~ユノ~
チャンミンはあそこを膨らませたまま、ドアまで行った。
「ユノも手伝って!」
「えっ、えっ!?」
「早く!
そっち持って」
「わ、わかった」
雑誌が詰まったカラーボックス(重い!)を、二人でドアの前まで引きずった。
内開きのドアを、カラーボックスで塞いだのだ。
「これで安心でしょう?」
ばーさんは入ってこないけど...入って来られないけどさ、ここまでするか、普通?
「続き」
先にベッドに横たわったチャンミンは、両腕をひろげて「おいでおいで」と手をひらひらさせた。
俺はチャンミンに覆いかぶさり、べろべろのキスを交わし合う。
「...んっ...ふっ...」
それぞれ下に伸ばした手で、ファスナーを下ろし下着の中からブツを取り出した。
「あ...はぁ...」
そして、互いのブツを握り上下させる。
熱い吐息、鼻息が頬に吹きかけられる。
「...ねぇ...っ...」
「...ん...何?」
「...あそこ...触ってみる?」
息継ぎで唇を離したタイミングで、チャンミンが言った。
「あそこって?」
「ここだよ」
チャンミンは俺の手首をつかむと、自身の後ろに誘導した。
「!!!」
俺の指先は、チャンミンの谷間の底にある。
俺はこの展開に頭がついてこない。
俺を見上げるチャンミンの目がマジだった。
喜怒哀楽を消した真顔だった。
「...チャンミン。
本気?」
チャンミンはこくり、と頷いた。
手に入れたばかりの『恋愛メソッド』に感化されたのだろうか?
「えっと...。
チャンミン...。
...そういうこと?」
「...うん」
チャンミンは俺と同じストレートだ。
「話をしようか?」
俺はチャンミンのケツから手を離し、彼に対面して胡坐をかいた。
「正直に言おう。
俺も早く『したい』
ここを見れば...分かるだろ?」
俺が指さすソコをチャンミンはじっと見つめた後、こくんと頷いた。
「俺さ...男とやったことない」
「僕も...。
そもそも僕の場合は、女の子相手でも...やったことない」
「そうだったよな」
数日前に俺と付き合うようになる前は、チャンミンにも彼女がいた。
アレを思う存分できるはずの旅行先で、チャンミンはうまくコトを成せず、そんな彼を彼女...Dはボロクソに言っていたのだ。
「難しく考えなくてもいいと思うよ」
チャンミンは腰下までずり落ちたボトムスを引き上げた。
「そりゃそうだけど...」
チャンミンと抱き合い、腰を擦り合わせあい、ブツをしごき合う間の俺は、モーレツに興奮していた。
それなのに、チャンミンのケツに指をいざなわれた時、俺の指は動かせずにいた。
怖気付いていたこともあるが、急に我に返ったのだ。
チャンミンは男だから、当然『穴』はないわけで...。
チャンミンとコトを成すということは...アソコに挿れるということだ。
チャンミンの言う通り、俺は物事を重大に、大袈裟に考え過ぎているせいなのかなぁ。
ケツを俺に突き出したことから、チャンミンはそっちの気満々だったわけで...。
そうじゃなくても、チャンミンと抱き合った時に、役割と言うか...どっちがそっちなのかが自然と決まっていた。
敢えて言葉にして確認したわけじゃないけど、さ。
こういうのって相性?
二人の関係性?
願望?
そういうので決まるんだなぁと、新しい発見をしたのだった。
「入るモノなんだろうか...?」
勇気を振り絞ったわりには、つぶやき声になってしまった。
「だからさ、難しく考えすぎなんだよ」
「なあ、チャンミン。
どうしてもセックスをしないといけないんだろうか?」
「何言ってんの、ユノ?」
俺の悪いところは、何事においても熟考し過ぎてしまい、答えが出るまでに少々の時間を要してしまうところだ。
なんせ、チャンミンから目を離せず、理由なく惹かれてしまった理由を求めて、さんざんひねくりまわしていて、チャンミンからのキスがなければ、今のような関係になっていなかった。
でも俺という人間は、答えが出てからの行動は早いのだ。
「怖い、というか...。
俺はいいけどさ、チャンミンを怪我させそうで。
だってさ、俺のブツが果たして挿るのかどうか...。
これくらいあるんだぞ?」
俺は人差し指と親指を輪っかにして、空気のブツを握ってみせる。
「え~。
そこまで太くないよ。
これくらい?」
チャンミンも空気のブツを握ってみせた。
「そこまで細くねぇよ!」
「ふふふっ。
冗談だよ」
「話が反れた。
サイズの話をしているんじゃないんだ」
指先に触れたチャンミンのソコの感触を思い出してみる。
女の子のものとは違って、キュッと固く閉じられていた。
どう考えても無理だろ...。
「だ~か~ら。
ユノは深刻に考え過ぎなの!
女の子とするときも、ソコを使うんでしょ?」
「やったことねーよ。
今までみたいのでダメかな?
触りっこも気持ちいじゃん」
弱腰の俺に、チャンミンは「駄目ダメ」と言って喝をいれた。
「しごき合いっこは未だ5,6回くらいしかやったことないし、あれはあれでいいよ。
でもねぇ...僕はヤダ。
ユノと究極の愛し方をしたいんだ」
ずいっと乗り出したチャンミンの頭を、ポンポン叩いた。
「分かってるよ。
気軽にいこうか。
よし!
チャンミン、スマホを出せ」
俺たちはテーブルの上に置いたスマホを、それぞれたぐり寄せた。
「情報収集だ」
今日になるまで俺は呑気者なことに、この類のことを調べてさえいなかった。
もっとずっと後に考えればいいと考えていたから。
検索結果をノートにメモを取るチャンミンを見て、こういう真面目なところが彼の魅力のひとつなんだなぁとしみじみ思った。
「ユノ!
手が止まってるよ!」
「ごめん!」
コンコンとノックの音。
「!!!」
「!!!」
チャンミンは、「どうぞ!」とドア向こうに声をかけた。
助かった!俺たちは服を着ている!
ガタガタとドアが揺れている。
「しまった」
俺たちはベッドから飛び降りて、ドアを塞いでいたカラーボックスを除かした。
「ばあちゃん...はあはあ、ごめん」
「あらあらあら。
邪魔したのかしら?」
「はあはあ...全~然」
息を切らす俺たちに、ばあさんはジュースとクッキーが載ったトレーをチャンミンに手渡した。
ばあさんは意味深な笑みを浮かべると、階下へ戻っていった。
(つづく)