(42)虹色★病棟

 

 

「...うっ...」

 

ユノは低い囁き声を漏らし、温かい吐息。

僕は舌を暴れさせ、握った手を激しく上下させた。

ユノのいいところをヒットさせると、僕をいたぶっていた彼の手は止まる、

僕はほくそ笑む。

ところが、お返しとばかり僕の穴はもっとイジメられる。

 

「あ、ああああぁぁ」

 

気持ちが良すぎて、ユノの大事なところを噛まないようにするので必死だった。

 

(凄いよ...凄いよ。

気持ちいいよ)

 

「んんっ...ぁああぁ...っ」

 

声をたてそうになると、さらにユノの指が穴の中で暴れる。

 

「...静かに。

何ごとかとスタッフが来るぞ」

 

駄目だと思うと、握られた僕のあそこが張り詰める。

ユノも同様らしく、僕の口の中で固さを増した。

僕らはイケナイことをしている。

 

「やっやぁ、それ、それ...やだぁ」

 

LOSTは恋を成就させる場ではない。

悲しみも執着も怒りも全部、手放す場所。

独りきりで行う修行の場なんだ。

皆が寝静まった深夜、ワンピースを着た男がお尻を丸出しにして、お尻に指を突っ込まれている。

もうひとりの男は、ワンピース男のお尻に指を突っ込み、さらにアレをしゃぶられている。

いけないよ、こんなこと。

 

「やっ...や...ギブ、ギブ。

もう...やだぁ」

 

スタッフの巡回時間まで余裕はあるけれど、今夜に限って早まるかもしれない。

隣室の者が、喘ぎ声を苦痛の声だと勘違いして、スタッフを呼ぶかもしれない。

 

「わ、かってる...。

もう勘弁して。

我慢...できない」

 

僕は必死に頭を上下に振った。

ユノのアレは長いから、彼の亀頭が僕ののどちんこをぐりぐりする。

室内はどこもかしこもえっちな音

僕はまだ、お尻だけでイケるところまで達していない。

 

「どうだ?」

 

「まだ...まだ...あと、ちょっと...」

 

咥えていたものから口を離し、酸素を取り込んでからユノの問いに答えた。

 

「イケそうなんだけど...まだ」

 

滴り落ちた僕のよだれで、ワンピースの襟元がよだれかけみたいになっていた。

イケそうでイケなくて、焦れったくて苦しい。

ユノの執拗さに、前戯で一度イカせたいのだろう。

右手はユノの根元を、左手で僕のモノをしごいた。

僕らには時間がない。

前と後ろの刺激で頭がおかしくなりそうになりながらも、僕は祈った。

互いの肌と性器が放つ匂いで、ユノが正気にかえりませんように。

そう祈りながら、知っている限りのテクニックで、ユノのソレを指と舌、喉と唇とで慰めたのだった。

 

 

「ごめん...本当にごめん」

 

ベッドから転がり落ちていた僕は、ユノに引っ張り起こされた。

なぜユノのものを咥えていた僕が、ベッドから落下してしまっていたのか。

絶頂の直前だ。

ユノが放つものを、僕の口内で受け止めようとしていた。

 

「駄目だ!」

 

突き落とされたのだ。

僕の方と言えば、寸止めできず床に落下した瞬間に射精してしまった。

僕の放ったものが、リノリウムの床を汚していた。

後で拭き清めればよいものの、僕はワンピースの裾でそれを拭った。

今すぐティッシュペーパーで拭い、除菌シートで拭い、アルコールスプレーを吹きかけ、最後にもう一度除菌シートで拭き清めなければならない。

...だって、僕の体液で汚染されたと、表情をこわばらせるユノを見たくなかった。

 

「仕方ないよ」

 

僕は平気な顔をして、ユノの手に引っ張られ、ベッドの上へと戻った。

 

「本当に申し訳ない」

 

ユノはぐっと頭を下げた。

 

「慌てずにいこうよ」

 

僕はワンピース姿のままだった。

一方ユノは、ズボンから前を出したままだった。

僕の視線に気づいて慌てて萎れたものを、おさめた。

 

「ね?」

 

肌同士を重ね合わすのは、まだまだ僕らには早すぎるってことだね。

直前で怖気付いてしまっても仕方がない。

ばい菌扱いされたと、傷ついてはいなかった。

僕の体液...精液で汚れるよりも、ユノ自身の精液で僕を汚してしまうことを、恐れたんだ。

いよいよ興奮の頂点という時に、ハッと我にかえったのだ。

 

「はあ...」

 

ワンピース...脱がされたかったなぁ...でも、仕方がないよね。

 

僕らには時間がない。

 

(つづく)