(いちいち言葉にするな!)
チャンミンの切羽詰まった表情に、ユノはうんうんと頷いた。
チャンミンは気持ちを落ち着かせようと、ふぅっと息を吐いた。
斜めに傾けた頬をユノに寄せる。
(緊張する)
熱で潤んだユノの瞳が、かすかに揺れた。
額同士をくっつけると、互いの鼻先が触れた。
2人の額は、熱く火照っていた。
(ドキドキする!)
ユノはぎゅっと目をつむった。
唇同士が触れるだけの、軽いキス。
次は、互いの唇の柔らかさを確かめるキス。
頬の傾きを変えて、唇の形をたどるキス。
恐る恐るだったチャンミンにも勢いがついてきた。
唇も顔も閉じ込めるかのように、ユノの両頬を手で包み込んだ。
(チャンミンのキス...不器用だけど...いい感じ)
わずかに開けた唇の隙間を通して、二人の舌が触れ合った。
「!!」
とっさにチャンミンは舌をひっこめたが、ユノの熱い手が、チャンミンのうなじにかかって、ぐいっと引き寄せた。
「!!」
ユノの熱い舌がそっと忍び込んできて、躊躇していたチャンミンもそっと伸ばす。
(柔らかい...。
そして、気持ちいい...)
いったん唇を離し、顔の傾きを逆にして口づける。
さっきより深く。
ユノの舌がチャンミンのそれに絡んだとき、チャンミンは自身の中に火がついたのがはっきりと分かった。
チャンミンもユノに応えて、彼の中に舌を忍ばせる。
知らず知らずのうちに、ユノの頬を挟む手に力がこもった時、
(マズイ!
これ以上はマズイ!)
下半身の疼きに気付いたチャンミンは、内心焦りだした。
頬を包んだ手を、胸に、腰にと滑らしていきたくなった。
(...するわけには、いかない...)
と、首に巻き付けられたユノの腕がゆるみ、同時に2人の唇が離れた。
「ふう...」
チャンミンは尻もちをつくように座り込んだ。
(ドキドキする。
この感覚は、一体なんなんだ!)
ユノに負けないくらい、全身が熱かった。
胸に当てた手の平の下で、鼓動が早い。
「一緒に寝るか?」
ユノはポンポンと、マットレスを叩いた。
「えっ!?」
思いがけず大きな声が出してしまったことに、チャンミンは驚く。
「それとも、うちに帰って寝るのか?」
「いやっ、それは...」
「寝るだけだろうが。
まさか...チャンミン!
俺とどうこうしようって、考えてたのか?」
(どうこうするつもりはなくても、抑えられるかどうか...自信がない)
「そばにいて、朝まで」
ユノの言葉に一瞬固まったチャンミンだったが、素直に「うん」と頷いた。
顔を赤くしたチャンミンは、
「失礼します」と言うと、そろそろとユノの隣に横たわった。
「!!」
(おいおいおいおい!
冗談で言ったのに、本気にしたのか!?)
ギョッとしたユノは、触れ合わんばかりに接近したチャンミンを横目で見る。
(忘れてた。
チャンミンには冗談が通じないんだった!)
「......」
「......」
(熱が出てしんどいどころじゃなくなった。
もっと熱が出そう!)
(ユノのお世話をする僕が、ユノのベッドに寝てどうするんだ!)
いろいろあった1日だった。
(病院へ行った。
ユノとカイ君が一緒にいるところを見て、不快になった。
ポンプ室でユノと閉じ込められた。
震えるユノを抱きしめた。
家に帰って、自分の気持ちを振り返ってみた。
その時、自分の気持ちの答えが見つかった。
ユノの顔が見たくなって、居ても立っても居られなくなって彼の家を訪ねた。
ユノの足の秘密を知った。
初めて涙というものを流した。
それから...それから...)
「ユノ...」
「ううーん...?」
丸まったユノの背中に向けて、チャンミンは言葉を紡ぐ。
「僕がここに来たのは、ユノに話があったからなんだ。
その話っていうのは...」
チャンミンは深呼吸して、続きの言葉を紡ぐ。
「伝えたいことがあって、ここに来たんだ。
あの...。
僕は...」
「......」
「僕はユノが好きです。
好き、です」
「......」
「ユノ?
聞こえた?
僕はユノのことが、好きです」
(つづく)
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