旧式のエアコンは運転音がうるさいばかりで効きが悪く、涼しいとはいいがたい室温のせいもあるが、チャンミンの身体はアルコールと欲情によって熱の塊のようだった。
チャンミンの額からぽたりと落ちた汗は塩辛かった。
「ユノしゃ~ん」
キスを迫るチャンミンに首をぐらぐら揺さぶられながら、ユノの脳裏に30時間前に起きたあの一件がよぎった。
(今の勢いにのったら、うまくできるかもしれない。
でも...。
俺...うまくできるのだろうか?
あの失態を見せてしまうんじゃないだろうか?)
「......」
半日前の電話口で、「焦らずにいきましょう」と話したのはチャンミンの方だったにもかかわらず、アルコールが彼の理性を軽々と飛ばしてしまった。
チャンミンはユノの上に跨っている。
股間に血流が集まり始めているのをはっきりと、ユノの下腹は感じとっていた。
その存在をあえて分からせようとしているのか、チャンミンは怒張しはじめた自身をユノにこすりつけていた。
(くっそ...)
ユノは迷っていた。
(場所が問題なんだ。
ここが実家ってのが問題なんだ)
必死に頭を巡らせているおかげで、ユノのものは力ない。
「あれれ?
元気ないですよ?」
チャンミンはユノのそこを人差し指でつつ、っと撫ぜた。
「せんせっ...待ってください」
ユノはドアを見、耳をすました。
父親は怪我で階段を上がってこないし、母親も妹も外出中。
(もしかして...できるんじゃね?)
ユノはもう一度、ドアを見、耳をすまし、腕を伸ばして子供くさいサボテン柄のカーテンを閉めた。
「声、我慢できますか?」
「はい、よゆーです」
「じゃあ...アレ、持ってるっすか?」
「無くても構いません」
「ダメっすよ!」
「無しで構いません」
チャンミンはユノに構うことなく、Tシャツと汗で湿ったズボンをべろんと裏返しにしながら苦労して脱いだ。
ポイっと放られた衣類は、学習机の上に落下した。
「いやいやいやいや。
そういうわけにはいかないっす!
待って、待ってて」
ユノはベッド下に置いたバッグに手を伸ばし、外ポケットから目的のものを探りだした。
「さすが、用意周到ですね。
そうですよね、ユノさんはモテますから」
どうやら機嫌を損ねたらしい、チャンミンはつん、と顔をそむけてしまった。
「せんせ~、誤解しないでくださいよ。
これ、せんせの為ですってば。
ゴム買うのは久しぶりっす」
「その言葉、信じてあげましょう」
「そうっすよ。
俺は嘘つかないっす」
「ふ~ん。
女の子と花火行ったじゃないですか?」
解決したはずの合コン問題もチャンミンにとって言葉上のものに過ぎなかったようで、彼の中でしこりとなって残っていた。
「きっとこの先もずっと、このネタでねちねち言われるんだろうな」と、ユノはため息をついていた。
「ホント、あのことはすんません」
「いいですけど」
こんな会話を交わす間に、あれよあれよとユノは全裸にされてしまった。
チャンミンは脱がせた衣類を放ってゆき、ユノの下着はハンガーラックに引っかかった。
「ユノさん...いいですね。
すごくいい」
ユノの引き締まった筋肉の凹凸、がっちりとした腰骨、髪と同色の陰毛に、勃ちあがりかけた中心。
「ああ、絶景」と心の中でつぶやく。
チャンミンは頭のてっぺんから足先まで、ユノの身体を舐めまわすように見ると、にたり、と笑った。
(どきっ)
一糸まとわぬ姿を眺められているうち、ユノのものは硬さを増してゆく。
なぜか、女性に見つめられるよりも興奮した。
「せんせ...やっぱ、ここはマズいっす」
ユノは視線をドアに向けた。
階下から呼ばれたら...あのドアノブが回ったら...。
チャンミンは横座りすると、ユノのすぐそばまで顔を寄せた。
ふっと息を吹きかけた。
「せんせっ!」
「ふっ。
ほら、出てる」
「何が、っすか?」
「お汁」
チャンミンはこちらを見下ろすユノと目を合わせると微笑を浮かべ、先端にぷくりと膨らんだ雫をぺろりと舐めた。
「!!」
ユノは呻き声をあげそうになる口を手で塞いだ。
(つづく)
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