~チャンミン~
二度と足を踏み入れたくない憎むべき場所のはずなのに、いざ来てみると案外平気でびっくりした。
お兄さんのおちんちんが、家でのえっちの時よりパンパンになっていて、とても興奮しているのが分かって、僕は嬉しかった。
お兄さんは僕よりも繊細で優しい心の持ち主だけど、さすが『元犬』。
トラウマがどうのこうのと、こだわるものが多くては『犬』は続けてこられなかった。
「いいか?」
「いい、いいっ...」
床に立ったままのお兄さんは、ベッドに寝っ転がった僕の肩をひっつかんでいる。
最高に感じまくっている僕の身体。
コリコリに勃ったおっぱいの先が、お兄さんのポロシャツに擦れる感触だけで、えっちな声が漏れてしまった。
カエルみたいに開いた太ももに、人の関節の可動域の広さに驚いた...なあんて、真っ最中に関節がどうのなんて気にもしていない。
繋がったところをお兄さんに見てもらいたくて、両尻を左右に開いていた。
「今日のチャンミンは凄いね。
ここが『犬』の店だから興奮しちゃったのかな?」
お兄さんは身をかがめると、鼻のてっぺん同士をくっつけた。
「ここは大嫌いな場所なんだろう?
どスケベなチャンミンは、俺に『犬』みたいにヤられて興奮してるんだろう?」
お兄さんの汗が滴り落ちてきて、眼に沁みてまばたきしていると、彼にまぶたごと舐められた。
恥ずかしいことが好きな僕をお兄さんは知っている。
ギラギラ輝くお兄さんの眼はわずか数センチ先。
射竦められて、僕は呼吸を忘れてしまう。
素直に認めるしかなくなる。
「...はい」
僕の答えに満足した風のお兄さんは、僕のお尻からおちんちんを抜いてしまった。
「...えっ...ちょっと...やだ...」
お尻が寂しくなって泣きそうになっていると、お兄さんが洋服を脱いでいるところだった。
腕をクロスさせてシャツを脱いでいた。
筋肉と骨、すべすべの白い肌。
何度見ても惚れ惚れとしてしまう美しい身体だ。
僕は女の人とえっちをしたことはないけれど、えっちをしている女の人を近くで見たことはある。
(前のショユーシャは、僕と女の人を並べてえっちをすることが好きな人だったんだ)
お兄さんとえっちをしている時の僕は、女の人みたいになっていると思う。
お兄さんみたいに逞しくて美しい人の下になる悦びで、いっぱいになるんだ。
お兄さんはベッドに上がると、僕を後ろから横抱きにした。
僕の片脚は持ち上げられ、心得ている僕はその膝を支えた。
「...んぐっ」
後ろから貫かれ、深いため息を漏らしてしまう。
ベッドから突き落とされないよう、ベッドのへりを掴んでいた。
この眺め...窓のない部屋、天井の隅に監視カメラの赤いランプ、シャワールームのドア、壁のフックにぶら下がる鎖と革紐。
客に揺さぶられながら、何度この光景を眺めたことか。
当時の僕と今の僕は、天と地ほど違う。
過去に思いを馳せていたせいで、油断していた。
「ああぁっ...ん!」
突然、頭のてっぺんまで貫く快感に、悲鳴をあげた。
ここで一度、イってしまったらしい。
僕は再び仰向けに転がされ、お兄さんは僕の上にもたれかかって体重をかけた。
お兄さんに扱われると、僕の身体はぐにゃぐにゃに柔らかくなり、簡単に二つ折りにされるのだ。
「...ああっ...いいっ、いいっ...!」
その大きくなったモノで激しく出し入れされたり、ぐるぐるかき混ぜられて、お腹の中が苦しい。
『犬』だった頃、しんと醒めた頭で、白けた気分で見上げていた天井の空調ダクト。
このビニール張りのベッドの上で、フリじゃなく、初めて真の喘ぎ声を上げていた。
「いぐ...いいっ...いいっ...いっ、いいっ...いいっ」
お兄さんの鼻息が荒くなってきた。
数か月前のことだ。
僕はお兄さんに買われ、この部屋で、このベッドで、『犬』として彼に抱かれた。
『犬』と客だった僕らは恋人同士となって、同じベッドで身体を重ねている。
「チャンミンはもう『犬』じゃない。
俺と対等なんだ」
何度もお兄さんから言われていた。
その言葉は、僕の意識の上っ面をかするだけだった。
実感が伴っていなかったのだ。
でも、こうして繋がり直しているうち、過去がセーサンされたような感覚に襲われた。
僕は無知で頭が悪いから、お兄さんの言葉がすぐには理解できない。
ねえお兄さん。
僕が理解できるまで、何度も繰り返して。
僕といっぱい、えっちして。
いっぱいいっぱいえっちをしているうちに、僕は確かに求められていると自信がつくから。
今はまだ、いつか僕の手を離してしまうんじゃないかって、怖いんだ。
誰かのショユーブツになることは、窮屈だろうけど、捨てられたらどうしようと怖くなるものなんだね。
・
ガクガクにシェイクされて、頭がおかしくなっているところに、おちんちんの首で僕の弱いところを重点的に刺激される。
一方的に集中的に与えられる快感に耐えきれなくて、身体を起こそうとしたけれど、お兄さんに肩を押さえつけられてしまう。
僕らにとってこの体位こそが、相性抜群な繋がり方なのだ。
数えきれないほどの客に、中を掘られてきた僕だ。
それでも、あのスポットに到達し刺激することができた客は、片手もいない。
長ければいいってものじゃない。
僕自身がリラックスしていないといけないし、上になる側も奥深く到達できる角度をつかむセンスが必要だ。
要は相性。
そこは秘部。
激痛に涙が浮かんだ。
お兄さんのおちんちんの先っぽが、とんでもなく深いところを突いている。