~チャンミン~
閉め切った部屋はむっとしていたため、換気のために窓を全開にした。
「暑いでしょ?
そこにリモコンあるから付けて。
その前に手を洗って!
タオルは適当に使って。
冷蔵庫にビールあるから...そっか、ユノは弱いんだったね。
お茶か水のペットボトルがあるから自由に選んで。
その前にお風呂に入る?
あ、お腹が空いているなら何か作ろうか?」
「なあチャンミン...」
「?」
部屋に入ってからの僕は、落ち着きなくバタバタと動きっぱなしだった。
ユノは部屋の真ん中に立ち尽くしたままで、呆れた表情で僕の様子を眺めていたようだ。
「落ち着けよ。
あんた...俺のかーちゃんか?」
「え...」
どうやら僕は緊張しているみたいだ。
気になる男が僕のテリトリーに居る。
慣れていないんだ。
どう振舞えばいいのか...忘れちゃった。
「僕んちに泊まってよ」とユノにしつこく迫ったくせに、誰かを自分の家に入れるのは滅多になかった僕。
つまみ食いの男たちと関係を持つのは、必ず外と決めている。
フッた男が別れた後、ストーカーまがいに僕のアパート前に張っていて怖い思いをしたことがある。
それ以降、半同棲するのも必ず彼氏の部屋と決めているのだ。
プライベートを見せてたまるか。
彼らとの交わりはいわばスポーツ、自身のフラストレーションを発散する時、エナジー補給タイム。
「俺に気を遣ってるだろ?
こっちまで気を遣っちゃうからさ、リラックスしろよ。
あんたの部屋なんだぞ?」
そう言いながらユノは、僕の部屋をぐるりと見回している。
僕はクローゼットからユノのために、着替えを取り出した。
恐らくユノは、僕に不信の気持ちを少しは抱いていると思う。
経験人数が多い男であることは、出会ってすぐには打ち明けていたけれど、ユノはそんな僕を単なる惚れっぽい男程度に思っているだろう。
出会いの店では、失恋したばかりと嘘泣きしてみせたからね。
彼氏がくるくる変わって、別れ話がこじれてしまった結果、今夜のような修羅場になるときもある。
身体の関係だけを求めて、数多くの男たちをハントし続けているだけじゃなく、彼氏らしき存在がいても、抵抗なく二股三股かけられる男とまでは思っていないはずだ。
本当の僕を知ってもらいたいのか、隠し通したいのか...。
隠し通したくても、ファミレスの一件でそれとなくバレかけてるからなぁ。
(つづく)
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