(11)ぴっかぴか

 

 

~ユノ~

 

ピピピと目覚ましアラームの音。

 

え~っと、今日は...休みだ...まだ寝ていられる。

 

手探りで枕元に置いてるはずのスマホを探る。

 

俺の手は一向にスマホを見つけられない。

 

スマホはどこだ?

 

背中が痛い...ん?...手の平の感触からして、俺は床に寝ている!?

 

すぅっとまぶたをゆっくりと開けると、真上に四角形の照明...やはりベッドの上じゃない。

 

「...んっ...」

 

それにしても、今朝の朝勃ちはリアルというか、触感を伴うというか...。

 

手を下半身に下ろしていくと...。

 

「!!!」

 

俺の手に何かが触れたことに驚愕し、ガバっと飛び起きた。

 

そこに、尻もちをついた一人の男がいた。

 

真ん丸な目、ホワイトアッシュ・ヘア、第4ボタンまで開けた胸元、ぴったぴたの革パンツ。

 

「...あんた...!」

 

思い出した。

 

昨夜、美形のピタパン・ボーイを連れ帰ったんだった。

 

「...おはよう」

 

その男...チャンミンは身体を起こすと、完璧な歯並びでにっこり笑った。

 

「おはよう...」

 

待て。

 

うっかり、爽やかでかつ、甘やかな笑顔に騙されるところだった。

 

俺とチャンミンの手がぶつかったことを思い出したのだ。

 

俺はとっさに、自身の股間を両手で覆った。

 

チャンミンは俺の大事なトコロを触ってたんだ、きっと!

 

(真っ先にそう決めつけてしまう俺は、つくづく偏見の塊だ)

 

俺のアソコに興味津々なんだ!

 

俺のアソコが狙われてる!

 

「ボタン...乳が見えてるぞ」

 

「え?

...あ、ホントだ」

 

俺の指摘に初めて気づいた風に、チャンミンは第一ボタンまできっちりと留めた。

 

わざとらしい...いかにも、わざとらしい。

 

チャンミンは裸の胸を俺に見せつけてるんだ、そうに決まってる!

 

(俺に見せつけてどうしたいんだ?

 

俺にドキッとしてもらいたいのか?

 

あいにく俺は男の胸を見たって、どうってことないのだ。

 

ムラっとするのは女の子の胸を見た時だ。

 

ムラっときても俺はグッと堪える。

 

身体を触るくらいはするけど、そこまでだ。

 

大事なトコロ同士を繋げ合うのは、『この子なら』と身を預けられると確信した時だ)

 

俺は立ち上がり、テント状態になったソコのポジションを斜め右に直した。

 

騒がしい店でほろ酔い、失恋気分で見た時は、単なる派手できざったらしい奴だと思っていた。

 

俺の部屋というプライベートな空間...2DKの平均的な20代独身男性の部屋に、なんと浮いていることか!

 

新進気鋭デザイナ―のファンションショー、ランウェイを歩くモデルを拉致してきたみたいな。

 

あらためて見ると、チャンミンという男...いい男だ。

 

ムード重視の店内照明では分からなかったけれど、チャンミンの着ている白シャツは透け感のある素材だった。

 

タイツレベルに細身の革パンツもラメが散っていて、こんな格好で昼間の住宅街を歩かせたら、浮きまくってしまうだろう。

 

(犬の散歩中のご老人やジョギング中の女子、ベビーカーを押したママが思わず避けてしまうような...)

 

漂白された銀髪も、よく見るとアッシュブルーとブラウンのメッシュがはいっていて、髪に奥行きを出している。

 

知らず知らずのうちに、チャンミンの全身を舐めるように見ていたらしい。

 

「ねぇ、ゆの」

 

「!!」

 

チャンミンに膝をつつかれて、俺は身体をびくつかせてしまう。

 

「怖い顔してるよ?

寝不足なんでしょ?

ごめんね?」

 

「いや...俺は...その...別に...。

当たり前のことをしただけで...」

 

しどろもどろになってしまった俺はつまり、チャンミンに圧倒されていたのだ。

 

「寝起きでぼーっとしていただけだ」

 

動揺を隠すため、湯沸かしポットのスイッチを押し、シンクに溜まった食器を洗いだした。

 

「朝めし食べる?

シリアルしかないけど?」

 

振り向いてチャンミンに声をかけた。

 

チャンミンはフローリングの床に胡坐をかいて、キッチンに立つ俺を観察していたらしい。

 

どうりで背中に視線を感じたハズだ。

 

「うん。

ありがと。

二日酔いみたいだから...いいや」

 

「そうだよな。

あんた、だいぶ飲んでたから。

もし俺があの量を飲んでたら、病院送りだったよ」

 

「お恥ずかしい姿をお見せしました。

ごめんね」

 

なんだよ、その上目遣いは。

 

「ゆの」だとか「ごめんね」とか、甘ちゃんな話し言葉は素なんだろうか?

 

「それから...」

 

「!!!」

 

俺のすぐ真後ろで声がして、食器を濯ぐ手がぴたっと止まる。

 

近い近い近い近い近い...!

 

首の後ろに吐息を感じるくらいの近さだ。

 

怖くて振り向けない。

 

そうか、分かったぞ!

 

チャンミンという男、俺との間合いの取り方が近過ぎるんだ。

 

両手で包みこむように握られた手とか、酔っ払って俺の胸にしなだれかかったり。

 

何て言うのかな、抵抗なく身を預けるというか、差し出すというか...そんな感じ。

 

その手の男ってそういうものなんだろうか?

(だから俺は、偏見だらけなんだって!)

 

「僕を連れて来てくれて...ありがと」

 

俺のTシャツの裾をつんつん、って...何だよ、その可愛い仕草は!

 

「別に...放っておけなかったから...」

 

チャンミンに見られているだろううなじや肩が、むずむずした。

 

 

(つづく)

 

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