(12)あなたのものになりたい

 

 

~ユノ~

 

あの夜、俺は『客』だったはずだ。

 

ビニール製のベッドがあるきりの、アレする目的のための部屋。

 

久方ぶりにチャンミンを抱きながら、自分が『客』なのか『商品』なのか分からなくなりそうだった。

 

出逢いの夜。

 

俺のお相手として選ばれたチャンミンを、手っ取り早くイカせ、あの場から一刻も早く立ち去りたかった。

 

俺は『客』でチャンミンは『商品』だった。

 

 

 

 

着ていたものを脱いだ。

 

ベッドに横たわらせた下着姿のチャンミンの上に、俺はのしかかった。

 

俺の鼻先に迫るつんと立った乳首を口に含んだ。

 

「...はぁ、あ、んっ...」

 

舌先で転がし、もう片方を摘まみひねり、押しつぶした。

 

「いいっ...いいっ、あん」

 

わざと音をたて吸いあげ、摘まんだ乳首を引っ張った。

 

のけぞるチャンミンの白い喉と、青いチョーカー。

 

俺の腰はチャンミン両膝に抱えられる。

 

「もっと...もっと強く」

 

時間をかけて、両乳首をいたぶった。

 

乳輪の円周を尖らせた舌でたどったのち、軽く歯をあてた。

 

「もっと...もっと」

 

チャンミンの乞いに応えて、噛んだ上で限界まで引っぱった。

 

俺の下でチャンミンの身体が、陸に上がった魚のように跳ねる。

 

十分焦らした末、脇腹を手の平で撫ぜ上げ撫ぜおろす。

 

「...は...あぁ...」

 

初めて抱いた時にすぐにわかったのは、チャンミンは感じやすい身体の持ち主だということ。

 

脇腹まで下りた唇をチャンミンの首筋まで戻し、耳下を強弱をつけて吸う。

 

「んふっ...ふぅ...ん」

 

チャンミンの首筋がさざ波のように粟立った。

 

俺の片手はチャンミンの尻を撫ぜ、決して谷間の奥には指を埋めないよう、割れ目に沿って行ったり来たりさせた。

 

布面積の小さい下着の薄い生地は、あれの形をくっきりとひろっている。

 

尻を焦らしながら、前の膨らみを優しいタッチでこすってやる。

 

「...あっ...はぁ...」

 

みるみるうちにそれは生地を押し上げ、小さな布面積の中で窮屈そうだ。

 

それでも未だ、脱がさない。

 

窪ませた手で、生地の上から形に沿って柔く揉んだり、擦ってやる。

 

「すごいねチャンミン...興奮してる?」

 

「はい...きも、気持ちい...」

 

「もっと触って欲しい?」

 

「はい。

もっともっと、触って」

 

俺はふっと笑い、

 

「お客とやってる時も、こんなに勃たせていたの?」

 

『犬』時代の話は御法度のはず。

 

でもなんとなく...女のように組み敷かれるチャンミンを前にして、俺にすっかり身を預ける彼と触れ合ってみて...なんとなく分かったことがある。

 

その者がどちらの傾向が強いかを、どれだけ早く見抜けるのかが『犬』の人気に関わってくる。

 

いたぶられ慣れたチャンミンの身体。

 

ただ優しく抱くだけじゃ、チャンミンは満足しないのでは、と。

 

店でも前戯なしで挿入したあの時、チャンミンの目は恐怖と欲が混ざり合ったものだった。

 

「お客はっ...僕のがどうなってるなんて、気にしないっ。

はぁ...もっともっと触って。

お兄さん、お願い触って?」

 

爪先で亀頭の縁を引っかいた。

 

チャンミンの腰がぶるっと震えた。

 

チャンミンの言う通りだ。

 

お客の大半は、自身がイクことしか考えていない。

 

中には『犬』の身体で遊びたいお客もいるが、苦痛を伴うものも多く、ウケ専のチャンミンは痛い思いをすることも多かっただろう。

 

布地の1点がじゅくりと湿ってきた。

 

「糸がひいてるよ?」

 

「...もっと、もっと...!」

 

チャンミンは俺の手首をつかみ上下させた。

 

「...んっ...ふ、ふっ...」

 

「こうして欲しいんだろ?」

 

股ぐりをずらして、中身をむき出しにする。

 

下着からそれの先端がはみ出た光景に、俺の興奮は高まる。

 

透明な雫が今にもしたたりそうだ。

 

完全に勃ちあがったそれの先端から根元へと、塗り広げるようにスライドさせた。

 

だけど、尻に回した手はそのまま、割れ目をくすぐるだけ。

 

「あ...ん、はっ...はぁ」

 

女のように甲高く、掠れた喘ぎ。

 

反応するこの声は、『犬』時代に身につけた演技の声なのか。

 

大き過ぎる喘ぎに、俺はチャンミンの顎をつかみ、耳元で囁いた。

 

「俺は『お客』じゃない。

俺相手に『フリ』は止せ」

 

「ちがっ...違うもん」

 

チャンミンの根元をぎゅっと握りしめた。

 

「あぅっ...!」

 

「俺としたかったんだろ?」

 

潤ませた目でチャンミンはこくこくと頷いた。

 

もっときつく根元を締め付けた。

 

「感じているフリはよせ」

 

「違うもんっ。

気持ちいいもん。

離して...っく。

痛い...お兄さん、痛いっ」

 

解放してやると、チャンミンは俺と目を合わせたまま、下着を脱いだ。

 

「わざとらしい声は出すな。

萎える」

 

「ごめっ...ごめんなさい」

 

チャンミンが店1番だった理由も分かっていた。

 

中指を立て俺を誘っていた。

 

つんと顎をそびやかせ、小馬鹿にするような挑戦的な眼で俺を見ていた。

 

ところが、世を舐め切った目付きをしているわりに、その口元がわずかに震えていて、青ざめていた。

 

怯えていた。

 

 

恐怖の混じった眼の色と、お客の征服欲を刺激する喘ぎ。

 

全裸になった俺たちは、再び身体を重ね合う。

 

互いの下腹で挟まれた俺のそこは、確かめなくても固く張り詰めている。

 

互いのそれは擦れ合い、互いの分泌液が互いの下腹を濡らした。

 

心得ているチャンミンは大きく太ももを開く。

 

自身の膝を抱え高く腰を突き上げ、そこを露わにした。

 

目前にさらされたそこは、女のものを目にした時よりもそそられた。

 

「口が開いてるぞ。

おまえはどスケベな雌だ」

 

「...だって、お兄さんが...」

 

唾液をたっぷりと含ませた親指を、ずぷりと突っ込んだ。

 

指を回転させ、その穴を十分に広げる。

 

そうしなくても、既に柔らかく緩んでいて、いつでも俺のものを受け入れる用意はできていた。

 

「そこっ...そこがいいっ...もっと...もっと」

 

チャンミンの胸先をひねり上げながら、尻に埋めた指のピストン運動で、チャンミンの尻にぶつかった手の平が、卑猥な音を立てた。

 

瞬間、チャンミンは腰を引き、俺の指という愛撫から逃れた。

 

「お兄さんのも」

 

俺の下からすり抜けると、チャンミンは俺の肩を押して仰向けにした。

 

俺に尻を向けてまたがった。

 

そして、俺のものを喉奥まで食らえ込んだ。

 

 

(つづく)

 

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