「抱くのは俺だ」
ユンホ先輩は僕の両脇に手をついて、僕を見下ろしていた。
鋭くて色気ある視線が降り注いでいるのが、びんびんと伝わってきた。
暗闇で助かった、視線の熱気できっと僕は溶けてしまうから。
「はぁ...はぁ」
興奮と緊張で荒くなった僕の呼吸は、ユンホ先輩に塞がれた。
「んっ...ん、ん...ふっ」
僕もユンホ先輩に倣って、やみくもに舌を動かした。
息が苦しくなってきたけれど我慢した、唇を離して深呼吸なんてしたらムードが壊れてしまう。
僕の髪をかきあげていたユンホ先輩の片手が、僕のそこへと落とされた。
「...っ」
本人の意識を無視して、僕の下半身はパンパンになっていたようだ。
先を擦られ、タップし続けられているうち、じわりと濡れてきた。
ユンホ先輩は僕の下着の中に手を突っ込んで、その中身のものを容赦なく引っ張り出すんだ。
間髪入れず、その手をハイペースで上下させるんだ。
「やっ...待って、待って下さい...!
うっ」
自分以外の手で、大事なところをしごかれるのは生まれて初めての経験だった。
気持ち良さが桁違いだった。
「待って待って...イっちゃうから。
ストップ、ストップ」
ユンホ先輩は「イっちゃえイっちゃえ」としごくスピードを上げてゆく。
「駄目っ!
やっ、やめて...ヤダ!」
腕を突っ張らせ、強固に拒んでしまった。
「ちっ」とユンホ先輩の舌打ちに、しまった...怒らせてしまったかな、とヒヤリとしていると。
「下...脱がせてよ」
「!」
「脱がないと出来ない」
ユンホ先輩はジャケットを脱ぐと、部屋の向こうへ放り投げた。
慌てて濡れた下着を脱いだ。
次にユンホ先輩のベルトを外し、続いてスラックスも下ろした。
最後に下着に指をかけ、そろそろ下げていった。
途中引っかかってしまったウエストゴムから、ユンホ先輩のアレが弾む。
僕のものとは違う、濃くてエロい匂いが漂った。
暗過ぎて、肝心なモノのデティールを目にすることができなくて、残念だった。
ユンホ先輩のものが露わになった...次に僕がすべきことは...。
探り当てたものの根元を掴み、あーんと口を大きくあけて頬張ろうとした。
「ストップ」
僕の首根っこはユンホ先輩に捕まれ、彼の股間から遠ざけられてしまったのだ。
「抱くのは俺だ。
チャンミンはマグロになっていろ」
「え?」
ユンホ先輩はさっきの台詞を繰り返した。
「...っ!」
僕の乳首が吸いつかれたのだ。
「へえ...チャンミンはここが弱いんだ」
ユンホ先輩は舌先で乳輪の周囲をねっとりと辿り、先端をくすぐったかと思うと、甘噛みした。
身体の中心がぞくぞくする。
「待って待って、先輩...!」
反対側は指の腹で転がされた。
「待つって、何を待つ?」
「それは...はっ」
きゅっと強く吸われると、僕の腰はびくんと浮いた。
全部が初めての経験だった。
「勃ってるぞ」と尖った乳首をくすぐられ、「くっ」と身をよじらせた。
僕は恥ずかしさから顔を覆ったけれど、暗闇の中では無用な動作だった。
片手を落してユンホ先輩の股間を探る必要はなかった。
ユンホ先輩が身動きする度ひたひたと、彼のものが僕の下腹や太ももを叩いた。
その先が濡れていることも。
嬉しかった。
唇と舌がたてる破裂音が耳にうるさい。
視覚が封じられると、僕らの先端から垂れ出る生臭い匂いも、甘い香りに感じられた。
・
ユンホ先輩に促されて両膝を抱えて、仰向けになった。
いよいよだ。
ユンホ先輩に気づかれないよう、深呼吸をした。
「ふっ...直ぐには挿れないよ。
まずはこれからだ」
ユンホ先輩の濡れた1本の指がぴとり、と件の箇所に押し当てられた。
「ひっ」と声が漏れてしまうのを、両手で口を押えて堪えた。
目を閉じて歯を食いしばった。
「...やっぱり」
ユンホ先輩はお尻から手を離し、僕の肩を抱き寄せた。
「お前...初めてか?」
耳元で囁かれた。
「...はい」
素直に認めた僕の頭を撫ぜてくれた。
「今日中は無理だぞ?」
「いいえ!
大丈夫です!」
僕は再び横になり、ユンホ先輩の手をお尻へと導いた。
「平気です!
挿れてください!」
「はあ...。
何も知らないんだな」
ため息をついたユンホ先輩は、僕を起こすと四つん這いにさせた。
「あっ!」
熱い吐息がお尻に吹きかけられた。
ユンホ先輩は僕のお尻に顔を近づけたのだ。
それから、ちゅうっと吸い付いたのだ。
「先輩っ、待って待って!
