~チャンミン~
「えっと...」
行き場を失った、僕の両手。
「えーっとね、シヅク?」
僕の背中に回された、シヅクの両手を意識する。
ゆうべのようにひんやりとした手じゃない。
汗ばんで、熱い熱い手だった。
僕の喉はからからだった。
(参ったなぁ)
シヅクは、僕の胸に顔を押し付けたまま、低い声でつぶやいている。
「...心配したんだから」
「あのさ、シヅク?」
「......」
シヅクは僕の胸に頭を押し付けたまま動かない。
シヅクに驚かされて、現状把握できずにいたけど、
この状況は、かなり...かなり...恥ずかしい...。
僕はなんて格好をしてるんだ。
シヅクの涙も止まったみたいだ。
「あのね、シヅク?」
「......」
「あのね」
僕は、出来るだけ優しい声を意識して、シヅクに話しかけた。
「僕...パンツを履いても...いいかな?」
「!」
ぴたっと、シヅクの動きが止まった。
僕は、じっと彼女の動きを見守っていた。
シヅクは、そうっと腕をとき、
小さな声で「失礼しました」と言うと、ロボットのように回れ右をして、バスルームを出て行ったのであった。
(えっ?)
「はぁ...」
僕は、深く深く、ため息をついた。
(びっくりしたー)
今日の僕はため息をついてばっかりだ。
(急展開過ぎて、追いつかないよ...)
湯上りだった身体も、すっかり冷えてしまった。
脇の下にひどく汗をかいていたようだ。
僕は下着をつけ、黒いスウェットパンツとTシャツを身に着けると、シヅクを追った。
シヅクの想像力が、ずいぶんとたくましいことを、ひとつ学習した僕だった。
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