(45)虹色★病棟

 

 

昼下がり、僕はユノの部屋でくつろいでいた。

 

ユノは室内温室の中に、僕は外にいた。

 

相変わらずユノの潔癖具合にはムラがあり、今日のユノは肉体的接触を避けがちな日だった。

 

浴室で濃厚に接触した翌日だからだろうか。

 

ここは失うための場なのに何やってんだと、我に返ったのだと思う。

 

翌日になれば、室内温室の中に僕を招いてくれるだろう。

 

焦ったら駄目だダメだ、僕は平気だ平気だと、心の中で言い聞かせているおかげで、不満感を無駄に膨らませないようにしている。

 

 

僕らはかつての配偶者、婚約者の話題を敢えて出していた。

 

その後の絡み合いを盛り上げるために嫉妬心を煽っているといった、高度な駆け引きのためではない。

 

顔の見えないX氏とY氏を想像する。

 

身体は寄り添い合い、でも思いは遠く過去に飛んでいる。

 

そこで思い出した事柄は、今の恋人に聞かせるために口に出す。

 

一緒に解釈の仕方を話し合う。

 

荒療治だけど話題に出すことで、過去の想いの整理しやすくなるのでは、と僕は思っている。

 

後ろめたさから早く解放されて、のびのびと恋がしたい。

 

ここを出て、ユノと恋がしたい。

 

その方法を僕は具体的に考え始めている。

 

 

僕は目を閉じ空を仰いで、ぽかぽかと温かい陽光を顔いっぱいに受けた。

 

ユノと二人、中庭のベンチに腰掛けていた。

 

ユノはキャラメル色のニットを、僕はチョコレート色のワンピースを着ていた。

 

見た目に美味しそうな2人だ。

 

 

 

 

「彼とは、どこで会ったの?

褒められた関係じゃなかったって言ってたよね?」

 

「聞きたい?」

 

「うん、聞きたい」

 

ニヤッと笑ったところが、僕に聞いて欲しそうに見えた。

 

「職場で知り合ったんだ。

俺はアルバイトたちをマネジメントする役目で、彼はフリーターをしていた。

手袋とマスクをした俺は異様ないでだちだ。

バイトたちが俺のことを面白おかしく陰口言ってただろうね。

でも、彼だけは違っていた。

初めての...恋だった。

...今から5年前の話だ」

 

「そう...だったんだ」

 

その人はユノにとって初めての人で、唯一心置きなく抱きあえる、と話していた。

 

彼相手ならば、彼のものもユノのものも互いに、汚いと恐れる不安はないという意味だ。

 

それならば...僕の場合はどうなんだろう。

 

僕らの接触は指で慰め合うまでに限られてはいた。

 

よく考えてみると、むき出しの性器を素手で触れられるユノが、どれほど僕に心を許しているのか、ここは大喜びすべき点なのだ。

 

「ラムネに餌をやろう」

 

ベンチから立ち上がり、僕らは温室へと移動することにした。

 

(...そうなると...)

 

実は僕の中に2つ、疑問が生まれていた。

 

1つ目は前々から気付いていたこと。

 

ユノは僕を含め他人のばい菌を恐れているのと同等に、ユノ自身のばい菌で他人を汚してしまうことを恐れている。

 

僕が聞きかじっている知識はあてにならないと前置きしておいた上で、ばい菌嫌いの人は、相手が家族や恋人ならば、ばい菌ルールが解除されるものなのか?ということだ。

 

ばい菌を嫌悪する点は、相手が誰であろうと差はないように思うんだよなぁ。

 

今のユノは、僕のことが好きだと言ってくれてるし、僕の身体に触れてくれる。

 

その逆については、肌に触れる直前、躊躇する瞬間も見受けられるけれど、まあまあ許してくれてると思う。

 

「昔のようでつい最近のように感じるし...もう5年になるんだな。

いなくなって半年も経っていない...」

 

僕の耳に、ぐさりとユノの胸にナイフが刺さる音が聞こえた気がした。

 

その激痛に顔を歪ませたユノを前に、僕も同様に傷を負ったかのような錯覚に襲われた。

 

カタカタっと心の小箱も震えた。

 

ユノは寒さに震えるかのように、両腕を巻きつけユノ自身を抱きしめていた。

 

ユノの喪失の痛みが遠のくまで、僕は彼の背中を撫ぜていた。

 

「褒められない関係、って?」

 

「5年前、俺には恩人がいた」

 

「恩人?

