(1)お仕置きの時間~ユノVer.~

 

 

ユノはチャンミンに両手を引っ張られ、床を引きずられていた。

 

「放せ!」

 

チャンミンにがっちり握られた手を振りほどくことが出来ず、ユノは両足をばたつかせた。

 

 

 

 

荷物のように引きずられているユノ...こんな状況に至ったのは以下の通りだ。

 

ユノとチャンミンは十数年来の恋人同士だった。

 

マンネリを恐れたユノは、『浮気ごっこ』をしようとチャンミンに提案したのだ。

 

マンネリなど感じていなかったチャンミンは当然、乗り気じゃなかった。

 

でも、しばらく連絡をとらずにいるのも、互いの存在のかけがえのなさが証明されるだろうから、と渋々頷いたのだった。

 

凝り性のユノは、チャンミンの浮気相手まで用意する念の入れようだった。

 

1か月間、一切連絡をとらなかった2人。

 

チャンミンの浮気が本気に変わってしまったのでは?と焦ったユノは、浮気か本気かを見極めるために、チャンミンを試すことにしたのだ。

 

チャンミンを縛り上げ、男女ものの『AV観賞の刑』に処すことで。

 

全裸で絡み合う男女を見ても、ぴくりとも反応しなかったチャンミンの下半身に大いに満足したユノ。

 

浮気疑惑が晴れたチャンミンは、手首の拘束が解かれると同時に、今度はユノを拘束したのだった。

 

チャンミンによる、ユノへのお仕置きの時間がこうしてスタートしたのである。

 

 

 

 

寝室まで引きずられたユノは、チャンミンによってベッドの上へと引き上げられた。

 

(何をされるか皆目わからんが、チャンミンのことだ、手荒なことは出来ないだろう。

あまあまの甘ちゃんだからなぁ...くすり)

 

面白くなってきたユノは、途中で抵抗を止めていたのだ。

 

チャンミンはユノの手首にネクタイを8の字に巻きつけた後、ベッドヘッドの柵に結び付けた。

 

「よし、と」

 

「チャンミン。

こんなゆるゆるじゃ、解けちまうぞ?

2重に巻かないと。

ほら...取れちゃった」

 

ユノは手首を掲げて見せる。

 

「あーー!」

 

「チャンミンは困ったちゃんだなぁ。

SMの女王様になりたかったら、容赦なくやらないと」

 

「SM!?

そんなつもりは、全然ないんだよ!」

 

「え?

違うの?

俺をむち打ちするんじゃなかったの?」

 

「むち打ち!?

僕にはそーんな趣味はありません!」

 

「まあまあ。

認めたくない気持ちはわかるよ。

あそこのチェストの引き出し開けてみて...1段目」

 

ユノの指示に従ったチャンミンは、その中身に驚愕するのだ。

 

「!!」

 

出てきたものは手錠...ふかふかのファーが巻かれている。

 

「それから...衣装もあるんだ、着てよ」

 

「衣装!?」

 

「引き出しの2段目」

 

「ユ、ユ、ユノーーー!?」

 

「チャンミンに着せたくって、用意したんだ。

着て見せて、な?」

 

肝心な箇所を隠す布切れのない、縁取りだけのブラジャー。

 

「ちゃんと下のものあるぞ」

 

「...これ?」

 

それをつまむチャンミンの手は震えている。

 

「ちっちゃい...んですけど...」

 

手の平におさまる革製の小さな三角。

 

「俺のは無理だけど、チャンミンのサイズなら収まるんじゃないかなぁ?」

 

「言っていいことと、悪いことがあるんだからね!」

 

ユノのひと言に、ブチっとキレたチャンミンは、ベッドに悠々と寝っ転がったユノに突進する。

 

「気にしてるんだから!

...小さいって...酷い、酷いよ!」

 

両肩をつかんで上下に揺するチャンミン。

 

「小さいなんて、一言も言っていないだろう?」

 

「言ってるのと同じだよ!」

 

「俺のモノは大きくないと、駄目なんだ。

何故だか、分かるだろ?」

 

ユノの問いかけに、チャンミンは動きを止めた。

 

「...分からない」

 

「チャンミンを悦ばせないといけないだろ?

だから、俺のモノは大きくないとダメなの!

わかった?

チャンミンは、サイズを気にしなくてもいいんだ。

そのままでいいんだよ」

 

ユノはチャンミンの頭をよしよし、と撫ぜた。

 

「うーん...」

 

納得したようなしないような、誤魔化されたような馬鹿にされたような、チャンミンの心情は複雑だ。

 

「ムカついたんだろ?

俺をしばきたいんだろ?

どうせやるなら本格的にやろうぜ」

 

「...本格的って...ええっ!?

あれを着るの?」

 

「チャンミン、今の自分の恰好、気付いてる?

