(33)チャンミンせんせとイチゴ飴

 

「...」

 

互いの身体のデティールは、あいにくの暗がりで確認することができない。

 

肌と肌が触れ合い、密着することで、互いが興奮と緊張のせいで噴き出す汗で肌が光っていることも、紅潮していることを知るのだ。

 

体調不良を疑いそうなほどの発汗と発熱で、シーツは湿りシワが寄っていた。

 

「...」

 

ユノはチャンミンの頭を力強く胸にかき抱いた。

 

チャンミンの下に目をやらないようにしていることを、彼に悟られないようにしたのだ。

 

けれども、自身の下腹あたりに意識が向いてしまうのはどうしようもない。

 

敏感になった肌が、押し付けられているものの温もりや弾力、大きさや形などを感じ取っていた。

 

さらに、身体を動かすたびに、互いのもの同士がぶつかり合う。

 

(すごくイケナイことをしているかのようだ)

 

なんだかんだ言っていてもユノはノンケの男であり、いくら好きな相手であっても、慣れるまでには、もう少しだけ時間と興奮が欲しかった。

 

この程度のユノの反応など、チャンミンにとって想定内だ。

 

(...そうでしょうね。

あまり見たいものじゃないでしょうね)

 

チャンミンは、激しく唇を重ねてくるユノに応えながら、手探りで1本のチューブを手に取ると、器用に片手でキャップを外した。

 

次にチャンミンは、それ専用のクリームをたっぷり手に取り、ユノのものに塗り付けたのだ。

 

「せんせっ!」

 

突然のことに、ユノは驚嘆し跳ね起きようとしたが、チャンミンはすかさず唇を塞いだ。

 

「しーっ。

ユノさんはそのままにしていて」

 

チャンミンは耳元で囁いた。

 

むずかる幼子に「お駄賃をあげるからおとなしくしていてね」とあやす、母のような口調で囁いた。

 

「...はい」

 

ユノは素直にうなずくと、覚悟を決めて眼をつむった。

 

「うっ...!」

 

チャンミンはユノのものを上下に扱いた。

 

しゅっしゅ、くちゅくちゅと、湿った摩擦音。

 

のけぞりもだえる年下の恋人の姿を前に、チャンミンの興奮もうなぎのぼりだ。

 

たまらず自身のものを扱いてしまうのだった。

 

(さすがに、僕のものも触って、とは未だ言えない)

 

「うっ...せんせ...きもちっ」

 

チャンミンは扱くものに顔を近づけ、膨れた頭の先をぺろりと舐めた。

 

「はうっ...!」

 

当然、ユノの腰は跳ね上がる。

 

目をつむっていられたのも限界で、ユノはいろいろ繰り広げられている股間に視線を落とした。

 

「!!!!!」

 

両膝を立てたユノの股間に、顔を埋めようとしているチャンミン。

 

目に飛び込んできた刺激的過ぎる光景に、ユノが目を剥いてしまっても仕方がない。

 

男に咥えられることに嫌悪感を示したのではなく、申し訳ない気持ちに襲われたのだ。

 

ユノはこれまでの経験上、恋人にそれを求めたことはなかった。

 

とは言いつつ、背徳感が欲情を煽るともいうから、チャンミンの口の中でユノのものがサイズを増した。

 

「それ以上は...やめて...くださ...。

限界...かも」

 

根元の奥が張り詰めているのが分かる。

 

「一度、抜いておきますか?」

 

上下に扱く、チャンミンの手のスピードが増した。

 

「いやっ、やめっ!

くっ」

 

ユノの返事は、イエスともノーともとれる。

 

「遠慮せず...イってしまいなさい」

 

チャンミンは囁いた。

 

チャンミンの手の中で、ユノのものがむくむくとたくましくなってゆくことに、ぞくぞくした。

 

それは、過去の男たちに制服されてきたチャンミンが、味わったことのない『征服感』だった。

 

今この時、もだえ喘ぐ恋人が可愛くて仕方がない。

 

(ああ、欲しい。

早く欲しい)

 

チャンミンはついに、自身のものを扱き始めていた。

 

ユノを先にイカせるより先に、チャンミン自身が我慢の限界に達しようとしていた。

 

チャンミンはコンドーム(いつの間にか用意してあった)のパッケージを咥え封を切ると、硬さを失っていないユノのものに、それを手早く被せた。

(このコンドームは決して、前の恋人との使い残しではない。

ユノとこの日が訪れてもよいよう、新たに買い求めたものだ)

 

ユノはおとなしく装着されながら、快楽のあまりおかしくなってしまった意識で、近くで揺れるチャンミンのものに釘付けになっていた。

 

(何がなんだかよく分かんなくなったけれど、今はもうヤるしかないでしょ?)

