アーカイブ: 長編小説
(11)腐男子です
私は高校教諭、30代独身、生粋の腐男子だ。
我がクラスに見目麗しいカップルがいる。
彼らは白米が何杯でもいけるほどの、味付けの濃いおかずだ。
黒髪貴公子攻めユノとポメガバンビウケチャミだ。
脳内で繰り広げられるメイクラブ。
その激しさたるや、くんずほぐれつ大乱闘...に見えるほど。
薔薇を背負ったユノが、薔薇に埋もれたチャンミンを二つ折りにして、いいところばかり刺激するから、チャンミンは昇天まであと5秒。
・
ところで...。
...チャンミンは既に、ナカイキできるようになっているんだろうか?
高校生だぞ。
早いだろ。
ユノも高校生だぞ。
チャンミンをエロい身体に開発してくれるのは結構だが、そのテクはどこで学んだ?
高校生らしい初々しさも大切だ。
なんでもかんでも、エロく烈しければよい、というわけじゃない。
・
「前立腺...」
(しまった!)
私は口を覆った。
ぼそり、とつぶやいてしまったワードに慌てた。
ホームルーム中に妄想する内容じゃない。
今のようにおかしなことを口走ってしまうし、ゆるゆる顔面を生徒たちに目撃されてしまう。
私は教卓を離れ、窓から校庭を見下ろした。
アジサイの花が満開だった。
(ふむ)
花を美しいという目で見られなくなって、久しい。
腐臭ぷんぷんの腐男子の宿命である。
薔薇だの、菊だの、百合だの、つぼみだの、すべてが腐に結びついてしまうのだ。
例えば百合の花を見れば......百合BL。
菊の花を見れば...つまり。
・
本日のホームルームでは、学級委員長の選出の真っ最中だ。
自主性を重んじる私は(単に面倒なだけ)、司会進行等すべてを彼らにゆだねている。
そのおかげで私は腐妄想にふけっていられるのだ。
パチパチパチパチ...。
拍手の音にハッと我に返った。
「決まったのか?」
「はい」
黒板を見ると...。
(何と!!)
学級委員長・・・ユノ
副学級委員長・・・モブ
書記・・・チャンミン
尊い...。
ありがとうございます。
せいぜい妄想させていただきます。
[maxbutton id=”23″ ]
(10)腐男子です
私は高校教諭、30代独身、腐男子である。
ちなみに私の恋愛対象は女性だ。
腐趣味についてこられる、又はこの嗜好を尊重してくれる女性に限られるため、只今、彼女無しである。
日々刊行されるBLコミック、小説に囲まれ、十分幸せに暮らしているので、彼女が欲しいと思ったことはない。
...というのは嘘で、
私も学生時代は、彼女が居た方がいいのでは?と、焦っていた。
世界は腐に満ちていると気付きはじめた頃、腐ウォッチングという趣味が加わった。
目に映るありとあらゆるものから、BLのかほりを嗅ぎ取るのだ。
私のお眼鏡に叶う対象者は滅多に現れない。
ところが今年度は、久方ぶりの大ヒット。
バッドの芯が捉えたボール。
かきーーーん!!
珠と棒。
とんでもない逸材と出会ってしまった。
攻め(設定)のユノ。
ウケ(設定)のチャンミン。
見目麗しい彼らのおかげで、近々腐王(ぶぅうぉ)にレベルアップできそうだ。
・
小テストの時間。
教室は、カリカリと鉛筆が紙を引っかく音のみ。
私は教卓に頬杖をついて、もの思いにふけっていた。
ユノ×チャンミンの初体験はいつだろうか?と、考えていた。
(設定として)
高校1年生は...早い。
高校3年生...遅い。
やはり、高校2年生...それも、夏休み!
...と思いかけたが、即却下。
高校2年生の夏休みとは、男女カップルの第定番。
ユノ×チャンミンが、典型的な流れで脱童貞、脱処女してもらったら、腐夢がない。
放課後の教室も萌えるが、初心者にはややハードルが高い。
中間テストの前日、試験勉強をどちらかの部屋でやることになった日がよかろう。
「ここの問題分からない」
「え?
どこ?」
「ここ」
「あ~、それはね」
ユノのノートを、チャンミンは覗き込み、ユノのうなじにチャンミンの吐息がふきかかる。
驚いたユノは振り返り、二人の唇はぶつかりそうになり...ぶつかった!!