下だけすっぽんぽんって...。

煽ってるのか、笑われたいのか...どっちなんだよ?」

 

「わっ!」

 

ワイシャツだけを身につけた姿に、チャンミンはその場にしゃがみこんだ。

 

(ユノにお仕置きされた時のままだった!)

 

両膝を内股にくっつけた座り方に、ユノは「こういうとこに、俺は弱いんだよなぁ」と。

 

「レザー・パンティを履いてくれ。

チャンミンのパンツはリビングだし、ついでだからさ、履いてみて?」

 

「う...」

 

チャンミンはたっぷり30秒、ちっぽけな革きれを見つめていたが、意を決してそれに足を通した。

 

(やべーーーーー!)

 

その姿にユノは内心、悶絶する。

 

(似合い過ぎて...怖い)

 

紅潮した頬は、ユノが興奮している証拠だと、チャンミンは嬉しくなってきた。

 

「黒革の女王様になって、俺のお尻をビシーッとやっちゃってくれ」

 

「ユノを叩けるわけないでしょう?」

 

「痛みも快楽を呼ぶらしいよ。

俺たちに足りないものは、刺激だ」

 

「え...ユノは僕と一緒にいて、つまんないの?」

 

「そういう意味じゃないけど...」

 

ぬくぬくと平和な関係性に、ぴりっとしたスパイスが欲しくなっていたのが、ユノの本音だった。

 

「僕といてつまんないんだな!」

 

日頃大声を出すことのないチャンミンだったから、ユノはビクッとする。

 

「僕だって...僕だって...!

ユノにはお仕置きが必要だね!」

 

「俺が何をしたって言うんだ?

チャンミンと違って、俺は女とデートなんかしてないぞ?」

 

「あれはっ!

デートじゃない!

一度だけご飯を食べただけだよ!」

 

「ふぅん」

 

「とにかく!

僕は怒っているんだ」

 

「何に怒ってるんだよ?

チャンミンとヤッてるとこを盗撮したことか?」

 

「...違う」

 

「お仕置きって...俺が何をしたっていうんだよ!?

お互いに『浮気っぽいこと』しようって決めたのに、お前ときたら、刺客の誰ひとり送り込んでこないんだから!」

 

「...だって...嫌だったんだもん。

男の人でも女の人でも、ユノに近づく人はみんな...許せない!」

 

「...チャンミン」

 

(胸アツ...胸キュン)

 

「そもそも『浮気ごっこ』を持ち出したユノに、僕はモーレツに怒ってるの!」

 

「はいはい。

分かったから、その『お仕置き』とやらをしてくれよ」

 

手錠をはめやすいよう、両手首をチャンミンに突き出してやる。

 

「僕は知ってるんですよ。

ユノが『どM』だってことに」

 

にたり、とチャンミンは笑う。

 

「『どM』なのはチャンミンの方だろ!?」

 

手錠に拘束された両手を万歳した格好で、ユノは仰向けに横たわっている。

 

チャンミンはベッドに上がると、ユノを跨いで大股で立った。

 

ユノの目線が、チャンミンのあの辺りにロックオンされてしまっても仕方がない。

 

「いい眺めだよ」

 

「見るな!」

 

チャンミンはワイシャツをいっぱいに引き落として、件の盛り上がりを隠す。

 

「...で?」

 

チャンミンもユノの上に立ちはだかったものの、その後の展開を考えていたわけではなかった。

 

(こんなちんちくりんなパンツを履かされて、結局自分は何がしたかったのか分かんなくなっちゃったよ!)

 

「チャンミン」

 

「何?」

 

「今日はなんの日だ?」

 

ユノの問いに、チャンミンは首を傾げた。

 

「...分かんない」

 

「チェストの一番下にいいものがあるから、取ってきて」

 

「僕にプレゼント?」と、首を傾げながらも、ユノからの贈り物は何でも嬉しいチャンミン。

 

1段目には手錠が入っていた、2段目にはコスチュームが入っていた。

 

じゃあ、3段目には?

 

「!!!!」

 

「可愛いだろ?」

 

それは、ふわふわの真っ白いファーの塊だった。

 

 

(つづく)

 

 

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保護中: お仕置きの時間

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(19)Hug

 

 

 

「お前...えらいべっぴんさんになったなぁ...」

 

黒い烏帽子がユノの貴族的な顔を際立てている。

 

テツは、ユノの頭から足の先までを、何往復も舐めまわすように見た。

 

「男の俺でも、惚れるぜ?」

 

「気持ち悪いこと言わないでください。

俺は着流しがよかったなぁ」

 

ユノは、白い着流し姿の闘鶏楽の一団を羨ましそうに見る。

 

「鐘が叩けねえ奴は無理だ、諦めろ。

で、どうだった?」

 

テツは、もぐもぐと稲荷寿司を頬張るユノの耳元でささやく。

 

「へ?