それって...?」

 

「その前に...」

 

ユノは僕と自身のマスクを顎下にずらすと、僕に口づけた。

 

「誰かくるよ...っ」

 

喪失と向き合う者たちが集うここでは、他人に興味を持つ者はいない。

 

彼らにとって身の回りも季節もどうでもよい事柄だから、温室をわざわざ覗く者は誰もいない。

 

「っふ...んん...っ...ふ」

 

僕らのキスは次第に熱く激しいものになる。

 

キスとキスの合間に、ユノは「チャンミンはエッチだね」と言った。

 

「え...どこ...が?」

 

僕も息継ぎの時に、尋ねた。

 

「ワンピースを着ているのに、勃ってる」

 

「あ~、そうだね」

 

ユノの唾液を味わいながら、僕のものはさらに膨張し、小さな下着から頭を出していた。

 

「いいことしてやる」

 

そう言ってユノはその場でしゃがみ込み、ワンピースの中に頭を突っ込んだ。

 

「ちょっと!

ユノ!」

 

そして、勢いよく下着を引き下ろされた。

 

「やだ...恥ずかし」

 

「かがんで」

 

ユノは自身の指をくわえると、唾液をまとわりつかせた。

 

「待って!

手袋!」

 

素手だったことを思い出し、僕はパニックになった。

 

「手袋は卒業した」

 

「でも...。

あっ、はぁ...っ!」

 

ユノの乾いた指は、固く閉じた入口の周囲をくるくると遊び、緩んだところでつぷり、と突き立てた。

 

「んっ...あっ...」

 

バランスを崩して尻もちつかないよう、鉄製フレームを掴んで身体を支えた。

 

ガラス窓はホコリとコケで曇っている。

 

僕の中でユノの指がいたずらする。

 

僕の肌を叩く音に合わせて、僕は喘いでしまう。

 

ユノはワンピースの中から身を起こすと、僕の背中にのしかかった。

 

「...いいっ...すご、これ...っすご...い、いい...!」

 

誰も覗かないと分かってはいても、万が一を考えるとドキドキしてしまって落ち着かなかった。

 

「どう?」

 

「うん...いいっ、いいけどっ...」

 

(早くイカないと...!)

 

加勢するため、自身のものを掴み激しく上下させた。

 

「ああぁっ...」

 

僕が放ったものがレンガ敷きの地面に降り注いだ。

 

今日はここまでだった。

 

ラムネは気を利かせてか、そっぽをむいて眠っていた。

 

 

(つづく)

 

 

[maxbutton id=”23″ ]

(44)虹色★病棟

 

 

ユノの部屋をノックする直前にドアが開いた。

 

ドアの前に僕がいるとは予想していなかったらしく、ユノは「おっと」と驚きの声をあげた。

 

「お、おはよ」

 

自分でもはっきりと分かるほど、ドクンと心臓が収縮した。

 

(は、恥ずかしい)

 

昨夜を思い出して全身熱くなり、もじもじ俯いてふわもこファーのスリッパで床を蹴った。

 

「あ、ああ...」

 

ユノも恥ずかしいみたいだ。

 

照れる自分たちが可笑しくて、顔を見合わせて笑った。

 

気まずい空気がふっと消えて、「よかった」と思った。

 

透明ゴーグルの下のユノの眼は、寝不足でいつもより充血しているように見えた。

 

「今日もワンピースなんだ」

 

「うん」

 

「色がいいね。

似合ってる」

 

「そ、そう?」

 

薄桃色のポリエステル地に、白レースの衿が可愛らしいワンピースだ。

 

 

 

足元は白のレースアップシューズ。

 

全身を披露しようとワンピースの裾をひるがえしてターンしかけた直前、配膳ワゴンを押したスタッフと目があって、寸でのところでストップする。

 

ユノと肩を並べて食堂へ向かう。

 

二人だけの秘密が出来たおかげで、いつもの習慣も特別なものに思えてくる。

 

昨日の世界と今日の世界とでは、鮮やかさが違うっていうの?(大袈裟かな?)

