(16)ぴっかぴか

 

 

~チャンミン~

 

入浴を終えた僕とユノは、「さて、何をしようか?これといってすることもないなぁ...」と言った感じ。

 

ユノを押し倒してパンツを脱がすわけにもいかず、押し倒した末、ユノの上にまたがるわけにもいかず、僕らはこうしてテーブルを挟んで座っている。

 

ユノの股間にちらりちらりともの欲しそうに視線を送っているのも、早々とバレてしまったしね。

 

ユノはスケジュールを確認しているのか、壁に掛けたカレンダーに目をこらしているけど、そこは真っ白だ。

 

何度も掛け時計に目をやっては、1分少々しか経過していないと知ってはため息をついている。

 

僕と目を合わせないよう、警戒したユノは室内のあちこちへ視線を彷徨わせているのだ。

 

そりゃそうだよね...だって、僕は頬杖をついてユノをじぃっと見つめているんだから。

 

顎を上げ潤んだ目でうっとりと...かと思えば上目遣いで...これで多くの男たちを落としてきたのだ。

 

僕の求愛行動に、彼らはころっと騙されてきた。

 

「お、俺の顔に何かついてるのか?」

 

ふふふ、どもちゃって可愛いんだから。

 

僕の大事なトコロを見ちゃって(見せたんだけどね)、ユノはドキドキ、チャンミンという男をもっと意識するようになったね。

 

大抵の男は僕のつるっつるを見て、猛烈に興奮するんだよね。

 

つるっつるなおかげで、汚らしさも男にINする抵抗心が薄れるのだ。

 

「ううん。

ユノのお顔は綺麗なままだよ。

見惚れてただけ」

 

「!」

 

空っぽのグラスを持つユノの手がぴくっと震えた。

 

お友達になろう作戦と並行して、思わせぶり発言でユノを動揺させ、じわじわと彼の意識に刷り込むのだ。

 

僕は君のことを、『男』としてみているんだよ、って。

 

(ここで言う『男』とは、『雄』という意味合いだ。

僕は貴方のために雌になります。

どうぞ、INして突いてかき回してください...)

 

気味悪がってるわりには、洋服を貸してくれたり、新品の下着を用意してくれたり、未だに僕を追い出す素振りは見せない。

 

見込み大アリだ。

 

僕のアソコを見る目がきらっきらに光っていたのを、僕は当然、見逃していないのだ。

 

挙動が落ち着かないのは多分、僕みたいな人種の扱いに慣れていないからだ。

 

「あんた...いつもそうなのか?」

 

「いつもって?」

 

腕を組んだユノの真顔に「あれ?」となった僕は、乗り出していた半身を起こし姿勢を正した。

 

「相手が俺だったからいいものの、『見惚れる』とかさ、褒め言葉。

勘違いする奴もいるんじゃないか?」

 

勘違いして欲しくて、相手の自尊心と性欲をくすぐっているんだけどなぁ。

 

「ユノは勘違いしちゃった?」

 

僕の指摘が図星で、赤くなって否定するかと思ったのに、ユノはやっぱり真顔で「するわけないだろう?」ときた。

 

信念を持って童貞を貫くこの男、一筋縄ではいかぬ...。

 

さて、お次は何といって揺さぶりをかけようか思案を巡らせかけた時、

 

「あんたこそ綺麗な男だ。

その眼付が誘っているものなのか、単なる癖なのか、その辺は俺には分からん。

知り合って早々の俺が言うのもなんだが...気を付けた方がいいぞ」

 

「?」

 

「中にはアブない奴もいるんじゃないかな?

あんたは細っこいし、女みたいに綺麗だし。

...20人も恋人がいたんだったな。

余計なお世話なこと言って悪かった」

 

そう言って頭を下げたユノの、毛先から地肌まで白く清潔そうな頭頂部。

 

その髪に指を絡めそうになり、伸ばした手を引っ込めた。

 

「ありがと。

僕のことを心配してくれたんだね」

 

「...う~ん、まあ、そういうことだ」

 

実をいうと、ユノの台詞にギクっとしていた。

 

「お前に何が分かる?」とイラっとしたけれど、心配の対象が何であれ、誰かに気遣われる経験が不足していた。

 

 

 

 

ユノはしきりと時計を気にしている。

 

「ユノ?

仕事なの?」

 

「いや、今日は休み。

あんたこそ、仕事があるんだろ?

帰らなくていいのか?」

 

「午後からだから、大丈夫なのだ」

 

「あっそ」

 

「僕がいて邪魔?」

 

「うん、邪魔」

 

うっわ~、正直に言うんだなこの男。

 

「ここって、最寄り駅は××駅?」

 

「ああ」

 

「そっかぁ...。

××駅なら、あと30分後にはここを出ないとね。

ユノに追い出されなくてもね?」

 

「嫌味な言い方をするなよな~」

 

「だって...ゆの...僕を邪魔っけにするんだもの」

 

「事実だから仕方がないだろう?

それよりさ。

あんた、二日酔いは平気なのか?

酒臭いぞ?

そんなんで仕事に行って大丈夫なのか?」

 

ユノは身を乗り出して、僕の顔周りをくんくんする。

 

ひと汗かけば、酒臭さも消えるんだけどなぁ...なんてことは言えない。

 

落ち着かないユノが可哀想になってきた。

 

ユノを動揺させる言動は今日のところ、この辺にしておこうかな。

 

バルコニーに干された、僕のパンツとシャツ。

 

シャツはしわだらけだ。

 

(あのシャツは手洗いしないといけなかったんだ。でも、ユノの好意に文句を言うつもりは全然なかった)

 

ユノのパンツと並んで、ひらひらと揺れている。

 

ふふふ、まるで同棲カップルみたい...ふふふ。

 

これで、ユノに会う口実がひとつ出来た、と内心ほくそ笑んでいたら、

 

「あんたの連絡先、教えて?」

 

と、ユノの方から、嬉しいチャンスを差し出してきた。

 

「うん。

ユノのも教えて」

 

これまでの僕だったら、一夜の相手には絶対に連絡先は教えない。

 

今後も関わり合いになりたくないから。

 

でも、ユノは例外なのだ。

 

ユノなんて、僕と一夜を過ごしたわけじゃないのに。

 

(広義の意味にとらえると、一夜を共にしたと言えるけどさ)

(穴は見せたけどね)

 

僕の美貌に一向になびかないし、僕の嗜好に眉をひそめるのを隠そうともしない。

 

ユノとはセックスしなくてもいいかなぁ、なんて気持ちまで生まれてきたんだ。

 

 

(つづく)

 

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