何がです?」

 

「アレに決まってるだろ。

で、どうだった?」

 

「ああ、そのことですか。

凄かったんですから。

一睡もしていないんです...ふあぁぁ」

 

ユノは大きなあくびをした。

 

「一晩中か!?

若い奴は違うなぁ...。

で、何回やったんだ?」

 

 

「6回です」

 

 

「ぶはっ!」

 

ユノ発言にテツは飲みかけていたお茶を吹き出した。

 

「汚いですねぇ。

テツさんもえっちですねぇ」

 

ユノはテツにティッシュを渡してやりながら、やれやれといった風に首を振った。

 

(注)

6回というのは、アレを開封した回数(個数)である。

6個のうち5個は使用不能にしてしまい(装着ミス、膨張不足、未挿入)、本来の機能を活かせたのは、実際のところ1個に過ぎない。

しかし、(本番が)1回だけだったとしても、ユノにとって、6回(本番を)やったくらいの満足感と感動を得ていた。

よって、ユノは決して嘘は言っていないのである。

 

 


 

 

 

午前6時。

 

公民館前から御旅行列が出発した

 

鐘を打ち鳴らす闘鶏楽と、笛太鼓の雅楽が奏でる中、

天狗と獅子を先頭に、太鼓持ち、槍持ち(チャンミンの役はここ)、幟持ちが続いて、

裃姿の警固、神幸旗持ち(ユノの役はここ)、

台名旗持ち、神輿、神職、巫女、稚児が行列を成す。

 

氏家前で、獅子舞を奉納しながら半日をかけて、約5㎞の道のりをしずしずと練り歩く。

 

沿道に並ぶ見物人たちは、行列の中に家族を見つけるとスマホやカメラを向けたり、ねぎらいの声をかけたりと、賑やかだ。

 

一文字笠をかぶったカンタが、生真面目な顔をして鐘を叩くのを、母親のヒトミが写真におさめている。

 

(なんて重いんだ...)

 

昨日、テツの前で大見得を切ったユノだったが、出発して30分後には根を上げたくなっていた。

 

(『旗持ちなんて地味だ』とケチをつけてごめん!

こんなに重いなんて!)

 

神幸旗の竿は2メートルもある上、重さも7㎏はある。

 

神聖なものなので、地面につけることもできない。

 

加えて風が吹くたび、旗がはためき、右へ左へとぐらつく竿を全力で握りしめないといけなかった。

 

(チャンミン...辛いです)

 

田植えを前に水を張った水田に、古典衣装を身につけた一行の姿が映る。

 

それはそれは幻想的で、世にも美しい光景だった。

 

ユノが心配なチャンミンは、ちらちらと何度も振り返る。

 

(ユノ...ふらついてる!

でも...めちゃくちゃ、カッコいいんですけど!!

ユノがカッコいい!)

 

ユノの方も、振り返るチャンミンと目が合う度に、ニカっと笑って見せる。

 

チャンミンと視線が交錯する度、ユノの胸がじんと熱くなるのだ。

 

(チャンミン、顔が真っ赤だぞ。

辛いんだろ?

チャンミンは俺よりも大きいくせに、体力ないんだから。

普段、座りっぱなしの仕事だからなぁ。

大丈夫かな)

 

チャンミンの心臓がドキンと跳ねる。

 

(神妙な面持ちでいたユノが、僕と目が合う時の表情がすごかった。

 

嬉しい気持ちを、目と眉と頬と口と...と顔のパーツ全てで表していた。

 

ああ、そうだった。

 

いつもこの子は、こんな風に僕を見る。

 

可愛くて、えっちで、

大好きな、大好きな彼氏だ。

 

ユノからの愛情を注がれる資格は、僕にあるのかな。

 

やだな...感動する。

 

涙が出てきた)

 

両手がふさがっているので、手を振れないユノはおどけた顔をつくった。

 

歩調が乱れ、後ろの旗持ちに怒られている。

 

誇らしげなユノが子供っぽくて、可愛らしかった。

 

 

 

 

昼前に御旅所に到着した一団は、獅子舞と闘鶏楽を奉納した後、簡単な昼食をとる。

 

そして、再び行列を成して神社へ向かうのだ。

 

「はぁ...きついなぁ」

 

「腰が痛い」

 

「やっとで半分だ」

 

倒れこむように腰を下ろした面々に、お茶や菓子、おにぎりなどを載せた盆がまわってくる。

 

「お疲れ様」

 

ユノの隣に座ったチャンミンは、よく冷やしたおしぼりを渡す。

 

「チャンミン、顔が真っ赤」

 

チャンミンの頬骨が日に焼けて赤くなっていて、冷たいおしぼりが火照った肌に気持ちがいい。

 

「重いだろ?」

 

「余裕。

俺はこう見えて鍛えているんだよ」

 

チャンミンは、強がりを言うユノの手をとった。

 

