【29】僕を食べてください(BL)

 

~もっともっと~

 

 

僕らは交わりながら、体位を変える合間に会話をする。

 

もしくは、激しく互いを貪るようなセックスの後に裸のまま。

 

「人間の血の味に慣れると、大変なんだってさ。

もっともっと欲しくなるんだって。

力がみなぎって感覚が研ぎ澄まされて...人間でいうと、麻薬をやったみたいになれるんだって。

これは、同じ種族の者に聞いた話」

 

ユノはするすると僕の股間まで頭を下げて、勃ち上がりかけた僕のペニスの亀頭にちゅっとキスをした。

 

唇を離すと、つーっと僕の先走りが糸を引き、ユノはそれを舌で舐めとった。

 

「チャンミンの味がする」と耳元で囁いたりするから、僕は赤面するしかない。

 

「飢えて苦しむのは目に見えてるから、人間の血にだけは手出ししないようにしてた。

俺はせいぜい、恋人のものを一滴舐めるだけ。

...何度も噛みついてしまってごめん」

 

僕を射精に導いたユノは、口を拭いながら枕の高さまで戻ってきた。

 

「本当は、飲んでみたいんでしょう?」

 

「そうだなぁ...。

でも、俺は生きている人間から直接飲んだ経験はないからなぁ。

その魅力がどれくらいのものなのかは、俺は知らない。

憧れるけどね」

 

「僕を...もっと美味しくしてから、食べるってどういう意味なんだ?」

 

「愛する恋人っていうのを、食べてみたかったんだ」

 

「恋人?」

 

「食べるって言い方はおかしいな...。

恋人の生き血を飲んでみたかったんだ。

老いさらばえて死を迎えるのを待つことに、ウンザリしていた」

 

心など摩耗してしまったとユノは言うけれど、本当は恋人を亡くし続けて悲しくて仕方がないんだ。

 

ユノの言う「ウンザリ」とは、そういう意味に僕は捉えていた。

 

「一度だけでいい。

自分の手で恋人の命を奪ってみたかった。

若く、美しい姿でいるうちに」

 

ユノの指が僕の顎を捕らえた。

 

顎の骨が砕けそうな力加減ではなく、ふわりとしたタッチで。

 

ユノの中に残る優しい気持ちのあらわれなんだ、きっと。

 

内出血で青黒い痣が浮かびかけた両手首をさすりながら、僕はそう思った。

 

「チャンミンを惚れさせ、服従させ、怯えた視線を浴びながら、じわじわと少しずつ血を抜いてやろうと思った。

残忍だろ?」

 

ユノが言うと、全然残忍じゃなかった。

 

僕はごくりと喉を鳴らす。

 

恐怖じゃない。

 

ユノの小さな頭が僕の肩にもたせかけられた。

 

その軽さがユノの命の重さなんだと想像して、哀しくなる。

 

命を節約しながら生きているユノは、僕らから見ると、生きているとは言えないくらい薄い命なんだ。

 

「でも、途中で気が変わった。

俺は、チャンミンに惚れた。

生かしておきたい」

 

僕もユノに惚れている。

 

命がけで。

 

 


 

 

近くまで『調達』しに来るというユノと、僕は街中で待ち合わせることもあった。

 

ユノの廃工場には電話がないから、ユノから誘いの電話がかかってくるのを、僕は寮で待つ日々だった。

 

僕は毎日でも交わりたかった。

 

がむしゃらだった僕のセックスも、コントロールする術を身につけてきていた。

 

「チャンミンもうまくなった」とユノに褒められると僕は赤面してしまい、そんな僕の様子をユノは笑った。

 

ユノのX5のラゲッジスペースには大きなクーラーボックスとスーツケースが積み込まれていた。

 

ユノの食糧調達に必要なもの。

 

(Sさん経由のものだけじゃ足りない時は、それなりのルートを通して手に入れているんだって)

 

X5はホテルの地下駐車場のスロープをゆっくりと下りていく。

 