 

食堂のテーブルに2メートルの距離を置いて座るのは普段通り。

 

こんな距離...昨夜の僕らはマイナス距離まで縮めたんだよ。

 

食事の様子を見張るスタッフや、もそもそとご飯を食べる入所者に向かって、「凄いでしょ?」と自慢したいくらいだ。

 

...もちろん、出来るはずもないけどさ。

 

 

 

「お風呂は...一緒に入る?」

 

おずおずと提案した。

 

昨晩抱き合った後、ユノも含めて僕もシャワーを浴びていない。

 

特にユノなんて、一刻も早く入浴したいはずだ。

 

1人当たりの入浴時間は20分と決められているから、二人で一緒に入浴すれば40分確保できる。

 

それから、期待していた。

 

昨夜は衣服をまとったままで、僕的には不発だったから。

 

 

ユノと初めて一緒に入浴をした日に、こんなことを思った。

 

湯船を満たす液体が消毒液だったら、僕らは全裸で抱きあえるのでは?と。

 

今の僕らだったら、消毒液なんて必要としないかもしれない。

 

深夜の給湯室で、半裸になったユノが体を拭いていた夢も思い出した。

 

僕は湯船の縁に組んだ腕に顎をのせ、身体を洗うユノの背中を眺める。

 

頭を2回、身体は3回洗うのがユノのルールで、その洗い方は「洗浄する」という言葉がぴったりだ。

 

昨夜のこともあり、回数が増えたら嫌だなぁと思っていたけれど、いつも通りで嬉しかった。

 

だって、僕と抱き合ったせいで、身が穢れてしまったと思われたことになるから。

 

(事実その通りだ。でも、すっきり割り切れる程の余裕は僕にはない)

 

僕らの気持ちが通じ合った今、心の距離と共に身体の距離も縮まるのではないだろうか。

 

...と期待しかけてすぐ、「焦ってはいけない」と心のブレーキをかけた。

 

ところが、一緒にいられる時間は限られている事実が心のブレーキを緩めさせ、アクセルペダルを踏まさせた。

 

湯船から出た僕は、大胆な行動に出た。

 

「チャンミン...!」

 

ユノの身体にボディソープを塗りたくった。

 

ユノの体毛が、浴室の照明を受けて1本1本光って見えた。

 

 

僕らは浮かれていた。

 

新しい恋に盛り上がっていた。

 

それぞれが抱えている喪失感を、見て見ぬふりをしていた。

 

僕はともかく、ユノこそ喪失のトンネルを抜け出さないといけないのに。

 

ここがLOSTであることも、意識の外に追いやっていた。

 

 

そこからの記憶はあいまいだ。

 

何度も指でイカされてガクガクで、ユノに腰を支えてもらわないと立っていられないほどだった。

 

突如、怖くなった。

 

「ユノ...よくないよ、こんなこと...」

 

僕はユノが好きだから、ユノとこういうこと出来るのは嬉しい。

 

いつか我に返って、本来悲しむべき時に悲しまなかったしっがえしがあるかもしれない。

 

それなのに。

 

ユノが発した温かいものを口で受けとめたとき、浮かんだ願望。

 

次は、僕の中にこれを注いで欲しい。

 

溢れるほど注いで欲しい、と。

 

 

(つづく)

 

[maxbutton id=”23″ ]

(43)虹色★病棟

 

 

ユノに脱がされたパンティはベッドの足元にくるん、と丸まっていた。

 

ぺとりと濡れて張り付いた前が、気持ちが悪かった。

 

「悪かった」

 

「慌てなくていいから...。

初めてだったし」

 

ユノの潔癖症について触れるわけにはいかず、これ以上ユノにかける言葉が見つからなくて、もじもじ俯いていた。

 

ユノも立てた膝に額をつけて俯いて、「すまない」を繰り返していた。

 

マットに落とされた指が震えていた。

 

(そうか...!)

