(22)ぴっかぴか

 

 

~ユノ~

 

さて...これをどうすればいいのか。

 

俺は床に広げたシャツを前に、腕を組んで思案していた。

 

帰宅した俺は、寝不足と目まぐるしい感情に揉まれてくたくただった。

 

仮眠のつもりがぐっすり熟睡してしまい、目覚めたら夜になっていた。

 

ベランダに干しっぱなしの洗濯物を思い出し、取り込んだのはいいのだけど...。

 

チャンミンのシャツが、くっしゃくしゃに皺だらけの無残な姿になり果てていた。

 

こいつを、元の姿に復元するにはどうすればいいんだろ?

 

『シルク,洗濯,しわ,直す,方法』のキーワードで検索をかけてみた。

 

「う~む...。

アイロン...持ってないし」

 

ひと回りほどサイズが縮んでいるようにも見える。

 

(あの男はピタピタがお好みだから、ちょうどよかったりして...あは)

 

謝ればいいか。

 

「わっ!?」

 

突然鳴り出した、スマホを取り落としそうになった。

 

発信者は...チャンミン!?

 

チャンミンが俺に電話をかけてきたのだ。

 

「今何してる?遅い時間だけど、飲みに行く?」とか?

 

嬉しがってる自分がいた。

 

はずんだ声で出るのはなんだか悔しい。

 

第一声は、迷惑そうに「なんか用か?」

 

...よし、これだ!

 

「俺になんか用か?」

 

『......』

 

「もしもーし!」

 

『お宅が『ユノ』さんか?』

 

「そうだけど...あんた誰?」

 

チャンミンの声じゃなかったことから、飲みの席でふざけた友人がかけたものなんだろうと思った。

 

それとも、酔いつぶれたチャンミンを迎えに来い、といった電話なんだろうか。

 

(ったく、面倒をかける奴だな。

早速これか?

昨日知り合ったばかりなんだぞ?)

 

床に放り投げたバッグをたぐり寄せ、俺は立ち上がっていた。

 

『ユノさんが、チャンミンの『今彼』なわけね』

 

「か、彼氏じゃねぇし!」

 

電話をかけて寄こした奴の言い方が、小馬鹿にしたもので気に入らなかった。

 

「で、俺に何の用?」

 

俺は不機嫌さを隠さなかった。

 

チャンミンとの仲は色恋がからんだものじゃない。

 

少しだけど...俺はチャンミンと同類の男じゃない、と主張したかったんだと思う。

 

チャンミンがどういうつもりなのかは脇に置いておいて、俺の方はチャンミンとどうこうなるつもりはないし...男と恋愛なんて...無理だ!

 

俺はやっぱり偏見の塊だな...いくらチャンミンが面白い奴だからといって、一晩でその偏見が消え去るのは早すぎだろう?

 

と、憤慨していると、電話の奴は信じられないことを言いだした。

 

『明日か明後日には捨てられるだろうね。

お気の毒さま』

 

捨てる?

 

「はぁ?

意味が分からん」

 

そいつの言っていることが意味不明で、首をかしげていると...。

 

『遊び人のチャンミンが、大変なことになってるんだ?』

 

「ええぇぇ!」

 

『俺たち、もう帰りたいんだよね。

この辺に捨てていってもいいけどなぁ』

 

「はあぁぁ!?

どこだ?

連れて帰るから、場所を教えろ」

 

部屋の照明を消し、俺は靴を履いた。

 

(何やってんだよ!)

 

『ユノ!

来なくていいから!』

 

背後からチャンミンが叫んでいる。

 

『来るな!...』

 

『うるせ~よ』

 

おいおいおい!

 

「お前には一度、痛い目に遭ってもらわないと」だの「僕を放っておけよ!ユノは関係ないだろ」だの、揉めているやりとりが聞こえてくる。

 

どうやらチャンミンは、トラブルの真っただ中にいるようだ!

 

どこぞの男に絡まれているようだ。

 

だから言わんこっちゃない。

 

「どこだ!

場所を教えろ!」

 

俺は家を飛び出した。

 

ったく、面倒をかける奴だ!

 

(つづく)

 

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