この日のユノは、ダスティブルーのサマーニットとホワイトデニムという爽やかないでだちで、係員にキーを預けた。

 

僕はユノにもたれて腰を抱かれる。

 

エレベータの中で、股間をつかまれた。

 

デニムパンツの上からでもくっきりと、僕のものが浮かび上がるくらい、高ぶっていた。

 

部屋に入るなり、互いの唾液でどろどろになるような深いキスを交わす。

 

互いに性急に衣服を脱ぎ捨てる。

 

「あっ...あ...あっ...」

 

ユノの白い腰の中心で猛々しくなったものに、僕は欲情で沸騰しそうになる。

 

ユノは僕を仰向けにすると、お尻をこちらに向けてまたがった。

 

心得ている僕は、開脚して腰を浅く持ち上げた。

 

僕のお尻を割ったユノは、「おやおや」と呆れ声を出す。

 

「...だって...」

 

「準備万端じゃないか。

いつから入れてた?」

 

「...あ、朝から」

 

「チャンミンは、どスケベのど変態だ」

 

その口調は嬉しそうだった。

 

ユノと会えない期間が空くし、僕の手だけじゃ限界もある、会ったら直ぐに繋がりたかった。

 

「おい。

口が留守になってるぞ」

 

「...うんっ...」

 

上からぶら下がるユノのペニスを喉をのけぞりながら咥え、破裂音を発せながらしゃぶった。

 

ペニスの先をしごきながら、ユノの睾丸を口いっぱいにふくんだり、柔く吸ったりする。

 

「フェラチオは下手クソのままだな」

 

僕のお尻はバシッと叩かれ、かっと熱く広がる痛みが快感に変わる。

 

「...だって...だって」

 

ユノは、僕の穴を塞いだプラグをねじったり、抜けるぎりぎりまで引いたかと思えば押し込んだりする。

 

「んあっ!」

 

それを使ってのピストン運動が始まった。

 

僕のお尻をユノの手の平が叩く音が、室内にリズムを刻む。

 

僕の膝が小刻みに震えている。

 

「だめぇっ」

 

ユノの手が僕のペニスに回ってきたから、跳ねのけた。

 

イキそうになって、自身の根元を指で締め付けた。

 

「それ、やだっ...やだ...。

ユノの...ユノのでイキたい!」

 

ユノの両ももの間から抜け出た僕は、傍らに膝まずいて彼のペニスを頬張り直した。

 

頭を前後に動かし、手も舌も使って愛撫する。

 

ユノも僕の後頭部を押しつけながら、かくかくと腰を前後させる。

 

「んっ...んぐっ...ぐっ、んん...!」

 

ユノのペニスが喉奥に当たり、窒息しそうになるけど、ユノはこれ程度じゃ解放してくれない。

 

えずきを堪えて、涙をにじませながら僕は必死で奉仕する。

 

ぐぐっとユノの腰が痙攣して、喉奥に注ぎ込まれた熱いものを、僕はごくりごくりと飲み込んだ。

 

ユノのものは未だ臨戦態勢で、粘液にまみれて光っている。

 

僕の喉が、ごくりと鳴る。

 

気付けば僕は、うつぶせになって尻を高く突き出した姿勢でいた。

 

「欲しくてたまらないんだな。

ゆるゆるだぞ?」

 

僕のお尻に刺さったプラグを、くいくいと引っ張るから、それに合わせて僕はおかしな声をあげてしまう。

 

「このまま挿れてやろうか?」

 

ユノは信じられないことを言った。

 

「やっ!

