(12)ハグを邪魔されてーバンビは嬉ちいー

 

 

<以下、音声のみでお届けします>

 

「......」

 

(ミミさん!

 

どうして黙ってるんですか!?

 

...ま、まさか!

 

僕のがあまりにも小さくてショックを受けてるとか...!

 

『チャンミンったら、背は大きいのに、肝心なところは小さいのね』って。

 

そうですよね、ミミさんはいくつも目にしてきたんだから。

 

人並みだと思ってたんだけどな...。

 

自信なくしそうです。

 

僕のをそんなに見つめないでください。

 

恥ずかしいです)

 

「......」

 

(ええい!押し倒しちゃえ!)

 

「きゃっ」

 

(ミミさん...すべすべです。

お尻も柔らかいです...)

 

「綺麗です」

 

(きゃー!

ドジっこチャンミンが『男の眼』をしてる!

ドキドキする!)

 

 

(ここは気持ちいいですか?)

 

 

「はぁぁ」

 

 

(おー!

気持ちいいんですね。

じゃあ、この辺は?

サイズで満足させられないのなら、テクニックで!

セクシム発動です)

 

「ふぅん」

 

(ごめんね、チャンミン。

感じてるふり、しちゃった。

触り方がぎこちなくて...でも一生懸命で。

そんなチャンミンが愛おしいんだけどね。

 

あれぇ?

チャンミンは、乳首が弱いのかな?

これはどうかな?)

 

 

「あん」

(※チャンミン)

 

(変な声が出ちゃったじゃないですか!

それも女の子みたいな声が出ちゃったじゃないですか!)

 

(チャンミン、可愛い!)

 

(ひゃっ!

乳首ばっかり攻めないでください。

どうやら僕は、乳首が弱いみたいです!)

 

(あらら。

触られているうち、気持ちよくなってきたかも。

ゾクッとしてきたかも。

私の反応を見ながら、「学習」してるみたい。

チャンミンが可愛いよお)

 

 

(ミミさん...大好きです...)

 

 

(すごい!

腹筋がすごいんですけど!

ジムにでも通ってるのかしら?

こんなにカッコいい子が、『チェリー』だったとは、驚きだわ!

今までの彼女とは、どうしてたのかしら?)

 

 

「ひゃっ」

(※チャンミン)

 

 

(ミミさん!

おへそを触らないでください!)

 

 

「くすぐったいです」

 

 

(あらら。

おへそに毛が生えてるのね。

可愛い顔してるのに、意外だわ。

お風呂で倒れた時は、ちゃんと見ていなかったから。

チャンミンったら、バンビみたいな顔して...ギャランドゥなんだ...。

 

チャンミンだから『チャランドゥ』!

プッ。

可愛いんだから!

 

この毛の道を下に辿っていくと...

あらら、けっこう毛深いんだ)

 

(ミミさんがエロいです。

ぞくぞくします...。

もうちょっと、下です。

もうちょっと下をキスしてくれたら、僕は嬉しいです)

 

「ひっ」

(※チャンミン)

 

(また変な声出しちゃいましたよ。

ん?

焦らしてるんですか?

もうちょっと、横です。

そうそう...あれ?

違います!

もうちょっと上です。

やっぱり焦らしてますね。

ミミさんったら、僕の反応を楽しんでますね)

 

(いちいち反応しちゃって、可愛いんだから!

ここはどう?)

 

「ふぅん」

(※チャンミン)

 

(また変な声が出ちゃいました。

声を抑えられません!)

 

 

(チャンミンたら、もしかして感じやすいのかな?

可愛い!

可愛いんだから!)

 

「はぁぁ」

 

 

(ちょっと待ってくださいよ。

どうして僕だけ「裸んぼ」なんですか!?

ええい!

ミミさんのパンツを脱がしちゃえ)

 

「きゃっ」

 

(恥ずかしよー。

ふん!

お腹を引っ込めよう)

 

(おー!

ミミさん...感動します...)

 

「...濡れてますね」

 

「!」

 

(馬鹿馬鹿馬鹿!

いちいち言葉にしないでよ!)

 

(感動です。

ちゃんと感じてくれてたんですね。

では、

ミミさんの「秘部」を...!

おー!

ヌルヌルしてます。

女の人の「あそこ」を触るのは初めてです!

ぐふふふ。

えっちです)

 

(...んー。

そこじゃないの。

違う、そこじゃないの!

そこはお尻!)

 

 

(複雑な造りをしてますね...。

AVではモザイクのせいで、よく分からないからな。

(注:チャンミンのメイクラブの教科書はAVが全てである)

無修正のを先輩から借りればよかった!

ミミさん!

僕の指を「正しい場所」に導いてください。

お!

ここですね、わかりました。

おー!

僕の指を締め付けてきました!

ミミさん、エロいです。

ここですか?)

 

 

「気持ちいい、ですか?」

 

「あん」

 

 

(ごめん、チャンミン。

また感じてるふりしちゃった。

そんなに乱暴にしないで!

そうそう、もっと優しくね。

ん?

...ちょっと、痛いかも...)

 

 

「痛っ」

 

「ごめん!」

 

(しまった!

激しすぎました)

 

(チャンミンったら一生懸命なんだもの。

いろいろと残念だけど...。

初めてだから仕方ないよね)

 

 

(出し入れするだけじゃダメなんですね。

おかしいなぁ。

AVでは、かなり激しくしてたのになぁ。

(注:何度も言うが、チャンミンのメイクラブ指南書はAVが全てである)

それじゃあ、これは?)

 

 

「あぁん」

 

(チャンミン、いいよ、そんな感じ)

 

(おー!

指をちょっと曲げるといいんですね。

こんな風に、かき回すようにして...。

おー!

ミミさん、声がえっちです。

興奮してきました)

 

 

「はぁん」

(※チャンミン)

 

(ミミミミミさん!

変な声が出ちゃったじゃないですか!

僕のをそんなに触らないでください!

暴発しちゃいますから!!)

 

 

(やだ...。

ますます大きくなってきた。

...入るかしら...?)

 

 

「大きい...」

 

 

「!!!!」

 

 

(ちょっと聞きました?

僕のが「大きい」ですって!

俄然、ヤル気が満ちてきましたよ!)

