30.マカロニ-TIME第1章-

~シヅク~

 

「美味しそうな匂い!」

「グラタンだよ」

チャンミンは、パッケージを見ながら答える。

「ほぉ、グラタンなんて凝ったものを」

「焼くだけだから」

白いキッチンカウンターの上は、オーブンと真新しい炊飯ジャーのみ置かれていて、スッキリとしている。

(チャンミンっぽいなぁ)

私は、キャビネットの扉を開けたり、冷蔵庫の中を覗き込んでいると、チャンミンは

​「シヅクは邪魔だから、あっちに座ってて」

と、私の背中を押した。

「はいはい」

リビングのソファに座って、キッチンに立つチャンミンを眺める。

(一週間前は、むっつり、モジモジ君だったのに、この変わりようは!)

ボヤキながらも、私はチャンミンに見惚れていた。

(カッコいい奴やな)

​実際、チャンミンは通り過ぎる人が思わず振り向いてしまうくらい、美しい容姿の青年だった。

​ドームの中で、もの思いにふけっているチャンミンを見かけた時も、そう思っていたが、

今は、身近な存在になったからか、よりリアルに彼の美しさが分かる。

手足が長く、動作も冴えている。

鼻梁の額から伸びるラインが美しい横顔。

何度もオーブンを開け閉めしてみたり、冷蔵庫から飲み物を取り出して、テーブルに並べたりする動作が微笑ましい。

​グラタンのパッケージを読むくそ真面目な目元、

眉根を寄せて、タブレットを取り出し調べ物をしながら、つぶやいているところ、

グラタンの焼き具合をチェックして、「よし」と口に出してるところ。

それから、「不法侵入」をした私に腹を立てて怒った表情。

チャンミンの気持ちが、表情に現れているところを見ることができて、幸せだと思った。

明らかに、彼の中で変化が起こったらしい。

嬉しくもあり、同時に「寂しい」と思った。

チャンミンに渡す予定の、お土産の入った袋を意識した。

(チャンミン、ごめんな)

心の中で、彼に謝った。


チーズの焦げる、いい香りが漂ってきた。

「シヅク、火傷するから、そこどいて!」

チャンミンの手には、タオルに包んだ焼きあがったグラタン。

グツグツと音をたてるマカロニグラタン。

一生懸命、私をもてなそうとしているチャンミン。

テーブルに並べられた、2人分には多過ぎるお皿、料理とお酒。

何もかもに...、

感動するんですけど...。