無理、無理だって...」

 

ユノは自身ののペニスにたっぷりとローションを追加した。

 

「さて...と」

 

根元に手を添えて、シリコン製のものが刺さったままの割れ目に沿って滑らした。

 

「やだっ...抜いてよ、抜いてから!」

 

「どうかなぁ。

やってみないと分かんないよ」

 

「やっ、やっ...ダメっ...ダメだってぇ」

 

どうやらユノは、小道具を埋めたままの入り口に、自らのペニスを突っ込もうとしているようだった。

 

「...そんなっダメ、ダメ、無理無理っ...止めてったら!」

 

ぞっとした僕は叫ぶ。

 

身を起こそうとしたのを、強靭なユノの手で封じられる。

 

「ふうん。

チャンミンが可哀想だから、これは止めといてやるか」

 

「ひゃあんっ!」

 

勢いよくプラグが抜かれ、全身を貫く電流に僕は前のりに突っ伏してしまった。

 

ユノは手にしたそれをベッドの向こうに放り投げた。

 

「こいつで勘弁してやるか」

 

「えっえっえっ...?」

 

ぬるっと冷たいものが入り口に当てられ、とまどう間もなく、ユノの指によってその何かが押し入れられた。

 

振り向くと、僕のお尻からひも状のものがぶら下がっていた。

 

「凄いなぁ...飲み込んでいくぞ」

 

「ああぁんっ!」

 

紐の先の先端のものを装置を操作した。

 

腰奥で振動する異物...ちょうど弱くて敏感な箇所に位置していたから、視界が真っ白になる。

 

「ひゃぅっ...やー、やっ、壊れるって、壊れるっ!」

 

僕の制止なんて聞く耳を持たないユノは、ダイヤルを最強にしたようだった。

 

「いっ、いいっ...ひっ、ひぃっ...!」

 

快感を逃そうとシーツを握りしめる。

 

ホテルのシーツはパリッと糊がきいていた。

 

「いい子だから、じっとしていろ...。

もう一個追加だ」

 

「そんな...ダメ...ダメだって...!」

 

「気持ちよくさせてやるから」

 

「それはっ...あっ...あぁぁ...!」

 

ユノはもう1つのそれを僕の奥まで押し込むと、ひも状のものの先端を操作した。

 

2つの異物がぶつかり合い、振動を増幅させるから、快感もとんでもないことになる。

 

多分、この時点で一度はイッてしまったと思う。

 

「すごいねぇ。

エロおもちゃだけで、イッちゃったよこの子は」

 

「...っく、ひっく、ひぃっく...」

 

僕はしゃくりあげている。

 

「さてさて、3つ目はどうかなぁ?」

 

返事が出来る状態じゃなかった。

 

口は開きっぱなしになり、とめどなく唾液が顎を濡らす。

 

「...と思ったけど、可哀想だから止めておく。

その代わりに、お待ちかねのを突っ込んでやるよ」

 

ユノのペニスがみちみと僕の中に侵入してくる。

 

「やーやー、壊れる...!

おっきいの、ダメ...おっきいの、壊れるっ...やー!」

 

ユノの亀頭が入り口をずくずくと刺激する。

 

加えてユノの根元が、僕の股間の裏を振動する卵を圧迫する。

 

ユノのピストン運動に合わせて、僕の両ももの間でカチャカチャと2つのスイッチがぶつかっている。

 

切な過ぎる痺れに、僕は肩からベッドに倒れこんだ。

 

「イっちゃうイっちゃうイっちゃう、イっちゃうってばぁ!!」

 

イキそうになると、僕の尻は叩かれる。

 

「イクな!

...なんて言ってて、もうイッてるじゃないか」

 

「ひぃっ...ひぃっ...ひっ、ひっ...」

 

腰が砕けるような恍惚の世界を知ってしまったら、僕はユノにひれ伏すしかないじゃないか。

 

叩きつけるユノの腰のスライドも、勢いも加速した。

 

僕は枕を噛みしめた。

 

ユノの低い呻き声が、僕を感じさせる。

 

「やめてっ...もう無理無理...!」

 

「止めて欲しいのか?」

 

再びユノにお尻を叩かれた。

 

「や、ヤダっ...止めないで...!」

 

僕らの蜜の池は水深100メートルまで深くなり、黄金色の水面は遠すぎてもう見えない。

 

浮上したくない。

 

水面から顔を出したら、モノクロの世界が広がっているだけなのだから。

 

幸せなのに不幸せ。

 

僕を混乱させる。

 

 

(つづく)

 

 

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