抱き合うまでは、どちらが上になるのか二人はあやふやだった。
チャンミンをからかいたくて仕方がないユノは、尻を突き出して煽るのだ。
ユノに応えようと、チャンミンはズボンをおろし下着からぽろん、と出した。
ねじ込もうとするチャンミンを、ユノは
「ばーか。
お前は俺に抱かれるんだよ」
と、チャンミンを下に組み敷いて...。
...うむ。
ユノの台詞がキザ過ぎる。
「抱く」の言葉がくさい。
高校生が言う台詞じゃない。
「抱いてやるよ」
「抱きつぶしてやるよ」
ではなく、
「ヤろうぜ」
「ヤりまくろうぜ」がリアルだな。
・
そろそろ、仕事に戻ろうかと現実世界に戻った。
「ん?」
ユノが隣のチャンミンの方を見ている。
すると、チャンミンも「ふふっ」と笑みのお返し。
「昨夜は気持ちよかったな」
「うん」
「好きだよ」
「僕も」
視線で会話をしているホミンの二人。
萌える...。
チャンミンはテスト用紙をユノに見えるよう、机の端に寄せている。
『休み時間、コンピューター室で』
と、メモ書きがされているのだろう(妄想)
ユノはこくり、と頷いている。
答えを見せているようにしか見えないが、
カンニングにしているようにしか見えないが、
これはカンニングじゃない!
二人の愛のセレナーデ。
邪魔をしたらいけない!!
[maxbutton id=”23″ ]
(9)腐男子です
私は高校教諭、30代独身男性、腐男子である。
中学生の頃からBLを嗜み、腐士(ぶし)となった私は、正々堂々と本屋のBLコーナーをたむろすことができる。
堂々とレジに持ってゆける。
『LE○N』とグラビア雑誌にサンドする姑息な技は使わない。
ここでは、私の腐度よりも語るべき対象がある。
担任するクラスにお気に入りのCP生徒、ユノ×チャンミンがいる。
見た目最高、ちょい悪風ダル系男子ユノと、純情むっつりポメガ男子チャンミンだ。
・
先週末、美容院に行った。
待ち時間の間、メンズヘアカタログを見ていた。
黒髪、金髪、ふわパーマ、短髪、オールバック、ロングヘア...イケメンパレード。
私は脳内で、CPを考えていた。
この子は可愛らしい顔をしている...王道の黒髪ショタウケ。
ピアスどっさり金髪チャラ男風...実はウケ。
眼鏡男子...実はスーパー攻め様。
切れ長アイズ長身貴公子風...スパダリ。
ロン毛カメラマンやさ男...ウケ。
(んん~!?)
サロン紹介広告ページで、逸材を発見。
ナンバーワンスタイリストらしい。
痩せ型真ん中分け眼鏡にスーツ、40代前半か。
...”おじさん”じゃないか!
年寄りだからと、腐妄想できないということはない。
この”枯れ”具合が素晴らしい。
となると、彼がウケとして、ガチムチ大学生を攻めとしてぶつけよう。
ガチムチ大学生はおじさんに精神的に頼っている。
ところがベッドでは立場が逆転する
腐士に男だらけのカタログを見せたらいけない。
・
さて、私は美術部の顧問をしている。
わが校は、教諭は何かしらの部活動の顧問をしなければならない。
早く帰宅して、新刊BLを読みたくて仕方がない私は、週2日の部活動を時間のロスだと考えていた。
ところが今年度は違う。
美術部に、ユノ×チャンミンが入部したのである。
本日は何を描いてもらおうか?
美術備品室の棚を見回していた。
口の下がくびれた茶色の花瓶が目にとまった。
どっしりとした銅製で、太く高さがある。
窓辺に視線を移した。
カットが繊細なガラスの花瓶に、ピンク色のバラが活けられている。
「ふむ」
花と花瓶...なんと優美な。
順当なのは、花が攻め、花瓶がウケ。
だがしかし。
花束ごと活けられそうな、太くて茶色い花瓶を攻め側のアレとした場合、
細い口をした可憐な花瓶をウケ側のアレとした場合、
そこに活ける花というのは...。
ダメだ駄目!
高校生には早すぎる!
・
「あれ?
デッサンに使うトルソーがないぞ?」
ロッカーを開けてみせた私は、困りきったフリをする。
「困ったなぁ。
トルソーがないと、デッサンができない。
誰か、モデルになってくれないかなぁ?」
ユノ、もしくはチャンミンは脱がせようと企む私は...病んでいる。
半裸になったユノ、もしくはチャンミン。
チャンミン...が、いいかもしれないな。
ユノの熱っぽい視線に、チャンミンのち〇びは、ぴんぴんにたってしまう。
ユノはぺろり、と唇を舐める。
チャンミンは反応しかけたアソコを、足を組んで隠す。
他の部員は、二人が視線だけで犯し犯されているのに気づかない。
ユノが描くチャンミンのデッサン画では、チャンミンは全裸になっている。
そして...あそこは大きく天を向いているのだ!