 

手を拭いたいのを、僕を気遣って我慢しているんだ。

 

僕は室内温室を出て、除菌シートを取って引き返した。

 

外の空気が清々しく感じたのは、室内温室の中は僕らの体臭が充満していたせいだろう。

 

出入り口のビニールをめくった時、静かだった空気清浄機が赤いランプを灯して稼働し始めた。

 

その作動音を聞かせたくなくて、ビニールカーテンをすぐに閉めた。

 

「ユノ、拭いた方がいいよ?

シャワーは朝にならないと使えないから...」

 

ユノの手を取って、除菌シート3枚で包み込んだ。

 

「...いや、俺のことはいいんだ」

 

ユノは僕を手首をとって、脇へと除けた。

 

「チャンミンこそ、洗った方がいい」

 

以前、ユノが言っていたように、彼は誰かを汚してしまうことを恐れている。

 

体毛、垢、皮脂、体液...そして匂い。

 

他人のそれらが自身に付着すること以上に、自身のそれらが他人に付着してしまうことを恐れている。

 

ユノの潔癖について調べてみたいと思っても、LOSTには情報を得る手段がない。

 

書籍を取り寄せてもいいけれど、ユノに関心を持っていることを施設側にバレてしまう。

 

僕にできることは、ユノが嫌がることはしないこと。

 

ユノと少しでも長く側にいられる方法を考えることだ。

 

「そろそろ寝ようか?」

 

「う、うん。

見回りもくるだろうから」

 

僕もユノも、場が白けてしまったことを気付かないフリをしている。

 

今この時、見回りのスタッフが来てくれるといい、と僕は願った。

 

ユノの部屋にいたらいけない僕は、ユノの胸にくるまれて隠れるのだ。

 

ユノのドキドキいう鼓動を聞きながら、異常なしを確認し、スタッフが立ち去るのを待つ。

 

ドアが閉まる音に、僕らは「危なかった~」と顔を見合わせて笑うのだ。

 

 

 

「誰だろう...?」

 

廊下の床へと給湯室の光が漏れていて、僕は足を忍ばせた。

 

「...ユノ?」

 

半裸になったユノが、タオルで二の腕を拭いていた。

 

石鹸をよく泡立て、爪ブラシで指先を擦っていた。

 

僕は泣いてしまった。

 

僕とユノとの距離を思い知らされた。

 

 

 

目覚めた時、そのシーンが夢だったと分かった。

 

耳の穴の溝に、冷たくなった涙が溜まっていた。

 

「...よかった」

 

目にしたくないと恐れるがあまり、そのシーンがそのまま夢に登場したらしい。

 

夢うつつで目にした現実だった可能性もあるけれど、それは無いと信じたい。

 

キスもしたし、全身で最も汚いところに指を入れて、内部を荒したんだ。

 

全身の中で最もデリケートなところを、僕にゆだねたんだ。

 

弾力と味、形状と匂いを思い出した。

 

あれはリアルだ。

 

 

椅子の背もたれに引っかけたワンピースは、しわだらけだった。

 

裾に付着した精液の汚れをもみ洗いしないと...。

 

胸の真ん中がギリギリ痛み始めていた。

 

小箱の中身が外に出せと足を踏み鳴らして、ガタガタと蝶番を揺らしていた。

 

ユノが用意してくれた鍵...銀色に光る錆一つないが守ってくれているから、任せて大丈夫だ。

 

全身が重くだるい。

 

ユノの指でもたらされ快楽に溺れた結果、僕は全身虚脱状態だった。

 

