくいことに気付いて、横向きに寝っ転がった。

 

おっかなびっくりじゃ、僕のお尻は指一本受け入れてくれない。

 

「んっ」

 

指の先っぽが入った...。

 

お尻の力を抜けー、リラックスリラックス。

 

じわじわと指を埋めていく...。

 

「んー...」

 

第一関節まで入った...けど。

 

指を入れてみたけれど...。

 

違和感しかない。

 

僕の人差し指を、きゅっと締め付けているのが分かる。

 

(指一本でこれだからなぁ。

ユノのおちんちん...大丈夫かな)

 

指を曲げてみた。

 

「うーん...」

 

(これのどこが、イイんだ?

気持ちよくなる気配がないんだけどなぁ)

 

息を大きく吐いて、指の付け根まで埋めてみる。

 

「うーん...」

 

当然だけど、温かい。

 

女の人のアソコもこんな感じなのかな...と、ちょっと想像してみたりして...。

 

人差し指をお尻の穴に刺した状態で、僕は固まっていた。

 

怖くて指を動かせない。

 

僕のお尻が早く抜け、と言っている。

 

違和感しかない。

 

「はぁ...」

 

はた目から見ると、お尻丸出しでお尻をいじっている僕はマヌケ過ぎる。

 

でも、僕は大真面目だったし、必死だった。

 

今日のところは、指を入れるところまで到達できた。

 

どっと疲れが出てしまって、僕はお尻丸出しのままでしばらくの間、うずくまっていた。

 

こんなんで、大丈夫かな...。

 

 

(つづく)

 

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(11)秘密の花園

 

~ユノ~

 

床についた両手の間で、頬を赤らめ涙で濡れたまつ毛を震わせる可憐な乙女...じゃなくて、逞しい若い男。

 

男。

 

やたらと背が高くて骨っぽい身体をしているのに、顔だけはあどけなくて。

 

「あー、もー!!」

 

勢いよく半身を起こした俺は、髪をがしがしと掻いた。

 

「あり?」

 

眼をパチクリとさせていたチャンミンも、遅れて身体を起こした。

 

「ねぇ、ユノ。

今から『ヤる』んじゃないの?」

 

俺の袖をツンツンと引っ張って、膝に伏せた俺の顔を覗き込んでいる。

 

「ユノ?」

 

「なぁ、チャンミン」

 

「ん?」

 

「チャンミンはどうして『女』じゃないわけ?」

 

いつも通りの恋愛だったら、セックスなんてとっくの前に済ませている頃合いなのに。

 

「同じセリフを、ユノに返すよ。

どうしてユノは『男』なの?」

 

顔を見合わせた俺とチャンミンの顔がみるみるうちに歪んで、くっくっと肩が揺れる。

 

「あーっはっはっはっは!!!」

 

腹を抱えて大笑いだ。

 

そして、ワックスが剥がれて軋むばかりの床に、2人して大の字になった。

 

俺はTシャツにボクサーパンツ姿、チャンミンの方は全裸で(なぜか毎回、タイミング的に裸なわけ、こいつは)。

 

「男とか女とかどっちだっていいよな」

 

「うん」

 

「俺は、チャンミン、お前が好きなんだ」

 

横を向くと、既にこちらを向いていたチャンミンとバシッと目が合った。

 

「僕も、好きだよ」

 

「意見は一致した、な?」

 

「ふふふ」

 

なんだよ「ふふふ」って、笑い方が女っぽいんだよ。

 

床を滑らせて伸ばした手をチャンミンの手に重ねた。

 

「俺が怒った理由、分かるか?

閉じ込められたからじゃないんだ」

 

「うん。

分かってる」

 

「とっさに俺を隠そうとした心理が、今のお前の本心だって知って...ショックだった」

 

「ごめんね」

 

俺の真上辺りの天井に広がる不気味な染みが、困りきった人間の顔にも見えてきて、今の俺の気持ちそのものだと思った。

 

「チャンミンは謝らなくていい。

俺だって似たようなものだった。

ダチにはチャンミンとデキてることは、全く話していない」

 

友人たちとは、相変わらず「あの子が可愛い」とか「何人とヤッた」とか、そんな話ばっかりしている。

 

1年ばかり付き合っていた彼女と別れた俺を哀れがって、合コンに誘う男友達を「今は一人でいたい」なんてキザなことを言ってるんだ。

 

そもそも彼女と別れた理由がチャンミンだなんて、絶対に隠さなくては、と。

 

タマちゃんとかいうチャンミンの友人が訪ねてきたとき、必死になって俺の存在を隠そうとしたチャンミンと同様なことを、俺はすでにしていた。

 

周囲に気持ち悪がられるから?