「痛そうだね」

 

ユノの指の付け根にできたマメがつぶれて、血がにじんでいる。

 

「これくらい、平気だよ」

 

「ユノの旗は重いからね。

僕が替わってあげようか?」

 

チャンミンの言う通り、ユノの役は神幸旗持ち。

 

チャンミンの役は、旗持ちよりは負担の少ない御持槍役だった。

 

「それは出来ない。

任されたことは最後までやり遂げたい。

それに、俺とチャンミンとじゃ衣裳が違うよ」

 

ユノは浄衣姿、チャンミンは裃姿だった。

 

「ユノ」

 

周囲を見回したチャンミンは、ユノの手をそっと握った。

 

「ありがとう。

お兄ちゃんの代わりに、祭りに出てくれて。

本当に助かった」

 

(そういえば、ユノにちゃんとお礼を言っていなかったから)

 

チャンミンはユノの手の平に、こんなこともあろうと用意していたガーゼを当て、上からテーピングを巻いてやった。

 

「あと半分、頑張ろうぜ」

 

「うん、頑張ろう。

ユノ、カッコいいよ」

 

目尻が北キツネみたいに切れ上がった、照れ笑いをしたユノのことが、可愛くて仕方がないチャンミンだった。

 

 


 

 

 

祭りは終わった。

 

各家ともども宴たけなわ。

 

「よう頑張った!」

 

「かんぱーい!」

 

チャンミン宅でも、一家全員グラス片手に、広間の大テーブルに所狭しと並んだごちそうに箸を伸ばしている。

 

はしゃいで走り回る子供たち、それを叱るヒトミ。

 

普段は気難しい祖父ゲンタも、祖母カツ相手に何やら熱弁を振るい、父ショウタは母セイコに、お酌をしてやっている。

 

チャンミン一家は酒好きで、次々と酒瓶が空になる。

 

ギプスを巻いたリョウタは、旗持ち役をやり遂げたユノのためにビールを注いでやった。

 

そのグラスをチャンミンは、ユノの元へ運んでやる。

 

ユノは広間の隅で、5枚並べた座布団の上に寝かされていた。

 

重量のあるものを半日間、反り腰の状態で持ち歩いたせいで、祭り終了時には腰が立たなくなっていた。

 

ショウタとチャンミンに両肩を支えられて、やっとのことで帰宅したのだ。

 

チャンミンは、ユノの元へ甲斐甲斐しく食べ物を運んでやる。

 

親鳥が、大口を開けたひな鳥に餌を与えるみたいに。

 

「あーん」

 

チャンミンは、エビフライをユノの口に入れてやる。

 

(温泉旅行の時みたいだ)

 

「タルタルソースをもっと付けて!」

 

「はいはい」

 

「次は唐揚げが欲しい」

 

「はいはい」

 

「あーん」

 

「次は?」

 

「ビールがいいなぁ」

 

「はいはい」

 

「口移しで飲ませて」

 

「馬鹿!」

 

「ちぇっ」

 

ユノはグラスに差したストローをくわえた。

 

「ストローで飲むビールは美味しくない」

 

「贅沢言わないの。

次は何が欲しい?」

 

「...チャンミンが欲しい」

 

「......」

 

チャンミンの目がすーっと細くなり、ユノは即座に謝った。

 

「チャンミンも食べなよ。

あ!

食べるって俺のことじゃなくて、お祭りの御馳走のことだぞ」

 

「当たり前だ!!」

 

チャンミンはもう、開き直っていた。

 

家族の前だから、できるだけいちゃいちゃしないよう気を付けているのに、ユノはそんなチャンミンを面白がって、大胆な言動をするからだ。

 

 

 

(つづく)

 

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(22)Hug

 

 

 

「チャンミンは情熱的なんだね。

ふふ...意外だ」

 

「ミステリアスな年上の男だからね」

 

「ま、俺の方が情熱的だ」

 

「わかってる」

 

「でもさ、俺は駆け落ちなんてしないからな。

反対されても許してもらうまで、チャンミンの家族を説得するよ」

 

「反対も何も、家族はみんな、ユノのことを認めているよ」

 

「ホントに!?」

 

「父さんも母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんもみーんな、ユノをひと目見て気に入ったと思うよ」

 

「そう?」

 

「うん」

 

(母さんがあらたまった感じで僕に忠告したのも、僕らの本気を感じとったからだと思う。

僕の過去が早々と、ユノの耳に届いてしまったことも、その証拠だ。

ところで、誰がユノにバラしたんだろう。

ユノと接点があった人と言えば...テツさんかな。

ボロボロになって戻ってきた僕に、優しくしてくれた唯一のご近所さんだったから)

 

「俺もチャンミンの家族が好きだよ」

 

「ありがとう」

 

ずずっと鼻をすする音。

 

チャンミンは身を屈め、ユノの後頭部にキスをした。

 

「さあ、もう寝よう?