 

(チャンミン!

手が留守になってる!

動かしてったら!)

 

(これくらい濡れてきたら、いい感じですかね?

 

ミミさんの中に挿れたいんです!

 

僕は早く挿れたくて仕方ないんですよ。

 

挿れたいです!

 

挿れて動かしたいんです!)

 

 

(チャンミン...鼻息が荒い。

興奮してるのね)

 

 

(待て待て。

ガツガツしちゃダメです。

落ち着け―、シム・チャンミン!

 

さて、

そろそろアレを「装着」をせねば...。

 

しまった!

箱から出していなかった!

えっと、どこに置いたかな...)

 

 

「ズボンのポケットの中!」

 

(そうでした!)

 

ごそごそ。

 

(おー!

ありました!

ん?

ん?)

 

ごそごそ。

 

(フィルムが剥がせません。

暗くて見えないです)

 

ごそごそ。

 

「電気つけていいですか?」

 

「駄目よ!

私に貸して」

 

(どうして準備しておかないのよ。

肝心なところで抜けてるんだから。

そんなチャンミンが大好きなんだけどね)

 

 

(いざ、「装着」!

...と言いつつ、困ったな。

どっちが表なんだ?

暗くて手元が見えないです。

手が震えます)

 

ごそごそ。

 

 

「よいしょっと。

いでっ!

いてててて!

食い込んで...。

こんな小さいものに、果たして入るんですか?

もう一個...やり直し。

いででっ!

あーもー、もう一個で再チャレンジだ!)

 

「ミミさん!(助けてください!)」

 

(いよいよ私の出番ね、任せて!

よいしょ。

やだ...このサイズじゃ入らないのかな...)

 

(き、きついです。

「生」でヤリたいところですが、ミミさんの為に「装着」しないと...!

よしっ!

いざ「挿入」しますよ!

僕らのめくるめく愛の営みが、これから始まりますよ)

 

(久しぶりだから、入るかな...?)

 

「挿れますね?」

 

「う、うん」

 

 


 

「!!」

「!!」

 

床を踏みしめる軋み音に、チャンミンとミミは一時停止する。

 

ふわぁぁとあくびの声。

 

「お父さん!」

 

「しー!」

「トイレが近いのよ」

 

ミミの部屋の前を通り過ぎてゆく足音に続いて、ブッとおならの音に、二人は吹き出すのをこらえる。

 

(マズイ...いい雰囲気だったのが...)

 

チャンミンはミミの両膝を肩に担いだ状態で、固まってしまった。

 

「......」

「......」

 

 

(わー!

こらっ、こらっ!

僕のモンスターの戦力が消失しかけてます!)

 

(大変!

この子、意外にナイーブだから、ここで自信喪失されたらいけない)

 

「一回、(ゴムを)外そうか?」

 

「...はい...(しゅん)」

 

 


 

 

チャンミンとミミは、互いに腕を絡め合うと、ねっとりとしたキスを始めた。

 

「どう?」

 

「まだ...みたいです」

 

チャンミンはミミの胸に手を這わせ、ミミはチャンミンの股間に手を伸ばす。

 

(お!

いい感じです!

...元気が出てきました!)

 

 

(そろそろ...かな?

やだ...!

さっきより、大きいんですけど...)

 

 


 

そんなこんなで、仕切り直しがスタート。

 

チャンミンとミミは熱い視線を交わす。

 

「挿れますね」

 

「はい!」

 

(きゃー、緊張する!)

 

「やっと、この時が来ましたね」

 

「そうね」

 

(いざ『挿入』!)

 

チャンミンは、片手を添えてあてがうと、ゆっくりと...。

 

「んん...」

 

 

(ヤベー!!!

 

スゲー気持ちがいいんですけど!!!)

 

 

(え!

えっ!

ちょっ、ちょっと待って

チャンミン、ストップ!)

 

チャンミンが奥まで突入する前に...

 

「え!?

痛いですか?」

 

ミミの腰がびくりとしたのと、ミミの手によってチャンミンの腰を押し戻されたことに、チャンミンは不安になる。

 

「違うの...」

 

(また何か間違えた...のかな?)

 

「痛い?」

 

ミミは首を振ると、チャンミンの耳元でささやいた。

 

「チャンミンの...大き過ぎて...苦しい...の」

 

「!!!!」

 

 

[maxbutton id=”7″ ]     [maxbutton id=”2″ ]

(11)ハグを邪魔されてー男になるんだ!ー

 

 

「......」

 

「え...っと」

 

仰向けになったチャンミンの上に、馬乗りになったミミだった。

 

互いの暴露タイムを経て、二人の間に妙な緊張感が漂っていた。

 

スタートを切るための小さな合図を待っていた。

 

(男になるぞ、シム・チャンミン!)

 

よし、と小さく頷くとチャンミンは身体を起こすと、着ていたTシャツを脱いだ。

 

ミミの目の前で露わになったチャンミンの半裸姿に、ミミの心拍数が上がる。

 

(あらら)

 

ほっそりとしているが、うっすらと適度な筋肉がついていて無駄がなくて、ミミは見惚れてしまう。

 

 

「ぼーっとしていないで。

ミミさんも、パジャマを脱いでください」

 

(私も脱ぐの!?)

 

「う、うん」

 

あたふたとミミも、パジャマのボタンを外し始める。

 

(ちょっと待ってよ!

いきなり服を脱いじゃうの!?

いいムードで、少しずつ脱がしていくものじゃないの!?

二人とも脱いじゃうの!?)

 

チャンミンに急かされるままミミは、パジャマの上下を脱いだ。

 

「!!!」

 

ブラジャーだけになったミミを見て、チャンミンはギョッとして、顔をそむけてしまった。

 

(ミミミミミミさん!

眩しいです、眩しすぎます!)

 

「電気を消してください。

恥ずかしいです」

 

(いつものチャンミンだったら、

「明るい方が興奮します。ぐふふ」って言いそうなのに、

いざその時になると、照れ屋になってしまうチャンミンが、可愛い!)

 

ミミの下着姿に動揺して顔をそむけていたチャンミンだったが、そうっとミミを見る。

 

「何ですか、それは!?」

 

「え?」

 

指摘されて、ミミは胸元に目をやる。

 

「変...だった?」

 

(胸が小さいってこと?)