・
ああ、私はなんとおバカなのだろう。
[maxbutton id=”23″ ]
(8)腐男子です
私は高校教諭、30代独身、腐男子である。
中学生の頃からBLを嗜んだ結果、腐紳士(ふじぇんとるめーん)まで昇格したのだが、先日の痛恨のミスにより、腐士(ぶし)へと降格したばかりだ。
私が担任するクラスにお気に入りのCP、ユノ氏×チャンミン氏がいる。
男子高校生...まぐわいを本格的に覚える年ごろだ。
・
通勤電車。
(BLコミックを開くことは決してない。
ページ内で繰り広げられているSEXシーンは、どれほど激しく変態めいていても、秘めやかな行為なのである。
公衆にさらしてはいけない)
私は目の前に立つ男子高校生2人組の会話に耳をすませていた。
学ラン2人組。
(学ラン...最高だ)
詰め襟の校章によると、隣町の××高校(男女共学、進学校だ)
真正面の目の高さに彼らの中心があるが、これだけでどちらがどちらかなのか判断しにくい。
居眠りしているフリして、会話に耳をそばたてる。
「あいつ、さっき無視したよな?」
「俺さ~、昨日あいつの地雷踏んじゃってよ~」
(じ、じらい...!?)
「曲がってる、とか言ったんだろ?」
「いや。
痛くても剥かないと駄目だ、って言ったんだ」
「そりゃ、地雷もなにも、まんまじゃんか」
地雷...地雷...地雷...
...ナッシング。
私には地雷はない。
...雑食である。
・
ホームルーム。
雑談も生徒たちとのコミュニケーション作りに必要だ。
生徒
「先生。
俺んちで犬を飼うようになったんす」
生徒の1人が、私に犬の写真を見せようと席をたった。
私
「おっ、いいねぇ、見せてみろ」
生徒
「チャンミンんちの犬が子犬を産んだんすよ。
そのうちの一匹を譲ってもらったんす」
私
「へえぇぇ」
『チャンミン』の名前に、私は反射的にチャンミン氏の席を見てしまった。
チャンミン氏は欠席だ。
「可愛いっすよね?」
スマホ画面に、薄茶色のふわふわの仔犬が映っていた。
犬種は分からない。
私
「なんていう犬?」
生徒
「ポメラニアンっす」
(な、なんですとっ!?)
ポ、ポメラニアン!!!!
(※)ポメガバース!!
私の腐脳に、膝に抱いたポメラニアンに相好を崩すユノ氏が浮かんだ。
そのポメラニアン...。
もしや、
チャンミン氏か!?
チャンミン氏よ、ポメラニアンになってしまったのか!
チャンミン氏は先週から休んでいる。
腸炎だという話だったが、
実は産休だったのか...。
ユノ氏の匂いがぷんぷんする私物で巣づくりして、ユノ氏の子を産んで...萌える。
違うな...これはポメ化ではない。
正解はこうだろう。
ユノ氏とチャンミン氏は喧嘩をし(先日のC君の件だ)、
その結果、チャンミン氏はポメ化した。
(ポメ化したチャンミンは、恐ろしく可愛いだろう)
ポメラニアンは学校に行けないから、欠席しているのだ。
今日あたり、ユノ氏は仲直りするために、チャンミン氏の家へ行くだろう。
ユノ氏にちやほやされて、チャンミン氏は人間に戻る。
お久しぶりSEXをする...激しくガツガツと。
一件落着、めでたしめでたし。
ユノ氏のTシャツや靴下、パンツで巣作りするチャンミン氏...マヂで萌える。
<ポメラバース、ポメ化とは>①ポメガ(Ω)は疲れがピークに達したり体調が悪かったりストレスが溜まるとポメラニアン化(ポメ化)する。
(α-アルファ-がポメ化する場合もあり)
②ポメ化したポメガ(Ω)は周りがチヤホヤすると人間に戻る。
(戻らない時もある)
③周りの人がいくらチヤホヤしても人間に戻らないときはパートナー(CP相手)がチヤホヤすると即戻る。
④ポメガ(Ω)はパートナーの臭いが大好きだから、臭いがたっぷりしみ込んだパートナーの私物で巣作りする。
お散歩中のチャ...じゃなくて、ポメラニアン
[maxbutton id=”23″ ]