明日は帰る日だからね」

 

「もうちょっと、こうしていたい...」

 

「ユノに膝枕してあげたら、僕が寝れないよ」

 

「えー。

じゃあ、俺の布団で寝てよ」

 

「駄目。

腰が痛いんでしょ。

窮屈な状態で寝たら、よくないよ」

 

「嫌だ」

 

ユノはチャンミンの太ももに、ぎゅうっとしがみついた。

 

「仕方がないなぁ」

 

チャンミンは苦笑しながらユノの隣に横になると、彼の胸に頭を預けた。

 

「俺が腕枕してあげるね。

夢だったんだ」

 

ユノは片腕でチャンミンの頭を包み込むと、ふふふと満足そうに笑ったのだった。

 

 

 


 

 

 

「あうっ!」

 

ユノはたった今、顔面を打ち下ろしたチャンミンの腕をよける。

 

(チャンミンが、こんなに寝相が悪い人だったとは...。

 

情事(今夜はナシだけど)の余韻に浸りながら、腕枕をして眠りにつく...のハズが!)

 

余程疲れていたのだろう、15分もたたずに寝入ってしまったチャンミンの寝顔に、見惚れていられたのはつかの間のこと。

 

寝返りの打ち方が派手で、ユノの身体を邪魔そうに腕で、脚で押しのける。

 

(チャンミンとひとつベッドで一緒に寝るには、キングサイズのベッドが必要かもしれない)

 

布団からはみ出して、大の字になって眠るチャンミンに布団をかけ直してやる。

 

(チャンミン...ごめん。

俺はチャンミンの隣では眠れない)

 

「いててて」

 

痛む腰をかばいながら四つん這いになると、気持ちよさそうに眠るチャンミンをまたいで、隣に敷いた布団に移動することにした。

 

「あうっ!」

 

チャンミンの真上をまたいだ瞬間、彼の両腕がユノの身体をしっかととらえた。

「うーん...いかんといて...」

(チャンミン!)

いつものユノだったら、震えるほど嬉しいシチュエーションだったが、この時のユノはそんな余裕がない。

 

下からぶら下がるチャンミンの重みが、みしっと腰に響く。

 

(ごめん。

俺のことが大好きなことは知ってるけど、今夜の俺は応えてあげることができない)

 

腰にまきついたチャンミンの手をほどいて、隣の布団にたどり着いた。

 

「ユノ~...むにゃむにゃ」

 

(うっ...可愛い...)

 

まぶたの下の眼球が動いているから、夢をみているのだろう。

 

(俺の夢を見ているんだ)

 

チャンミンの頭の下に枕をあてがってやり、再び蹴り飛ばされた布団をかけ直してやった。

 

「いててて」

 

2つの布団の間で、駆けっこのポーズで眠るチャンミンの方を向いて横たわると、ユノはチャンミンの手を握った。

 

(チャンミン...俺は明日、果たして家に帰れるんだろうか?

明後日から仕事があるから、ちゃんと仕事に行けるんだろうか?

とにかく、睡眠をしっかりとることにするよ。

チャンミン...おやすみなさい)

 

 

 

 

翌朝。

 

チャンミンは目覚めた。

 

(あれ?

いつの間に、自分の布団で寝てる)

 

隣の布団を見ると、無人だ。

 

(ユノは、いずこに?)

 

反対側に目をやると、畳の上で丸まって眠るユノが。

 

(やだ...。

どうしてそんなところで寝ているんだ、この子は!?)

 

頭まで布団にくるまっていて、その端からユノの髪がくしゃくしゃと見える。

 

(ふふふ、可愛い)

 

 

 


 

 

「また、来いよ!」

 

「はい!」

 

「花火大会もあるし、

秋には稲刈りがあるからな!」

 

「...はい」

 

(絶対に、たっぷりとこき使われるに違いない)

 

アルバイト代を支払おうとするのを、丁重にお断りした。

 

「お世話になりました」

 

見送りに出たチャンミン一族に、ユノは頭を下げた。

 

ゲンタは玄関口から、頭を出している。

 

「おじちゃん、また遊んでね」

 

ケンタとソウタは泣き出しそうだった。

 

「『お兄さん』と呼んだらな!」

 

「ヤダー」

「ヤダー」

 

(くー!

このがきんちょ共ときたら、最後まで小憎たらしいんだから!)

 

リョウタから借りた松葉づえをついたユノと2人分の荷物を抱えたチャンミンは、駅まで送るセイコの車に乗り込んだ。

 

セイコはカーウィンドウを開けると、駅前で下ろした2人を手招きした。

 

「2人とも、仲良くね」

 

「はい!」

 

元気よく、ニコニコ顔でユノは答える。

 

(母さん...)

