(30)ぴっかぴか

 

~チャンミン~

 

閉め切った部屋はむっとしていたため、換気のために窓を全開にした。

 

「暑いでしょ?

そこにリモコンあるから付けて。

その前に手を洗って!

タオルは適当に使って。

冷蔵庫にビールあるから...そっか、ユノは弱いんだったね。

お茶か水のペットボトルがあるから自由に選んで。

その前にお風呂に入る?

あ、お腹が空いているなら何か作ろうか?」

 

「なあチャンミン...」

 

「?」

 

部屋に入ってからの僕は、落ち着きなくバタバタと動きっぱなしだった。

 

ユノは部屋の真ん中に立ち尽くしたままで、呆れた表情で僕の様子を眺めていたようだ。

 

「落ち着けよ。

あんた...俺のかーちゃんか?」

 

「え...」

 

どうやら僕は緊張しているみたいだ。

 

気になる男が僕のテリトリーに居る。

 

慣れていないんだ。

 

どう振舞えばいいのか...忘れちゃった。

 

「僕んちに泊まってよ」とユノにしつこく迫ったくせに、誰かを自分の家に入れるのは滅多になかった僕。

 

つまみ食いの男たちと関係を持つのは、必ず外と決めている。

 

フッた男が別れた後、ストーカーまがいに僕のアパート前に張っていて怖い思いをしたことがある。

 

それ以降、半同棲するのも必ず彼氏の部屋と決めているのだ。

 

プライベートを見せてたまるか。

 

彼らとの交わりはいわばスポーツ、自身のフラストレーションを発散する時、エナジー補給タイム。

 

「俺に気を遣ってるだろ?

こっちまで気を遣っちゃうからさ、リラックスしろよ。

あんたの部屋なんだぞ?」

 

そう言いながらユノは、僕の部屋をぐるりと見回している。

 

僕はクローゼットからユノのために、着替えを取り出した。

 

恐らくユノは、僕に不信の気持ちを少しは抱いていると思う。

 

経験人数が多い男であることは、出会ってすぐには打ち明けていたけれど、ユノはそんな僕を単なる惚れっぽい男程度に思っているだろう。

 

出会いの店では、失恋したばかりと嘘泣きしてみせたからね。

 

彼氏がくるくる変わって、別れ話がこじれてしまった結果、今夜のような修羅場になるときもある。

 

身体の関係だけを求めて、数多くの男たちをハントし続けているだけじゃなく、彼氏らしき存在がいても、抵抗なく二股三股かけられる男とまでは思っていないはずだ。

 

本当の僕を知ってもらいたいのか、隠し通したいのか...。

 

隠し通したくても、ファミレスの一件でそれとなくバレかけてるからなぁ。

 

(つづく)

 

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