~チャンミン16歳~
「経験してみたいんだ」
Mに相談した。
「『経験』って...もしかして...?」
僕は大きく頷いた。
「チャンミン、必死過ぎ!
そんなことしても、ユノさんは喜ばないよ」と、怒った。
「黙っていればいい。
僕の身体をどうするかは、Mちゃんに関係ないよ」
そう言ったら、Mは傷ついたような表情をした。
ストレッチ素材の薄いカットソーが、Mの大きな胸を強調していた。
先程まで彼女の胸を揉んでいたこの手が、義兄さんのアソコに触れたくて仕方がないのだ。
義兄さんの指であっさり昇天してしまった自分は、幼稚だった。
次は僕の指で、義兄さんを昇天させたい。
義兄さんに滅茶苦茶にされたい思いと、義兄さんを滅茶滅茶に悦ばせたい思い。
それから、僕ばっかり夢中でいるのは愉快じゃない。
だって、こんなに若くて綺麗な子が身を任せようとしていたんだよ。
あんなに盛り上がっていたのに、寸止めできるなんて、ずいぶんと余裕があるもんだな、って、すごく悔しかった。
「関係がないって...チャンミンって口が悪いのね」
「ごめん」
僕らはわりと何でも打ち明けあえる仲ではあるけど、身体を合わせている今この瞬間、思い浮かべているのは別の人。
僕はMと繋がりながら義兄さんを想い、Mの方も義兄さん、もしくは別の彼氏のことを想っているのだろう。
「心配してくれてありがとう。
ちゃんと考えた末のことだから。
Mちゃんだって好きな人がいても、セックスは別口だろ?」
「別口って...ひどいわね!」
Mはさっきよりも顔をゆがめた。
「心と身体は切り離せられないものよ。
私は同時進行派なだけ。
心と身体はセットよ。
チャンミンの場合は、心はユノさん、身体は誰か別な人のつもりでしょ?」
「違う。
今のままじゃ、義兄さんへの想いが強くなりすぎて処理できないんだ。
熱を逃そうかな、って思ったんだ」
「だからって、別な人とヤルだなんて...。
まだ高校生でしょ?
身体張りすぎ!」
「それだけじゃなくて...経験しておいた方がいいと思うんだ」
「ユノさんと経験すればいいでしょう?」
「...多分だけど...義兄さんも経験がないと思う。
姉さんと結婚してるし...そういう趣味がある人じゃないんだ」
Mを納得させるには、筋の通った説明ができないといけない。
「僕と初めてする時、義兄さんが手こずる姿は見たくない。
だから...せめて僕だけでも慣れていたいんだ」
「...チャンミン」
「僕は、セックスに“向いてない”んだろう?」
「そう言ったかも。
でも、そんなに深刻に受けとられてしまったなんて...罪悪感」
「ううん。
Mちゃんの言葉で、霧が晴れたみたいなんだ。
それなら、“向いている”ことをすればいいんだろ?」
僕の顔をあっけにとられた風に見ていたMは、しばらくの間無言だった。
『ユノさん、盗られちゃうよ』の言葉を受けて、僕が考えた結果がこれだった。
Mはため息をつくと、ベッドの下に転がったスマホを拾い上げて操作をする。
「...相手は誰でもいいの?」
「変な奴じゃなければ」
「結婚している人の方がいいよね。
本気になられても困るでしょ?」
「うん」
「チャンミンは綺麗で、カッコいいからねぇ」
スマホに視線を落としたMのまつ毛が長かった。
そういうツテがあるMはすごい。
Mの恋愛は縦割りで、同時進行ができる。
僕の恋情はただ一人に向けられていて、悲しいことに思い通りにいかない。
だから、少しでも近づけるように、自分を磨かないといけないんだ。
義兄さんとの初めてのキス以来、どんな顔をして会えばいいか分からなくて、モデルのバイトを2回すっぽかした。
行けない理由も、リアルっぽい内容にしてみたけれど、そんなの嘘だとバレているだろうな。
次に会う時まで、僕は変わっていないといけない。
僕と...男と...抱きあうことなんて、大したことないんだよ、って義兄さんの重荷を軽くしてあげないと。
(つづく)
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