 

感激したチャンミンはセイコに向かって頷くと、走り去るセイコの車が見えなくなるまで手を振った。

 

 

 

 

「ああ!」

 

チャンミンの大声に、隣のユノはとび上がる。

 

「びっくりするじゃないか!

お茶がこぼれたよ!」

 

濡れたひざをお手拭きで拭いていると、

 

「どうしよう...」

 

困りきった表情のチャンミンが、ユノの腕をゆすった。

 

「忘れ物?

チャンミンは荷物が多いからだよ。

セイコさんに、後で宅配便で送ってもらえばいいじゃん」

 

チャンミンは両手で顔を覆う。

 

「そういうわけにいかないんだ」

 

「そんなに大切なものなら、取りに帰ろうか?

セイコさんに連絡して、戻ってきてもらおう。

バスを降ようか?」

 

「いてて」と腰をかばいながら席を立とうとするユノの腕を、チャンミンは引き戻す。

 

「今から戻っても遅いんだ」

 

「遅いって...何を忘れたの?」

 

ユノの顔をしばし見つめていた後、チャンミンは小声で言った。

 

「...捨てるのを忘れた」

 

「捨てる?」

 

「ゴミ箱の中身...」

 

「実家なんだから、それくらいいいじゃん。

セイコさんが片付けてくれるって」

 

「だから、よくないんだってば!」

 

チャンミンはブンブンと首を振った。

 

「お母さんだろ?

甘えなよ」

 

「...普通のゴミじゃないんだ」

 

やっとでユノは、チャンミンの言いたいことを理解した。

 

「なあんだ、そんなことか」

 

ふふんと鼻で笑った。

 

「そんなことで済まないってば!」

 

「装着ミスのが3個だろ。

お父さんのおならという邪魔が入った本番前の1個だろ。

本番で1個だろ。

時間切れでできなかった2回戦の1個だろ。

全部で6個は使ったからなぁ、ははは」

 

「ユノ!

6個分の袋と中身がゴミ箱に入ってるんだよ!

サイアク、サイアク!!

恥ずかしい...!」

 

「いいじゃないか。

誤解された方が、嬉しいじゃん。

6回もヤッたのね、お盛んねって思われて」

 

「ユノ!」

 

チャンミンの顔がみるみる怒りの形相に変わってきた。

 

「想像してみて。

自分の親に、ひとりエッチのティッシュを片付けてもらったら、嫌だろ?

恥ずかしくない?」

 

「うーん...。

確かに、恥ずかしいかも...」

 

ユノはその状況を想像して顔を一瞬ゆがめたが、チャンミンの方を見てにっこりと笑った。

 

「いいじゃないか。

いかに俺たちが仲良しだってことを、分かってもらえて。

ふふふ」

 

「よくないよ。

次に帰省した時が怖い。

恥ずかし過ぎる!」

 

「ねえ、チャンミン」

 

ユノは顔を覆ってしまったチャンミンの腕を、つんつんと突いた。

 

「見て欲しいものがあるんだ。

今朝、ネットで注文したものなんだけど...?」

 

「へぇ、何を買ったの?」

 

「これ」

 

ユノがスマホを操作して見せてくれたものとは...。

 

「ばっかじゃないの!?」

 

「馬鹿とはひどいなぁ!」

 

「信じられない!

ユノって、『そのこと』しか考えてないわけ?」

 

「言い方が気に入らないな。

チャンミンとの愛を深めるのに、必要なものだろ?

いろんな種類を試してみたいじゃん。

いちご味だって...ふふふ」

 

「......」

 

にやつくユノを無視して、車窓の景色を眺めることにした。

 

「まあまあ。

お弁当を食べようか。

セイコさんが詰めてくれたお弁当だよ。

昨日の御馳走もいっぱい入ってるよ。

美味しそうだよ。

チャンミンせんせー、機嫌を直して」

 

 

 

 

交際8か月目。

 

お泊りデートは今回で2回目。

 

なかなか休日が合わない2人だった。

 

チャンミンは未だユノの部屋を訪れたことがなかった。

 

くわえてユノは、チャンミンの部屋を訪れたことはあっても、泊まっていったことがない。

 

真剣になるのを恐れていたチャンミンだった。

 

けれども、今回の旅行(?)でその気持ちは変わった。

 

(次の休みは、ユノの部屋にお泊りしよう。

そう提案したらユノのことだ、飛び上がるほど喜ぶに違いない)

 

顔のパーツ全部を使って喜ぶユノを思い浮かべると、顔が緩んだ。

 

チャンミンは美味しそうに弁当を頬張るユノを、ちらと見た。

 

(あなたは、

僕の可愛い可愛い年下の彼氏。

ユノ、大好きだよ)

 

 

 

 

チャンミンと1歩も2歩も、近づけた。

 

チャンミンの家族も、テツさんもいい人たちだった。

 

それに!