 

そう、俺の中にある偏見だ。

 

「俺たちは、『恋人同士』だ。

でも『男同士』ってのは人に知られたくない気持ちが、あった。

堂々としていられるほど、今の俺は潔くないんだ」

 

「ユノとのことを隠そうとしちゃって...。

タマちゃんは親友なんだ。

あ!

正真正銘の「友達」だからね。

ユノのことは大好きなのに、親友にさえ内緒にしたいって思うんなんて、僕の気持ちは薄っぺらいものなのかなぁ、って。

...そんなんじゃないのに...」

 

「いざ冷静になってみると、この『禁断の扉』ってのは分厚くて重いんだ。

鍵はかかってないけど、この押し入れの戸みたいに...」

 

俺とチャンミンは揃って、斜めにぶら下がっている壊れた戸を見る。

 

「滅茶苦茶頑張らないと、開けられないんだよなぁ...」

 

「そんなの簡単じゃん。

ぶち破ればいいんだよ」

 

「簡単に言うんだなぁ、チャンミン」

 

チャンミンも一歩前進したい気はあるけど、『男の相手は女』っていうマジョリティな考えが当たり前になってるから、その狭間で行ったり来たりしている。

 

その迷いに俺は振り回されていて、肩透かしをくらったり、押し入れ事件みたいに傷ついたりする。

 

チャンミンの前では、度胸が据わった男を装っているのに、日常の友人たちに囲まれている時はチャンミンの存在は「秘密」なんだ。

 

「壊しちゃったな」

 

跳ねるように起き上がった俺は、戸の損傷具合を確かめる。

 

「俺らで直せないか、ホームセンターへ行こう」

 

「うん」

 

「もし直せなかったら、俺がバイト代で弁償してやるよ」

 

「いいって。

このアパートはボロいんだ」

 

チャンミンの懐具合は常に寂しい。

 

ファストフード店に気軽に立ち寄れないし、大学へは弁当持参だ。

 

洗濯のし過ぎで色褪せてよれよれのTシャツを着ていようと、チャンミンの整い過ぎた容姿は隠しようがない。

 

禁断の花園に飛び込むため『勉強』したという『男色の歴史』も、大学図書館で借りたものだし、アブノーマルWEBサイトも大学で開放されているPCルームでだ(全く...すごい度胸をしている)。

 

チャンミンのいた学科は、入学するのだけでも大変な高偏差値の狭き門だ。

 

家庭の事情で俺のいる学科へ転科せざるを得なくなって、さぞかし落胆しただろう。

 

そのおかげでチャンミンと出逢えた。

 

チャンミンが、この科で進みたい道を見つけてくれることを、俺は願っている。

 

さて、俺たちにとって初めての旅行っぽいこと...『牧場実習』が来月ある。

 

約10日間、寝食を共にする。

 

ニヤニヤ笑いが止まらない。

 

「任せろ。

道具は俺が全部揃えてやる」

 

俺に肩を叩かれたチャンミンは、眉を下げて不安そうに口を歪めた。

 

「道具!?」

 

俺は玄関先に放り出されたバッグを取ってくると、

 

(中華料理店から戻って来たとき、いちゃいちゃが開始されてしまって、そのままだったんだ。

タマちゃんとやらも、目にしたハズだ。靴を隠してもバッグはそのまま、だなんてチャンミンはツメが甘いのだ)

 

中から薄型ノートPCを取り出して、ブックマークしていたWEBサイトを開く。

 

「これ」

 

胡坐をかいた俺の肩ごしに、覗き込むチャンミンの喉がごくりと鳴っている。

 

「チョクチョウ...洗浄...」

 

「チャンミンのケツの中を綺麗にするわけ。

うんこが詰まってるだろ?」

 

「は、恥ずかしいこと言うな!」

 

「ま、俺はそのまんまでも、多分平気だけど、最初はマニュアル通りにいこうぜ」

 

「浣腸使ってもいいし、ホースを突っ込んでもいいらしい。

チャンミンはどっちがいい?」

 

「どっちもお腹が痛くなりそう...」

 

「両方試してみよう!」

 

「嫌だ」

 

「それから...ケツの穴をマッサージして柔らかくするんだと。

チャンミン、そこのローションを取ってきて」

 

「う、うん」

 

ベッド下に転がったボトルを取ろうと四つん這いになっているから、チャンミンのケツの穴は丸見えなわけで...(無防備過ぎる)。

 