 

 

「“あの”可愛いブラジャーじゃないですね。

どうして、あれじゃないんですか!?」

 

一度身につけたものの、照れくさかったのと、スタイルに自信をなくしたミミは、いつもの下着にチェンジしていたのだった。

 

「あれはちょっと...恥ずかしくて...」

 

 

「別にいいですけど。

どうせ、すぐに脱がしちゃうんですからね」

 

ふふんとチャンミンは鼻だけで笑ったが、その実内心はピンクな嵐の中でもみくちゃにされていた。

 

(余裕ぶっちゃってるけど、めちゃくちゃ緊張してるんです。

もし、あのセクシー下着をつけてたら、僕はどうにかなってましたよ。

ミミさんも照れていないで、僕をリードして下さいよ!)

 

 


 

ミミさんのうなじを引き寄せて、最初は軽いキス、次は舌をからめる深いキスをする。

 

ミミさんをお姫様だっこして、優しくベッドに横たえると彼女の上に覆いかぶさる。

 

ミミさんのパジャマのボタンを焦らすように一つ一つ外していくと、ミミさんはすごく恥ずかしがって、そんな彼女が可愛らしくて。

 

僕は、ミミさんの全身すみずみまで、ついばむようにキスをして、触れて、揉んで。

 

僕がタッチするたび、甘い吐息を漏らすミミさんは僕の首にしがみついてくる。

 

ミミさんのあそこを...あそこを、爪で傷つけたりしないよう(ちゃんと短く切ってあるよ)、僕は細心の注意を払う。

 

ミミさんをもっと気持ちよくさせて、とろとろになるまで愛撫する。

 

僕の方はもちろん、いつでも準備OK、角度と硬度は共に絶好調。

 

ミミさんの耳元で、「挿れるね」って囁くとミミさんは「うん」って頷くんだ。

 

この後は、恥ずかしいから省略。

 

スタートは正常位で、途中に5種類くらい違うのを挟んで、正常位でフィニッシュ。

 

ミミさんたら、途中で泣いちゃったから、僕はぎゅっと抱き寄せて髪を撫でるんだ。

 

 

 

・・・っていう流れのはずが!

 

僕ときたら、何かを間違えてしまったみたいだ!

 

 


 

 

「......」

「......」

 

(ど、どうしよ)

 

下着だけになったチャンミンとミミは、二人並んでベッドに腰かけていた。

 

照明を消したため、互いのシルエットがぼんやり判別できる暗さだ。

 

だとしても、恥ずかしくてたまらないミミは、脱いだパジャマを胸に抱きしめていた。

 

(裸からスタートって...余計に恥ずかしいんだけど!?)

 

(さて、と。

服は脱いだ。

で、それからどうする?)

 

 

チャンミンは、「よし!」と小さくつぶやいた。

 

(シム・チャンミン、男になろう!)

 

チャンミンは、ミミの首筋にかかった髪をかき分けると、むき出しになった首筋に唇を押し当てた。

 

チャンミンの唇の下で、ぴくりとミミが震えた。

 

首筋から顎まで唇を這わせた後、ミミの唇をこじ開けて舌をねじこんだ。

 

昼間のキスで、ディープキスの気持ちよさを覚えたチャンミン。

 

「んんー!」

 

(やだ、チャンミン!

覚えたてのくせに、キスが上手すぎ!)

 

息が苦しくなって(チャンミンはまだ、スマートな息継ぎの仕方を知らない)唇を放すと、チャンミンはミミをかき抱いて、二人一緒にベッドに倒れこんだ。

 

 

「ずっとこうしたかったです」

 

カーテンの隙間から外灯の灯りがわずかに届いて、ミミのなだらかな身体の輪郭がぼんやりと浮かんでいる。

 

(う、うう...。

ミミさん、綺麗です...。

感動します)

 

横向きに寝転がった二人は、見つめ合う。

 

「チャンミン...泣いてるの?」

 

ミミはチャンミンの頬に触れて、チャンミンの目もとに光るものを拭った。

 

(男の僕が泣いてどうするんですか?

でも、嬉しくて、あまりにも嬉しくて)

 

「僕はこの時のために生きてきたんです」

 

「大げさねぇ」

 

仰向けのミミの上に、チャンミンはのしかかると、ミミを押しつぶさないよう肘と膝で体重を支えた。

 

チャンミンの指が、ブラジャーのホックにかかる。

 

(これをスマートに外せないと、かっこ悪いんだ。

 

ん?

 

ここをこうして...お!

良かった、外れましたー)

 

ミミの膨らみを収めていたそれを、チャンミンは丁寧な手つきで外していく。

 

(おーーー!)

 

(恥ずかしいよー。

『ペチャパイだな』って思ってたらどうしよう!)

 

「......」

 

(感動します)

 

「綺麗、です」

 

性急にわしづかみすることもなく、チャンミンはそうっとミミの胸に触れた。

 

(ミミさんの...おっぱい!

柔らかいです)

 

揉んだり、揺らしたり、寄せたり、ミミの胸の柔らかさを楽しんだ後、先端に口をつけた。

 

 

(おー!

硬くなってきましたね。

ミミさん...エロいです)

 

 

ミミは恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆っている。

 

(こんなシチュエーション初めてじゃないくせに、

まるで初めての時みたいに、ドキドキする!)

 

ミミの胸に夢中になっていたチャンミン。

 

 

(ん...ちょっと痛いかな。

もっと優しくして欲しいんだけどな。

強く吸い過ぎ...かな。

でも、こんなことチャンミンに言えないよ。

彼ったら、必死なんだもの)

 

 

「いたっ!」

 

「ごめん、痛かった?」

 

 

(ついつい、おっぱいに夢中になり過ぎました。

かっこ悪すぎます...)

 

チャンミンは慌てて唇を離すと、ミミの胸に頭を預けてふうっと息を吐いた。

 

互いの素肌が密着して温かく、身体を動かすとさらさらと肌がこすれる。

 

「ミミさんの肌、気持ちいいです...」

 

「うん、そうだね」

 

ミミの胸にのった火照ったチャンミンの頬が、熱い。

 

チャンミンの耳にはミミの早すぎる鼓動が聞こえた。

 

チャンミンは、さりげなく手を伸ばして、股間を確認する。

 

(よし!

