(13)ぴっかぴか

 

 

~チャンミン~

 

 

「あんた、何の仕事してるの?」

 

着ているものを脱ぎ、10㎝だけ開けたドアの向こうへ放ろうとした。

 

ところが、ユノはそれを受け取ってくれる...優しい彼に涙が出てしまうよ。

 

「...うーん。

サービス業」

 

「へぇ。

レストランとか?

それはないか。

あんたの髪色じゃ、職業が限られるよな?」

 

「確かにね」

 

温度高めのお湯を頭からかぶる。

 

「ユノは何の仕事してるの?

美容師か何か?」

 

髪色といいセンスいい服装といい、そんな気がしたんだ。

 

スウェットの上下の部屋着も、スタイル抜群のユノにかかれば、ひとつのファッションとして成立していた。

 

それから、そのスウェット生地にくっきり浮かんだアレのサイズときたら...うふふふ(触っちゃった)

 

「ショップ店員?」

 

ユノのシャンプーは安物と言うだけあって、指どおりがきしきしする。

 

「俺の金髪を見れば、そう思っても当然だろうなぁ。

俺ね、スーパーで働いてる」

 

「えええっ!?」

 

意外過ぎて、大きな声が出てしまった。

 

「ユノってスーパーで働いてるんだ...へぇ...」

 

「そこまで驚くかぁ?」

 

「髪の毛は大丈夫なの?

身だしなみが厳しそうなのに」

 

「厨房で総菜を作ってるんだ。

帽子をかぶってるし、店頭にはほとんど出ることはないから、問題ないんだ」

 

「へえぇぇ」

 

ユノほどの男は、スタイリッシュな場所でこそしっくりくるし、絵になる。

 

ネットのついた帽子をかぶってマスクをして、白衣にエプロンのユノの想像がつかない。

 

...でも。

 

悪くない...。

 

悪くないねぇ...。

 

ユノの見た目とお人好しな性格、チェリーのギャップに大いに萌えてしまった僕だ。

 

白いゴム長靴を履いたユノ...薄ピンクか薄緑の制服の下に、最高のボディが隠されている。

 

いい...すごくいい!

 

シャンプーの泡を洗い流そうとうつむいた際、自身の股間が視界に入る。

 

「......」

 

ユノのアソコは金髪かぁ...(頭髪より色は濃い、と言っていたけれど)

 

「うふふふ」

 

(お!)

 

泡いっぱいのボディタオルで身体を洗いながら、僕の頭にナイスなアイデアが浮かんだ。

 

 


 

 

~ユノ~

 

 

「チャンミンは何の仕事してんの?」

 

俺は浴室のドアにもたれて、シャワー中のチャンミンに声をかけた。

 

帰りそびれた友だちが泊まっていくことも度々だったから、俺んちで風呂に入る男なんて、珍しくもなんともない。

 

チャンミンは(現在のところ)友人でもなんでもない。

 

興味深い男だが、俺の中の警報メーターがグリーンとイエローゾーンの間で震えている。

 

俺の朝勃ちを触っていたことで、チャンミンがカミングアウトした内容に真実味が帯びてきた。

 

チャンミンとは、知り合ったばかりの前夜の時点で打ち解け合っていた。

 

俺を誘っているのか、怯える姿を面白がっているのか、その辺の見極めはまだまだ必要だ。

 

俺との肉体的距離の取り方が近すぎる点を除けば、一緒にいて面白い奴なんだ。

 

ん?

 

俺はさっきから、何を言い訳めいたことばかり考えているんだ?

 

ふむ...こういうことか...。

 

チャンミンの嗜好は別として、股間の防御さえ怠らなければ、十分知人付き合いができそうだ。

 

向こうがどう思ってるかは分からないけど...そうでもないか、奴は俺に興味津々らしい。

 

「サービス業だよ」

 

「何のサービス?」

 

(見た目から予想できる

のは、夜の仕事だ。

夜の仕事もいろいろあるしなぁ。

俺はその世界の知識に疎いから、『夜の仕事』としか言えないけど...。

「今日の仕事は午後から」と言っていたしなぁ。

サービス業って、一体なんだよ?)

 

「専門的なサービス」

 

(専門的!?

やっぱり、それ系専門、ってことか!?

俺の偏見に満ちた思考じゃ、それしか思いつかないんだけど!?)

 

言いにくいのなら、無理に聞き出すのも野暮だ。

 

「バスタオル、ここに置いておくから」

 

昨日からベランダに干しっぱなしだった洗濯物でもとりこもうかと、この場を立ち去ろうとした。

 

 

「ひやあぁぁぁぁぁぁ!」

 

浴室からの悲鳴に、俺は引き返すしかない。

 

「ゆの、ゆの!」

 

「どうした?」

 

曇りガラスの向こうに目をこらし、中のチャンミンに声をかけたが、なんてことはない。

 

「シャワーが変なの。

水になっちゃった」

 

だとさ。

 

「温度調整のレバーくらい分かるだろ?

え...そこはかまっていないって?

そんなはずないだろう?

パネルの温度設定は42℃になってる?

浴槽の上んとこにあるだろ?

...え?

わかんないって?」

 

面倒くさい奴だなぁと、浴室ドアを開けた。

 

「きゃっ!」

 

チャンミンは胸とそこを隠して床にしゃがんだ。

 

(なぜ、胸を隠す...?

さんざん乳首を見せてきたのに、今さらなぜ隠す?

『キャッ!』って何だよ?)

 

「あんたのそこなんて見ねぇよ」

 

俺を痴漢扱いしやがって、とムッとしながら設定用パネルを確認した。

 

「こりゃ水になるはずだよ。

ボイラーの電源が落ちてる」

 

「......」

 

返事をしないチャンミンに、振り返った。

 

「!!!!!」

 

 

(つづく)

 

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