「ストップ!」

 

「えっ!?」

 

「そのまま、ワンコちゃんの恰好でいろよ」

 

「やだぁ...!」

 

チャンミンの腰に後ろ前にまたがって、チャンミンの尻の割れ目に沿ってローションを垂らす。

 

「ひん...!」

 

2本の指でチャンミンの尻を割った。

 

つんつん突いてみる。

 

「ひやぁぁぁっ!」

 

腰を引こうとしたチャンミンを、両腿で全力で挟み込む。

 

「じっとしてろ!」

 

「うん...ひゃぁっ...」

 

円を描くようにくるくると、人差し指を滑らせる。

 

「あ...」

 

チャンミンの秘部をぐにぐにと押してみる。

 

「あ...」

 

チャンミンの声音が変わってきて、俺はほくそ笑む。

 

「今日のところはこれでおしまい!」

 

俺はチャンミンの尻をペチンと叩いて、馬乗りになっていた腰から下りた。

 

「え...?」

 

四つん這いのままのチャンミンにタオルを放ってやる。

 

「終わり?」

 

「もっとして欲しかったの?

チャンミンはエッチだなぁ」

 

「......」

 

チャンミンは不貞腐れた顔で、身体を起こすとすとんと正座する。

 

太ももの間で主張する斜め上を向いたモノ...。

 

尻の穴を少しだけ愛撫してやっただけなのに...どうやら気持ちがよかったらしい。

 

と、満足していたら。

 

 

「おぅっ!」

 

俺のペニスがチャンミンの大きな口の中に飲み込まれた。

 

「う...」

 

膝立ちしたチャンミンの股間に視線を落とすと、俺に負けず劣らずイキってる。

 

ちろちろと舌先で刺激されて、俺は呻き声を漏らす。

 

よく考えてみると、チャンミンにフェラチオされるのは初めてだ。

 

「どう?」と問うように、俺のペニスをしゃぶったまま俺を見上げる丸い目。

 

愛おしい気持ちが沸き上がってきて、チャンミンの頭を撫ぜてやる。

 

ペニスの根元に手を添えて、チャンミンの頭が前後に動く。

 

その見よう見真似のぎこちない愛撫に、チャンミンの髪をすいてやる。

 

もう少し咥える力を込めてくれたら、もっと気持ちよいのだが、なんて。

 

一生懸命な姿に、そんな注文はつけられない。

 

正座の姿勢で足がしびれてきたのか、チャンミンは足を崩して膝立ちしようとした...ら。

 

 

 

「いってぇ!!!」

 

もんどりうった俺は股間を押さえて、床にうずくまる。

 

尻から垂れたローションで足を滑らしたチャンミン。

 

姿勢が乱れたはずみで、俺のペニスがチャンミンの前歯で噛みつかれた格好になったのだ。

 

「俺のちんちんを食いちぎるつもりかぁっ!?」

 

「ごめん...ユノ...ごめん!」

 

押さえた手を離して大事な部分の負傷具合を確認する。

 

「お前なー、これがもげたら何もできなくなるんだぞ?」

 

「ユノ...ゴメン...。

噛むつもりは、なかったんだ」

 

チャンミンはそろそろと手を伸ばして、萎えてしまった股間を押さえる俺の手の上に重ねた。

 

「おっかなくて、預けられねーよ!」

 

「事故だよ、事故」

 

「どれだけここがナイーブなのか、お前だって知ってるだろう?」

 

「......ごめん」

 

泣き虫のチャンミンの目は、やっぱり充血して涙を浮かべている。

 

「次はもっと上手くやるから...」

 

顔を伏せて再び咥えようとするチャンミンを、肩を押して制した。

 

「え?」

 

「泣くなよ~。

よしよし、こっち来い。」

 

鼻をすするチャンミンの後頭部を、がしがしと撫ぜてやる。

 

「今日は3回もイッたから十分だ。

続きは明日にしよう、な?」

 

俺の背に腕を回して、胸にぴとっと頬をくっつけたチャンミンは、ぼそっと答えた。

 

「バイト」

 

「明後日は?」

 

「バイト」

 

「その次の日は」

 

「バイト」

 

「嘘つくなよ。

木曜日はバイト入っていないハズだ」

 

「う...っ」

 

「ってことで、木曜日の夜にスタートだ」

 

「...うん」

 

ノリ気になったり、怖気ついて拒否するチャンミンをなだめすかしたりして、俺たちは少しずつステップアップしていくんだな、と俺は苦笑した。

 

 

(つづく)

 

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