時間がない焦りと、慌てず慎重に進めていきたい思いの狭間に僕はいる。

 

手放しに楽しめないとは、僕らの関係をいう。

 

僕の元から去っていった婚約者も、浮気相手と心から楽しめなかっただろうな。

 

僕とユノは浮気をしているわけじゃないけどさ、LOSTという場所がいけないだけだ。

 

ユノは度合い強めの潔癖症で、僕は僕で変わったところがある。

 

共通点は、喪失の悲しみを抱えていること、そこから抜け出したいこと...そして、思いがけず新しい恋を得てしまったこと。

 

...眠くて仕方がない。

 

朝食の時間まであと2時間ある...半分だけ覚醒していた意識は霞の中へと沈んでいった。

 

 

(つづく)

 

 

[maxbutton id=”23″ ]

(42)虹色★病棟

 

 

「...うっ...」

 

ユノは低い囁き声を漏らし、温かい吐息。

僕は舌を暴れさせ、握った手を激しく上下させた。

ユノのいいところをヒットさせると、僕をいたぶっていた彼の手は止まる、

僕はほくそ笑む。

ところが、お返しとばかり僕の穴はもっとイジメられる。

 

「あ、ああああぁぁ」

 

気持ちが良すぎて、ユノの大事なところを噛まないようにするので必死だった。

 

(凄いよ...凄いよ。

気持ちいいよ)

 

「んんっ...ぁああぁ...っ」

 

声をたてそうになると、さらにユノの指が穴の中で暴れる。

 

「...静かに。

何ごとかとスタッフが来るぞ」

 

駄目だと思うと、握られた僕のあそこが張り詰める。

ユノも同様らしく、僕の口の中で固さを増した。

僕らはイケナイことをしている。

 

「やっやぁ、それ、それ...やだぁ」

 

LOSTは恋を成就させる場ではない。

悲しみも執着も怒りも全部、手放す場所。

独りきりで行う修行の場なんだ。

皆が寝静まった深夜、ワンピースを着た男がお尻を丸出しにして、お尻に指を突っ込まれている。

もうひとりの男は、ワンピース男のお尻に指を突っ込み、さらにアレをしゃぶられている。

いけないよ、こんなこと。

 

「やっ...や...ギブ、ギブ。

もう...やだぁ」

 

スタッフの巡回時間まで余裕はあるけれど、今夜に限って早まるかもしれない。

隣室の者が、喘ぎ声を苦痛の声だと勘違いして、スタッフを呼ぶかもしれない。

 

「わ、かってる...。

もう勘弁して。

我慢...できない」

 

僕は必死に頭を上下に振った。

ユノのアレは長いから、彼の亀頭が僕ののどちんこをぐりぐりする。

室内はどこもかしこもえっちな音

僕はまだ、お尻だけでイケるところまで達していない。

 

「どうだ?」

 

「まだ...まだ...あと、ちょっと...」

 

咥えていたものから口を離し、酸素を取り込んでからユノの問いに答えた。

 

「イケそうなんだけど...まだ」

 

滴り落ちた僕のよだれで、ワンピースの襟元がよだれかけみたいになっていた。

イケそうでイケなくて、焦れったくて苦しい。

ユノの執拗さに、前戯で一度イカせたいのだろう。

右手はユノの根元を、左手で僕のモノをしごいた。

僕らには時間がない。

前と後ろの刺激で頭がおかしくなりそうになりながらも、僕は祈った。

互いの肌と性器が放つ匂いで、ユノが正気にかえりませんように。

そう祈りながら、知っている限りのテクニックで、ユノのソレを指と舌、喉と唇とで慰めたのだった。

 

 

「ごめん...本当にごめん」

 

ベッドから転がり落ちていた僕は、ユノに引っ張り起こされた。

なぜユノのものを咥えていた僕が、ベッドから落下してしまっていたのか。

絶頂の直前だ。

ユノが放つものを、僕の口内で受け止めようとしていた。

 

