~チャンミン~
...死ぬかと思った。
野獣に突き上げられ、玩具のように揺さぶられ、振り落とされないようしがみついていた僕。
深々と突き刺されないよう、膝で力を逃すのに必死だった。
ユノとの初H。
Q.気持ちよかったかどうか?
A.よくなかったけど、よかった。
(僕は少々マゾッ気があるらしく、力ある者に征服される感は悪くない。
僕の経験上、自分さえ気持ちよくなればいい自分本位のHをする男ばかりだった。
どこが僕のイイところか探りもせず、ただ出し入れすればいいと思っているんだ。
掘られる側の僕は苦痛との闘いだったりする...そういう最低なHをする男たちがいる。
例え相性抜群だったとしても、僕は原則1人の男につき1回のHにすべしとルールを課している。
夜明け前にベッドを抜け出し、男たちとさよならだ)
ユノのHは下手くそだった。
チェリーにテクニックを求めたらいけないから、力任せのHにガッカリするだけ無駄だ。
賢者タイムで我に返り、「初めての行為の相手がオトコだとは!?」と後悔に襲われてもらうのは困るから、今すぐユノをフォローすべきなのはわかってる。
ひと休憩した後、2回目のHに突入するパターンも、とてもじゃないが今夜は不可能。
...なぜなら身体が動かせない。
さきほどからユノの肩に頭をあずけて息が整うのを待っているのだけど、いまだに心臓のバクバクが止まらないし、身体の震えがおさまらない。
ユノの動きは下手くそだったのに、『素質』があった。
僕の大事なところをがんがんに突かれ、内臓をもみくちゃにされた感じ。
乱暴に扱われたから 動けないんじゃないんだ。
...恐ろしい程によかった。
身体の深いところから間断なく押し寄せてくる快感に、我を失っていた。
「はあ...きつ...」
僕の目と鼻の先に、汗ばんだユノの胸がある。
多分3回はイったと思う。
快感の竜巻に巻き込まれた僕は、「あ...イッた」と認識する間を与えてもらえなかった。
1滴残らず搾り取られた感。
尋常じゃない虚脱感。
「......」
まずい...僕らの身体の相性は抜群だ。
僕を投げ出しもせず、肩を抱いてくれてて健気でイイ子じゃん。
ああ...ユノをどうしたらいいのだろう?
3択ある。
その1
マイルールを適用する。
つまり、1度寝たからバイバイするってこと。
身体を繋げてしまった今、ユノから離れられなくなりそうなんだ。
ライトな交際しかしてこなかった僕だ。
運命を信じる重たいユノのことを窮屈に思い、逃げ出してしまいそうだ。
それならば、より深い関係になる前に離れればいい。
その2
1度だけの過ちだからと、自分にもユノにも言い聞かせながら友人関係を続行する。
だって、ユノはいい奴。
Hするしないは別として、こんな男と親友になれたらいいなと思っていたんだ。
でも、会うたびにHをしていそうだ。
H込みの友人関係なんてあり得ないんだよね。
その3
ユノと交際する。
ユノに対して恋愛感情を持っているかどうかは、実のところよく分からない。
いい奴だし、身体の相性も最高だ。
運命の人だと見染められ、ユノが大事に守ってきた童貞を僕が奪ってしまった。
責任をとるべきなんじゃないかな。
こんな動機で付き合っていいものかどうか、良心がチクチクっとする。
こんなにいい男と付き合えるなんて悪くないんだけどな...。
でも、心に引っかかるものがある。
...ユノにのめり込みそうな予感がして、とても怖いんだ。
ボロボロに傷ついた過去、あの時の心の痛み、胸に差し込むような激痛を思い出すと、躊躇してしまう。
思い出に顔をしかめていると、突然「大丈夫か?」肩を揺さぶられた。
「...え?」
僕の身体を気遣う言葉をかけられ、涙が出そうに嬉しかった。
そう感じた自分に驚いた。
(よかった...。
ドン引きされなかった)
ケロッとした風のユノを見て、僕はホッとした。
男とヤッてしまったことに落ち込む男っているからさ。
「平気」って答えればいいのに、「ひどいよ、ユノ、僕を殺す気?」なんて、責めるようなことを言ってしまった。
「すまん!」
なんと、ユノは土下座したんだ。
「気持ち良すぎて、あんたのことを考えていなかった。
すまん!」
ここで思い出すのだった。
ユノとは『こういう男』なんだと。
ユノのハートはおちんちん同様、ピュアで熱く誠実だ。
力なくうな垂れたユノのおちんちんを目にした僕は、ひやっとした。
(やば)
それらしきゴミが見当たらない。
それどころか、パッケージを開けた記憶もない。
(ナマでやっちゃってた)
ユノのおちんちんを挿入する目的に集中するあまり、肝心のゴムを装着し忘れていた。
・
一緒にシャワーを浴びる前に、僕は後処理に取り掛かった。
ユノには見せたくなくて、浴室の外で待たせた。
とろとろとかき出される量がすごい。
(ああいう爽やかな奴こそ精力的だったりするんだよねぇ)
僕の指の間で糸を引くものを、しみじみと眺めた。
「もぉ...分かんないよ」
僕はその場にうずくまった。
シャワーのお湯が頭上から降り注ぐ。
「そろそろいいか?」
ドアの向こうから声をかけられ、「うん」と答えた。
開けたドアの隙間からひょこっと、ちょっと気まずそうな恥ずかしそうなユノが顔を覗かせていた。
ふわっと意識の上にのぼってきたのはこの気持ち。
「やだなぁ...すごい好きなんだけど」って。
(つづく)