~ユノ~
男の裸を見てドキッとしてしまう経験は、これまでなかった。
体育の授業前後、教室で着替える時、部活動でのロッカールーム。
ガリガリに痩せた貧相な奴(背を向けてこそこそと着替えている)、ぽっちゃり体型で女子より胸がある奴(ふざけた級友たちに揉まれる)、筋トレに励みだしていい身体に仕上がったのを見せびらかす奴(胸筋触ってみる?)...体形はさまざまだ。
ブラジャーとそこにおさめられたものにしか興味がなかったから、男どもの身体なんて目に入っていなかった。
修学旅行や部活動の合宿では、複数人で風呂に入る機会もある。
一番乗りで毛が生えた奴がいたりすると、もう大変だ。
「見せろ見せろ」と、恥ずかしがって股間を隠す手を強引に除けて、「うっわ~」とからかってみたり、大人に近づいた彼を羨ましく思ったり...。
サイズや形は違っても、同じモノをくっつけている同性同士。
「だから、何?」なのだ。
湯の温度がおかしいと騒ぐから、浴室に様子を見に行ったんだ。
一応、礼儀としてチャンミンの身体をじろじろ見ないようにしていた。
床にぺたりと座り込んでいたチャンミンは、乳首と股間を隠している。
そして、その手が除けられた時。
俺の視線はソコに釘付けになってしまったのだ。
「!!!!!」
つ。
つ。
つ、つるっつる...。
そう。
チャンミンのアソコはつるっつるだったのだ。
(AV男優でも剃毛してる奴いるよな...)
つるっつるだから、当然チャンミンのアレはもろ出しなわけで...赤ちゃんの...とまでは言い過ぎか...ぴっかぴかの一年生のものみたいだった。
サイズは俺とそれほど変わらないのに、ピュア感があるのは...色素が薄いせいか。
つるっつる...。
「ゆの?」
スウェットパンツの裾を、つんつんと引っ張られてはじめて、チャンミンのアソコを凝視していた自分にハッとする。
「あんた...。
ソコ...。
剃ってるの?」
俺は疑問に思ったことを、ストレートに尋ねてしまうところがある(友人たちに無邪気な無神経者だと言われている)
チャンミンは自身の股間に視線を落とし、つるっつるのソコを撫ぜた。
「これ?
びっくりした?」
「うん。
初めて見たよ。
すげぇな...」
胸や腰からソコに向けて滑り落ちた泡で、濡れて光る無毛地帯。
斜めに崩した座り姿勢のせいで、妙に艶めかしかった。
「エロい...」と思ってしまい、だからこそ俺は、学生時代の更衣や入浴時間を思い出していたのだ。
チャンミンが俺の「毛」に興味を持ったように、今度は俺の方が興味津々だった。
「剃刀?」
「ううん。
剃ったら3日もしないうちにチクチクするじゃないの」
(...ということは、剃った経験があるんだな)
「これね、永久脱毛してるの。
レーザーだよ」
レーザーと聞いて、「痛そうだな」と俺は顔をしかめた。
「なんでぇ?
パンツがちっさくてはみ出るから?」
チャンミンがドアの隙間から俺に手渡した下着が、女もののパンツみたいに小さなものだったから。
「んー、それもあるけど...」
(銀髪が許される職業!
つるっつるのアソコ。
ちらっと浮かんだ考え...AV男優なのか!?
それなら納得だ。
うん、大いに納得だ)
心の中で頷いていると、チャンミンはくすくす笑い出した。
「ユノが何を考えているか分かるよ。
僕はそんなんじゃない」
前髪は後ろに撫でつけ、額ときりっと真っ直ぐな眉が露わになっていた。
水滴をのせたまつ毛は艶やかに長い。
「タマの方はどうなってるの?」
「デリケートなところだからね。
施術の時、痛かったよぉ」
チャンミンは横座りから両膝を立てて座り直した。
そして、アレとタマをすくい上げて、俺に無毛地帯を見せてくれる。
「ほら」
「うわっ~。
つるっつるだ...すご」
これぞまさしく、生まれたての姿!
「お尻もつるつるだよ」
四つん這いになったチャンミンは、件の箇所を見せてくれる。
「どれどれ?」
俺もよく見てやろうと、しゃがみ込んだ。
男のケツなんて怖気づいてしまうシロモノなのに、好奇心の方が勝ってしまったのだ。
俺の目前にさらされたソコは、チャンミンが言う通りつるっつるだった。
「シモの毛、全部ないんじゃん」
「そうなの」
待て...。
待て待て。
俺は今、何をやってるんだ?
知り合って15時間も経っていない男の、股間事情を知ることになるなんて..!
でも、いかがわしい雰囲気がほぼなかったのはやっぱり、チャンミンが綺麗な男で、ごつさのない身体がつるんと中性的だったからなんだろうな。
「シモの毛をつるっつるにしたワケは?」
「前付き合ってた人がね、つるつるにしろ、って」
「はあぁ?」
(恋人に剃毛...じゃなくて脱毛を命ずるなんて...一体どんな関係なんだよ!)
「つるつるだと興奮するんだって」
「うわぁぁ...。
俺には理解できん」
童貞のくせに、アレの経験がないくせに、俺はそう言った。
つるっつるになったそこに頬ずりする男の姿が浮かんだ...淫猥だ。
ドン引きするどころか、エロいと思ってしまった俺。
チャンミンはシャワーで泡を洗い流し始め、俺は脱衣所に戻った。
数センチ開けたドアの隙間から会話を続ける。
「それって...ピアスをくれた人?」
「ううん。
また別の人」
「...あんた、いっぱい恋人がいたんだなぁ。
これまで何人と付き合ったことあるんだ?」
俺はこれまで4人の女の子と、肉体関係抜きで交際してきた。
「カウントしたことないけど...。
『付き合った』と言えるのは。
20人...くらいかなぁ」
「はあぁぁぁぁ!?」
(つづく)
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