~チャンミン~
かれこれ40分ほど、2人ずつの男たちに左右を挟まれ、座らされていた。
場所がファミリーレストランなだけに滑稽で、一刻も早くここから立ち去ってしまいたい。
「ぐぅ」とお腹が鳴ってしまい、食べずじまいになってしまった夕食を思い出せるほど、余裕を取り戻していた。
ピザに手を伸ばしたら負けを認める気がして、アイスコーヒーを飲むしかなかった。
拘束されているわけじゃないから、男たちを振り切ることは出来た。
でも、僕の昔の男に煽られ、ユノは僕を救出しようとこちらに向かっている。
「救出」という言い方は大袈裟かな?
でも、ユノのキャラ的に...僕が思わせぶりに発した言葉をいちいち真に受けて、直球の反応を見せた...。
男の背後で「ユノ、来るな!」と叫んでしまったことで、「ただ事じゃない!」と慌てふためいていそうだ。
コトが大ごとになってしまったことと、僕の本性がユノに大バレになるこの後を想像して、暗い気持ちになった。
僕の真隣に座るこの男は、全てを赤裸々にしゃべってしまいそうだったから。
僕から受けた仕打ちを恨んでも仕方がない、僕の自業自得だ。
男の話が進むうちに、僕を心配していたユノの表情が軽蔑のものに変化していくだろうな。
僕と縁を切ってしまうだろうな。
「はあぁぁぁ...」
僕のスマホが鳴った。
(ユノだ!)
男は逞しい背中で壁を作ってしまい、彼の手からそれを奪い返すことができなかった。
「まだか?
〇〇だよ!
...そこじゃない!
アホか?
〇〇だ、〇〇!」
どうやらユノは店を間違えたようだった。
「らしい」と言うか、この緊迫した場を和ませてくれるというか...。
「おい。
今カレをどう始末するんだ?
ポイするのか?」
「ユノはそんなんじゃない!
ユノは友達だよ!」
きっぱり言い切って、僕の太ももに乗せられた男の手を払いのけた。
「今カレと何度寝た?」
「うるせー」
かつてその手が僕の全身を這い、中を出し入れしていたかと思うと...ぞっとした。
・
まさに「ユノ様のおな~り~」な登場だった。
胸を張り、悠々とこちらに近づいてきた。
席に案内しようとする店員に対し、片手をあげる仕草もクールに見えた。
こんな状況下、自分が陥った状況を忘れて、僕は「ほぉ」とユノに見惚れてしまった。
いかにユノが、並外れたスタイルの持ち主なのかを思い知らされた。
プライベートを隠し撮りされた芸能人に見えた。
男たちも、はっと息をのんでいた。
彼らの隣で僕は「ふふん」、と得意げだった。
金髪頭にTシャツ、スウェットパンツ、トートバッグ。
どう見ても好青年...金髪頭だからって、チンピラにはとても見えない。
息せき切って、険しい形相で駆けこんでくるかと予想していた。
そして、僕を無理やり立たせて引きずっていくんだろうなぁ、って。
ところがそうではなかった。
僕は今回の一件で、ユノの新たなキャラを知ることができたのだ。
これほどの男はなかなかいないぞ、って。
(つづく)
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