 

俺はチェリー学園を卒業したし...ふふふ。

 

でも、まだまだチャンミンのことを全部知ったわけじゃない。

 

俺のことも、もっと知ってもらいたい。

 

チャンミンの過去の男に嫉妬しないくらいの、大人の男になりたい。

 

次のお休みの時は、俺んちに泊まるんだぞ。

 

寝かせないからな。

 

わかった、チャンミン?

 

 

 

(おしまい)

 

 

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(21)Hug

 

 

 

さすがに今夜は、ユノがチャンミンの布団にもぐりこんでくることはなかった。

 

(この3日間で、これまでお互いに触れていなかった事を、打ち明け合って距離が縮まった気がする。

ユノの爆弾発言も、内容はともかく、恥ずかしそうに打ち明けた姿が可愛かったな。

きちんとしてて、ぽわぽわしてる子が、あそこまで獣になっちゃうとこも意外だったな)

 

「ねぇ、チャンミン。

怒らないで」

 

「聞くのが怖いんですけど?」

 

「あのね。

俺のが、元気になってきた。

ちょっとおさまりがつかないんで...えっと。

俺の上にまたがってくれないかな?」

 

「!!!!」

 

「オレの上に乗ってチャンミンが動いてくれれば、出来るよ。

俺の腰は使いものにならないけど、あそこは元気だから。

ほら、よくあるだろ?

足を骨折して入院中の男の人に、セクシーな看護師さんが上に乗って...あっ!」

 

繋いでいた手が、勢いよく振り払われた。

 

「ねぇ?

ユノは『そんなこと』しか考えてないの!?

僕とエッチすることしか、頭にないんだろ!?」

 

「......」

 

チャンミンの押し殺すような低い声に、ユノは言葉を失う。

 

チャンミンの目から涙がぽろぽろとこぼれ出てきた。

 

(口を開けば、下ネタばっかり。

この子ったら、僕と『ヤること』しか考えていないわけ?)

 

「なんだか...悲しいよ」

 

チャンミンの目に涙が光っていることに気付いて、ユノはひやりとした。

 

「チャンミン...」

 

チャンミンの近くへ寄ろうとしたが、腰に激痛が走る。

 

「ごめん。

チャンミン、ごめん。

泣かないで」

 

ところがチャンミンはくるりと、ユノに背を向けてしまった。

 

 

「誤解しないで。

 

『そのこと』ばっかり考えているわけじゃないんだ。

 

俺の中に、ジェラシーがあるんだろうね。

 

俺はチャンミンのことが大好きだけど、言葉や態度だけじゃあ伝えきれない想いがあふれているんだ。

 

やっぱり身体でもひとつになりたい、って思うようになってきて。

 

そう願って、当然だよね?

 

だって俺たちは大人の男と男なんだから。

 

チャンミンの過去に比べたら、俺なんて...って自信がないんだ。

 

言葉や態度で、いっぱい伝える自信はある。

 

でも、それだけじゃ不安なんだ。

 

昔の男との記憶を塗り替えるには、やっぱり身体を繋げるしかないな、って思ってて。

 

あ、もちろん!

 

俺は若くて健康な男だから、スケベなこともいっぱい考えてるよ。

 

チャンミンを思い浮かべて、ひとりエッチしたこともあるくらいだ」

 

 

ユノはチャンミンの背中に向かって必死になって言葉を継ぐ。

 

 

「えーっと、つまり...。

 

何が言いたいかというと、

 

チャンミンとえっちなことをしたい欲求は、やりたい盛りばかりじゃない、ってことを分かってもらえたらなぁ、って。

 

俺の言いたいこと、ちゃんと伝わった?」

 

ゆっくりとチャンミンは、ユノの方へ向きを変えた。

 

(よかった、もう怖い顔はしていない)

 

「ホントに?」

 

「ほんとほんと」

 

チャンミンは手を伸ばして、ユノの手を握った。

 

「僕のことを考えて、ひとりエッチしたって言ってたよね?

どんな破廉恥なことを、想像の中でさせてたわけ?」

 

「うふふふ。

内緒」

 

「怖いなぁ」

 

「チャンミンの裸...綺麗だった。

中も気持ちよかった」

 

「ホントに?」

 

「ほんとほんと。

俺の想像通りだった」

 

「若い身体じゃなくて、ゴメン」

 

「チャンミン!

そういうことを言うな!」

 

ユノの鋭い声に、チャンミンはビクリとした。

 

 

「ねえ、ユノ。

 

僕の方だって不安なんだよ。

 

年甲斐もなく、ユノみたいな若い子に夢中になって。

 

ユノはカッコいいから、いっぱいモテるんだろうなって。

 

ユノと同じくらいの年の可愛い子の方が、ユノには似合うんだろうなって。

 

ユノは若い。

 

ユノはいい男だ。

 

これから沢山の人と出逢うだろう。

 

沢山の人がユノを好きになると思う」

 

 

「...チャンミン」

 

 

「年の差が僕を苦しめているのは、そういうことなんだ。

 

ユノには沢山の未来が待っているんだよ。

 

『これから』の人なんだ。

 

僕はバツイチだ。

 

このことを隠した状態でユノと付き合ってきた。

 

ユノはどう思った?」

 

 

「ムカついたよ」

 

ユノは渋々認めた。

 

 

「でしょう?

