気持ちが盛り上がってきた僕らだ、さっきの確認の質問はあってもおかしくなかった。
いざベッドインした時、二人とも『受け』だったり、二人とも『攻め』だったりしたら、ちょっと困るから。
「ユノは?」
なんとなく...なんとなくだけど、ユノは組み敷かれる方かなぁ、って(僕の経験はお粗末なものだけど、予想してみた)
ユノは僕よりもずっと男らしいタイプで、そのイメージ通りにいくと挿入する側だ。
でも、人というのは見た目通りなことよりも、「見た目と違って...」と言うことの方が多いと思う。
ユノの場合、マッチョな男らしさというより、男装の麗人的な雰囲気を同居させている。
「男らしいのに実は...」な部分と、「女性的な見た目も有している」の2つから導き出せれた答え...ユノは『受け』ではないか、と。
男の下で喘ぐユノの姿を想像して興奮してしまった僕は、ひとりこっそりと自室で前を刺激せずにはいられなかったんだ(ユノには内緒)
(ちなみに、僕はゲイだとカミングアウトすると『あ~、分かる気がする』とよく言われる。なぜだろう?)
「俺?
どっちだと思う?」
ユノはいたずらっ子な笑顔になった。
普段はマスクで覆われている口元も笑っていて、僕の嬉しさは倍増だ。
「え~?
どっちだろう?」
僕は分からないふりをして、僕らの唾液で濡れたユノの下唇を人差し指でなぞった。
ふざけたユノに指を齧られそうになる前に、指を引っ込める、引っ込めたけど、わざとユノに捕まった。
(ユノ...凄いよ、僕の指を咥えているんだよ?
反動で寝込んだりしないでね)
「イメージ通りだよ」
ユノは下唇をもてあそぶ僕の手を包み込み、動きを封じた。
「...ということは?」
ことがシンプルに運んでほっとしたところ、
(僕のイメージからゆくと...ユノはあっちで、でも、イメージ通りにはいかないだろうから、そっちじゃないかと予想してて...。
結局、どちらなんだろう?
分からなくなってきたぞ)
ユノは僕のうなじを引き落とし、僕の耳まるごと咥えた。
(ユノ...すごい!
いいのかな、いいのかな?
お風呂で綺麗にしてあるから大丈夫だよね?
僕の耳を舐めちゃって、いいのかな?)
「あ...あは...」
ユノの口内に僕の耳は包み込まれ、ゴウゴウいう音がうるさい。
ダイレクトに耳の穴に息を吹きかけられ、その度に全身の力が抜ける。
耳の窪みをひとつ残らず舐め終えたユノは、僕を再び驚かせた。
「!!」
お尻の割れ目をユノの指先が上下になぞり出したのだ。
「くすぐったい...!
駄目だよ、ユノ!」
ユノの太ももの上から逃れようと身動ぎしても、ユノにお尻をがっちりと抱え込まれていて無理だった。
「チャンミンはこちらの方が似合う」
「え!?」
「相手が俺ならば、チャンミンはこっちだ」
「......」
「こっちの方が気持ちいい思いができるぞ」
「え~っと...それは、どういう...意味なのかな...?」
「チャンミンは心のどこかで、俺に抱かれたいと望んでいたはずだ。
そうじゃなくても、気付いていないだけの話だよ。
チャンミン。
お前は俺に抱かれる側だ」
「えええぇぇ!?」
ユノの堂々とした言い方といったら!
「そうなんだよ。
チャンミンをこうやって...」
ユノは僕を抱き直した。
「抱っこしてみて、確信したよ。
俺はチャンミンを抱きたい。
チャンミンも...俺に挿れられたいと思っているはずだ」
「どうしてそんなこと分かるんだよ?」
「なんとなく、そう思ったんだ。
チャンミンは相手が持つ雰囲気に敏感で、一緒にいる奴と共感しやすい人間だ。
俺も相性を大事にするタイプだ。
相性が合わない奴の身体なんぞ、触りたくもない」
ユノは眉間にしわを寄せ、唇を歪めた。
「ユノは...根っからの...そっち?」
「ああ。
俺は好きな奴を抱きたい男だ。
好きな奴の中で果てたい。
好きな奴を気持ちよくさせたい」
(どきどき)
「そうは言っても、俺の侵入を許してくれる人なんて...。
裸で抱きあえる奴なんて滅多にいないよ。
生涯では一人だけかな...今のところ」
「うそ!?
ユノみたいなら...」と言いかけて、ハッとする。
ユノの見た目なら男に不自由しない。
でも、ユノと裸で抱きあう資格を持つ者はそうそういない。
だってユノは潔癖症。
ユノはそのたった一人を失ったのか...そうなのか。
ユノの指は僕の溝をなぞっているだけだ。
その溝の奥は熱を帯び、もっと奥はうねりながら、触れてもらいたがっている。
「こっちの経験は?」
ユノは僕のお尻をぺんぺん、と叩いた。
「...ない...けど...。
ないけど...ある」
「どういう意味だ?」
「婚約者とする時は、彼が受けだったから僕はそれに合わせてただけなんだ。
どっちがいいなんて、僕の経験人数じゃ分からない。
ヤッたことがあるのは、一人っきりなんだ」
「へえ~」
「『ある』と答えたのは、ワンピースを着てみるようになった頃から、自分でするようになった」
このカミングアウトも、もの凄く恥ずかしい。
「男の人に、そういう風にされたいって、思うようになったんだ。
見よう見まねで...彼にやってたことを、自分のお尻でやってみただけで...」
「じゃあ、自分で開発してたんだ?」
「...そういうことに、なるね。
『開発』かぁ...言い方がエッチだね」
「意見は一致したな」
「でも、本番はしたことないんだよ?」
「俺に任せていればいい」
「...わかった」
思いもよらない流れになってしまったけれど、ワンピースを脱がされる夢が叶うのだ。
...それも、ユノの手で。
(つづく)
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