硬度、角度共に合格!

萎えちゃったらどうしようかと思いましたよ)

 

(あ!)

 

自分の膝に当たるものにミミは気付いて、安堵した。

 

(よかった。

私の裸を見て、チャンミンはちゃんと反応してくれた。

もっとがっつくかと思ったら、

優しいタッチで、意外だな)

 

チャンミンの手つきはぎこちないが、ひとつひとつの動作がゆっくりと丁寧だった。

 

ミミも腕を伸ばして、チャンミンの背筋に沿って柔らかいタッチで、撫でおろした。

 

「あ!」

 

チャンミンの背中がビクッとする。

 

(ミミさん、思わず声が出ちゃったじゃないですか!)

 

(チャンミン、可愛い)

 

 

(次は...?

この次はどうすればいい?)

 

チャンミンは、日ごろお世話になっているAVのストーリーを思い出す。

 

(酔いつぶれた女上司にホテルに誘われた後輩が...。

違うって!

 

眼鏡をはめたセクシー女教師に保健室に誘われた、男子高校生が...。

ちょっと似てるけど、違うって!

 

父親の再婚相手が色っぽい美人で、息子と義母との禁断の関係が...。

こら!こらー!

 

「合体」に至るまでの流れと手順を思い出すんだ、シム・チャンミン!

 

しまった!

 

早く「合体」してるところを見たいあまり、出だしのところを早送りしてたんだった!

 

僕の馬鹿馬鹿!)

 

焦ったチャンミンはぴたりと動きを止めてしまう。

 

 

(私も頑張らなくっちゃ!)

 

これまで、初めての狩りの様子を見守る親鳥のような心境だったミミは、「よし」と頷くとチャンミンの腰に手を伸ばした。

 

「ひゃっ」

 

ミミの指がチャンミンの下着のゴムにひっかけられ、チャンミンはビクッとする。

 

ミミが下着を脱がそうとしていることに気付いて、チャンミンは慌ててミミの手首をつかんだ。

 

「わっ!

恥ずかしいです」

 

「脱いでくれないと、出来ないでしょ?」

 

「...それは、そうですけど...」

 

「恥ずかしがらないで。

チャンミンのなんて、とっくの前に披露してくれたじゃない」

 

「!」

 

(いつもと逆の立場は調子狂います。

ミミさんをからかっていたいつもの僕は、どこにお散歩にいっちゃったんですか!?)

 

 

「チャンミン...好きよ」

 

「!」

 

ミミは身を起こしてチャンミンを膝立ちにさせると、チャンミンの胸に口づけをしながら、ゆっくりと彼の下着を脱がせていった。

 

 

(おー!

ミミさん...

舐め方がエロいです。

 

気持ちいいです...。

 

ひゃっ!

 

吸わないでください、力が抜けます...。

 

ミミさん、凄いです。

「経験者」はさすがに違います)

 

(!)

 

ミミの視線は、チャンミンのあそこにロックオンされた。

 

薄暗い中でも、触らなくても、シルエットだけでもよくわかる。

 

(やだ...!

 

この子ったら、

 

この子ったら...。

 

身体も大きいけど、

 

なんて立派な!!)

 

 

[maxbutton id=”27″ ]

(10)ハグを邪魔されてーカミングアウトー

 

 

「まずはミミさん、ここに座ってください」

 

「そこに?」

 

チャンミンは、太ももをポンポンと叩いた。

 

「前向き?後ろ向き?」

 

ミミはクスクス笑って言った。

 

「今日は前向きでお願いします」

 

ミミはチャンミンの膝にまたがると、彼の両肩に手をのせた。

 

(えっち過ぎて、照れます)

 

耳も首も真っ赤になったチャンミンは、ミミの腰を支える。

 

「ずっとこうしたかったです」

 

「チャンミン...」

 

ミミはチャンミンの丸い後頭部の髪をすく。

 

(言動も見た目も幼くて。

礼儀正しくて、ちょっとえっちで。

大きな体をしてるのに、照れ屋で。

私の可愛い、可愛い彼氏)

 

ミミの胸はきゅっとして、とにかくチャンミンのことが愛おしくてたまらなくなる。

 

「話って?」

 

「僕の話を聞いたら、

ミミさん、幻滅しちゃうかも、です」

 

「幻滅?」

 

「はい、引いちゃうかも、です」

 

「聞くのが、怖いんだけど」

 

(何だろう?

まさか、『僕もバツイチです』とか、『結婚してるんです』...とか?

『子供がいるんです』とか...!?)

 

チャンミンの言葉を待つミミの口の中が、からからになってくる。

 

「あのですね」

 

チャンミンは、こほんと咳ばらいをする。

 

「そんなに怖い顔をしないでください」

 

「ねえ、チャンミン?

今じゃなくちゃいけないの?」

 

「はい、そうです。

えーっと、僕はですね、僕は...」

 

「チャンミンが...どうしたの?」

 

「爆弾発言をしますよ」

 

(バクダンハツゲン!?)

 

「......」

 

「僕は...」

 

チャンミンは、いったん言葉を切ると、うつむいていた顔を上げた。

 

 

「...『経験』がないんです」

 

「経験?」

 

「はい、そうです」

 

「え...」

 

 

「僕は...ど...う...てい、なんです...」

 

 

チャンミンの声は、消え入りそうだ。

 

 

「サクランボなんです...。

言葉の使い方、合ってますよね?」

 

 

「......」

 

 

(どうしよう...!

ミミさんが考え込んでる)

 

 

「...という訳で、

ミミさんが、僕にとっての『初めての女』になるんです」

 

「......」

 

黙ってしまったミミを、チャンミンは泣き出しそうな顔で見つめている。

 

 

(いつも大胆なことばかり言うから、

てっきり『済』だと思ってたけど、

正真正銘の『新品』だったんだ...)

 

 

「幻滅...しましたか?」

 

「......」

 

 

「かっこ悪いですよね」

 

「......」

 

 

「気持ち悪いですよね」

 

「......」

 

 

「ミミさん、何か言ってください...」

 

「やだなぁ、チャンミン!」

 

ミミはチャンミンの胸をドンと突いた。

 

そのはずみで、チャンミンはベッドに仰向けで倒れてしまう。

 

「!」

 

(ミミさん...いきなり、押し倒しますか!)

