(13)TIME

~チャンミン~

 

 

「えっと...」

行き場を失った、僕の両手。

「えーっとね、シヅク?」

僕の背中に回された、シヅクの両手を意識する。

ゆうべのようにひんやりとした手じゃない。

汗ばんで、熱い熱い手だった。

僕の喉はからからだった。

(参ったなぁ)

シヅクは、僕の胸に顔を押し付けたまま、低い声でつぶやいている。

「...心配したんだから」

「あのさ、シヅク?」

「......」

シヅクは僕の胸に頭を押し付けたまま動かない。

シヅクに驚かされて、現状把握できずにいたけど、

この状況は、かなり...かなり...恥ずかしい...。

僕はなんて格好をしてるんだ。

シヅクの涙も止まったみたいだ。

 

「あのね、シヅク?」

「......」

 

「あのね」

僕は、出来るだけ優しい声を意識して、シヅクに話しかけた。

「僕...パンツを履いても...いいかな?」

「!」

ぴたっと、シヅクの動きが止まった。

僕は、じっと彼女の動きを見守っていた。

シヅクは、そうっと腕をとき、

小さな声で「失礼しました」と言うと、ロボットのように回れ右をして、バスルームを出て行ったのであった。

(えっ?)

「はぁ...」

僕は、深く深く、ため息をついた。

(びっくりしたー)

今日の僕はため息をついてばっかりだ。

​(急展開過ぎて、追いつかないよ...)

湯上りだった身体も、すっかり冷えてしまった。

脇の下にひどく汗をかいていたようだ。

僕は下着をつけ、黒いスウェットパンツとTシャツを身に着けると、シヅクを追った。

シヅクの想像力が、ずいぶんとたくましいことを、ひとつ学習した僕だった。

 

 

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