 

ユノの頭も下半身も暴発寸前だった。

 

(昼間は生真面目なせんせの裏の顔。

男の身体に興奮し、鼻息荒く求めてくるせんせ。

あたりまえだけど、せんせにはちんこが付いていた。

勃つかどうか心配してたけど、何とかなるものなんだな。

さすがせんせ、慣れていらっしゃる。

ああ...俺もいよいよ男デビューか。

せんせのことは好きだけれど、やっぱりイケナイことをしているように思えるよ)

 

ひとつひとつ挙げだしたらきりがない。

 

「ユノさん...こっち。

来て」

 

ユノはチャンミンに促されて身体を起こし、膝立ちになった。

 

チャンミンはユノの前で四つん這いになると、お尻を向けた。

 

そしてやおら、ユノのものをつかんで、自身の方へと引き付けた。

 

「!」

 

「ここ...ここです」

 

チャンミンはユノの先を、入口に押し付けた。

 

「うっ...」

 

入浴の際、十分に解されたそこは、つぷっとユノの先に吸い付いた。

 

「そのまま...来て」

 

「...は、はい」

 

ユノはチャンミンの細い腰を両手でつかんだ。

 

 

解してあったとしても、女性のそことは違う。

 

狭い入口で、最初はどうしてもねじこむ格好になる。

 

「...っ...!」

 

(マジでキツイ)

 

ユノの頭は、ぎゅうぎゅうに締め付けられる。

 

(ぶっちぎれそうだ)

 

一度腰を引くと、汗で滑るチャンミンの尻をつかみ直した。

 

そして、前後に抜き刺ししながら、奥へ奥へとねじ込んでいく。

 

「...くっ」

 

突き出されたチャンミンのお尻が、ぼうっと白く浮きだっている。

 

ユノのものを迎え入れながら、チャンミンは大きく深呼吸をした。

 

(想像以上にサイズが...)

 

「せんせっ...無理かも。

入んね...かも」

 

「大丈...夫です。

ゆっくりでいいから...」

 

「きっつ...。

おっかしいな...緊張してるせいっすかね?

くっ...」

 

ユノのものは徐々に力を失っていった。

 

「ユノさん...?」

 

「......」

 

ユノは無言で、チャンミンのそこから引き抜いた。

 

ずるりと引き抜いたユノのものは硬さを失い、首を垂れつつあった。

 

チャンミンはユノの方へ向き直ると、ユノの足元に伏せた。

 

「せんせっ...ダメっす...!」

 

チャンミンは、たった今まで自身の中に咥えこんでいたばかりのものを口に含んだのだ。

 

「やめて。

せんせ、そんなことしないでください!」

 

チャンミンはユノの制止を無視して、頭を動かした。

 

「せんせ、止めてくださいってば!」

 

チャンミンは必死だった。

 

(ここで中断してしまったら、ユノの自信を失わせてしまう!

トラウマになってしまう!

今日すぐに挿入は早すぎたのかも。

今はまだユノにはハードルが高かったのだ、きっと)

 

「やめて、って言ってるでしょう?」

 

「!!」

 

ユノに肩を押しのけられたせいで、チャンミンは尻もちをついてしまった。

 

「すみません!」

 

「いえ......大丈夫です」

 

チャンミンはユノの助けを借りて、身を起こした。

 

「せんせ...ごめん」

 

ベッドの上で、二人は向かい合わせになった。

 

ユノは両腿に乗せたこぶしを、ぎゅっと握りしめた。

 

「ごめん。

せんせ...ごめん」

 

「ユノさん、いいんです。

いいのですよ」

 

「うまいこといかなくて...すんません」

 

「ユノさん...。

初めては、こんなものですよ」

 

「でも...すんません」

 

チャンミンは手を伸ばし、ユノの柔らかな頬を撫ぜた。

 

ユノの熱い涙がチャンミンの指を濡らした。

 

「せんせが好きなのに...。

うまいことできなくて...すんません」

 

「ユノさん、もう謝らないで。

焦った僕が悪いんです」

 

「せんせが好きなのに...。

緊張してしまったみたいで...あははは。

俺って駄目だなぁ」

 

憧れと恋愛、そして性愛との距離がまだまだ離れていたユノだった。

 

「俺...アナル...初めてだったんで。

多分、それが原因だと思うっす。

せんせとはめっちゃ、したかったんですよ?」

 

チャンミンはユノの頭をかき抱いて、「そうあって欲しいなぁ」と思った。

 

(ユノは口に出さないけれど、男と関係を持つことに抵抗感がないはずはない。

急に我に返ってしまったんだろうなぁ)

 

(つづく)

 

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