「あのな、俺らはいい年した大人なわけ。
キスしたくらいで、いちいち謝るな!
謝るくらいなら、キスするな!
謝るのなら...。
うーん、そうだな...」
ユノはしばし考えた後、
「酔った勢いでヤッちゃった後にしろ!」
一気に話すユノを見るチャンミンは、ぽかんとしている。
「...自分でも分からないんだ。
...つい、したくなって...」
「あー!
やめいやめい!」
「うぐっ」
ユノの片手が伸びて、チャンミンの口を塞いだ。
「いちいち説明せんでもいい!
余計照れるだろうが!」
(ユノは、どうってことないのか?
僕の胸はまだ、ドキドキしているのに)
「俺に謝らなくてもよろし」
ユノはチャンミンの口を塞いでいた手を、外した。
「ユノにとって...大したことないんだ?」
「そういう意味じゃないって!」
ユノは頭を抱えている。
「あーもー!
めんどくさい奴やなぁ!」
(!)
ユノの両手で、チャンミンの頬は挟まれた。
(近い近い!)
15センチの距離にあるユノの顔に、チャンミンののどがゴクリと鳴る。
ユノは両手に挟んだチャンミンの熱い頬と、見開いた彼の目を凝視する。
(丸い目しちゃって、可愛いなぁ)
「もう一回する?」
「な、何を?」
(とぼけてるのか、本気でわかってないのか...)
「決まっとるだろうが!」
「そ、それは...」
(あーもー。
面倒くさいやつだ!)
ユノの耳にも、チャンミンが鳴らすのどの音が聞こえる。
(緊張しちゃって、可愛い)
「嫌か?」
ユノはさらに、顔をチャンミンに近づける。
「い、嫌じゃ...ないです」
ユノの手の中で、チャンミンは首を振る。
「そっか」
「......」
チャンミンは、ギュッと目をつむる。
(目をつむっちゃって、女子高生か!)
ユノはチュッと音をたてて、チャンミンのおでこにキスをした。
(あれ?)
ユノの両手から解放され、目を開けたチャンミン。
ぽかんとしたチャンミンに、ほほ笑むユノ。
「お前がリードせんといかんよ、チャンミン」
「そ、そうだね」
(さらっと言っちゃうんだ)
「次はもっとロマンティックに頼むよ」
動揺を隠してユノは冗談っぽく言うと、チャンミンは白い歯を見せて笑った。
「そうするよ」
「はぁ?」
(はっきり言っちゃうんだ、そこ)
「素直に答えられても、反応に困るんだよ、チャンミン!」
ユノの言葉に、きょとんとするチャンミン。
(可愛らしい顔のくせして、この男...。
モジモジ君は撤回だ!)
・
「さぁ!」
チャンミンは、勢いよく両膝を叩いた。
「ユノ、デザートにしよう!」
「は?」
スタスタとキッチンへ歩いてゆく、裸足のチャンミン。
「いろいろあったから、お腹が空いた」
「もう?」
(いろいろあったって...何だよ。
俺の方だって、心がめまぐるしかったよ)
「お腹空いた、ってなぁ。
まだ30分しか経ってないぞ?」
ユノはチャンミンを追って、キッチンへ。
「俺も手伝うよ。
コーヒー淹れようか?」
ユノがコーヒーサーバーに水を入れようとすると、ひょいとそれをチャンミンから取り上げられた。
「ユノは皿を持って行って」
チャンミンはユノの背中を押して、キッチンから追い出した。
「ユノのコーヒーは恐ろしくて飲めない」
「何だとー!」
「泥のようなコーヒーを飲まされたからね」
「あは~。
ごめんな」
(つづく)
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