~チャンミン~
レジカウンターの脇のドアを開けてすぐに、地下へと下りる階段がある。
お兄さんは「狭いな」とつぶやき僕を床に下ろした。
僕を横抱きにしていたら、階段の壁に僕の足がぶつかってしまうからだ。
僕はお兄さんに手をひかれて、埃だらけの階段を裸足でぺたぺた下りていった。
裸ん坊の自分が心もとなくて、半勃ちのおちんちんを手の平で覆い隠した。
裸が平気だったのに、今日の僕は恥ずかしがり屋になってしまった。
仕事部屋へと続くこの階段、かつての僕は1ステップごとに、心の中を空っぽにしていったんだ。
そこまでの十数メートルを、客の大半は『犬』にリードをつけることを好む。
リードの扱い方を見れば、その客がどんなプレイを好むのか前もって分かるのだ。
(粗野な客に、ひと晩どころか1週間レンタルされた時には、心を消してはいても辛いものがあった)
強く引っ張られ過ぎて、ステップを踏み外したことも多々あったなぁ、と思い出していたら、
「危ない!」
僕の腰はお兄さんに抱きとめられた。
「...辛いのか?」
僕を心配する声はとても優しいのに、えっちな目をしている。
僕は首をぶんぶん振って、「平気です。懐かしいなぁ、って思ってただけです」と答えた。
トラウマのあまり呼吸困難に陥り、その場にしゃがみ込んでしまい、真っ青な顔してぶるぶる震える...テレビで見たことがあるシーンは、僕には全然当てはまらない。
僕はタフに出来ている。
だから、お兄さんを安心させようと、強がって言ったものじゃないんだ。
屋外は残暑厳しい汗ばむ気候なのに、地下のここは冷え冷えとして、僕のおっぱいの先が固く縮こまっている。
幾度かお兄さんの視線が、僕のそこに止まった。
お兄さんは乾いた下唇を、赤い舌で湿した。
お兄さんの唇で温めて、舌で転がして欲しい。
僕はごくり、と唾を飲みこんだ。
舐めて吸って、噛んで欲しい!
おちんちんが膨らんで、僕の手の平の下で窮屈そうにしている。
ドアは開け放たれた状態だった。
壁は防水防汚加工されたビニールクロス貼りで、メインのベッドもビニール製だ。
客が入れ替わるごとに入念に消毒し続けたせいで、塩素の匂いが染みついている。
生臭い匂いがするよりはマシだ。
「...あ」
間口に立ち尽くし考え事にふける僕は、軽々とお兄さんに抱きあげられた。
その上にもろくて壊れやすいものを扱うかのように、恭しく下ろされて、僕は仰向けに横たわった。
腰を浮かせて、開いた両膝はお腹に引き付けた。
僕は中指と薬指によだれをたっぷり、まとわせた。
お兄さんと目を合わせたまま、その指をお尻の穴へと這わせ、ゆっくりと突き刺した。
「は...はぁ...あっ...」
さっきまでお兄さんになぶられていたため、柔らかく緩んでほぐす必要はなかった。
どん欲に口を開けたそこを、よく見てもらえるように、左右に割った。
お気に入りの箇所を指の腹でこすると、「んふっ」と思わず出た甲高い声に、自分でもびっくりする。
僕とお兄さんは目を合わせたままだから、僕の指がアソコをどうイタズラしているのか、お兄さんは見ることができない。
「...は...あぁ...あ...」
お兄さんが見たいのは僕の表情なんだ。
えっちなことをして、えっちな声を出す僕を見たいんだ。
「挿れて...?」
お兄さんの眼がウルウルとしてきたけれど、これは涙ぐんだものじゃない。
高熱の人の眼だ。
熱病にやられて、僕のことが欲しい欲しいって、狂いかけている人の眼だ。
お兄さんは唇の合わせをちろりと舐めた。
舌なめずりする虎のようで、ぞくり、とした。
「早く...挿れて。
お兄さんの...挿れて?」
僕はこれから、この人に食べられる。
お兄さんは僕と目を合わせたまま、ズボンと下着をずらしている。
「んっ」
僕の入り口にあてがわれた、弾力のある温かいもの。
お兄さんと目を合わせたまま、僕はそれを飲み込んでいく。
お兄さんのおちんちんが欲しくてたまらない僕の内臓。
本来の役割を忘れて、中へ奥へと送り込む
・
「んっ...ふっ...お、大きい...」
「なあ、チャンミン」
ずん、と衝撃についで、お尻の奥から強烈な痺れが弾けた。
弾けたのちに、全身の力が抜ける。
「ひゃ...あっ...あん...っあ」
数度、腰を叩きつけると、ぴたりと動きを止めて僕に囁きかける。
「思い出したか?」
低く、男らしい声だ。
「...?」
「客に抱かれている時も、そんな声を出していたのか?」
ずくずくと数度突いては、僕の反応を確かめる。
「あああぁん...!」
「いい反応だ。
さすが売れっ子だ」
お兄さんの手が僕のお尻へ振り下ろされ、バチンと見事な破裂音が室内に鳴り響いた。
「ちがっ...違うよ」
「へえ...じゃあ、これは?」
と、唇の片端をクイと上げいやったらしく笑って、深く貫いたまま左右に僕を揺さぶった。
「ああぁっ...いい、いいっ...!」
僕の上にのしかかるお兄さんにしがみつこうと、伸ばした両腕は払いのけられた。
「お前は尻を広げていろ」
手首をつかまれ、自身のお尻にあてがわれた。
数えきれない数のお客をイカせてきたこのベッドで、僕はお兄さんに抱かれている。
僕らはとても悪いことをしている。
今も昔もここは、衛生的な匂いがする。
叩きつけられる腰の力を、僕は商売道具だったアソコで受け止める。
『元犬』が『犬』だった場所で抱き合っている。
トーサク的だね。
(つづく)
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