 

「可愛い!」

 

仰向けになったチャンミンに飛びつくと、すりすりと頬ずりした。

 

「可愛いんだから!」

 

ミミのリアクションに驚いたチャンミンは、ミミにされるがままだ。

 

「ミ、ミミさん!」

 

「言いたいことって、このこと?」

 

「はい、そうです

一世一代のカミングアウトでした」

 

「ぎゅー」

 

「ミミさん、苦しいです。

話はまだ途中です!」

 

チャンミンは、しがみつくミミの肩を押して、真下からミミを真っ直ぐ見上げた。

 

「だからですね、

ここからが本題ですよ。

 

...うまく出来ないかもしれないってことです」

 

 

「そんなこと...気にしなくていいのに...」

 

 

(チャンミンの目が潤んでる。

勇気がたくさん必要だったんだね。

私が引いちゃうかもって、不安でたまらなかったんだね)

 

「気にしますよ!

ですので...そのぉ...、

ミミさんの経験で...リードして欲しいんです」

 

 

「は?」

 

(困ったな。

私だって、そんなに経験があるわけじゃないのに)

 

 

「このことを、最初に耳に入れておこうと思ったわけです」

 

「うん、わかったよ」

 

 

ミミはチャンミンに身を伏せようとすると、

 

「それから、あともうひとつ」

 

再び、チャンミンに引きはがされる。

 

「まだあるの?」

 

「はい、もうひとつあるんです。

 

コトを成す上で、たいへん重要なことです」

 

 

チャンミンは人差し指をピンと立てた。

 

「大げさねぇ」

 

 

「実は...装着テストを未だしていないんです」

 

「『装着テスト』?」

 

「はい」

 

チャンミンはポケットに入れた箱を取り出して、ミミの前で振ってみせる。

 

「これです」

 

「!」

 

「うまくいかなかったら、

そこはその...ミミさんの経験を活かして、手伝っていただきたくて...」

 

「......」

 

(なんなの、この子は!

そんなことまで、赤裸々に言っちゃうわけ!?

天然にもほどがあるんですけど!?)

 

固まってしまったミミの表情を見て、チャンミンはしゅんとしてしまう。

 

「駄目です...よね?」

 

ミミは満面の笑みで、首を振った。

 

(この子ったら、

なんて可愛くて、面白い子なんだろう)

 

チャンミンは、ホッと胸をなでおろしたのであった。

 

 

[maxbutton id=”27″ ]

(9)ハグを邪魔されてーチャンミンの夜這いー

 

 

右にケンタ、左にソウタ。

 

間にチャンミン。

 

カンタは、ソウタの隣で行儀よく布団をかぶってすーすーと寝息をたてている。

 

(どうしてどうして、みんな僕の邪魔ばかりするんだ!)

 

 

発端は、就寝前のこと。

 

灼熱の痛みから回復したチャンミン。

 

「“お兄さん”、ごめんなさい...」

「“お兄さん”にキックしてごめんなさい!」

 

チャンミンの急所を蹴り飛ばしたことを申し訳なく思ったのか、二人は泣いて謝った。

 

(おー!

初めて“お兄さん”って呼びましたね)

 

「もう謝らなくていいよ。

(僕は優しい男だから)もう怒ってないよ。

でも、二度とあんなことをしないように!」

 

ところが、いつまでも泣き止まない彼らをなだめようと、チャンミンは

 

「TVゲームしよっか?

“お兄さん”は強いんだぞー」

 

と、誘ってしまった。

 

そうやって始まった、ゲーム対戦。

 

ところがうっかり、チャンミンは本気を出してしまい、彼らをこてんぱんにやっつけてしまった。

 

再び大泣きした彼らの機嫌をとらなくなってしまったチャンミン。

 

結果、チャンミンは、子供部屋で就寝することになってしまったのだった。

 

(こんなことで、僕はめげませんよ)

 

ぐずぐずと起きていたソウタが寝入ったのを確認すると、チャンミンは布団を抜け出す。

 

子供部屋は1階、ミミの部屋は2階。

 

(僕が大事に守ってきた“純潔”を、ミミさんに捧げにゆきますから)

 

チャンミンは3人を起こさないよう、ふすまを開けて廊下へ出た。

 

 


 

 

(チャンミン遅いなぁ)

 

落ち着かなくて横になったり、起き上がったり、時計を見たり。

 

(もう11:30じゃない!

明日は早起きしなくちゃいけないのに!)

 

ミミはチャンミンを待っていた。

 

(髪は下ろしてた方がいいよね。

靴下は脱いでた方がいいよね。

唇がカサカサ!

リップクリームを塗らなくっちゃ!)

 

ミミはパジャマのズボンを上げて、ふくらはぎを確認した。

 

(ムダ毛処理...OK!)

 

それから、パジャマの袖をまくって腕を確認していると、すすーっとふすまが開いた。

 

(チャンミン!)

 

「ミミさん」

 

開いたふすまの隙間からチャンミンが顔を出した。

 

「お待たせ、です」

 

素早く部屋に滑り込む。

 

チャンミンは、ゆるっとしたTシャツとハーフパンツ姿だった。

 

「遅くなってごめんなさい。

ソウタ君がなかなか寝てくれなくて...」

 

そう言うと、パジャマ姿のミミから1m離れて、ベッドに腰かけた。

 

(この微妙な距離はなんなの!?)

 

(パジャマのミミさんが、可愛いんですけど!)

 

「あの...」

 

隣のミミを直視できないチャンミンは、もじもじ動かす足の指を見ながら声をかける。

 

「眠いですか?」

 

「ううん、大丈夫」

 

「ミミさんは、疲れているんじゃないですか?

準備で忙しかったし」

 

「チャ、チャンミンこそ、眠いんじゃないの?

ほら、今日はいろいろあったし」

 

「......」

 

(き、緊張します...

ミミさんにえっちなことを言って、困らせていたのに、

今の僕には、その勢いと余裕が枯れています!)

