~ユノ35歳~
「義兄さん、どうでした?」
チャンミンは俺の肩や耳たぶを、ふざけて甘噛みしながらそう尋ねた。
「新しいクリーム、どうでした?」
「いいんじゃないかな?
乾きにくいし」
「ふふふ。
そうでしょう?」
チャンミンが言うクリームとは、男同士のアレに使うもののことだ。
知人から手に入れたものをぜひ試してみたいと、放課後に尋ねてきたチャンミン。
そしていつものように、事務所のソファの上で絡み合う。
俺に揺さぶられて揺れるチャンミンの胸が、ブラインドが作る夕日で縞模様になっている。
「俺はもうギブだ」
チャンミンは、弛緩した俺の股間に顔を埋めている。
「ふふふ。
そう言わないで」
チャンミンは10代らしく、溢れんばかりの体力と精力を持ち合わせていて、会えば毎回求められる。
「チャンミン」
「はい」
「知人って...そっち関係のか?」
「義兄さんには関係ないことです」
どこで覚えてきたのか、舌を巧みに使って俺のものを育てていく。
「関係ないって言ってもなぁ...」
チャンミンにはチャンミンの世界...俺の知らない世界がある。
チャンミンが何を見て考えているのか、今もつかみきれていない。
尋ねても俺が知るべき情報の10分の1も聞かせてくれない子だから、チャンミンが自ら話し出すのを待っていたら、彼に近づけない。
出会って3年近く経ったのに、俺にとってのチャンミンは未知で、神秘的な生き物なのだ。
想像したとしても、それは俺基準のモノサシで見ているから、生身のチャンミンの思考とは大きく乖離していると思う。
疎ましがられても、チャンミンの眼を覗き込み、優しい口調で根気よく尋ねなければならない。
そして、チャンミンの言葉を鵜呑みにしてはいけない。
寂しいことに、俺たちは肉体の深いところで結びつきあっているのに、心同士もそうだと言い切れなかった。
近づいたかと思えば、するりと離れてしまう理由を、チャンミンの屈折した性格のせいにしたらいけない。
俺が自らの立場を見失ってしまった結果が、妻の弟と不倫。
罪悪感にかられてチャンミンを手放すつもりは、今の俺にはない。
迷いと罪悪感だけに感情を支配されていて、チャンミンをほとんど見ていなかった時期があった。
あれだけチャンミンの肉体を貪っていながら、彼の気持ちを推し量ることを怠っていた。
その結果、チャンミンの心も身体も深く傷つけてしまったことがあった。
あの時は辛かった。
一途で危なっかしいところだらけのチャンミンの心配をすることが、俺ができる愛情表現のひとつだ。
チャンミンは、俺が放っておかないことを知っている。
知っていて俺を煽るようなことをする。
気持ちを試そうとする子供っぽい数々の言動に、俺は微笑ましく思ったり、自らを傷つけるような行いで冷や汗を流すこともある。
「今日はマジでもう、ギブなんだ。
指で勘弁してくれ」
「義兄さん...ねえ...もっと、ここを...。
そう...そこです...ああぁ...いいです、そこです」
18歳のくせに、どこからそんな色っぽい、女みたいな甘い声を出せるのか。
驚きと満足感を味わいながら、チャンミンの中を荒すのだった。
(つづく)
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