「駄目だ!」

 

突き落とされたのだ。

僕の方と言えば、寸止めできず床に落下した瞬間に射精してしまった。

僕の放ったものが、リノリウムの床を汚していた。

後で拭き清めればよいものの、僕はワンピースの裾でそれを拭った。

今すぐティッシュペーパーで拭い、除菌シートで拭い、アルコールスプレーを吹きかけ、最後にもう一度除菌シートで拭き清めなければならない。

...だって、僕の体液で汚染されたと、表情をこわばらせるユノを見たくなかった。

 

「仕方ないよ」

 

僕は平気な顔をして、ユノの手に引っ張られ、ベッドの上へと戻った。

 

「本当に申し訳ない」

 

ユノはぐっと頭を下げた。

 

「慌てずにいこうよ」

 

僕はワンピース姿のままだった。

一方ユノは、ズボンから前を出したままだった。

僕の視線に気づいて慌てて萎れたものを、おさめた。

 

「ね?」

 

肌同士を重ね合わすのは、まだまだ僕らには早すぎるってことだね。

直前で怖気付いてしまっても仕方がない。

ばい菌扱いされたと、傷ついてはいなかった。

僕の体液...精液で汚れるよりも、ユノ自身の精液で僕を汚してしまうことを、恐れたんだ。

いよいよ興奮の頂点という時に、ハッと我にかえったのだ。

 

「はあ...」

 

ワンピース...脱がされたかったなぁ...でも、仕方がないよね。

 

僕らには時間がない。

 

(つづく)

(41)虹色★病棟

 

 

僕とユノの唾液で濡れた指が僕の後ろに回された。

ユノの腕の中で、僕は身動ぎひとつ出来ずにいた。

自分の指以外は初めて。

婚約者...僕の元から逃げていった...を相手にしていた時とでは、逆の立場になる。

今夜『抱く』側から『抱かれる』側に逆転する。

ユノは固く握られた僕のこぶしに気づくと、「大丈夫、任せて」と言って、僕の背中を叩いた。

 

「ふぅ...(緊張するなぁ)」

 

僕らには身長差がほとんどないため、互いの太くなったものが重なり合っている。

 

(熱い...とても)

 

確かめてはいないけれど...確実に僕のものより多くて太い。

 

(入るかな。

生身の男のものを受け入れたことがないから...不安だな)

 

「触っていないのに、チャンミンのそこ...」

 

「嘘!?」

 

ワンピースをまくしあげ、パンティの前に触れて確かめた。

しっとりと湿り気を帯びていた。

 

「ワンピース着てる子が勃起してるって...すごいギャップ」

 

「......」

 

「女の子って勃起するんだっけ?」と、ユノは僕の耳元で囁いた。

 

「...からかわないでよ...っ」

 

僕はぷい、と赤面した顔を背けた。

煽り言葉が恥ずかしいのに、悦んでいることがバレているようだ。

勃起以外にも僕の身体には変化が生じていて、身体の芯からかっかと熱気が噴き出ていた。

ワンピースを着ているのに、あそこを勃たせてしまうはしたない自分に興奮を覚えていたから。

ワンピースとからめて、もっと辱めて欲しいなぁ、と望んでみたりして。

でも、関節はギクシャク、筋肉はカチカチに硬直していた。

 

「チャンミンの心臓、ドキドキしている」

 

胸に耳をくっつけてみなくても、重ね合わせた胸を通して心臓の鼓動が伝わってきた。

 

「...うん。

ユノもドキドキしてる」

 

僕の頭は進展の早さについてこられていないのに、身体は準備を着々と進めているようだ。

 

「こっちに来て」

 

ユノは僕から身体を離すと、先にベッドヘッドにもたれて座った。

僕の手はユノの方へと力任せに引っ張られ、その勢いで僕は彼の太ももを抱きしめるようにうずくまる格好となった。

 

「...ユノ、え?」

 

この姿勢から、これから何をなされるか想像できてしまう僕。

 