そんなこと...ダメです」
お尻の穴をぺろぺろと舐められた。
「ひゃっ」
何度目の変な声なんだろ。
敏感な箇所をじゅっと吸われて、驚きで逃げる僕をユンホ先輩は離さない。
「...やっ、ダメ...あっ、らめっ、らめっ...」
ちゅっちゅいう音はきっと、僕に聞かせるためにたてているんだ。
温かく濡れたもの...それも、ユンホ先輩のもので、イケナイところを舐められている状況だけで、僕の先端から雫が垂れ落ちる。
「せんぱ...ら、め...らめです」
しつこく丹念に舐めあげられ、僕はお馬鹿になってしまった。
今、前をしごかれたら、1往復で絶頂を迎えられる。
「らめ...らめ...」
30の男が出す声じゃない。
ユンホ先輩が僕のお尻を舐めている...なんだよこの状況。
じわっと羞恥の涙がにじんだ。
僕はなんてことを始めてしまったのかな。
ユンホ先輩を「抱く」だなんてとんでもない。
ユンホ先輩を繋ぎ止めたくて、衝動的に始めたこれに後悔しかけていた。
「緩んできた...よし」
ユンホ先輩はお尻に埋めていた顔を上げ、僕を背後から抱きしめた。
「次は指で慣らすから」
ユンホ先輩の胸の中で僕はこくんと頷いた。
任せていれば大丈夫。
「せんぱ、いっ...」
うずめられる指に、大きく息を吸ったり吐いたり。
「痛いか?」
僕はぶんぶん首を振った。
僕のお尻に、大きく固く膨れたユンホ先輩のものが押し当てられている。
こんなに大きなものが果たして挿いるだろうか。
オナニーでは興味本位で指を1本だけ、挿れてみたことがあるだけだ。
怖い。
...けど、ユンホ先輩と繋がらないといけないのだ。
・
「...あは、あ...あぅっ...」
ユンホ先輩は腰を前後に揺らして、じわりじわりと僕の中へと埋めてゆく。
「んぐ...ぐっ...うっ...」
出たり入ったりが何度も繰り返された。
僕の背後でユンホ先輩はふうふう言っている。
「くっ...うっ...」
ユンホ先輩のものが貫通した。
圧迫感と異物感で苦しいのに、もっと奥まで挿れて欲しい。
抜いて欲しいとは思わなかった。
「チャンミン。
どうしてここまで出来る?」
「好きだからですよ」
震える僕の頬を撫ぜた。
「そうか」
入口は焼けるように痛いのに、奥底の圧迫感は悪くなかった。
「んっ...んっ...」
僕の穴がユンホ先輩を包み込み、うねる姿をイメージした。
そろそろ、突かれるのかな?
ところが、ユンホ先輩は初めての僕を気遣って、ゆさゆさと腰を揺らすだけだった。
「どう?」
かっかと入口は痛いのにも関わらず、物足りなくて、僕はユンホ先輩の腰に両足を巻きつけた。
「いいですっ。
せんぱい、いい、です」
・
「邪魔だ」
ユンホ先輩は、着たままだったシャツをむしり取った。
1度イったおかげか僕の入口はより緩んで、2度目はユンホ先輩のものを飲みこみやすくなっていた。
僕の中を出し入れするスピードが増していた。
乱暴ではなくて、早く奥深いのに滑らかなピストン運動だった。
「あっ...らめっ、そこ...らめっ」
「痛い」と口走った途端、ユンホ先輩は動きを止めてしまうから絶対に口にしなかった。
経験不足のせいで、痛いと快感の違いが分からなかった。
でも途中で何度も意識がふわふわしたし、3度もイってしまっていたから、あれが気持ちいい感覚なんだろう。
僕が吐射したものが、ユンホ先輩の胸や腹に塗り広げられている。
「先輩...よかったですか?」
ユンホ先輩は僕の胸にぐったりと身を預けている。
「ああ。
よかった。
よかったよ」
その後僕らはしばし、息を整えた。
「先輩...重いから下りてください」
僕の上になって腰を揺らすユンホ先輩の表情を見たかった。
ユンホ先輩の大きな黒眼に映る僕を、見たかった。
僕をイカせた腰とあそこを見たかった。
いや...見えなくて正解だったのかな。
遅刻早退欠勤しまくりの強引なユンホ先輩に、僕は抱かれた。
ユンホ先輩のスーツ姿を舐めるように見つめていた僕は、下心たっぷりのいやらしい男だ。
だけど、一糸まとわぬ姿となると、僕には刺激が強すぎる。
よりユンホ先輩のことが好きになりそうで怖かった。
肌のぬくもりと感触。
僕の中に放たれた熱いもの。
僕は十分に満たされた。
「初めてのくせに、『先輩を抱きます』ってなぁ」
くすくす笑うユンホ先輩につられて、僕も笑った。
(つづく)