(18)僕の失恋日記

 

ー15年前の5月某日ー

雨降り。

 

19:30より送別会。

(社員の×さんの結婚退職。

バイト生としては古株の僕とユノも呼ばれた)

 

参加人数14人。

××駅前の居酒屋××にて。

続きは明日書く。

(※以下は翌日、書いたもの)

 

 

最初、テーブルの端と端とに離れた席だったが、無理を言ってユノの隣に座らせてもらう。

 

(※ユノはカッコいい奴だから、女性スタッフから人気がある)

 

ユノの笑顔がぎこちないのが気になる。

昨日、バイトで一緒になった時は元気だったから。

前彼のことで何かがあったんだ、とピンときた。

料理にほとんど箸をつけないユノの分も、僕が食べる。

 

 

「元気?」

 

ユノ

「まあまあ、ぼちぼち」

 

猫背になったユノ、がぶがぶと酒を飲んでいる。

 

「顔が真っ赤だぞ。

飲み過ぎじゃないのか?」

 

心配する僕を無視して、すいすいとグラスを空けてゆく。

見かねた僕は、ユノを洗面所までひっぱってゆく。

トイレの個室に、二人まとめて入る。

ユノにハグする。

僕の行動にユノは目を丸くしていた。

4月以来、ユノとヤッていなかった。

ユノに近づくとドキドキする。

恥ずかしくて、顔から火が噴き出そうだった。

 

 

僕は気配りに欠けている男だ。

分かりやすく助けを求められたり、明らかに弱った姿を見せられるまで、動こうとしない。

気づけないんだ。

「あれ、おかしいな」と思っても、早とちりはいけないと、様子見する。

自分に対してさえこうなんだ、他人に対してはもっと鈍くさくなる。

この鈍くささのせいで、目の前に差し出されていた、いくつものチャンスを取りこぼしてきたのだろう。

僕はユノをほったらかしにしていた。

CCから離れられない自分にこだわってばかりで、リアルから逃げていた。

 

 

僕にとっての恋は、CCに憧れ見上げるものだけだった。

ところが、僕のすぐ隣を歩き、目を合わせ、言葉を交わし...キスをしたり、ヤッたり、触れて触れられ、心のひだひだがぞわり、とするこれら。

僕はようやく夢から覚めた。

大抵の場合、リアルより夢の方が幸福だと言うものだけど、僕の場合は違う。

僕はユノと恋をしかけていたんだ。

ユノの隣にいたのに上の空で、「CC、CC、CC...」と念仏のように唱えていた。

古い恋から新しい恋へと移り変わる瞬間。

とても淡くかすかな変化だから、その時には気付けない。

後になってふりかえって、ようやく「あの時」と分かるんだ。

僕はその瞬間を既に、経験していた。

 

 

送別会は途中退席。

ユノを部屋まで送っていくことにした。

ユノの足取りはしっかりしていたから、僕が付き添う必要は全くなかったけれど、ユノと話しがしたかった。

ユノ

「チャンミンと話しがしたかった」

ユノも同じことを思っていたと知って、びっくりした。

「元気がないみたいだけど、大丈夫?」と尋ねたら、「大丈夫じゃないから、話を聞いて欲しい」とユノは答えた。

 

退屈な講義。

板書をするフリをして、この日記を書いている。

あと5分で講義が終わる。

あと1つ講義を受けたら、今日はフリーだ。

続きは帰宅してから書く。

小説のストーリーも浮かんだ。