1人分の布団の中に、2人の男がぴったりと身体を密着させている。
俺の浴衣ははだけてしまっているし、布団の外では密会カップルがコトの真っ最中だ。
これだけ条件が重なると、興奮するなと言う方が無理な話。
「ユンホさん...もしかして...おっきくなってます?(ヒソヒソ声)」
俺の耳元で囁くチャンミンの熱い吐息。
「馬鹿!(ひそひそ声)」
おかしな気分に突入しかけていた俺は、寄せてくるチャンミンの唇を手で塞いだ。
今さらながらチャンミンがどっち側なのか、問題にしてこなかったことに気づく。
それとは、『チャンミンはストレートなんだろうか?』だ。
俺は、男とどうこうなった経験はないけれど、チャンミンを好きになったことに何の抵抗もなかった。
だって、美しいものは美しいし、面白かったら尚ヨシ。
俺だったら喘ぎ声の主の性別は問わない。
俺たちはうつ伏せになっていて、肝心なところは敷布団と腹でサンドされている。
かなりの声量の喘ぎ声を聞きながら、チャンミンはどっちなんだろう?と、確かめてみたくなった。
狭い空間に密閉された高温多湿な空気。
身じろぎするたび、互いの体臭が混じり合い、むせかえりそうになった。
頭がくらくらしてきた。
押し付けたアソコが苦しくなってきた。
密会Hを盗み聞きしているせいなのか、可愛いボーイフレンドとくっついてドキドキしているだけに過ぎないのか、それとも...?
ウメコに仕込まれたモノを、チャンミンはいよいよ発動させたのか!?
それにしては、今俺に押し倒されるのは、タイミング的にまずいのでは?
「ユンホさん、もっとこっちに(ヒソヒソ声)」
「!」
「布団から出ちゃいますよ(ヒソヒソ声)」
俺の腰にチャンミンの腕がまわり引き寄せられ、互いの身体がめり込み気味になる。
さらに、「ユンホさんの腕が邪魔です」と俺の腕をつかむと、チャンミン自身の腰の上へと誘導された。
...押し倒すんじゃなくて、押し倒されるのは俺かもしれないじゃないか!
一刻も早く回収だ。
アレが仕込まれていると目星をつけた箇所へ、俺はそろそろと手を伸ばす。
「お前の方はどうなってるんだよ?(ひそひそ声」」
「僕の?(ヒソヒソ声)」
チャンミンの腰の下へ手を突っ込んだ瞬間、俺の手は払いのけられた。
「やん!」
「しーーーー!
声がデカい!
減るものじゃなし、ちょっとくらいいいだろ?(ひそひそ声)」
(エロ親父が言いそうな台詞だなぁ)
「やん」
「デカくなってて恥ずかしいんだろ?(ひそひそ声)」
「そういうユンホさんはどうなんですか?
触らせてください(ヒソヒソ声)」
股間を狙う俺の手と股間をガードするチャンミンの手がぶつかり合う。
布団の外では、いよいよフィニッシュを迎えようとしているようだ。
「声...おっきいですね(ヒソヒソ声)」
「ああ」
肌と肌が当たる音と、男の荒い息。
勘弁してくれ、と思った。
「暗くて見えないのが残念です。声すごいですね...どこからあんな声が出るんでしょう?部屋の外にまで聞こえちゃうでしょうよ。この声、誰なんでしょうね。う~ん、分かりません。
ところでユンホさん、人はなぜ性交をするんでしょうか?快楽を得るためでしょうか?気持ちいいっていいますしね。でも世の中には、性交以外にもっと気持ちがいいことがありそうです。それじゃあ、性欲の処理の為?人間の三大欲求のひとつですからね...い~え、それだけのものじゃないはずです!繁殖行為のため?い~え、それだけのものじゃないはずです!ストレス発散のため?2人の肉体がくんずほぐれつ、呼吸を乱し汗をかく。一種のスポーツです。目と目を合わせ、愛の言葉を交わし合う。2人の身体が重なり合う。凸と凹がぴたりと重なり合う。抱き合い、肌同士で温め合いたい。うん、それですね!
ねえユンホさん。どうして性交とは、こそこそするものなんでしょう?(ヒソヒソ声)」」
「人前でやったら、捕まるだろう?(ひそひそ声)」
「大正解!
もうすぐ終わりそうですね...違ったか。
体位を変えるみたいです...あれは...バックですかね?
...まだかな...なかなか終わらないですね。
お、お...お~!
やった...終わりました、終わりましたよ!」
意中の人物と狭いところに閉じ込められるシーンとは、大抵の場合、ドキドキときめきタイムらしい。
イチャイチャしたいのにそれが出来ない、反応しているのがバレたら恥ずかしい、相手の身体つきにときめいたりして...確かにその通りだった。
俺なんて、心も身体も穏やかならぬ状況だったのに、チャンミンはケロッとしている。
なんだよ俺ばかり。
ずるいよなぁ、と思った。
(つづく)
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