~ユノ~
ぐだぐだと渋るチャンミンにしびれを切らし、俺の方からキスを仕掛けることにした。
さすがチャンミンは恋の達人。
ぐいぐい攻めて、相手がその気になりかけたら引いてみせるといった、駆け引きを楽しんでいるようなのだ。
今度は俺が攻める番なんだろ?
チャンミンが運命の相手だと悟ってみると、この2日間の出来事の全てに意味があると 思われた。
真の恋人を探していた2人。
俺の下敷きになったチャンミンが、ぴかぴかに輝いて見える。
男の眼にしては長いまつ毛だとか、女の子のように可愛らしい。
なんだかもう、全身がゾクゾクしてしまう。
2日前の俺は、まさか2日後にこんなことになってるとは、露ほどにも想像できなかっただろう。
俺は童貞だけど、キスくらいしたことはある。
付き合ってきた女の子とのスキンシップは最大でキス止まり...でもないか、胸を触らせてもらったことがある。
それ以上、となると、這わせかけた手が止まってしまったっけ。
「俺はこの子とヤッてしまっていいのか?」と。
ところが今の俺には、ヤッてしまってもOKサインが出ている。
唇は柔らかい。
俺なりのテクを総動員だ。
(あ...。
俺、男とキスしてる。
女の子とするキスと全然変わんないじゃん)
男が相手だと 多少強引でも構わないだろうと、押し付けた唇の柔らかさ 唇を食んで柔らかさを楽しむより もっと深いところまで 舌を侵入させたい
貪るようなキス。
(やべぇ...興奮する)
「ん、ん~!」
挟み込む太ももに体重をかけ、魚のようにびちびち身体をくねらすチャンミンの動きを封じた。
ねじ込んだ舌をチャンミンの口内で、ぬめぬめとかき混ぜているうち、彼の顎のこわばりがふっと解けた。
俺の舌から逃げ回っていたのに一転、ぐいぐいと攻め側にまわった。
上顎を舐められると、ぞくりと膝の力が抜けそうになる。
さすが恋愛の達人。
キスが上手い。
気付けば、互いのうなじを己の方へ引きつけ合い、逞しく成長した股間を擦り付け合っていた。
チャンミンから唇を離し、重なり合った股間を見下ろすと、俺のスウェットパンツに勃起したものがくっきりと浮かび上がっている。
最初は嫌がっていたチャンミンのちんこも立派になっていた。
チャンミンの先走りが付着したせいで、俺のスウェットパンツの一か所が濃いグレーに変色している。
(やった!
できるじゃん。
チャンミンは男だけど、興奮できるじゃん)
嬉しくて、心の中でガッツポーズのこぶしを握っていた。
「......」
あらためて見ると、チャンミンの身体は艶めかしい。
痩せた貧弱な身体だからというわけではない。
全身つるつる脱毛済で、日々のお手入れを欠かしていないだろうすべすべもち肌をしているせいもあるが、全身からエロいフェロモンを醸し出している。
そのフェロモンに絡み取られあまたの男たちが、チャンミンを前にして組み敷きたくなるのも分からなくもない。
だからと言って俺は彼らのように乱暴なHはしたくない...したくとも、俺は経験値がゼロに等しい。
「ユノはHを神聖化し過ぎている」とチャンミンは言っていた。
「Hとはどろどろと汚いものだ」とも言っていた。
俺は自分のチンコを気持ち悪いと思われたくない。
俺のトラウマ、勃起したチンコを蔑む目で見た初恋の女の子。
でもチャンミンが相手ならば、お互い同じ突起物を所有しており、出すものも同じ者同士のだ。
心強い。
数秒の小休憩の後、俺はぐりりと股間を押し付けた。
「んっ...」
(なんつー声出してんだよ)
呻くチャンミンの声が甘く、切ない。
チャンミンはとろんとした目で俺を見上げていた。
ドキン、と心臓が鼓動を打つ。
「...ゆの」
「ごめん。
がっついちゃって」
「キス...うまいね」
「...あ、ありがと」
チャンミンの妖艶な微笑みに、俺が経験してきた女の子たちが、いかに子供っぽかったかを思い知らされた。
俺が今、相手にしているこいつは、やっぱり普通じゃない。
実は、『さすが玄人』と心の中でつぶやきかけて、慌ててその言葉を呑み込んだ。
とっさに出てしまったこの思いは、今後チャンミンと関わる上で、喉の奥にひっかかった小骨のような存在になりそうな気がした。
「ごめん、急に。
夢中だったから」
「ううん。
ねぇ、ユノ。
...ちょっと重いかな。
僕のおちんちんが潰されちゃう」
「ごめん!」
俺は慌ててチャンミンの上から飛び退いた。
(うっわ~、だせぇ、俺)
現実に引き戻された俺は、少しだけ怯みかけていた。
大量にかいた汗で、Tシャツが背中に張り付いてしまっていた。
「ふふ。
大丈夫だよ」
真っ裸のチャンミンはゆっくりと起き上がった。
「?」
チャンミンは猫のように腰をくねらせ、四つん這いで近づいてきた。
「......ねぇ」
俺の耳には「にゃあ」と聞こえた。
餌をねだる猫の鳴き声に聞こえた(猫を飼ったことはないが)
「ゆのって、美味しそう」
間接照明だけの部屋で、チャンミンの眼はギラギラと光っていた。
チャンミンにも本気モードのスイッチが入ったのだ。
「食われる!」と思った。
その気迫に負けそうになり、後ずさりしようにもヘッドボードに阻まれてしまっていた。
「ゆの」
「は、はい...」
先ほどまでの積極的な俺はどこへ行ってしまったのか。
追い詰められた俺は息を吸うことを忘れ、チャンミンの眼に射竦められていた。
ゆっくりゆっくり、チャンミンは近づいてくる。
期待と恐怖で心臓バックバク。
俺のチンコが今どうなっているのか分からない。
「!」
俺のもとにたどり着いたチャンミンは、俺のスウェットパンツに指をかけた。
「あっ!」
ひょいと、チャンミンの姿が消えた。
「はうっ...!」
瞬間、股間から背筋に電撃が走った。
じゅっ。
チャンミンの奴、下着ごと俺のチンコを吸い始めたのだ。
(つづく)
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