 

(参ったな。

こんなシチュエーション、初めてじゃないくせに、

チャンミンが恥ずかしがっているから、こちらまで緊張しちゃう)

 

「......」

 

「そうそう!」

 

ミミがパチンと手を叩いたので、チャンミンはビクッとする。

 

「そこ...大丈夫?」

 

「へ?」

 

「そこ」

 

「そこ?」

 

「そこだってば!」

 

ミミは、あごをしゃくってみせる。

 

「そこ?」

 

「だから、チャンミンの...そこ」

 

「そこ、じゃわかりません」

 

「......」

 

「はっきり言ってくれないと、分かりません」

 

チャンミンのニヤニヤ顔に、ミミは、チャンミンがとぼけていることに気付く。

 

「チャンミン!」

 

(ミミさんをからかうのは、楽しいです)

 

「くくく。

大丈夫です。

目ん玉ぶっ飛ぶかと思いましたが」

 

チャンミンを睨んでいたミミだったが、「目ん玉がぶっ飛ぶ」様をしてみせるチャンミンに、笑ってしまった。

 

1mの隙間を埋めようと、チャンミンはミミにぴったりつくように、座りなおした。

 

ぎしっと、ミミのシングルベッドがきしんむ。

 

(お?)

 

チャンミンはベッドの上を何度もはずんで、ギシギシとたてる音を確認した。

 

「けっこう...音がしますね」

 

「古いからね。

中学生のときから使ってるの」

 

「困りましたね」

 

「音が気になるって言うんでしょ?」

 

(チャンミンが言いそうなことくらい、予想がつく)

 

「それも、そうですが。

うーん」

 

チャンミンはあごに手を当てて、何かを考えこんでいる。

 

「ミミさん...

初めてのえっちは、このベッドでしたか?」

 

「!」

 

「馬鹿!

チャンミンの馬鹿!」

 

「どうなんですか?」

 

(この子ったら、何を言い出すのよ)

 

「本気で僕は気になっているんですよ?」

 

(ずばり聞いちゃうわけ?)

 

「で、どうなんですか?」

 

チャンミンは、ずいっとミミに顔を近づけた。

 

あまりにも真剣な表情なので、ミミの心にイタズラ心が湧いてきた。

 

「...そうよ」

 

「え...!」

 

チャンミンは固まる。

 

「嘘、嘘!

冗談だってば!」

 

「ミミさーん、ひどいです」

 

「ごめんね、ごめんね」

 

ミミは、抱きついてきたチャンミンの頭をよしよしと撫ぜる。

 

先ほどまでぎこちなかった二人の空気が、ほぐれてきた。

 

「...えっと」

 

 

(真夜中!

寝室!

大人!

二人きり!

ベッド!

条件はすべて揃った!)

 

ミミの胸に頭を押し付けていたチャンミンは、顔を上げると

 

「やっと...この時が来ました」

 

(シム・チャンミン!

「男」になります!)

 

ミミの肩を押して、ベッドに押し倒そうとすると。

 

「待って!

チャンミン、ちょっと待って!」

 

ミミは力いっぱい手を突っ張って、チャンミンのあごを押しのける。

 

「あうっ!」

 

プロレス遊び中に転んで、打ち付けてしまったあごをさする。

 

「ごめん、そんなに痛かった?」

 

「僕は全身、ボロボロなんですよ...」

 

「ごめんね」

 

「そんなことよりも、何ですか?

今さら、NOですか?」

 

(僕は、なけなしの勇気を振り絞って、必死なんですよ)

 

若干ふてくされたチャンミンは、髪をかき回す。

 

「そうじゃなくて、その前に、

チャンミンに話しておきたいことがあるの」

 

「今じゃなくちゃ、駄目なんですか?」

 

「うん」

 

「聞きますよ。

どうぞ、お話しください」

 

チャンミンは手のひらを向けて、ミミに早く話すよう促した。

 

「本当はずっと前に、チャンミンに話しておかなくちゃいけないことだったの。

 

あのね...。

あのね...」

 

(そうですか、

ミミさんの告白ですね)

 

「言いにくかったら、今じゃなくてもいいんですよ」

 

チャンミンはミミの手を取ると、指をからませた。

 

緊張の汗でべたついたミミの手が、さらりと乾いたチャンミンの手の平に包み込まれる。

 

「今じゃなくちゃ、いけないの。

でね...」

 

ミミを見つめるチャンミンの目は、この上なく優しい。

 

ミミは、鼻からすっと息を吸うと、

 

 

「私...バツイチなの」

 

 

「ええええ!」

 

 

チャンミンは、繋いだ手を離すと後ろにとびすさった。

 

目も口も大きく開いている。

 

あまりのチャンミンの驚きように、ミミも固まる。

 

(やだ!

もしかして、知らなかったの?)

 

「もう知ってるかと思ってた」

 

「いいえ!

初耳です!」

 

「幻滅した?

 

嫌でしょ?

 

嫌よね?」

 

ミミは泣き出しそうだった。

 

(お願いチャンミン、

嫌じゃない、って言って)

 

目も口を大きく開けていたチャンミンは、ふっと肩の力を抜くと、

 

「全然」

 

小首をかしげると、目を半月型にさせた。

 

「ホントに?」

 

「ほんとほんと」

 

 


 

 

この子ったら...。

 

チャンミンの驚き方が、あまりに大げさで嘘っぽかった。

 

その後の、「バツイチくらい大したことないですよ」の余裕ある態度もわざとらしかった。

 

知ってたくせに。

 

ホントは知ってたくせに、初めて聞いた風を装ってくれたんだね。

 

誰かから聞いたんじゃなくて、私が打ち明けたことにしてくれたんだね。

 

 


 

「幻滅なんてしませんよ」

でも...正直に言っちゃうと、

嫌ですよ、やっぱり」

 

「だよね...」

 

ミミはがっくり肩を落とすと、チャンミンはミミの頭を撫ぜた。

 

「嫌だよね。

逆の立場だったら、すごく嫌だもの...」

 

「ミミさんがどうこう、ってことじゃないんですよ。

僕以外の誰かを好きだったこと、その事実が嫌なんです。

ミミさんの過去の男たちに、僕は嫉妬しているんです」

 

「チャンミン...」

 

「器が小さい男でごめんなさい」

 

(この子ったら...)

