あなたのものになりたい(10)

 

 

 

~チャンミン~

 

 

お兄さんの指に導かれて、僕はイってしまった。

 

張り詰めた前に指一本触れられることなく、イってしまった。

 

その場に崩れ落ちそうになるのを、とっさに伸ばされたお兄さんんの腕で支えられた。

 

太くて逞しい腕に腰を抱かれただけで、僕の身体はびくびく震える。

 

僕の肌という肌は、全身粘膜になったかのように敏感になっていたから。

 

お兄さんの胸に頬をくっつけて、彼の鼓動の早さに嬉しくなった。

 

「...お兄さん」

 

僕の汗がお兄さんのTシャツに沁み込んでいく。

 

お兄さんの背中に回した両腕いっぱいに、彼の体温と背中を形作る背筋と骨を味わった。

 

僕の呼吸が整った頃、お兄さんは僕を真っ直ぐ立ち上がらせて、こう言った。

 

「...チャンミン。

洋服を着ようか?

このままじゃ風邪をひく」

 

僕はぶんぶん首を振った。

 

「やだ。

服は着ない。

このままがいい」

 

僕は裸に慣れている...何年も何年もそうだったから、寒くもなんともないのだ。

 

それから、恥ずかしくもなんともない...裸を見られることが仕事だったから。

 

お兄さんは、「はあぁ」とため息をついた。

 

困った風を見せても、僕はびくともしない。

 

お兄さんの背中を抱く腕に力を込めた。

 

「俺が落ち着かないんだ。

俺のために、着てくれる?」

 

お兄さんの両腕は宙に浮いたままで、しがむつく僕の背を抱きしめてくれないのだ。

 

僕は駄々っ子になっていた。

 

お兄さんの指は素晴らしかった。

 

やみくもにかき回すことなく、僕の快楽スポットをすぐさま見つけ出してしまった。

 

かつての客たちは、やみくもに出し入れするしか能がない。

 

僕が感じているかどうかなんて、どうでもいいのだ。

 

自分だけが気持ちよくなればいいのだ。

 

そんな客ばかりだったのが、お兄さんは違った。

 

お兄さんが客として僕を買い、客として僕を抱いたあの夜のことだ。

 

前戯なしで始まった行為だったけど、お兄さんは僕の後ろの具合を確かめた上での行為だった。

 

2本3本と増やしていった指。

 

お兄さんの長い指でも到達できないそこを、刺激して欲しい。

 

きっと、お兄さんのものなら届くだろう。

 

お兄さんの指で念入りに、強引そうで優しく攻められ、僕は我を失った。

 

快感のあまりよだれを垂らした僕は、お兄さんの前を握る余裕がなかった。

 

でも、果てて抱きついた時、僕の前とお兄さんの膨らみが重なった。

 

よかった、と思った。

 

そして、指だけじゃ足りない、と思った。

 

その欲求不満が、「服は着ない」と僕を駄々っ子にさせたのだ。

 

「下着だけでもいいから付けろ」

 

「やだ。

このままでいる!」

 

「はあ...」と、お兄さんはもう一度ため息をついた。

 

お兄さんは辛抱強い。

 

「わかったよ」

 

お兄さんは、さらにもう一度ため息をついた。

 

「そのままでいなさい。

チャンミンは好きなように、したいようにしなさい」

 

そう言って、僕の後頭部の髪をくしゃくしゃにした。

 

「...え...でも」

 

「ソーダ―で割ってあげるから、あのお酒を一緒に飲もうか」

 

僕の腕からすり抜けて、お兄さんはキッチンに行ってしまった。

 

僕は途端に不安になってしまって、くしゃりと床に落ちていた下着をとった。

 

「チャンミンは未成年じゃないよね?」

 

「はい...多分」

 

成人しているのは確かだ...でも、本当の年齢なんて分からなかった。

 

大きなグラスとソーダ―水のボトルを持って、お兄さんが戻ってきた。

 

「おいで」

 

手招きされて、僕は素直にお兄さんの隣に座った。

 

イチゴを漬け込んだリキュールをグラスにとろりと落とし、ソーダ―水を注ぐ。

 

しゅわしゅわと泡が弾ける綺麗なピンク色。

 

芯まで透明な氷。

 

指先を濡らすグラス表面に浮いた水滴。

 

冷たく甘い液体が、さっきまでの興奮で乾いた喉をすべり落ちる。

 

細かな泡が僕の舌と喉を刺激する。

 

「おいしい...」

 

「おかしいなぁ?

裸でいるんじゃなかったっけ?」

 

下着をつけた僕の姿に、まるで今気づいたみたいにお兄さんは言った。

 

「寒かった...からです」

 

ぼそっとつぶやいて、僕はピンクのお酒の残りを飲んだ。

 

「ずっと裸でいてもいいんだぞ?」

 

「...僕は、大人の男です」

 

「そうだね。

チャンミンは大人の男だ」

 

お兄さんはさすがだ。

 

僕はお兄さんを困らせたくないんだもの。

 

 

(つづく)

 

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