(88)NO?

 

 

 

~チャンミン~

 

本調子でないからか、民ちゃんはお代わりもせず、「痛み止めの薬って眠くなるんですよねぇ」と言って、早々と布団にもぐり込んでしまった。

 

「今日はお迎えに来てくださって、ありがとうございます」

 

民ちゃんは、布団から目だけを出してにっこりと笑った。

 

「おやすみ」

 

「おやすみなさい」

 

 


 

 

~民~

 

ねぇ、チャンミンさん。

 

どうして説明してくれないんですか?

 

リアさんとのこと。

 

「リアとは籍を入れて、お腹の子と3人で暮らしていくことになりそうだ」って、宣言しないんですか?

 

今日のタクシーの中で、また私の手を握りましたよね。(寝たふりをしていたんですよ)

 

宣言をしてくれれば、手を繋いだり私に優しくしてくれることも、単なる友情(?)同志愛(?)みたいなものと受け取るしかなくなって、簡単なのに。

 

でも、そんな宣言をチャンミンさんの口から聞かされたら...やっぱりショックです。

 

おめでたいことなのに、私は全然歓迎できません。

 

ねえ、チャンミンさん。

 

私が質問するのを待っているのですか?

 

チャンミンさんが私に触れる度、優しくしてくれる度、私は何度も本気にしてもいいのかな、と迷いました。

 

チャンミンさんって鈍感ですね。

 

嫌だったら払いのけるでしょう、普通は?

 

チャンミンさんに手を握られて、私は嬉しかったんですよ。

 

気付いてくださいよ。

 

チャンミンさんばかり責めてて...駄目ですね、私って。

 

チャンミンさんは身動きがとれないのに。

 

好きな人がいる、って打ち明けていたのは私の方なのに。

 

ねえ、チャンミンさん。

 

私って、勝手な女ですね。

 

「彼はどんな人?」と問われて、惚気ていたのは私なのに。

 

私って、欲張りな女ですね。

 

ユンさんのことも好きだし、チャンミンさんには側にいてもらいたいし、と。

 

ねえ、チャンミンさん。

 

私は弱虫なので、チャンミンさんに質問できません。

 

「私のことをどう思っていますか?」と。

 

答えを知ったら、苦しくなるから。

 

でもね、なんとなく...答えは知ってます。

 

恋人ごっこの時のことです。

 

私もチャンミンさんも、『本当のこと』を言っていたんですよね?

 

「大切な言葉だから胸に仕舞ってあるんだ」と言ったチャンミンさん。

 

この言葉で、チャンミンさんの本心に触れた、と思いました。

 

私たちって、照れ屋ですね。

 

あれが現実の話になったらいいなぁ。

 

無理だってこと、分かってますよ。

 

ねえ、チャンミンさん。

 

本気にしないようにしていた理由、分かりますか?

 

リアさんのことがあるからですよ。

 

チャンミンさん。

 

新しいお部屋で、チャンミンさんと花火がしたかったです。

 

 

(つづく)

 

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