 

「離婚してくれてありがとう、ですよ。

じゃなきゃ、僕はミミさんと付き合えませんでしたから」

 

「チャンミーン!」

 

ミミはチャンミンの頭を胸に抱え込んだ。

 

昼間したように、ミミはチャンミンの頬を包み込んで、唇を寄せようとした。

 

「ストップです!」

 

チャンミンに両肩を押されて、引きはがされた。

 

「何よ!?」

 

「よだれが出てます。

僕が美味しそうなのはわかりますが、

ひとまず抑えてください」

 

「何ですって!?」

 

「しーっ!

ミミさん、うるさいです。

みんなが起きちゃいます」

 

(今度は私の方が“お預け”なの!?

やりたくて仕方がなかったのは、チャンミンの方じゃなかったわけ?)

 

「何よ...」

 

「実はですね、

僕の方も、ミミさんに打ち明けたいことがあるんです」

 

急にあらたまった感じに、チャンミンは話し出した。

 

 

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(8)ハグを邪魔されてーバンビは悲ちいー

 

 

(長い一日だった)

 

どっと疲れが出たチャンミン。

 

いざ薬局へと勇んで出かけようとしたら、ケンタたちに見つかってしまった。

 

「これでお菓子を買ってあげたら、おとなしくなるから」ってヒトミさんから駄賃をもらってしまったチャンミン。

 

彼らを連れて一緒に出掛ける羽目になってしまった。

 

目を離すとどこかへ行ってしまうケンタたちを見張りながらの、大人な買い物は困難極まった。

 

(「アレ」ひとつ買うのに、こんなに苦労するとは。

 

紙袋に入った「アレ」が気になって仕方がないケンタ君たちの気を反らせるのに、こんなに冷汗をかくとは)

 

 

「ミミさん」

 

チャンミンは、ドアひとつ隔てた向こうへ声をかける。

 

「一緒にお風呂に入っていいですか?」

 

シャワーの音で聞こえないのか、返事はない。

 

チャンミンは脱衣所に体育座りをしていた。

 

大家族の入浴タイムは、分刻みだ。

 

順番に次々と入らないと、真夜中になってしまう。

 

「僕は、ミミさんの次に入ります」

 

と、ミミとの関係を隠す必要がなくなったチャンミンは、大胆になっていた。

 

曇りガラスの戸の向こうに、肌色がちらちらしている。

 

チャンミンは、ごくりと唾を飲み込む。

 

(この扉の向こうに。

ミミさんの「裸体」が!)

 

「一緒に入ってもいいでしょう?

ミミさん、ずるいです。

僕は全てを見せたんですよ?」

 

(ミミさんの次の台詞は、分かりますよ。

 

『今夜、見せてあげるから今は我慢して!』でしょ?

 

ぐふふふ)

 

シャワーの音が止み、湯船にジャボンと浸かる音がした。

 

(お!

 

『せっかくだから、チャンミンも一緒に入る?』

ですか?)

 

 

「今からそっちへ行ってもいいですか?

公認の仲になったことですし」

 

パシャパシャと湯が跳ねる音がする。

 

「もう行っちゃいますよー」

 

チャンミンは、急いでTシャツを脱ぐ。

 

湯船から上がるザバっという水音がした。

 

(おー!)

 

曇りガラスに映る肌色が、近づいてきた。

 

チャンミンの胸は高まる。

 

ガラガラっとドアが開く。

 

 

 

「おらぁ!」

 

 

 

「!」

 

 

 

「さっきから何ごちゃごちゃ言ってるんだ!」

 

 

 

「!!!!」

 

 

 

「チャンミン!

そこにいたんだ」

 

脱衣所を覗いたのはトレーナー姿のミミ。

 

「今からみんなで、ドーナツを食べるんだけど?」

 

浴室で怖い顔をしたゲンタと、チャンミンを探しにきたミミとを交互に見た後、チャンミンはうわっと膝に顔を伏せてしまった。

 

「やだ...チャンミン、

なに裸になってるの?」

 

「どうしてミミさんは、そこにいるんですか!」

 

「チャンミンを呼びにきたのよ。

早いもの勝ちだから、好きな味を選んだ方がいいよって」

 

「どうしてミミさんは、お風呂にいないんですか!?」

 

「友達から電話がかかってきちゃったから、おじいちゃんに先に入ってもらったのよ」

 

(僕はゲンタさん相手に、あんなこと話してたんですか?

穴があったら入りたいです)

 

「うっうっうっ...」

 

「やだ...チャンミン、

泣いてるの?」

 

 


 

 

就寝前のおやつタイム。

 

居間でTVを観ながら、家族仲良くドーナツをかじっていた。

 

チャンミンは、ミミの隣に陣取って満面の笑顔だった。

 

「ミミさん、まだ食べますか?

太りますよ」

 

「うるさいなぁ」

 

「ミミさんが太っちゃっても、僕は全然OKですけどね。

抱き心地がよくなります」

 

「チャンミン!」

 

チャンミン発言に、一斉に大人たちの注目が集まる。

 

(調子に乗って!)

 

うんざりしたミミが台所に移動すると、チャンミンも後をついていく。

 

「ったく、金魚のフンみたいな奴だ」

 

ゲンタは、ずずずっとお茶をすすって言う。

 

周囲の浮かれた雰囲気にのって、子供たちの興奮は絶好調だった。

 

カンタは、金打ちの練習で留守だ。

 

「おじちゃんはねー、ミミちゃんのお風呂を『のぞきみ』しようとしたんだよー」

 

「おじちゃん、へんたーい」

 

「あれはっ!

こほん...ちょっとした...手違いです」

 

両耳を真っ赤にさせたチャンミン。

 

突然、ソウタがチャンミンの背中に、飛びついてきた。

 

「おじちゃんと一緒に寝る」

 

「えっ?」

 

(マジかー)

 

「いけません!