「!」

 

パンティを脇にずらされれたのだ。

僕はユノの太ももにしがみついた。

ユノはもう一度しゃぶって潤いを足した指を、うずくまることで露わになった僕の穴に突き立てた。

自分以外の指が僕の中を掘ろうとしている...。

 

「あ...あ、あ、うう...」

 

抜きさしを繰り返し、ひねりも加えながら、ユノの中指は僕の穴へと埋められていく。

 

ねちっ...ねち。

 

これは、手袋をはめている指を引き抜く音だ。

僕の指で開発済だった中は、ユノの愛撫に即反応した。

 

「あっ、はっ、あっ」

 

入り口と腸壁がユノの愛撫をねだるかのように、きゅうきゅうとうねっているのが分かる。

ユノの残りの4本の指は、僕の両尻をがしっと掴んでいる。

僕のよだれがユノのパジャマを濡らしている。

 

「はっ...は...あぅ...あ...」

 

どんな気分だって?

いい、最高に気持ちがいいよ。

過去の結婚相手を存分に愛撫してきた指で、僕の秘部は荒されている。

慣れた指は、たちどころに快感スポットを探り当てるのだ。

 

「はっ...や、や、やぁ...やだぁ...」

 

ここでようやく、濡れてびちょびちょになったパンティを脱がされた。

僕の小ぶりなアソコはユノの施しによって大きく育ち、狭い布面積ではおさまりきらなくなっていた。

股ぐりから亀頭が顔を出していた。

 

「そこ、いい、いい、いい」

 

ぐちゅぐちゅいう音に興奮した。

指の動きだけじゃ物足りなくなり、自らの腰も回転しだした。

それに合わせて、僕のアソコも揺れている。

 

「チャンミン、気付いてる?

お前の穴...指三本くらえ込んでる」

 

「嘘...!?

だって、だってだって...あ、あ、あ、あ。

いい、いいっ」

 

ユノの言い方がえっち過ぎて恥ずかしくて、僕は彼の太ももに顔を伏せた。

ユノの三本の指が僕の中でバラバラと遊ぶ。

肉体の内部を他人に刺激されると、こうも感じることができるなんて!

自分の指とは比較できないほどの強烈な快感だった。

 

「チャンミン...気持ちいい?」

 

「うん、うん、気持ち...いい」

 

ちゅぷちゅぷいうねばついた音。

 

「気持ちがっ...いいよぉ」

 

ユノの指が汚れないか不安になってみては、彼の指は手袋で保護されていることを思い出して

 

「ああぁ!

だめっ、そんなっ、だめっ...あー、あーー!」

 

独りで慰める時の僕はこうだった。

受け側だった婚約者に押し倒される僕、不特定の誰かミスターXに激しく突かれる僕。

これらの想像と一緒に、目もくらむ快感を与えてくれるそこを刺激する。

前のしごきも合わさると、短時間でイクことができた。

中の構造を知り尽くしているユノは、僕の敏感な箇所をしつこく刺激するのだ。

体温と質量を持ち、「好きだ」と囁いてくれる生身の男に弄ばれるのは初めてだ。

ピストン運動も速度を増し、くちゃくちゃ音も激しくなってきた。

潤いが足りなくなると、口を開けた僕の穴に直接、ユノの唾液が落とされた。

 

「ここ...。

チャンミンの...いいところだろ?」

 

「うんっ...うん?

あ~~ダメダメ、あっ、ああ~~~」

 

ぐりぐり擦られて、僕は悲鳴をあげた。

僕ばっかり...僕ばっかり。

攻められ続けるのに慣れていない。

ユノにも気持ちよくなって欲しい。

濃厚な匂いを放つものが、僕のすぐそこにある。

息も絶え絶えな僕は手を伸ばし、ウエストに指をかけた。

驚いて出し入れを止めたユノに構わず、彼の下着からそれを引きずり出した。

僕の頬をかすめたそれを、すかさず頬張った。

 

(つづく)