(10)ぴっかぴか

 

 

~チャンミン~

 

 

僕は一体...どこにいるんだ?

 

僕は洋服を着たままだ。

 

ヤッた後に、上下ともご丁寧に服を着せてくれる者など滅多にいない。

 

その上、お尻の感じだと、昨夜はここを使っていない。

 

「......」

 

寂しいからと言って、少しでもいい男だと思えた者と肌を重ねてきた。

 

こんな生活に虚しくなり、いい加減止めないといけないなと...。

 

僕を突如襲ってきた自己嫌悪感に、僕は驚いた。

 

昨夜知り合ったばかりのユノが、信念を持った童貞だったのと同じように、僕は信念をもった...、相応しい言葉が見つからない。

 

肌を重ね熱い体温を全身で感じ、意識がぶっ飛ぶほどの快楽に浸ることこそ、僕のエネルギー補充法なのだ。

 

それのどこが悪い。

 

二日酔いになること自体、僕には珍しいことだ。

 

具合が悪すぎて気弱になってるせいだ。

 

割れそうに痛む頭を揺らさないよう、そうっとベッドから下りた。

 

男が寝ている間に、この部屋から退散しようと思ったのだ。

 

気まずい思いをするのは勘弁だ。

 

裸足の下はフローリングの床だ、やはり僕の部屋じゃない。

 

眩暈にふらつきながら、足音をたてないようゆっくりゆっくり、部屋のドアがあるだろう方向へ忍び足。

 

「う...ん...」

 

ソファの上の黒い塊がごそごそうごめき、僕は息を止めた。

 

「ふぅ...」

 

寝息を確認し、持ち上げたままだった片足を床に落とす。

 

(でも...)

 

ちょっとだけ、この男の顔を拝んでみようかな。

 

そんな誘惑に負けて、僕は後ろ歩きで引き返した。

 

男は鼻上まで毛布にくるまっていて、顔はよく見えない。

 

毛布をつまみ、そうっとめくってみた。

 

 

「!!!!!」

 

ユ、ユノ!!!

 

 

僕の好みどんぴしゃの、チェリー青年。

 

僕は今、ユノの部屋にいる!!

 

根元まで綺麗にブリーチした金髪、細面の頬のライン、形のよい眉毛、すっとした鼻梁...。

 

つくづく綺麗な顔をしているなぁと感心した。

 

「う、うーん...」

 

むにゃむにゃとうごめく赤みを帯びた唇。

 

(ごくり...)

 

ヒツジがオオカミを部屋に入れたら駄目でしょう?

 

僕に襲われちゃっても、文句は言えないよ?

 

「......」

 

僕はしばし、ユノの寝顔に見惚れた。

 

キスしたい...その柔らかそうな唇を味わってみたい!

 

僕はそうっと、その場に腰を下ろし、片膝をついた姿勢になる。

 

僕は傾けた頬を、ユノの顔にじりじりと近づける。

 

ユノは眠ったままだ。

 

あと1センチでユノの唇に着地する...。

 

パチっとユノの目が開いた。

 

「......」

「......」

 

僕らはしばし、目を合わせたまま一時停止していた。

 

「......」

「......」

 

ユノのとろんとした目の色っぽさに、僕の胸はドキドキ高まる。

 

そのドキドキに性的なものが含まれていないことに、驚く。

 

「......」

「......」

 

 

 

「ぐー」

「!!!」

 

 

ユノのまぶたが落ち、彼は眠りの世界に帰還してしまった。

 

「......」

 

今のは単に寝ぼけていただけらしい。

 

ユノに見惚れてキスしようとした瞬間...気付かれずに済んでほっと胸をなで下ろしたけど...。

 

なんだこいつ...。

 

これまでの僕だったら、濃厚なキスで相手のヤル気を振るい立たせ、目覚めの第一発にしゃれ込むのに。

 

もっとも、そんな朝は滅多にないんだけどね。

 

(半同棲状態だった恋人や前夜激しい行為にふけったせいで寝坊した朝などは、目覚めのセックスをしてしまうこともしばしば。あまりやり過ぎると、仕事に支障が出るからほどほどに)

 

とにかくユノ相手には、肉欲を刺激する方法は取れないのだ。

 

調子が狂う。

 

心の距離を縮めるなんて...僕にしてみたら高校生以来だよ。

 

恋のふわふわした気分を楽しめた頃のこと。

 

必要以上に心同士を接近させ、僕の感情をいたずらに揺さぶられることは御免なのだ。

 

気が進まないけど、この方法をとるしかない。

 

ユノは善良そうだから、彼に興味があるフリをして、ニコニコしていれば、コロッと騙されそうだ。

 

2シーターのソファに四肢を窮屈そうに折り曲げて、毛布にくるまるユノ。

 

僕をベッドに寝かせて、自分はソファに。

 

優しい奴だ...まてまて、感動してどうする。

 

「ぐごー」

「!!!!」

 

ごろん、と寝返りをうったユノが床に転げ落ちたのだ。

 

ユノの頭がごつん、といい音を立てた。

 

飛び退かずに、受け止めてやればよかったと反省した...ところが。

 

「ぐーぐー」

 

ユノはまだ眠っている。

 

僕の目は自然とアソコに吸い寄せられる...。

 

男の生理現象。

 

スウェット生地を高々と内から押し上げている。

 

「ごくり」

 

分かりやすく迫ってもいいけれど、がっついた途端、ユノはドン引きするだろう。

 

僕の恋愛対象、寝る対象が男だということを、ユノに教えてしまったことを、ちょっと後悔した。

 

警戒させてしまったせいで、さりげなく何気なく、肉体的な距離を縮めようと思っていた作戦が使えなくなってしまった。

 

ユノに触りたい(特にアソコ)衝動を抑えた。

 

心理作戦に変更だ。

 

つまり、友人関係にまで発展させて、できるだけ多くの時間を側で過ごすことで、警戒心を緩められそうだ。

 

僕がどうしてここまで、ユノに執着してしまったのか、分からない。

 

見込みがなければ、さっさと他の男をハントしに行けばいいことだ。

 

もしくは、過去の男たちを当たればいいことだ。

 

僕の目の前であどけない寝顔をさらしている、美形の男。

 

僕の嗜好に分かりやすい嫌悪感を示したのに、酔いつぶれた僕を置き去りにせず連れ帰ったお人好しな性格。

 

...そして何より、ユノは真正ぴっかぴかだ。

 

ふふふ、僕が男のよさを教えてあげる。

 

 

(つづく)

 

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