お兄さんは、明日は早いの」

 

叱りつけるヒトミの言う通り、明日の御旅(おたび)行列は早朝5時出発だ。

 

着物の着付けもあるので、遅くとも3時半には起床しなくてはならない。

 

ケンタたちは心底がっかりした顔をしている。

 

(今夜は大事な『任務』があるんです。

もう邪魔はされませんよ)

 

「“お兄さん”とプロレスごっこしようか?」

 

チャンミンはとっさに提案してしまった。

 

「わーい!」

 

「その代わり、”お兄さん”は一緒に寝られないからな」

 

ケンタもチャンミンの脚にしがみつく。

 

 

チャンミンがモンスター二人を連れて居間を出ていくのを見送ると、セイコはしみじみと言う。

 

「チャンミン君は、面白い子だねぇ」

 

「普段は静かな子なんだけど、ここに来て楽しんでるみたいだよ」

 

(あんなに笑ってるチャンミンを見るのは、初めてかもしれない。

無邪気過ぎて、さらに年下に見えてしまう)

 

「そろそろ、寝るね」

 

ミミはすくっと立ち上がると、洗面所へ向かったのだった。

 

 


 

 

一方、広間で子供たちととっくみあいの最中のチャンミン。

 

「痛い痛い!

髪の毛をつかむのは、反則だよ!」

 

腰にタックルしてきたソウタを、突き飛ばさないよう抱きかかえて、畳の上に倒す。

 

開いたふすまの隙間から、通り過ぎるミミが見えた。

 

(お!

ミミさん!)

 

「ちょっと待ってろよ。

“お兄さん”は、トイレに行ってくるから」

 

(僕は、ミミさんに話があるんだった)

 

ミミを追いかけようとしたら、

 

 

 

「あでぇっ!」

 

 

 

チャンミンは派手に転んでしまった。

 

畳に寝っ転がったソウタが、チャンミンの足首をつかんだからだ。

 

チャンミンは顎をさすりながら、うつぶせで倒れた身体を起こした。

 

「その技も反則だって!」

 

「おりゃー」

 

ケンタは飛びかかってチャンミンを突き倒すと、チャンミンの上に馬乗りになった。

 

「やめろー!」

 

チャンミンはいい加減うんざりしてきた。

 

プロレスごっこをしようと誘ったことを、深く後悔していた。

 

(ミミさん...助けてください。

この子らは、僕をおもちゃにするんです)

 

 


 

 

ミミは洗面所の鏡に映る顔を見つめていた。

 

(20代に...見えなくもない。

笑うと目尻にしわは寄っちゃうけど、優しそうに見えるよね。

ほうれい線はないし)

 

顔を左右に向けて、ためつすがめつ顔をチェックする。

 

(やだな。

どう見ても、チャンミンと同年代には見えない)

 

パジャマのパンツをめくって、お腹を見る。

 

(そんなにお腹は出ていないけど...)

 

ぐっとお腹を引っ込める。

 

昨日今日と、3度目撃したチャンミンの裸を思い出す。

 

(やだな。

チャンミンはあんなにいい身体をしているのに、それに引き換え私ときたら...。

彼とは釣り合わないのかな...。

自信がなくなってきた...)

 

パジャマの衿の中をのぞくと、パープルのブラジャーが。

 

(気合が入りすぎかな。

ちょっと派手かな...

やっぱりいつもの下着に、着がえよう)

 

部屋に向かおうとしたが、もう一度鏡の自分を見る。

 

(それから、

やっぱりあのことを、自分の口からちゃんと話そう。

チャンミンも、私の告白を待っているんだと思う)

 

「よし!」

 

洗面所の電気を消して、廊下へ出た瞬間...。

 

 

 

 

 

「はうっ!」

 

 

 

広間の方から、大声が。

 

(この声は、チャンミン!)

 

慌てて広間へ向かおうとすると、ケンタとソウタがこちらへ走ってくる。

 

「ピーポーピーポー」

 

「どうしたの!?」

 

ミミはすれ違いざまに、ケンタを捕まえて、問いただした。

 

「おじちゃんが、死にそうなんだ!」

「大変なんだ!」

 

「ええぇ!?

死にそう?

あんたたち、何したの!?」

 

(無茶をして骨でも折ってたら、どうしよう!)

 

さっと青ざめたミミが、広間に駆けつけると...。

 

チャンミンが、畳の上にうずくまっている。

 

「チャンミン!」

 

「うぅ...」

 

チャンミンは脂汗を浮かべて、うめいている。

 

「大丈夫?

どこ?

どこが痛い?」

 

「う...」

 

チャンミンはあまりの苦痛に、ミミの質問に答えられないようだ。

 

(出血はない)

 

「死にそうだって!?」

「救急車呼んだ方が!?」

 

ケンタたちに呼ばれて、居間にいた大人たちも駆けつけてきた。

 

その後ろから、こわごわケンタたちが顔を出している。

 

「あんたたち、お兄さんに何したの?」

 

ヒトミは子供たちを叱りつけた。

 

「居間に運ぶか?」

 

「頭を打ってたら、動かさない方がいいな」

 

「毛布持ってこい!」

 

チャンミンは、蒼白になった頬をゆがめ、目をぎゅっとつむっている。

 

「うぅ...」

 

(どうしよう!)

 

「どこだ?

どこを怪我した?」

 

「救急車呼ばなくっちゃ」

 

ヒトミはポケットからスマホを出して操作する。

 

脇に座って泣きそうになっているミミをどかすと、ショウタはうずくまった姿勢のチャンミンの肩を起こそうとした。

 

「お...」

 

ショウタの動きが止まった。

 

「救急車は呼ばなくていい!」

 

ショウタは立ち上がると、廊下のケンタとソウタにデコピンをする。

 

「しばらくすれば治る!」

 

「お父さん!」

 

 

 

「タマをやられただけだ」

 

「タマ?」

 

「死にそうに痛いはずだが、

しばらくすれば、治まる!」

 

「やだ...」

 

「こいつらに蹴られたんだろうよ。

しばらくそこに寝かしとくんだ。

ほら、みんな戻った戻った」

 

ショウタは、家族を急かすと広間を出て行ったのだった。

 

後に残されたミミは、チャンミンの頭を膝にのせ、苦しむチャンミンの背中をさすってやる。

 

確かにチャンミンの両手は、股間を押さえている。

 

「ミ、ミミさん...。

星が、星が飛びました...」

 

(チャンミンったら、

昨日に続き今日まで...。

可哀そうに)

 

「僕のが...負傷しました」

 

涙をにじませたチャンミンは、ミミを見上げてつぶやいたのだった。

 

(どうしてみんな、僕を邪魔するんですか!)

 

 

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