~ユノ~
あの夜、俺は『客』だったはずだ。
ビニール製のベッドがあるきりの、アレする目的のための部屋。
久方ぶりにチャンミンを抱きながら、自分が『客』なのか『商品』なのか分からなくなりそうだった。
出逢いの夜。
俺のお相手として選ばれたチャンミンを、手っ取り早くイカせ、あの場から一刻も早く立ち去りたかった。
俺は『客』でチャンミンは『商品』だった。
・
着ていたものを脱いだ。
ベッドに横たわらせた下着姿のチャンミンの上に、俺はのしかかった。
俺の鼻先に迫るつんと立った乳首を口に含んだ。
「...はぁ、あ、んっ...」
舌先で転がし、もう片方を摘まみひねり、押しつぶした。
「いいっ...いいっ、あん」
わざと音をたて吸いあげ、摘まんだ乳首を引っ張った。
のけぞるチャンミンの白い喉と、青いチョーカー。
俺の腰はチャンミン両膝に抱えられる。
「もっと...もっと強く」
時間をかけて、両乳首をいたぶった。
乳輪の円周を尖らせた舌でたどったのち、軽く歯をあてた。
「もっと...もっと」
チャンミンの乞いに応えて、噛んだ上で限界まで引っぱった。
俺の下でチャンミンの身体が、陸に上がった魚のように跳ねる。
十分焦らした末、脇腹を手の平で撫ぜ上げ撫ぜおろす。
「...は...あぁ...」
初めて抱いた時にすぐにわかったのは、チャンミンは感じやすい身体の持ち主だということ。
脇腹まで下りた唇をチャンミンの首筋まで戻し、耳下を強弱をつけて吸う。
「んふっ...ふぅ...ん」
チャンミンの首筋がさざ波のように粟立った。
俺の片手はチャンミンの尻を撫ぜ、決して谷間の奥には指を埋めないよう、割れ目に沿って行ったり来たりさせた。
布面積の小さい下着の薄い生地は、あれの形をくっきりとひろっている。
尻を焦らしながら、前の膨らみを優しいタッチでこすってやる。
「...あっ...はぁ...」
みるみるうちにそれは生地を押し上げ、小さな布面積の中で窮屈そうだ。
それでも未だ、脱がさない。
窪ませた手で、生地の上から形に沿って柔く揉んだり、擦ってやる。
「すごいねチャンミン...興奮してる?」
「はい...きも、気持ちい...」
「もっと触って欲しい?」
「はい。
もっともっと、触って」
俺はふっと笑い、
「お客とやってる時も、こんなに勃たせていたの?」
『犬』時代の話は御法度のはず。
でもなんとなく...女のように組み敷かれるチャンミンを前にして、俺にすっかり身を預ける彼と触れ合ってみて...なんとなく分かったことがある。
その者がどちらの傾向が強いかを、どれだけ早く見抜けるのかが『犬』の人気に関わってくる。
いたぶられ慣れたチャンミンの身体。
ただ優しく抱くだけじゃ、チャンミンは満足しないのでは、と。
店でも前戯なしで挿入したあの時、チャンミンの目は恐怖と欲が混ざり合ったものだった。
「お客はっ...僕のがどうなってるなんて、気にしないっ。
はぁ...もっともっと触って。
お兄さん、お願い触って?」
爪先で亀頭の縁を引っかいた。
チャンミンの腰がぶるっと震えた。
チャンミンの言う通りだ。
お客の大半は、自身がイクことしか考えていない。
中には『犬』の身体で遊びたいお客もいるが、苦痛を伴うものも多く、ウケ専のチャンミンは痛い思いをすることも多かっただろう。
布地の1点がじゅくりと湿ってきた。
「糸がひいてるよ?」
「...もっと、もっと...!」
チャンミンは俺の手首をつかみ上下させた。
「...んっ...ふ、ふっ...」
「こうして欲しいんだろ?」
股ぐりをずらして、中身をむき出しにする。
下着からそれの先端がはみ出た光景に、俺の興奮は高まる。
透明な雫が今にもしたたりそうだ。
完全に勃ちあがったそれの先端から根元へと、塗り広げるようにスライドさせた。
だけど、尻に回した手はそのまま、割れ目をくすぐるだけ。
「あ...ん、はっ...はぁ」
女のように甲高く、掠れた喘ぎ。
反応するこの声は、『犬』時代に身につけた演技の声なのか。
大き過ぎる喘ぎに、俺はチャンミンの顎をつかみ、耳元で囁いた。
「俺は『お客』じゃない。
俺相手に『フリ』は止せ」
「ちがっ...違うもん」
チャンミンの根元をぎゅっと握りしめた。
「あぅっ...!」
「俺としたかったんだろ?」
潤ませた目でチャンミンはこくこくと頷いた。
もっときつく根元を締め付けた。
「感じているフリはよせ」
「違うもんっ。
気持ちいいもん。
離して...っく。
痛い...お兄さん、痛いっ」
解放してやると、チャンミンは俺と目を合わせたまま、下着を脱いだ。
「わざとらしい声は出すな。
萎える」
「ごめっ...ごめんなさい」
チャンミンが店1番だった理由も分かっていた。
中指を立て俺を誘っていた。
つんと顎をそびやかせ、小馬鹿にするような挑戦的な眼で俺を見ていた。
ところが、世を舐め切った目付きをしているわりに、その口元がわずかに震えていて、青ざめていた。
怯えていた。
・
恐怖の混じった眼の色と、お客の征服欲を刺激する喘ぎ。
全裸になった俺たちは、再び身体を重ね合う。
互いの下腹で挟まれた俺のそこは、確かめなくても固く張り詰めている。
互いのそれは擦れ合い、互いの分泌液が互いの下腹を濡らした。
心得ているチャンミンは大きく太ももを開く。
自身の膝を抱え高く腰を突き上げ、そこを露わにした。
目前にさらされたそこは、女のものを目にした時よりもそそられた。
「口が開いてるぞ。
おまえはどスケベな雌だ」
「...だって、お兄さんが...」
唾液をたっぷりと含ませた親指を、ずぷりと突っ込んだ。
指を回転させ、その穴を十分に広げる。
そうしなくても、既に柔らかく緩んでいて、いつでも俺のものを受け入れる用意はできていた。
「そこっ...そこがいいっ...もっと...もっと」
チャンミンの胸先をひねり上げながら、尻に埋めた指のピストン運動で、チャンミンの尻にぶつかった手の平が、卑猥な音を立てた。
瞬間、チャンミンは腰を引き、俺の指という愛撫から逃れた。
「お兄さんのも」
俺の下からすり抜けると、チャンミンは俺の肩を押して仰向けにした。
俺に尻を向けてまたがった。
そして、俺のものを喉奥まで食らえ込んだ。
(つづく)
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