 

ユノには分からないだろうなぁ。

 

僕はもともと女の人とは恋愛が出来ない。

 

でも、ユノは違うだろ?

 

男と恋愛するのも、僕が初めてだろう?

 

ユノには普通の恋愛を選ぶ自由があるんだよ。

 

僕みたいな過去ありのおじさんなんかじゃなく」

 

 

「だからさ!

 

そういうこと口にするのは止めろ!

 

第一、チャンミンはまだまだ若いじゃん。

 

30代で年寄りのつもりでいたらさ、ゲンタさんなんて仙人になってるぞ?」

 

 

ユノは顔をしかめながら、じりっとチャンミンの方へにじり寄ってきた。

 

 

「俺はまだまだだね。

 

チャンミンが、どうしてこうまで年の差にこだわるのか、正直、今の俺には理解できない。

 

チャンミンの今の話を聞いても、俺には全然分かんないんだ。

 

俺は、『今の』チャンミンが好きなのに。

 

俺と同い年のチャンミンなんて、全然魅力的じゃないな。

 

あ!

 

そんなことないか。

 

同い年のチャンミンは、それはそれで素敵だろうね...いてて」

 

 

ユノはもっとチャンミンの側へにじりよってきた。

 

チャンミンも布団から出て、ユノの枕元に座った。

 

「チャンミン。

...今も前の旦那さんのこと...思い出すこと...ある?」

 

布団からすっかり這い出たユノは、チャンミンの太ももにしがみついた。

 

「全然。

思い出さないよ」

 

「別れた時、苦しかった?

悲しかった?」

 

「辛かったよ」

 

「駆け落ちするくらい、好きだったんだよね?」

 

 

「...うん。

 

あれ?

 

やっぱり、全部知ってるんだろ!?」

 

 

「ふふん。

 

チャンミンのことは全部、俺は知りたいんだ。

 

でも、ざっとしたことしか知らないよ。

 

俺の存在を知らなかった頃のチャンミンを知りたい。

 

チャンミンとの歳の差を埋めたいんだ。

 

駆け落ちした時...チャンミンは俺より若かったんだろ?

 

で、旦那さんの方は、今のチャンミンと同じくらいの歳?」

 

 

中途半端に隠さず、ユノには全てを話そうとチャンミンは決心した。

 

 

「...うん。

 

猪突猛進。

 

若かったからね。

 

うんと年上だった彼が、僕の全てだった」

 

 

(く、苦しい!

 

チャンミンの過去を知るのは辛い!

 

でも!

 

知らないままだと、勝手な想像で苦しみそうだ。

 

俺は全部、教えてもらうからな!)

 

 

「あの頃の家族は、男の人が好きな僕のことを受け入れてはいたけれど、複雑な心境だったと思うんだ。

 

この町に赴任してきた人でね...奥さんがいた人なんだ」

 

 

「うわぁ...トラブルの匂いがする」

 

 

「その通り。

 

家族が大反対しても当たり前なんだ。

 

離婚した彼の新しい赴任先について行ったから...駆け落ちみたいな形になったんだ。

 

3年ももたなくて...結局は捨てられた格好になってしまったけれど」

 

 

「...それは、キツイね」

 

 

(若かった僕。

 

恋に全力投入できた時代。

 

だから、分かるんだ。

 

僕に向けるユノの心が、どれだけ真っ直ぐで強いものかを)

 

 

「...彼は、いい男だった?

俺よりも?」

 

 

「...比べられないよ。

 

あの時の僕は、彼が一番だと思っていた。

 

それが事実だよ」

 

 

「...そっか」

 

(胸はズキズキするけど、はっきりと認めるチャンミンが、俺は好きだ)

 

ユノの形のよい後頭部を、チャンミンは何度も何度も撫ぜた。

 

ありったけの愛情を込めて。

 

(当時の逆バージョンを再現しようとしている風に見えて、家族が心配しても仕方がない)

 

 

「あの時はあの時。

 

過去は過去だ。

 

もう過ぎてしまったことだ。

 

彼は彼。

 

ユノはユノだよ。

 

彼は過去の人。

 

ユノはね...」

 

 

太ももが熱く濡れていることにチャンミンは気づいていた。

 

(ユノの涙...)

 

 

「今の僕にとって、ユノが全てだよ。

 

今だけじゃなく...これからも。

 

これからずーっと先も、僕の全てがユノだからね」

 

 

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(つづく)